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遡河性魚類温排水行動影響調査

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遡河性魚類温排水行動影響調査
経済産業省原 子 力 安 全 ・ 保 安 院 委 託
平成 23 年度
火力・原子力関係環境審査調査
(遡河性魚類温排水行動影響調査)
報 告 書
平成24年 3 月
財団法人 海洋生物環境研究所
はじめに
発電所の温排水が海生生物に大きな影響を与えるのではないかとの漁業者の不安は根
強く,漁業資源の減少が問題とされる昨今は,特に漁獲サイズとなる大型個体への影響が
懸念されている。平成 14~18 年度に実施した大型魚類温排水影響基礎調査では,温排水に
よる海水温度の上昇が,沿岸定置網による寒ブリの漁獲量低下の一因ではないかと言う漁
業者の懸念を発端として,ブリ等を対象とした野外生け簀実験を実施し,今後の影響予測
評価に有用な結果が得られている。
同様な問題として,発電所近隣の河川へのサケマス類等の遡河降海性魚類の遡上に関す
る温排水の影響が懸念されている。本調査は,遡河性魚類の行動に対する温排水影響を予
測・評価するため,大型魚類温排水影響基礎調査と同様の野外実験手法等によって遡河性
魚類の温排水に対する反応行動を検証し,発電所の環境影響評価に係る技術的手法の確立
ならびに環境審査に役立つ基礎的データの充実を図ることを目的として平成 19 年度から
開始された。
これまで,本邦の主要な遡河性魚類であるサケ,サクラマスの 2 種を対象として,野外
実験を実施してきた。サケについては,平成 19~21 年度に河川遡上期の初期(10~11 月),
中期(11~12 月),後期(1 月)に各 1 回(計 3 回)の実験を行い,温排水に対する反応行
動とその時期・水温条件による変化を把握した。一方,サクラマスについては,平成 20~
22 年度に河川遡上期の初期(2 月),中期(4 月),後期(5~6 月)に各 1 回(計 3 回)の
実験を実施し,サケとはやや異なる温度反応行動が観察された。
平成 23 年度は,サケを対象として,河川水が本種の温排水に対する反応行動に及ぼす
影響について検証する実験等を実施するとともに,これまでの調査結果に基づいて,サケ・
サクラマスの温排水に対する反応行動についてとりまとめ,河川遡上行動に対する温排水
の影響について検討した。また,調査の円滑,効果的な運営を図るため,学識経験者から
なる検討委員会を設け,調査の計画及び結果について検討した。報告に先立ち,常に適切
なご指導,ご助言をいただいた委員諸氏をはじめ,調査の実施に当たり多大なご協力とご
支援をいただいた関係機関,関係各位に対し厚く御礼を申し上げる。
平成 24 年 3 月
財団法人 海洋生物環境研究所
-i-
- ii -
目
次
はじめに
ⅰ
目次
ⅲ
調査の概要
1
詳細結果
Ⅰ.平成 23 年度調査結果
Ⅰ)調査目的
5
Ⅱ)調査計画
5
Ⅲ)調査結果
7
7
1. 情報収集調査
2. 温度反応等調査
18
1)目的
18
2)期間
18
3)方法
19
4)結果
24
Ⅱ.平成 19~23 年度調査結果のとりまとめ
Ⅰ)情報収集調査
37
Ⅱ)温度反応等調査
43
Ⅲ)発電所周辺海域における行動の予測
71
Ⅳ)サケ・サクラマスの行動に対する温排水の影響の評価
76
参考文献
77
- iii -
- iv -
調査の概要
1. 背景・目的
発電所の温排水が海生生物に大きな影響を与えるのではないかとの漁業者の不安は根
強く,漁業資源の減少が問題とされる昨今は,特に漁獲サイズとなる大型個体への影響が
懸念されている。このような問題の一例として,発電所近隣の河川への遡河性魚類(サケ
マス類等)の遡上に対する温排水の影響が懸念されており,本調査では,本邦の主要な遡
河性魚類であるサケ,サクラマスを対象として,野外生け簀実験等によって温排水に対す
る反応行動を確かめるとともに,温排水影響の予測・評価に資する知見を収集した。
2. これまでの調査内容
平成 19 年度に実験用の大型生け簀を作製し,発電所前面の温排水拡散域内および拡散
域外のそれぞれに設置して野外実験を開始した。これまで,温排水に対する反応行動とそ
の時期・水温条件による変化を把握するため,サケについては,平成 19~21 年度に河川遡
上期の初期(10~11 月),中期(11~12 月),後期(1 月)に各 1 回(計 3 回)の実験を行
った。いずれの時期においても,サケは海面付近の昇温層(温排水によって水温が上昇し
ている層)内にはほとんど進入せず,昇温層より深くて水温の低い範囲を広く遊泳するこ
とが確認された。
サクラマスについては,平成 20~22 年度に河川遡上期の初期(2 月),中期(4 月),後
期(5~6 月)に各 1 回(計 3 回)の実験を実施した。サケと同様に,サクラマスは昇温層
内にはあまり進入しないことが確認されたが,昇温層の直下を主に遊泳する点がサケと異
なっていた。
また,平成 23 年度には,サを対象として,屋外水槽を用いた河川水の誘引効果による
高水温に対する反応行動の変化を確認する実験を行ったところ,自然海水との温度差 2~
4℃,厚さ 3.5m の温海水を通過して河川水注水口近傍にまで頻繁に進入する例がいくつか
見られ,河川水の誘引効果が,高水温に対する忌避に勝る場合があることが示唆された。
3. 結果のとりまとめ
これまでの野外生け簀実験の結果に基づいて,サケとサクラマスの遡上行動に対する温
排水の影響について評価した。まず,両種の基準遊泳水温(測定した遊泳水温の最頻値)
- 1 -
に対する忌避温度の関係を求めた。基準遊泳水温は,サケ・サクラマスにとっての環境水
温と考えられ,この基準遊泳水温を基に温排水拡散域における忌避温度の範囲と近隣の河
川へのサケの移動を模式化して示した(図1)。
図1
発電所前面を通過するサケの遊泳行動の模式化
(上:表層放流の場合,下:水中放流の場合)
- 2 -
河川遡上の盛期のサケは,ごく沿岸の浅所を移動するので,発電所のごく近傍を移動す
ると仮定した。また,本調査で実施した溯上期中期(11~12 月)の野外実験の際の基準遊
泳水温から忌避温度を求めた。温排水の放流方式が表層放流の場合,忌避温度の範囲はご
く表層に限られるので,サケはその下層において鉛直移動を繰り返しながら,やがて河口
から拡散する河川水の層に遭遇し,これを辿って河口に到達するものと推察された(図 1,
上)。一方,水中放流の場合は,放水口のごく近傍においては忌避温度の範囲が海面から海
底付近までを覆ってしまう場合も考えられるが(ここでは,岸壁の海底付近に開口した放
水口から温排水を放流する場合を想定しており,海底から放水管を立ち上げたり,ケーソ
ンマウンド上から放水したりする方式の場合には忌避温度範囲は海底に接しないと考えら
れる),表層放流に比べて水平方向の忌避温度の範囲が狭いので,放水口近傍をやや沖側に
迂回するコースを取れば,忌避温度範囲と海底の間に隙間が生じ,表層放流の場合と同様
に移動することができると推察された(図 1,下)。サクラマスについても同様の行動を取
るものと考えられる。
河川への移動に支障を来すケースとしては,温排水による忌避温度範囲が表層の河川水
の下面全体を覆ってしまい,河川水の探索を阻害する場合が考えられる。ただし,温排水
が河川水の下に大きく潜りこむような状況は,放水口と河口がごく近接している場合に限
られると予想され,本調査で情報収集を行った発電所では,河川水と温排水は,表層で水
平的に接しており,鉛直的な層を形成するケースは見られなかった。また,放水口と河口
がごく近接している立地条件でも,河口方面への温排水の拡散を防ぐ防波堤や導流堤が設
置されている場合には,河川水の下への温排水の潜り込みは軽減されるものと考えられる。
さらに,本調査の野外生け簀実験においてサケ,サクラマスともに時折表層の昇温層を突
破して海面に達する行動が見られたこと,および河川水の誘引効果を確かめた陸上実験に
おいて,温海水の層を突破する行動がしばしば見られたことから,成熟が進んで河川への
遡上の欲求が高まった個体は,多少の高水温層ならば突破して河川水の探索を行うことが
可能と思われる。
以上のことから,サケ,サクラマスは,温排水による昇温を忌避はするが,その影響は
母川への遡上を阻むほどではないと考えられる。
- 3 -
- 4 -
詳 細 結 果
Ⅰ.平成 23 年度調査結果
Ⅰ)調査目的
本調査は,遡河性魚類の行動に対する温排水の影響を予測・評価するため,野外実験等に
よって温排水に対する行動反応を検証し,発電所の環境影響評価に係る技術的手法の確立な
らびに環境審査に役立つ基礎的データの充実を図ることにより,漁獲サイズとなる遡河性魚
類の行動に対する温排水の影響予測の高度化および国が行う環境審査に資することを目的と
する。
Ⅱ)調査計画
上記の目的を達成するため,平成 23 年度においては,情報収集調査として,河川に隣接す
る発電所前面海域における水温や塩分等の情報,および河川水の流入による低塩分等に対す
る遡河性魚類の反応行動に関する知見を収集・整理する。
また,温度反応等調査として,河川水が遡河性魚類の温排水に対する反応行動に及ぼす影
響に関して検証するための陸上実験を行うとともに,平成 19 年度から実施した遡河性魚類の
選好・忌避温度の調査結果および情報収集調査を基にして、温排水が遡河性魚類の行動に及
ぼす影響について最終的なとりまとめを行う
なお,調査の円滑,効果的な運営を図るため,学識経験者からなる検討委員会を設け,調
査計画の検討,調査内容の審査および調査成果の評価を行う。検討委員会の構成を第 2 表に
示した。
第1表
平成 23 年度の調査項目と実施時期
月
項 目
4
5
6
7
情報収集調査
実験
温度反応等調査
とりまとめ
検討委員会
報告書作成
- 5 -
8
9
10 11 12
1
2
3
第2表
平成 23 年度遡河性魚類温排水行動影響調査検討委員会の構成(敬称略)
氏 名
役 職 名
委員長
沖山 宗雄
東京大学名誉教授
委員
安達 辰典
福井県水産試験場長
〃
柏木 正章
三重大学名誉教授
〃
関田 泰宏
日本原子力発電株式会社発電管理室環境保安グループ課長
〃
中園 明信
九州大学名誉教授
〃
日野 明徳
東京大学名誉教授
オブザーバー 吉田 功
経済産業省原子力安全・保安院電力安全課統括環境保全審査官
〃
布瀬 浩司
〃 審査係長
事務局
道津 光生
(財)海洋生物環境研究所 中央研究所 海洋環境グループマネージャー
〃
三浦 雅大
〃 〃 海洋環境グループ主任研究員
〃
高久 〃 〃 海洋環境グループ主査研究員
浩
(平成 24 年 3 月現在)
- 6 -
Ⅲ)調査結果
1. 情報収集調査
1)目的
遡河性魚類(サケマス類)の発電所周辺海域における行動を予測するための資料として,
河川に隣接する発電所周辺海域における水温・塩分の分布,および河川の流入による低塩分・
誘引物質等に対する遡河性魚類の反応行動に関する情報・知見を収集・整理し,本調査のと
りまとめに資する。
2)方法
(1)発電所周辺海域における水温・塩分の分布に関する情報収集
まず,海洋生物環境研究所(以下,海生研とする)中央研究所のデータライブラリーに所
蔵されている火力・原子力発電所のモニタリング調査報告書を閲覧して,サケマス類の主要
な分布域(北海道,東北,北陸)に立地し,かつサケマス類が遡上する河川に隣接し,さら
に周辺海域における水温・塩分の観測データが豊富に記載されている発電所 2 ヵ所を選定し,
水温・塩分のデータを収集・整理した。
(2)河川水(低塩分,誘引物質等)に対する遡河性魚類の反応行動に関する文献収集
科学技術全分野に関する文献データベースである JDeamⅡ(独立行政法人 科学技術振興機
構)を用いて,1980 年以後の新しい文献を中心に検索を行った。
JDeamⅡによる検索では,以下のキーワードを用いた。
①サケ or マス
②遡上(溯上) or 回遊 or 回帰
③淡水 or 河川水 or 塩分 or 誘引
①②③を AND 検索してヒットした文献のうち,本調査の目的とは関連の薄いタイトルのも
のを除いて絞り込み,さらに,過去年度の情報収集調査によって入手済みの文献を除外した
ものについて収集・整理した。
3)結果
(1)発電所周辺海域における水温・塩分の分布に関する情報収集
データ収集の対象とした発電所では,放水口から 2.5~4km 離れた位置に中規模の河川が存
- 7 -
在した。これらの発電所から近隣の河口を含む範囲の海域における温排水と河川水の拡散に
ついて,収集した水温・塩分のデータから推測すると,温排水と河川水はともに表層を拡散
して水平的に接していた。
河川水が流入している海域での温排水(表層放流)の拡散を調べた水鳥・片野(1988)で
は,温排水が河川水の下に潜り込む状態(第 1 図)が観測されており,ΔS(場の表層水と温
排水の塩分差)が大きいほどそのような状態になり易いことが示されている。表層を拡散す
る河川水の下面を温排水が覆ってしまうと,遡上期のサケやサクラマスの河川水の探索に支
障を来す可能性があるが,本調査でデータ収集の対象とした発電所周辺海域では,河川水と
温排水が鉛直的な層を形成する例は見られなかった。これは,水鳥・片野(1988)の例に比
べて,本調査の対象となった発電所では,放水口と河口が比較的離れていること(2.5~4km)
によると考えられ,温排水が河川水の下に大きく潜りこむのは,河口と放水口がごく近接し
ており,塩分の差の大きい状態で河川水と温排水が接触する場合と推察される。
なお,収集した水温・塩分のデータについては,次章(平成 19~23 年度調査結果のとりま
とめ)において,発電所周辺海域におけるサケマス類の行動の検討に利用するための模式化
した発電所周辺海域における温排水と河川水の分布図の作成の参考資料とした。
- 8 -
第1図
温排水鉛直拡散パターンの模式化(水鳥・片野,1988)
A海域:河口と温排水放水口が近接している海域
B海域:河川水が前面海域全体にほぼ一様に広がっている海域
- 9 -
(2)河川水(低塩分,誘引物質等)に対する遡河性魚類の反応行動に関する文献収集
収集した 36 件の文献について 11~17 ページにリストを示した。また,第 3 表に,文献の
内容に関する内訳を示した。前述のキーワードによる検索にヒットした文献の多くは,母川
の誘引物質(溶存遊離アミノ酸)に対する嗅覚応答に関するものが多く,塩分については,
河口域での行動の文献において若干言及されているのみであった。
これらの文献の内容については,次章(平成 19~23 年度調査結果のとりまとめ)の沿岸域
におけるサケ・サクラマスの行動に関する情報収集調査のまとめに利用した。
第3表
収集した文献の内容による件数の内訳
魚種
項目
母川由来の誘引物質
嗅覚応答・選択性
サケ
サクラマス
その他のサケ類
5
4
5
14
4
4
発生源
計
母川回帰に関わる感覚
1
3
4
海域~河口域での行動
2
1
3
1
1
1
3
遡上と水温の関係
放流魚の生態
回帰に伴う生理的変化
2
1
1
その他
7
7
計
9
6
*特定の魚種を対象にしていなものについては,その他のサケ類に含めた。
*サケとサクラマスの両方を対象にしている場合は,サクラマスに含めた。
22
37
- 10 -
平成 23 年度収集文献リスト
1.大槌湾におけるシロザケの湾内滞留行動に関する研究
宮田直幸, 吉田誠, 佐藤克文 (東大 大海研)
日本水産学会大会講演要旨集, 85, 春季, 2011.03.27
2.天塩川の溶存遊離アミノ酸組成の年変動がシロザケ親魚の河川水選択行動に与える影響
山本雄三, 柴田英昭, 上田宏 (北大)
日本水産学会大会講演要旨集, 2011, 40, 春季, 2011.03.27
3.河川水に対するヒメマスの嗅覚応答に関する機能形態学的解析
坂東洋 (北大 大学院), 黄田育宏 (東京都精神医研), 上田宏 (北大)
日本水産学会大会講演要旨集, 2011, 40,春季, 2011.03.27
4.時期の問題:フレーザー川における後期産卵ベニザケの産卵回遊の開始時期における海洋
条件の役割
A matter of timing: the role of ocean conditions in the initiation of spawning
migration by late-run Fraser River sockeye salmon (Oncorhynchus nerka)
THOMSON Richard E., HOURSTON Roy A.S. (Inst. Ocean Sci., Fisheries and Oceans Canada,
BC, CAN)
Fish Oceanogr, 20, 1, 47-65, 2011.01
5.サケの母川記銘・回帰機構に関する生理学的研究
上田宏 (北海道大学・北方生物圏フィールド科学センター)
比較内分泌学, 37, 140, 5-13, 2011.02
6.河川水におけるバイオフィルムからの溶解遊離アミノ酸の放出
Release of dissolved free amino acids from biofilms in stream water
ISHIZAWA Sayaka, YAMAMOTO Yuzo, DENBOH Takashi, UEDA Hiroshi (Hokkaido Univ., Sapporo,
JPN)
- 11 -
Fish Sci, 76, 4, 669-676, 2010.07
7.天塩川の溶存遊離アミノ酸組成の年変動がシロザケ親魚の河川水選択行動に与える影響
山本雄三, 柴田英昭, 上田宏 (北大 フィールド科セ)
日本水産学会大会講演要旨集, 2010, 51, 春季, 2010.03.26
8.天塩川のアミノ酸組成の年変動がシロザケ親魚の河川水選択行動に与える影響
山本雄三, 上田宏 (北大 フィールド科セ)
日本水産学会北海道支部大会講演要旨集 , 2010, 18, 2010
9.出生河川水のアミノ酸に対する回遊性シロザケの行動反応
Behavioral Responses by Migratory Chum Salmon to Amino Acids in Natal Stream Water
YAMAMOTO Yuzo, UEDA Hiroshi (Hokkaido Univ., Sapporo, JPN)
Zool Sci, 26, 11, 778-782, 2009.11.01
10. 海洋回遊の最初の段階における塩分と水温に関連したポストスモルト期の大西洋サケの
鉛直移動
Vertical movements of Atlantic salmon post-smolts relative to measures of salinity
and water temperature during the first phase of the marine migration
PLANTALECH MANEL-LA N., THORSTAD E. B., OKLAND F., SIVERTSGARD R., FINSTAD B.
(Norwegian Inst. Nature Res., Trondheim, NOR), PLANTALECH MANEL-LA N., MCKINLEY R.
S. (Univ. British Columbia, BC, CAN), DAVIDSEN J. G. (Univ. Tromso, Tromso," NOR)
Fish Manag Ecol, 16, 2, 147-154, 2009.04
11.河川水中の溶存遊離アミノ酸の起源に関する環境生物学的研究
石沢清華 (北大 大学院), 山本雄三, 傳法隆, 上田宏 (北大 FSC)
日本水産学会大会講演要旨集 2009, 190, 春季, 2009.03.27
12.人工アミノ酸河川水を用いたヒメマス幼魚の母川記銘実験
山本雄三 (北大 大学院), 上田宏 (北大 フィールド科セ)
- 12 -
日本水産学会大会講演要旨集, 2008, 193, 春季, 2008.03.27
13.サケの感覚機能と母川回帰
上田宏 (北大 北方生物圏フィールド科セ)
バイオメカニズム学会誌, 31, 3, 123-129, 2007.08.01
14.河川水中のアミノ酸組成がサケ科魚類の母川選択行動に与える影響
山本雄三, 石沢清華 (北大 大学院), 上田宏 (北大 フィールド科セ)
日本水産学会大会講演要旨集, 2007, 46, 2007.03.28
15.河川水中のアミノ酸の起源に関する研究
石沢清華 (北大 大学院), 上田宏 (北大 フィールド科セ)
日本水産学会大会講演要旨集, 2007, 46, 2007.03.28
16.サケの母川回帰に関与する河川水中のアミノ酸組成の変動
木谷圭太, 仲佐歩, 中林(野間)真由香 (北大 水産), 工藤勲, 都木靖彰, 浦和寛 (北大
大学院), 柴田英昭, 上田宏 (北大 フィールド科学セ)
日本水産学会大会講演要旨集, 2006, 34, 2006.03.30
17.サケの生理学 産卵回遊の分子内分泌学的基盤
Molecular endocrine bases of spawning migration
小沼健 (北大 大学院理学研究科), 安東宏徳 (九大 大学院農学研究院), 浦野明央 (北大
北方生物圏フィールド科セ)
海洋と生物, 28, 1, 31-41, 2006.02.15
18.サケ科魚類の生活史戦略と個体群動態に関する研究
(平成 17 年度水産学進歩賞受賞
者)
Studies on life history strategy and population dynamics of salmonids
帰山雅秀 (北海道大学大学院水産科学研究院)
日本水産学会誌, 72, 4, 628-631, 2006
- 13 -
19.河川水中のアミノ酸組成がサケ科魚類の母川選択性に与える影響
山本雄三 (北大 大学院), 庄司隆行 (東海大 海洋), 上田宏 (北大 フィールド科セ)
日本水産学会大会講演要旨集, 2005, 57, 2005.04.01
20.中禅寺湖産ヒメマスにおける母川回帰行動のニューロエソロジー(神経行動学)的研究
Y
迷路中で母川を選択して遡上している個体からのきゅう球脳波活動の電波テレメトリー
佐藤真彦 (横浜市大 大学院), 北村章二, 生田和正, 東照雄 (養殖研 日光支所), 工藤雄
一
日本水産学会大会講演要旨集, 2003, 56, 2003.04.01
21.2002 年秋季に石狩川へ回帰したサケのそ上行動
伴真俊 (さけ・ます資源管理セ), 大島達也, 中村洋暁, 津村憲 (北海道東海大), 小沼健,
斉藤大助, 北橋隆史, 安東宏徳 (北大 理), 浦野明央 (北大 フィールド科セ)
日本水産学会北海道支部大会講演要旨集, 2002, 18, 2002.11.29
22.ヒメマスの母川選択・遡上行動 ふ化場からのフェロモンの誘引効果
佐藤真彦, 亀山省平 (横浜市大 大学院), 松島俊也 (名古屋大 大学院), 生田和正, 東照
雄, 北村章二 (養殖研 日光支所), 工藤雄一
日本水産学会大会講演要旨集, 2002, 65, 2002.03.30
23.サケはどのようにして母川に帰ってくるのか
遠洋航海には視覚を使い,母川はアミノ酸
の匂いで識別する
庄司隆行 (北大 大学院薬学研究科), 上田宏 (北大 北方生物圏フィールド科セ), 栗原堅
三 (青森大 大学院環境科学研究科)
化学と生物, 39, 11, 708-710, 2001.11.25
24.ヒメマスおよびサクラマスきゅう覚器の河川水に対する応答
西川大輔, 庄司隆行, 梨本勝昭 (北大 大学院), 栗原堅三 (青森大 大学院), 上田宏 (北
大 フィールド科セ)
日本水産学会大会講演要旨集, 2001, 201, 春季, 2001.04.01
- 14 -
25.中禅寺湖流入河川の降水等に伴う水質変化とサケ科魚類の産卵遡上
鈴木幸成, 生田和正, 鹿間俊夫, 中村英史, 北村章二 (養殖研), 大井謙一, 吉原喜好
(日本大 生物資源科学)
日本水産学会大会講演要旨集, 2001, 153, 春季, 2001.04.01
26.大阪湾におけるサツキマス(降海型アマゴ)の生態について
辻野耕実 (大阪府水試), 大道斉, 阪上雄康, 亀井誠 (大阪府 環境農林水産部), 内藤馨,
上原一彦 (大阪府淡水魚試)
大阪府立水産試験場研究報告, 11, 17-26, 2000.03.25
27.北海道北部河川に放流された異なる池産系サクラマスの沿岸回遊と河川回帰
Returns of domestic masu salmon released into Masuhoro River in Northern Hokkaido
藤原真, 大森始, 隼野寛史, 杉若圭一 (北海道水産ふ化場)
魚と水, 35, 53-62, 1998.07
28.水温と関連したアメマス(Salvelinus leucomaenis)の海水耐性
Seawater Tolerance of White-spotted Charr(Salvelinus leucomaenis) Related to Water
Temperature
TAKAMI T (Hokkaido Fish Hatchery, Hokkaido, JPN)
北海道立水産ふ化場研究報告, 52, 11-19, 1998.03
29.サケ科魚類の河川水識別-何が川のニオイを決定しているのか?
Discrimination of river water by Salmonidae - What is decided odor of the river ?
庄司隆行, 大神敏生, 栗原堅三 (北大 薬), 桂木能久 (花王 食品研), 佐藤幸治, 上田宏
(北大 水産 洞爺湖臨湖実験所), 山内こう平 (北大 水産)
日本味と匂学会誌, 3, 3, 644-647, 1996.12
30.サケ科魚類の降河回遊時および母川回帰時における河川水に対するきゅう覚応答
Olfactory response in the descending river migration and mother-river recurrence of
Salmonidae fishes to the river water
- 15 -
佐藤幸治, 上田宏, 山内こう平 (北大 水産), 庄司隆行, 栗原堅三 (北大 薬)
日本味と匂学会誌, 3, 3, 648-651, 1996.12
31.サケ科魚類の群泳行動の日周変化と環境因子
Diurnal Changes in Schooling Behavior in Salmonids and the Environmental Factors
AZUMA T (National Res. Inst. Aquaculture, Tochigi, JPN), IWATA M (Kitasato Univ.,
Iwate, JPN)
養殖研究所研究報告, Suppl 2, 37-41, 1996.03
32.母川回帰時のヒメマスにおけるきゅう覚による河川水識別
River water discrimination by olfactory sense of kokanee salmon in mother-river
migration
佐藤幸治, 上田宏, 山内こう平 (北大 水産), 庄司隆行, 栗原堅三 (北大 薬)
日本水産学会大会講演要旨集, 1996, 71, 春季, 1996.03
33.視覚およびきゅう覚の喪失が母川回帰中のシロザケの遊泳行動に与える影響とそれら感
覚器の母川探索における重要性
Obervations on the Effect of Visual and Olfactory Alabation on the Swimming Behavior
of Migrating Adult Chum Salmon, Oncorhynchus keta
YANO K (Fisheries Agency of Japan, Shimonoseki, JPN), NAKAMURA A (Tokai Univ.,
Shizuoka, JPN)
魚類学雑誌, 39, 1, 67-83, 1992.0
34.遡河性魚類の回遊における生物エネルギー論と行動との関係
Relationship between bioenergetics and behavior in anadromous fish migrations
BERNATCHEZ L, DODSON J J (Univ. Laval, Quebec, CAN)
Can J Fish Aquat Sci, 44, 2, 399-407, 1987.02
35.池産サクラマス標識魚の回帰
Recapture of marked fish of hatchery-reared masu salmon, Oncorhynchus masou, released
- 16 -
to the river in Hokkaido
坂本博幸, 河村博, 田中寿雄, 永田光博 (北海道水産ふ化場)
北海道立水産ふ化場研究報告, 41, 71-78, 1986.12
36.在来マス類の放流に関する研究 XVIII
降海性アマゴの母川回帰について
岡崎稔, 立川わたる, 本荘鉄夫 (岐阜県水試), 原田増造 (三重県内水面水試), 宇野将義
(愛知県水試)
岐阜県水産試験場研究報告, 28, 17-31, 1983.03
- 17 -
2. 温度反応等調査
1)目的
大型水槽(海生研実証試験場の屋外展示水槽)を用いた陸上実験によって,河川遡上期の
サケの温排水に対する反応行動が,河川水の有無によってどのように変化するかを確かめる。
なお,対象魚種は,本邦の代表的な遡河性魚類であるサケとした。
2)期間
試験時期については,海生研実証試験場近隣河川におけるサケの遡上時期に当たる 11 月中
旬~12 月中旬(平成 23 年 11 月 18 日~12 月 11 日の期間,第 4 表)とした。
第4表
試験工程
11月
作業内容
準備
1
月 火
○
海獲りサケ蓄養水槽準備
○
河川水ストック水槽準備
○
展示水槽清掃・ロガー等設置
○ ○
水 木 金
○ ○
供試魚輸送準備(タンク等)
○ ○
○
川獲りサケ入手・輸送
海獲りサケ入手・輸送
行動実験 供試魚測機装着・放流
行動観察・環境測定
2
土 日 月
火 水 木 金 土 日
月 火 水
木 金
○ ○ ○
○ ○ ○
○ ○ ○
○
○
○
○
○
○ ○ ○
○ ○
3
4
5
6
7
8
9
10 11
土 日 月
火 水 木
金 土 日
○
○
○
○ ○ ○
○ ○
○
○
○
○ ○ ○
○
○
○
○ ○ ○
○
○ ○ ○
○ ○ ○
○ ○
○
水温・塩分測定,流量調整
供試材料 河川水輸送
入手
14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30
実証試挨拶・打ち合わせ
展示水槽通水開始
12月
○
○
○
○
○
○
○
○ ○ ○
○
○ ○ ○
後片付け・撤収
○ ○ ○
○ ○
- 18 -
3)方法
(1)試験水槽と条件設定
実験には,海生研実証試験場の屋外展示水槽を用いた(第 2 図)
。この水槽は,長さ 8m,
幅 3m,深さ 0.7mで,水槽中央部の仕切り板によって区切られた各区画に,隣接する東京電
力株式会社柏崎刈羽原子力発電所から供給される温排水と自然海水をそれぞれ注水し,内部
に収容した魚類が,温排水と自然海水のいずれを選択するかを観察する用途で作製されたも
のである。
しかし,実際には,温排水と自然海水の密度差によって鉛直的な成層が起きるため,温排
水区と自然海水区それぞれの海水を明瞭に分離するのは困難である。そこで,今回の実験で
は,水槽内部にカーテンウォール(ビニール幕で作製,深さ 30cm)や水中堤(コンクリート
ブロック,高さ 25cm)を設置して,温排水区と自然海水区のそれぞれの海水の混合を防ぎ,
各区の水温差が明確になるよう工夫した(第 3 図)。
第2図
試験水槽の外観
- 19 -
カーテンウォール
(深さ30)
150
排水 口
注水 口
水中堤
(高さ25)
300 仕切り板
100
350
深さ70 800 第3図
長さの単位:cm
試験水槽のサイズと構造(上面図)
なお,今回の実験期間中は,温排水の供給源である柏崎刈羽原子力発電所の 1 号機が定期
検査中であり,温排水を使用できなかったので,代わりにボイラーで加熱した海水を自然海
水に混合して用いた(以下,この混合海水を温海水とする)
。また,試験期間の後半において,
気温の低下により水槽内の温海水の水温が低下し,自然海水との水温差が小さくなる傾向が
あったので,自然海水にチラーによって冷却した海水を混合して使用した(以下,自然海水
および自然海水と冷却した海水を混合した海水の双方を,温海水に対して冷海水とする)。
第 4,5 図のように,試験水槽の区画Ⅰに温海水を,区画Ⅱに冷海水を注水した場合と,さ
らに区画Ⅱの表層に淡水(河川水あるいは活性炭濾過して塩素を除去した水道水)を注水し
た場合の水槽内のサケの遊泳行動を観察・比較した。なお,注水した淡水は,第 5 図のよう
に,一旦注水口とカーテンウォールの間に深さ 30 ㎝の淡水溜まりを形成し,カーテンウォー
ル下部から漏れ出した淡水が,下流側の表層(水深約 10 ㎝まで)に若干塩分の低い(塩分
30 前後)の層を形成するように調節した。
温海水,冷海水の注水量は,80~100 /m(およそ 5~6t/h)とした。河川水については,
サケの放流事業を実施している谷根川から輸送したものを FRP 水槽(容量 1t)にストックし
て使用し,水道水で 2 倍に希釈して(同量の水道水と混合して)4 /m の流量で注水した。河
川水との比較のために水道水のみを給水する場合も,注水量は約 4 /m とした。
- 20 -
淡水
区画Ⅰ
(温海水区)
温海水
区画Ⅲ
(混合区)
区画Ⅱ
(冷海水区)
冷海水
第4図
試験水槽への注水方法(上面図)
区画Ⅲ
区画Ⅱ
①冷海水
区画Ⅰ
区画Ⅲ
②温海水
このカーテンウォールについて
は,上部にスリットを設け,淡
水が通過できるようにした。
③淡水
区画Ⅰ
区画Ⅲ
②温海水
第5図
試験水槽への注水方法(側面図)
- 21 -
(2)試験水槽内の水温・塩分の鉛直分布の測定
実験期間中の水槽内の水温については,
第 6 図に赤丸で示した定点の水深 5cm,10cm,
20cm,
40cm,60cm に水温ロガー(Onset Computer 社製 StowAway Tidbit)を垂下して,10 分間隔で
測定・記録した。また,実験期間中に適宜,各測点において水温・塩分計(WTW 社製ハンデ
ィー電導度計 315i)を用いて,水温・塩分の鉛直分布を測定した。
A1
A2
A3
A4
A5
A6
A7
A8
淡水
区画Ⅰ
(温海水区)
温海水
区画Ⅲ
(混合区)
区画Ⅱ
(冷海水区)
冷海水
B1
B2
B3
第6図
B4
B5
B6
B7
B8
水温・塩分の測点(上面図)
(3)供試魚の行動観察・測定
供試魚としたサケについては,谷根川において孵化・放流事業のために採捕されたもの 12
個体(以後,川獲りサケとする)
,および刺網で漁獲され荒浜漁港に水揚げされたもの 5 個体
(以後,海獲りサケとする)を入手して使用した(谷根川,荒浜漁港の位置については第 7
図参照)。川獲りサケについては,川に遡上して間もないと思われる,魚体に外傷が少なく,
婚姻色が比較的顕著でないものを選択して入手した。供試魚の平均尾叉長,平均体重は,そ
れぞれ 666mm,3,081g であった。
入手した供試魚については,河川水または海水を満たした発泡スチロール製のクーラーボ
ックスに収容してフェノキシエタノール(200ppm)で麻酔し,魚体測定を行った後,遊泳水
深・水温測定用のデータロガー(Star-Oddi 社製 DST milli)を背鰭後方に釣り糸(ナイロン
モノフィラメント 6 号)で結びつけた(第 8 図)
。その後,クーラーボックスに試験水槽の冷
海水を徐々に注入して十分に覚醒させた後に,試験水槽の冷海水区に放流した。
- 22 -
柏崎刈羽原
子力発電所
海生研
実証試験場
荒浜漁港
鯖石川
鵜川
前川
谷根川
2km
第7図
第5表
個体
番号
2
4
5
8
10
11
16
18
21
22
25
平均
入手
月日
11月18日
11月21日
11月21日
11月28日
11月27日
11月27日
12月3日
12月5日
12月6日
12月7日
12月8日
供試魚の入手場所
データ解析に用いた個体の魚体サイズ等
入手
場所
荒浜
谷根
谷根
谷根
荒浜
荒浜
谷根
谷根
谷根
谷根
谷根
尾叉長
(mm)
590
635
715
710
740
780
660
590
720
750
690
689
体重
(g)
1,810
2,830
4,510
4,230
4,480
4,950
2,950
2,440
4,060
3,610
2,980
3,532
- 23 -
性別
♂
♂
♂
♂
♂
♂
♂
♂
♂
♀
♀
放流
月日
11月18日
11月21日
11月21日
11月28日
11月28日
11月28日
12月3日
12月5日
12月6日
12月7日
12月8日
回収
月日
11月21日
11月24日
11月25日
11月29日
12月2日
11月30日
12月5日
12月10日
12月9日
12月10日
12月10日
第8図
データロガーを取り付けたサケ
遊泳水深・水温については,供試魚が死亡するまで 20 秒間隔で測定・記録し,供試魚が死
亡した後,データロガーを回収してデータをパソコンにダウンロードした。解析には主に遊
泳水温のデータを用い,温海水および冷海水の水温と比較することによって,いずれの区画
を遊泳していたかを推定した。なお,遊泳水温の解析は,試験水槽に収容してから 1 日以上
生存し,狂奔や平衡喪失等の異常行動が見られなかった 11 個体(第 5 表)について行った。
4)結果
(1)試験水槽内の水温・塩分の分布
第 9 図に,実験期間中の温海水の水温(測点 A2 の水深 65 ㎝で測定)
,冷海水の水温(測点
B2 の水深 65 ㎝で測定)および淡水溜まり表層の水温(測点 A2 の水深 5 ㎝で測定)の変化を
示した。温海水は,途中,ボイラーの故障や水槽内の水中堤の修理等に伴う注水停止によっ
て何回か低下しているが,これを除いた期間(第 9 図に示した期間①+②+③)では,16.6~
23.5℃の間で変化し,同期間の冷海水は 14.1~19.3℃の間で変化した。同期間の淡水溜まり
表層の水温は,淡水の注水の有無で大きく変化し,その範囲は,7.1~24.2℃であった。温海
水と冷海水の水温差は,第 9 図の期間①で 3.5~5.5℃の範囲(平均 4.7℃),期間②で 1.3~
4.5℃の範囲(平均 2.9℃),期間③で 1.9~3.9℃の範囲(平均 3.0℃)であった(第 6 表)。
- 24 -
水温(℃)
A2 (65)
24
22
20
18
16
14
12
10
8
11/18
期間①
11/21
B2 (65)
A2 (5)
期間②
11/24
11/27
期間③
11/30
12/3
12/6
12/9
12/12
日 時
第 9 図 実験期間中の温海水,冷海水および淡水溜まり表層の水温の変化
それぞれ,測点 A2 の水深 65 ㎝,測点 B2 の水深 65 ㎝,測点 A2 の水深 5 ㎝
で測定した。
第6表
温海水
最低
最高
平均
冷海水
最低
最高
平均
淡水溜まり 最低
最高
平均
温海水と 最低
冷海水の 最高
温度差
平均
実験期間中の試験水槽内の水温範囲
期間①
期間②
期間③
11/19 0:00 11/25 0:00 12/5 0:00
~
~
~
11/23 0:00 12/1 0:00 12/11 0:00
21.3
19.5
16.6
23.5
22.8
19.7
22.7
21.0
18.3
17.0
17.0
14.1
18.8
19.3
16.2
18.0
18.1
15.3
10.8
11.3
7.8
24.2
22.9
20.2
16.2
19.5
16.1
3.5
1.3
1.9
5.5
4.5
3.9
4.7
2.9
3.0
- 25 -
第 10 図に,11 月 22 日に測定した,淡水を注水していない状態の試験水槽内における水温
の鉛直分布の例を示した。温海水と冷海水は,注水口付近(測点 A1,B1)から水中堤付近(測
点 A5,B5)までの範囲ではほとんど混じりあわずに,4~5℃の温度差を示した。
0
0
カーテン
ウォール
-10
水 深 ( m )
0.2
-20
水温℃
-30
温海水区
0.4
混合区
23
-40
22
-50
0.6
21
水中堤
-60
20
-70
0
10
A1
20
30
A2 A3
40
A4
50
A5
60
70
A6 A7
80
A8
0
19
水 深( m )
0
18
-10
17
0.2
-20
16
15
-30
冷海水区
0.4
混合区
-40
14
13
-50
0.6
-60
-70
0
B1
10
B2 B3
第 10 図
20
30
B4
40
50
B5
60
B6 B7
70
80
B8
試験水槽内の水温の鉛直分布(11 月 22 日測定)
淡水を注水していない状態
第 11 図に,11 月 23 日に測定した,河川水を注水している状態の試験水槽内における水温
と塩分の鉛直分布の例を示した。河川水に満たされた淡水溜まり表層では,水温が 17℃台,
塩分が 4 程度にまで低下していた。また,カーテンウォール下部から漏れ出した河川水によ
り,カーテンウォール下流側の測点 A3 付近の表層の水温・塩分も低下していた。なお,図中
には表示されていないが,測点 A4 より下流側の表層の塩分も若干低下していた。
- 26 -
0
0
水 深 ( m )
淡水溜まり
-10
0.2
-20
水温℃
-30
温海水区
0.4
23
混合区
-40
22
-50
21
0.6
-60
20
-70
0
10
A1
A2 A3
20
30
A4
40
50
A5
60
A6 A7
70
80
A8
0
19
水 深( m )
0
18
-10
17
16
0.2
-20
15
-30
冷海水区
0.4
混合区
-40
14
13
-50
0.6
-60
-70
0
10
B1
B2 B3
20
30
B4
40
50
B5
60
B6 B7
70
80
B8
0
0
淡水溜まり
-10
水 深 ( m )
0.2
-20
塩分
-30
温海水区
混合区
0.4
-40
32
-50
28
0.6
-60
24
-70
0
A1
10
A2 A3
20
30
A4
40
50
A5
60
A6 A7
70
80
A8
20
水 深( m )
0
0
16
-10
12
0.2
8
-20
4
-30
冷海水区
混合区
0.4
0
-40
-50
0.6
-60
-70
0
B1
第 11 図
10
B2 B3
20
30
B4
40
50
B5
60
B6 B7
70
80
B8
試験水槽内の水温(上)と塩分(下)の鉛直分布(11 月 23 日測定)
淡水を注水している状態
- 27 -
(2)供試魚の行動
第 7 表に,各供試魚の実験期間中の水温条件を示した。11 月中は,冷海水の平均水温が 18℃
前後で,温海水の平均水温が 20℃以上の場合が多く,サケの生息条件としては,かなり高い
水温条件であった。12 月中は,冷却海水を使用したこともあり,全体的に水温が低下した。
第7表
供試魚
期間
各供試魚の実験実施期間中の水温
冷海水
温海水
淡水溜まり
温海水-冷海水
最低 最高 平均 最低 最高 平均 最低 最高 平均 最低 最高 平均
No.2♂海
11/18 ~ 11/20
17.4
18.8
18.0
21.6
23.8
22.7
12.4
24.2
16.0
4.1
5.5
4.7
No.4♂川
11/21 ~ 11/23
17.4
18.8
18.0
21.6
23.8
22.7
12.4
24.2
16.0
4.1
5.5
4.7
① 11/21 ~ 11/23
17.4
18.8
18.0
21.5
23.8
22.7
12.4
24.2
16.0
3.1
5.5
4.7
② 11/23 ~ 11/25
16.1
18.5
17.1
17.6
22.0
19.2
11.2
21.0
15.9
0.7
4.0
2.2
No.8♂川
11/28 ~ 11/29
17.9
19.3
18.3
19.5
22.1
20.6
11.7
21.4
16.4
1.5
3.4
2.3
No.10♂海
11/28 ~ 11/30
17.9
19.3
18.5
19.5
22.1
20.7
11.3
21.5
16.5
1.3
3.4
2.2
No.11♂海
11/28 ~ 11/30
17.9
19.3
18.4
19.5
22.1
20.7
11.7
21.4
16.3
1.5
3.4
2.3
No.16♂川
12/3 ~ 12/4
14.8
16.1
15.3
16.0
19.2
17.3
12.8
17.9
14.3
0.7
4.2
2.0
No.18♂川
12/6 ~ 12/8
14.7
16.1
15.4
16.8
19.1
18.2
12.0
19.4
16.9
1.9
3.7
2.8
No.21♂川
12/6 ~ 12/7
14.7
16.1
15.4
17.6
19.1
18.2
12.3
19.2
15.7
2.3
3.5
2.9
No.22♀川
12/7 ~ 12/9
14.5
16.1
15.3
16.8
19.4
18.2
10.7
19.6
16.2
2.1
3.9
2.8
No.25♀川
12/8 ~ 12/9
14.5
15.5
14.8
16.8
18.6
17.7
10.7
18.2
13.7
2.1
3.3
2.9
No.5♂川*
*供試魚No.5については,実験期間中に温海水の温度が大きく変化したので,その前後に期間を分けて示した。
第 12~15 図に,各供試魚の遊泳水温と温海水,冷海水,淡水溜まり表層の水温の比較を示
した。なお,グラフ背景の色分けについては,青が河川水(+水道水)の注水期間,緑が水
道水のみの注水期間,白が淡水を注水しなかった期間を示している。いずれの個体も遊泳水
温は冷海水の水温と同等である場合が多く,主に冷海水区を遊泳していたことが分かる。た
だし,個体によっては度々遊泳水温が温海水の水温と同等にまで上昇しており,頻繁に温海
水区に進入していた。また,遊泳水温が冷海水の水温よりも低くなっている場合があり,こ
れは温海水区を突破して淡水溜まりに進入したことを示している。
供試魚 No.4(第 12 図)は,河川水注水時に頻繁に 4℃以上昇温した温海水区に進入したが,
水道水のみの場合は温海水区への進入回数が減り,淡水の注水を停止した場合には温海水区
にはほとんど進入しなかった。これは,淡水(特に河川水)の誘引効果が明瞭に現れている
例と言える。その他の個体では,No.8,10,11(第 13 図),18,21(第 14 図)が,頻繁に温
海水区に出入りしていた。ただし,淡水の注水のタイミングと温海水区への進入頻度の変化
- 28 -
第 12 図
供試魚 No.2(上,海獲り),No.4(中,川獲り)
,No.5(下,川獲り)の
遊泳水温と温海水,冷海水,淡水溜まり表層の水温
- 29 -
第 13 図
供試魚 No.8(上,川獲り),No.10(中,海獲り)
,No.11(下,海獲り)の
遊泳水温と温海水,冷海水,淡水溜まり表層の水温
- 30 -
第 14 図
供試魚 No.16(上,川獲り),No.18(中,川獲り),No.21(下,川獲り)の
遊泳水温と温海水,冷海水,淡水溜まり表層の水温
- 31 -
第 15 図
供試魚 No.22(上,川獲り),No.25(下,川獲り)の遊泳水温と
温海水,冷海水,淡水溜まり表層の水温
- 32 -
の関係は不明瞭であった。
第 16~17 図に,淡水(河川水あるいは水道水)を注水した場合としない場合の供試魚の遊
泳水温の頻度分布の比較を示した。供試魚 No.4,10,5(No.5 については,試験期間の後半
のみ),8,18,21 について,淡水の流入時の方が若干高水温側に頻度が偏る傾向が見られ,
淡水による誘引効果を示していると考えられる。
以上のように,今回の実験では,個体差はあったが,温度差 2~4℃程度,厚さ 3.5m の温
海水区を通過して温海水注水口近傍(および淡水溜まり)にまで頻繁に進入する例がいくつ
か見られた。平成 19~21 年度に実施した野外生け簀実験によって,サケはほとんど温排水に
よる昇温層に進入しないことが確認されており,今回の実験結果は,淡水の誘引効果が高水
温への忌避に勝る場合があることを示していると考えられる。特に,サケは成熟が進むにつ
れて海水の塩分に対する耐性が失われていくことが知られていることから,成熟の進んだも
のほど淡水の誘引効果が強く表れると考えられる。
- 33 -
100 80 60 40 20 0 100 頻 80 度 60 40 % 20 0 100 80 60 40 20 0 N0.2♂ 海
河川 水
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23
水温 ( ℃)
水 道水 のみ
( )
( )
100 80 60 40 20 0 100 頻 80 度 60 40 % 20 0 100 80 60 40 20 0 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23
水温 ( ℃)
淡水 無し
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23
水温 ( ℃)
N0.5♂ 川
河川 水
100 80 60 40 20 0 100 頻 80 度 60 40 % 20 0 100 80 60 40 20 0 前半
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23
水温 ( ℃)
水 道水 のみ
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23
水温 ( ℃)
淡水 無し
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23
水温 ( ℃)
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23
水温 ( ℃)
淡水 無し
N0.5♂ 川
河川 水
後半
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23
水温 ( ℃)
水 道水 のみ
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23
水温 ( ℃)
淡水 無し
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23
水温 ( ℃)
100 80 60 40 20 0 N0.8♂ 川
河川 水
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23
水温 ( ℃)
水 道水 のみ
頻
度
( )
( )
100 80 60 40 20 0 100 頻 80 度 60 40 % 20 0 100 80 60 40 20 0 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23
水温 ( ℃)
水 道水 のみ
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23
水温 ( ℃)
( )
( )
100 80 60 40 20 0 100 頻 80 度 60 40 % 20 0 100 80 60 40 20 0 N0.4♂ 川
河川 水
N0.10♂海
河 川水
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23
水温 ( ℃)
水 道水 のみ
%
0 100 80 60 40 20 0 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23
水温 ( ℃)
淡水 無し
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23
水温 ( ℃)
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23
水温 ( ℃)
淡水 無し
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23
水温 ( ℃)
第 16 図 淡水(河川水,水道水)を注水した場合としない場合の
サケの遊泳水温の頻度分布の比較①
- 34 -
100 80 60 40 20 0 100 頻 80 度 60 40 % 20 0 100 80 60 40 20 0 N0.11♂海
河 川水
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23
水温 ( ℃)
水 道水 のみ
( )
( )
100 80 60 40 20 0 100 頻 80 度 60 40 % 20 0 100 80 60 40 20 0 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23
水温 ( ℃)
淡水 無し
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23
水温 ( ℃)
100 80 60 40 20 0 100 頻 80 度 60 40 % 20 0 100 80 60 40 20 0 N0.18♂川
河 川水
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23
水温 ( ℃)
水 道水 のみ
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23
水温 ( ℃)
淡水 無し
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23
水温 ( ℃)
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23
水温 ( ℃)
淡水 無し
N0.21♂ 川
河川 水
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23
水温 ( ℃)
水道 水のみ
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23
水温 ( ℃)
淡水 無し
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23
水温 ( ℃)
100 80 60 40 20 0 100 頻 80 度 60 40 % 20 0 100 80 60 40 20 0 N0.22♀川
河川 水
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23
水温 ( ℃)
水 道水の み
N0.25♀川
河川 水
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23
水温 ( ℃)
水 道水の み
( )
( )
100 80 60 40 20 0 100 頻 80 度 60 40 % 20 0 100 80 60 40 20 0 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23
水温 ( ℃)
水 道水 のみ
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23
水温 ( ℃)
( )
( )
100 80 60 40 20 0 100 頻 80 度 60 40 % 20 0 100 80 60 40 20 0 N0.16♂川
河 川水
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23
水温 ( ℃)
淡水無 し
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23
水温 ( ℃)
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23
水温 ( ℃)
淡水無 し
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23
水温 ( ℃)
第 17 図 淡水(河川水,水道水)を注水した場合としない場合の
サケの遊泳水温の頻度分布の比較②
- 35 -
- 36 -
Ⅱ.平成 19~23 年度調査結果のとりまとめ
本調査は,平成 19 年度に開始され(第 8 表),サケ,サクラマスを対象とした生け
簀実験(温度反応等調査)を中心として,両種の温排水に対する反応行動に関する知
見を収集して来た。ここでは,これまでの結果をとりまとめるとともに,河川に隣接
する発電所前面の温排水拡散域における河川溯上期のサケの行動を推察し,温排水の
影響について検討した。
第8表
項 目
試験施設保守・
管理
温度反応等調査
年度展開
年 度
H19
H20
H21
H22
H23
試験生け簀設置
保守・管理
試験生け簀撤去
生け簀実験
陸上実験
情報収集調査
とりまとめ
Ⅰ)情報収集調査
情報収集調査では,本調査の主要対象魚であるサケおよびサクラマスの生態,行動,
好適水温等に関する既往知見を収集,整理し,本調査の手法検討や結果の整理・考察
等に資することを目的とした。収集した知見に基づき,沿岸海域における河川遡上期
のサケ,サクラマスの生態・行動についてまとめた。
サケ属魚類は,北太平洋域(亜寒帯海域)を主要分布域とする冷水性の魚類である。
海生研が過去に実施した温度選好試験においても,本邦沿岸に生息する 31 魚種のうち,
サケ(平均体長 10cm の稚魚)は,マダラに次いで低い最終選好温度を示した(第 9 表)。
サケの漁獲水温,生息水温等に関する知見をまとめてみると(第 18 図),日本沿岸に
おける好適水温範囲は,概ね 2~20℃の範囲であり,特におよそ 4~15℃の範囲が最適
範囲のようである。
サクラマスの好適水温範囲は,およそ 6~16℃であり,サケに比べると狭い。これは,
サケの遡上範囲が,本州中部から北極海の河川にまで至るサケ属魚類中最も広い範囲
- 37 -
であるのに対して,サクラマスでは朝鮮半島南東部からカムチャッカ半島南西部まで
の狭い範囲であることに対応している(第 19 図)。
第9表
31 魚種の最終選好温度(土田,2002)
体長
最終選好温度
(㎝)
(℃)
7.7
7.6
ヘ
ダ
イ
ケ 10.3
13.5
イ
サ
ン
7.0
14.4
ブ
ユ
5.7
18.6
ボ
ラ
3.6
27.0
カタクチイワシ
9.8
18.8
ト
ラ
フ
グ
6.9
27.2
ワ
ハ
魚 種 名
マ
ダ
ラ
サ
ニ
シ
ア
体長
最終選好温度
(㎝)
(℃)
6.2
26.4
キ 10.3
26.7
リ 19.0
26.9
魚 種 名
マ
イ
ワ
シ 14.6
20.0
カ
ギ
6.0
27.6
ク
ロ
ソ
イ
5.2
20.5
ハマフエフキ
5.2
28.0
カ
サ
ゴ
6.0
20.7
ア
オ
ギ
ス
9.7
28.5
メ
バ
ル
5.0
21.2
ク
ロ
ダ
イ
5.6
29.8
14.0
22.6
11.5
28.8
ジ 10.2
シ
マ
ア
22.5
ギ ン ガ メ ア ジ 14.2
29.0
マ
ア
ジ 16.8
24.0
ホ
チ
ダ
イ 10.0
24.2
ス
マ
ダ
イ 11.7
25.3
シ
ギ
ズ
5.2
29.4
キ
5.3
29.7
11.4
30.0
ヌ
4.5
30.2
シ
ロ
ギ
ス 12.1
25.5
キ
イ
シ
ダ
イ
6.7
27.5
コ
キ
5.8
31.5
14.0
26.0
ミナミクロダイ
5.9
31.6
6.3
26.1
ク ロ メ ジ ナ
- 38 -
チ
ス
ト
ヒ
第 18 図
サケ,サクラマスの好適水温範囲
(水産資源保護協会,1980 にデータを追加)
第 19 図
サクラマスとシロザケ(サケ)の海洋分布(帰山,2002)
- 39 -
サケは,沖合いにおいては,昼間は頻繁に鉛直移動を繰り返すが,夜間はほとんど
表層に分布する。昼間の鉛直移動については,カイアシ類等の餌生物を捕食している
ものと考えられている。沿岸に近づくと,昼夜とも表層を遊泳しながら細かい鉛直移
動を繰り返し,母川を探索するのが基本的な行動であるが,表層水温が高い場合には
海底付近まで潜行し,時おり表層に浮上する行動を取る(第 20 図)。潜行による水温
低下と,深層に滞留する時間に有意な正の相関があり,鉛直的な水温勾配が発達する
時期ほど潜行時間が長くなる。逆に,表層水温が低下し,鉛直的な海水混合が進んで
潜行による水温変化が乏しくなると,主に表層を遊泳するようになる。一般に,表層
の水温が 14℃以下になると表層を遊泳するようである。
また,海面付近において,水温,塩分の低い河川水を含む水塊に遭遇した場合,鉛
直移動を止めて水塊にとどまる傾向があり,河川水の影響を受けるごく沿岸の海域に
移動すると,海面付近を遊泳するようになる。なお,成熟の進んだ個体では母川探索
行動が強く現れるため,未成熟個体に比べて,高水温期においても表層を遊泳する傾
向がある。
発電所前面の温排水拡散域におけるサケの行動追跡例では,表層の 1℃以上の昇温層
には進入せず,温排水の下を潜って遊泳する行動が見られている(第 21 図)。
第 20 図
岩手県沿岸を回帰回遊中のサケの遊泳深度と経験水温(田中,2009)
- 40 -
第 21 図
発電所前面海域におけるサケ親魚の鉛直移動の典型例(海生研,1981)
A サケの移動経路の水温鉛直断面と遊泳水深
B 定点海洋観測による水温鉛直断面とサケの遊泳層
サケが北洋から沿岸までの回帰に用いる感覚機能については,太陽コンパス,磁気
コンパス,海流の走流性等を用いていると推察されているが,未だ不明な点が多い。
一方,沿岸海域における母川のへの回帰回遊については,降河回遊時に稚魚が河川中
の匂いを記憶し,遡河回遊時に親魚がその匂いを想起して母川を選択する嗅覚仮説が
広く受け入れられている。母川識別のための匂い物質としては,河川水中の溶存遊離
アミノ酸組成が重要であること考えられており,アミノ酸の生成には,河底の基質の
付着微生物が関与しているようである。
このように,沿岸域におけるサケは,鉛直移動によって表層の低水温,低塩分の河
川水を探索し,最終的には匂い物質によって母川を識別し,母川へ遡上すると考えら
れる。
サクラマスの沿岸海域における行動を詳細に調査した例は少ないが,青森県におい
て,定置網で捕獲した未成魚および河川内で捕獲した成魚を沿岸海域に放流し,その
後の行動を追跡した例がある。未成魚では,水深 150m 以上の深い海域では表層付近で
- 41 -
鉛直移動を繰り返しながら移動するが,150m 以浅の海域では主に海底付近を遊泳し,
ときおり浮上する行動が見られている(第 22 図)。遊泳層の水温は 9~11℃であり,水
深 170~230m 付近に存在する水温躍層(水深 230m付近での水温は約 5℃)より深層に
は進入しないことが報告されている。また,成魚は,主に海面付近を遊泳しながら(遊
泳水温は 19.0~20.5℃)岸に方向に移動し(第 23 図),数日後に再び捕獲された河川
に遡上している。
第 22 図
サクラマス未成魚(3 個体)の遊泳水深の経時変化(伊藤,1997)
- 42 -
第 23 図
サクラマス成魚(2 個体)の経時的鉛直移動と水温の関係(伊藤,1997)
なお,湖沼型のサクラマスの行動追跡調査によると,サクラマスは沿岸沿いに遊泳
して視覚と嗅覚に依存して母川回帰するようである。サケ科魚類の中で原始的な種で
あり分布域も狭いサクラマスは,ヒメマスなどの進化した種に見られるコンパス機能
があまり発達していないと考えられている。
Ⅱ)温度反応等調査
1. 目的
温度反応等調査では,野外生け簀実験等により,温排水による海水温度の上昇に対
する遡河性魚類の反応行動や忌避温度等の知見を収集し,遡河性魚類の行動に対する
温排水の影響の予測・評価に資することを目的とした。
2. 方法
1)温度反応等調査の特徴
本調査では,大型生け簀(反応行動試験生け簀)を用いた野外実験を実施した(平
成 23 年度に実施した陸上実験については,前章参照)。この実験は,発電所前面の表
層に温排水による昇温が発生している海域(温排水拡散域内)に,大型の生け簀を設
置してその内部に供試魚(遡河性魚類)を収容した場合,表層の昇温層に対してどの
ような反応行動(選好 or 忌避)をとるかを,温排水による昇温が発生していない対照
- 43 -
区(温排水拡散域外)における行動との比較を通して確認しようというものである(第
24 図)。
この生け簀実験の利点は,室内実験では取り扱いが困難な大型の個体を供試魚とし
て使えること,実際の海域で魚類の行動を追跡する調査(バイオテレメトリー,バイ
オロギング)とは異なり,供試魚を常に温排水に接触し得る範囲に留めることで,昇
温に対する反応行動のデータが多く得られること,定期的に生け簀内あるいは近傍に
おける環境条件を測定することによって,水温以外の環境条件の影響についても把握
できること等が挙げられる。
第 24 図
大型生け簀を用いた野外実験のイメージ
2)調査実施海域の特性
本調査を実施する(反応行動試験生け簀を設置する)海域の選定に際しては,以下
の条件を考慮した。
・温排水拡散域内については,表層に温排水による昇温層が形成されていること
・温排水拡散域外については,温排水による昇温がないこと
・反応行動試験生け簀を設置するための十分な水深があるとともに,静穏で,波
浪による試験生け簀の破損,流失の危険性がないこと
・試験生け簀設置が船舶の航行を阻害せず,衝突等の事故の危険性がないこと
・周辺海域に調査対象とするサケマス類が生息していること
・水質が良好で,サケマス類の行動に悪影響を与えないこと
これらを考慮し,温排水拡散域内として福井県敦賀市浦底湾内の日本原子力発電株
- 44 -
式会社敦賀発電所1号機放水口から約 300m付近(福井県水産試験場桟橋近傍)を,対
照域の温排水拡散域外として美浜町丹生湾内を,それぞれ反応行動試験生け簀(以下,
試験生け簀とする。)設置場所とした(第 25 図)。なお,丹生湾も関西電力株式会社美
浜原子力発電所が隣接しているが,同発電所は丹生湾内から冷却水を取水し,湾外に
温排水を放出しているため,湾内では温排水による昇温は観測されない。また,敦賀
市,美浜町ともに,秋季にはサケが,春季にはサクラマスが定置網等によって漁獲さ
れている(第 26 図)。
第 25 図
反応行動試験生け簀設置場所
4,000
漁連敦賀支所
漁連早瀬支所
3,500
(
3,000
漁
獲 2,500
量 2,000
)
㎏ 1,500
1,000
500
0
1
第 26 図
2
3
4
5
6 7
月
8
9
10 11 12
敦賀市と美浜町におけるサケマス類の漁獲量(平成 10 年)
- 45 -
温排水拡散域内として選定した浦底湾は,長さ約 1.8km(東側の明神崎先端までの距
離),湾口部の幅約 0.7km,最深部の水深約 23mの細長く,比較的開放的な湾である。
湾奥部に敦賀発電所が位置し,1,2 号機が,それぞれ約 20
/s,80
/s で冷却水を
取水するとともに,1号機が温排水を表層放流している。温排水は,湾中央部付近ま
では,主に西岸に沿って流れるが(第 27 図),その後は風向き等によって流路が変化
する傾向がある。一方,下層では,湾外へと流出する表層水を補うように,湾外から
の海水が流入し,湾奥部へと向かう微弱な流れが発生している(第 28 図)。
反応行動試験生け簀の設置場所は,温排水放水口からおよそ 300m離れた福井県水産
試験場の占有海域内で,放出された温排水の主な流路に位置した。試験生け簀設置場
所の表層では,温排水の放出による 3~5℃の昇温,10~20cm/s 程度の流れが観測され
る場合が多かった。
第 27 図 浦底湾における流向・流速(左)と水温(右)の水平分布の観測例
(海洋生物環境研究所,2007)
測定年月日:平成 15 年 6 月 5 日,測定層:海面下 0.3m
図中の×は反応行動試験生け簀の設置位置
● と数字は鉛直分布の調査測点
- 46 -
第 28 図 浦底湾における流向・流速と水温の鉛直断面分布の観測例
(海洋生物環境研究所,2007)測定年月日:平成 15 年 6 月 5 日
一方,温排水拡散域外として選定した丹生湾は,湾口から湾奥までの距離約 1km,湾
口部の幅約 0.4km,最深部の水深約 13mであり,浦底湾に比べて浅く,やや閉鎖的な
湾である。反応行動試験生け簀の設置場所は,丹生湾のほぼ最深部にあたる。
関西電力株式会社の美浜原子力発電所が隣接しているが,湾内から冷却水を取水し,
湾外に温排水を放出しているので,湾内において温排水による昇温は観測されず,試
験生け簀設置場所の表層水温は,浦底湾に比べて 2~6℃低い場合が多かった。発電所
の取水によって表層の海水交換は比較的良好だが,浦底湾ほどの流動は発生せず,試
験生け簀設置場所の表層における流速は数 cm/s 程度であった。
また,表層に比べて海面下約 10m以深の下層水は停滞し易く,高水温期には酸素飽
和度の低い層が形成される(第 29 図)。ただし,反応行動試験生け簀の底枠の深さは 8
mであり,海面からこの水深までの範囲における酸素飽和度については,通常,供試
魚の行動に影響を与えるような値は観測されなかった。また,小規模河川がいくつか
流入しているので,降水量が多いと表層の塩分濃度が 30 程度まで低下する場合があっ
た。
以上のように,浦底湾と丹生湾の環境を比較した場合,水温,流況が大きく異なり,
酸素飽和度,塩分も若干異なる場合があった。ただし,流れは,生け簀網で減勢され
て,生け簀内部では大きな差はなくなること,酸素飽和度の差は,基本的に生け簀よ
り深い層で見られること,塩分の差と供試魚の行動には明瞭な関係が見られなかった
- 47 -
こと等から,供試魚の行動に主要な影響を与えるのは水温の差と考えられる。
丹生湾
(%)
0.5
水
115
5
深
(m)
95
10
4/17
4/18
4/19
4/20
4/21
4/22
4/23
4/24
4/25
4/26
4/27
75
月 日
第 29 図
平成 20 年 4 月の丹生湾における酸素飽和度の鉛直分布
3) 反応行動試験生け簀の特徴
試験生け簀については,供試魚の温度行動を阻害しないよう,可能な限り大型であ
るとともに,生け簀網に沿った遊泳行動が予測されるので,方形よりも円形のものが
望ましいと考え,以下の仕様とした。
生け簀枠は,直径 12mの強化スチール製枠を使用した円筒形生け簀である(第 30,
31 図)。生け簀網は,目合い 4.5cmのポリエチレン製であり,底網までの深さは 9mと
した。ただし,対照区の温排水拡散域外においては,海底に漁礁が存在するとの指摘
を受けたため,やや浅い 8mとした。
- 48 -
円筒形生け簀(直径12m、深さ8m)
1.網地サイズ(10m×3m×12枚・10m×2m×1枚・無結節 6節)
4.生け簀設置上面図
8~9m
2m
3m
4.75m
3m
4.75m
3m
3m
4.75m
3m
3m
4.75m
3m
4.75m
3m
3m
4.75m
3m
4.75m
3m
3m
4.75m
38m
2.生け簀枠(PC-12型:直径12m)
12m 13.2m
5.生け簀設置横面図
~1m
3.生け簀仕立て横面図
1m以内
8~9m
2m
8~9m
12m
2m
12m
第 30 図
第 31 図
反応行動試験生け簀の仕様
反応行動試験生け簀の外観(浦底湾)
- 49 -
1m以上
4)調査対象魚種および調査時期
本邦において水産業上重要な遡河性魚類であるサケとサクラマスを調査対象種とし,
両種の河川溯上時期の成魚を供試魚とした。サケについては,調査実施海域周辺の福
井県敦賀市,美浜町等の定置網で採捕されたもの(若狭産個体)の他,岩手県宮古市
で採捕されたもの(宮古産個体)も使用した(第 10 表)。
サクラマスについては,サケと同様に調査実施海域周辺の定置網で採捕されたもの
の他,新潟県長岡市寺泊で採捕されたもの(以下,天然個体とする)も使用した。ま
た,サクラマスは漁獲量が少なく,入手困難な場合が想定されたので,財団法人山形
県水産振興協会内水面水産センター(山形県飽海郡遊佐町)から入手したスモルト放
流用サクラマス種苗(淡水で約 1 年間飼育したもの)を,海生研の中央研究所で約1
年間海水飼育したもの(以後,養成個体とする)も使用した。
調査時期については,サケ,サクラマスそれぞれの溯上時期とし,水温の変化によ
る温排水に対する反応行動の変化を見るため,調査海域におけるそれぞれの遡上時期
(漁獲される時期)の初期,中期,後期とした。ただし,両種ともに後期には調査海
域周辺での漁獲量が減少し,供試魚の入手が困難であったため,サケについては宮古
産個体のみ,サクラマスについては養成個体のみを使用した。
第 10 表
魚種
サケ
年度 産地等
H19 若狭産
宮古産
H20 若狭産
宮古産
調査実施時期
遡上期中期*
遡上期初期
H21 宮古産 遡上期後期
サクラマス
H20 天然
養成
H21 天然
養成
供試魚と調査実施時期
個体数
平均尾叉長 平均体重
浦底湾 丹生湾
(mm)
(g)
11/22~12/4
12
8
713
3,607
12/11~12/17
14
9
753
4,503
10/27~11/9
1/14~1/19
遡上期中期
4/17~4/27
遡上期初期
2/3~2/12
6
0
673
3,167
11
15
700
3,690
14
10
773
6,366
10
3
536
1,957
17
17
297
285
5
3
455
1,379
8
7
347
475
333
262
H22 養成
遡上期後期
5/24~6/7
6
4
*H19年度は,若狭産個体と宮古産個体の調査時期が異なるので分けて示した。
- 50 -
5)温排水に対する反応行動の測定方法
浦底湾,丹生湾のそれぞれの試験生け簀に供試魚を収容し,試験生け簀内の水温の
鉛直分布と供試魚の遊泳水深・水温を比較することによって,表層に温排水による昇
温層が存在する場合の供試魚の反応行動を確認した。
試験生け簀内の水温の鉛直分については,試験生け簀上部の鉄枠の 2 箇所(生け簀
周辺の流れの上流側と下流側)から複数の自記式水温計(Onset Computer 社製 StowAway
Tidbit)をロープに取り付けたサーミスタチェーンを垂下して測定・記録した(第 32
図)。測定層は,海面下 0.5~5mまでは 0.5m間隔,海面下 5~11mまでは 1m間隔と
して 10 分間隔で連続測定し,海面から生け簀底網までの範囲の 2 箇所の水温測定値の
平均値を生け簀内の水温と見なした。
第 32 図
試験生け簀への測機等の取り付け位置
供試魚の遊泳水深・水温については,主にデータロガー(Star-Oddi 社製 DST milli)
を背鰭後方に釣り糸(ナイロンモノフィラメント 6 号)で結びつけて測定した(第 33
図)。遊泳水深・水温の測定間隔は基本的に 1 分としたが,温排水による昇温層に対す
る反応行動の詳細およびその昼夜による変化を見るため,平成 21 年度のサケ調査およ
び平成 21,22 年度のサクラマス調査においては,1~4 秒の短時間間隔での測定も行っ
た。
- 51 -
第 33 図
データロガーを装着した供試魚(上:サケ,下:サクラマス)
供試魚の遊泳水温および環境水温(試験生け簀内の水温)の頻度分布のデータを用
いて,下式により温度階級毎の選択指数(Jacobs,1974
プラスなら選好,マイナス
なら忌避)を求めた。
Dt=(rt-pt)/(rt+pt-2rt・pt)
-1≦ Dt ≦1
rt :遊泳水温の温度階級 t における頻度
( 0≦ rt ≦1 )
pt :環境水温の温度階級 t における頻度
( 0≦ pt ≦1 )
さらに,第 34 図のように,選択指数が 0 となる水温を求め,選択指数がマイナスと
なる範囲を忌避温度とした。
低温側
忌避温度
高温側
忌避温度
選択範囲
第 34 図
忌避温度の推定方法
- 52 -
3. 結果
1)サケの温度反応行動
第 35~38 図に,各調査時期の試験生け簀内における水温の鉛直分布とサケの遊泳水
深を示した。調査時期が変わっても,基本的な行動はほぼ同じであり,丹生湾では海
面付近から試験生け簀の底網までの間を広く遊泳しているのに対して,浦底湾では表
層の温排水によって水温が上昇している層(以下,昇温層とする)にはほとんど進入
せず,その下を広く遊泳する傾向があった。
なお,第 39 図に示したように,溯上期後期の低水温条件下においては,夜間に表層
を,昼間に下層を遊泳する日周期的な鉛直移動を示す個体が見られたので,以後の遊
泳水温の解析については昼夜別に行った。
第 35 図
遡上期初期における試験生け簀内の水温の鉛直分布とサケの遊泳水深
- 53 -
第 36 図
遡上期中期の前半(若狭産個体使用時)における試験生け簀内の水温の
鉛直分布とサケの遊泳水深
第 37 図
遡上期中期の後半(宮古産個体使用時)における試験生け簀内の水温の
鉛直分布とサケの遊泳水深
- 54 -
第 38 図
遡上期後期における試験生け簀内の水温の鉛直分布とサケの遊泳水深
第 39 図
試験生け簀内におけるサケの日周期的な鉛直移動の例
- 55 -
第 40,41 図に,遡上期後期(1 月)において,夜間および昼間に 1 秒間隔で測定し
たサケの遊泳水深の結果の例を示した。温排水による昇温の無い丹生湾では,海面付
近を主に遊泳しながら,時折深く潜る行動が一般的であった。一方,浦底湾では遊泳
パターンに個体差が見られたが,海面付近の温排水による昇温層よりも下層を主に遊
泳する傾向は共通していた。ただし,浦底湾でも時折表層に達するような大きな動き
をする場合があった。また,夜間には,昼間よりもやや表層を遊泳する頻度が増える
傾向が見られた。
第 40 図
昼夜別に 1 秒間隔で測定したサケの遊泳水深・水温
(丹生湾の試験生け簀内での行動)
- 56 -
第 41 図
昼夜別に 1 秒間隔で測定したサケの遊泳水深・水温
(浦底湾の試験生け簀内での行動)
- 57 -
第 42 図に,各調査時期における浦底湾の試験生け簀内の水温(環境水温)と遊泳水
温の頻度分布の比較を示した。環境水温の頻度分布は,いずれの時期においても,高
温側に昇温層内の水温に相当するなだらかなピークと,低温側に昇温層より深い領域
の水温に相当する高いピークを示す二峰型であるのに対して,遊泳水温の頻度分布は,
低温側にのみピークが見られる単峰型であった。
第 43 図に,環境水温と遊泳水温の頻度分布のデータに基づいて計算した水温に対す
る選択指数を示した。選択指数は,いずれの時期においても高温側で急激に値が小さ
くなる傾向が見られた。
- 58 -
第 42 図
浦底湾における環境水温(生け簀内の水温)とサケの遊泳水温の
頻度分布の比較(いずれも平均値±標準偏差を示した。)
- 59 -
1
1
H20(初期)
H19(中期前半)
0.5
選択指数
選択指数
0.5
夜間
0
昼間
-0.5
夜間
0
昼間
-0.5
-1
-1
10
12
14
16
18 20 22
水温(℃)
24
26
28
10
1
12
14
16
18 20 22
水温(℃)
26
28
1
H21(後期)
H19(中期後半)
0.5
0.5
夜間
0
選択指数
選択指数
24
昼間
-0.5
夜間
0
昼間
-0.5
-1
-1
10
12
14
16
18 20 22
水温(℃)
第 43 図
24
26
28
10
12
14
16
18 20 22
水温(℃)
24
26
28
浦底湾におけるサケの水温に対する選択指数
(平均値±標準偏差を示した。)
選択指数の計算結果から求めた忌避温度を第11表に示した。さらに,各時期のサケ
の遊泳水温の最頻値(最も多く測定された値)を基準遊泳水温とし,この基準遊泳水
温と忌避温度(高温側)の関係を第44図に示した。基準遊泳水温と忌避温度および環
境水温(試験生け簀内の水温)の上限・下限値の間にはほぼ直線的な正の相関が見ら
れた。忌避温度は,環境水温の下限値に近い値を取ったが,環境水温の傾きに対して
忌避温度の傾きが小さいため,低水温期には環境水温の下限値と忌避温度の差が若干
大きくなった。
サケは,温排水による昇温の無い層を主に遊泳するため,基準遊泳水温はサケにと
っての環境水温と考えられる。第44図の関係を用いて,発電所前面海域における水温
分布が分かっていれば,温排水による影響範囲(忌避温度の範囲)を推定することが
できる。
- 60 -
第 11 表
サケの忌避温度の推定結果
夜間
年度
時期
環境水温
最低
最高
昼間
忌避温度
高温側
低温側
環境水温
最低
忌避温度
高温側
低温側
最高
H20
初期
21.1
26.9
-
22.4 <
21.1
27.1
-
22.2 <
H19
中期前半
中期後半
18.0
16.2
23.6
22.9
-
18.9 <
17.8 <
18.0
16.3
23.8
23.0
-
18.7 <
17.5 <
H21
後期
11.6
18.1
-
14.1 <
10.7
18.9
-
13.5 <
単位:℃
環境水温、忌避温度(℃)
環境水温下限
選択水温下限
30
28
26
24
22
20
18
16
14
12
10
夜間
11
12
環境水温上限
高温側忌避温度
y = 0.9122x + 2.5909
2
R = 0.9958
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
22
23
基準遊泳水温(℃)
環境水温、忌避温度(℃)
環境水温下限
選択水温下限
30
28
26
24
22
20
18
16
14
12
10
昼間
11
12
環境水温上限
高温側忌避温度
y = 0.9533x + 1.6259
R2 = 0.9982
13
14
15
16
17
18
19
20
21
基準遊泳水温(℃)
第 44 図
サケの基準遊泳水温と忌避温度の関係
図中の数式は,基準遊泳水温に対する忌避温度の回帰式
- 61 -
2)サクラマスの温度反応行動
第 45~47 図に,各調査時期の試験生け簀内における水温の鉛直分布とサクラマス養
成個体の遊泳水深を示した。温排水による昇温の無い丹生湾では,いずれの時期も主
に海面付近を遊泳したが,浦底湾での行動は時期によって変化し,溯上期初期の低水
温条件下では,夜間には表層の昇温層内を,昼間には昇温層よりも下層を遊泳する顕
著な日周鉛直移動を示した。同様の行動は,溯上期中期の前半においても見られたが,
中期の後半では昇温層の直下を主に遊泳するようになり,昇温層の拡大・縮小に合わ
せて遊泳層が変化するようになった。溯上期後期においては,ほぼ全ての個体が昇温
層の下限をトレースするようパターンであり,後半において急激に表層水温が上昇し
た丹生湾においても同様の行動が見られた。
なお,第 48 図に示したように,溯上期中期においては,初めは日周鉛直移動のパタ
ーンを示したが,次第に昇温層の下限をトレースするパターンに変わる個体が何例か
見られた。
第 45 図
遡上期初期における試験生け簀内の水温の鉛直分布と
サクラマス養成個体の遊泳水深
- 62 -
第 46 図
遡上期中期における試験生け簀内の水温の鉛直分布と
サクラマス養成個体の遊泳水深
第 47 図
遡上期後期における試験生け簀内の水温の鉛直分布と
サクラマス養成個体の遊泳水深
- 63 -
第 48 図
途中で行動パターンが変わる例(養成個体,溯上期中期)
第 49~50 図に,溯上期初期,中期の試験生け簀内における水温の鉛直分布とサクラ
マス天然個体の遊泳水深を示した。温排水による昇温の無い丹生湾では,溯上期初期
には海面付近を,溯上期中期には表層~中層を広く遊泳した。浦底湾では,いずれの
時期も昇温層の直下を遊泳し,昇温層の下限をトレースするパターンが多かった。
第 51,52 図に,遡上期初期(2 月)において,夜間および昼間に 1 秒間隔で測定し
たサクラマスの遊泳水深の結果の例を示した。養成個体については,丹生湾では,昼
夜ともに表層を遊泳していたが,浦底湾では昼間は下層を,夜間は表層を遊泳してい
たのが分かる。一方,天然個体は,丹生湾では昼夜ともに海面付近を,浦底湾では水
深 3~4m 付近の,昇温層の下限付近に当たる水深を遊泳していた。
以上のように,サクラマスでは,養成個体と天然個体の間で行動に差が見られたが,
高水温条件化では,両者とも同様に昇温層の直下を遊泳する場合が多かった。このよ
うな差は,馴致水温(飼育水温,生息水温)の差に起因するものと思われ,養成個体
は比較的高水温条件下(平均飼育水温約 16℃)で飼育していたため,低水温条件下で
はやや高水温を選好する性質が現れたと推察される。従って,昇温層内外におよぶ日
周鉛直移動は,高水温条件下で飼育された養成個体特有の遊泳行動であり,サクラマ
スの基本的な温排水に対する反応行動は,昇温層直下を遊泳するパターンであると判
断し,以後の遊泳水温の解析は,昇温層直下を遊泳するパターンを示した個体につい
て行った。
- 64 -
第 49 図
遡上期初期における試験生け簀内の水温の鉛直分布と
サクラマス天然個体の遊泳水深
第 50 図
遡上期中期における試験生け簀内の水温の鉛直分布と
サクラマス天然個体の遊泳水深
- 65 -
第 51 図
昼夜別に 1 秒間隔で測定したサクラマス養成個体の遊泳水深・水温
(上:丹生湾,下:浦底湾)
- 66 -
第 52 図
昼夜別に 1 秒間隔で測定したサクラマス天然個体の遊泳水深・水温
(上:丹生湾,下:浦底湾)
- 67 -
第 53 図に,各調査時期における浦底湾の試験生け簀内の水温(環境水温)と遊泳水
温の頻度分布の比較を示した。環境水温については,高温側のなだらかなピークと低
温側の高いピークが見られる二峰型であり,サケの場合と同様であった。一方,遊泳
水温の頻度分布については,低温側に高いピークが見られる点はサケと同様であった
が,サケに比べて高温側の頻度が若干高い傾向が見られた。
第 54 図に,環境水温と遊泳水温の頻度分布のデータに基づいて計算した水温に対す
る選択指数を示した。選択指数のグラフは,サケとは異なり単峯型を示す場合が多く,
中期や後期では,低温側でもマイナスとなる場合があった。
選択指数の計算結果から求めた忌避温度を第 12 表に示した。さらに,基準遊泳水温
と忌避温度の関係を第 55 図に示した。基準遊泳水温と忌避温度および環境水温(試験
生け簀内の水温)の上限・下限値の間にはほぼ直線的な正の相関が見られた。サケに
比べると,サクラマスの場合は,高温側忌避温度が環境水温の下限値よりもかなり高
い値を取った。これは,サクラマスの場合,サケよりも昇温層に近い,昇温層の直下
を主に遊泳することを反映した結果であろう。サクラマスについても,第 55 図の関係
を用いて,温排水による影響範囲(忌避温度範囲)を推定することができると考えら
れる。
- 68 -
第 53 図 浦底湾における環境水温(生け簀内の水温)とサクラマスの
遊泳水温の頻度分布(いずれも平均値±標準偏差を示した。)
- 69 -
1
1
H21(初期)
夜間
0.5
昼間
選択指数
選択指数
0.5
0
-0.5
-1
昼間
0
-0.5
-1
10
1
12
14
16
18
水温(℃)
20
22
24
10
12
14
16
18
水温(℃)
20
22
24
16
18
水温(℃)
20
22
24
1
H22(中期・天然)
H22(後期)
夜間
0.5
0.5
昼間
選択指数
選択指数
H22(中期・養成)
夜間
0
-0.5
-1
夜間
0
昼間
-0.5
-1
10
12
14
第 54 図
16
18
水温(℃)
20
22
10
24
12
14
浦底湾におけるサクラマスの水温に対する選択指数
(平均値±標準偏差を示した。)
第 12 表
サクラマスの忌避温度の推定結果
昼間
夜間
年度
時期
環境水温
最低
最高
H20
初期
10.8
17.3
H19
中期養成
中期天然
12.8
12.3
22.1
22.1
H21
後期
15.3
21.9
忌避温度
低温側
高温側
-
環境水温
最低
最高
忌避温度
低温側
高温側
13.4 <
10.8
17.6
< 14.2
< 13.6
17.5 <
15.9 <
12.8
12.3
21.9
21.9
< 14.0
< 13.7
17.0 <
16.2 <
< 15.8
18.3 <
15.3
23.5
< 16.1
18.7 <
単位:℃
- 70 -
-
12.7 <
環境水温、忌避温度(℃)
環境水温下限
低温側忌避温度
25
23
21
環境水温上限
高温側忌避温度
夜間
y = 0.9806x + 2.5589
2
R = 0.9083
19
17
15
13
11
9
10
11
12
13
14
15
16
17
基準遊泳水温(℃)
環境水温下限
低温側忌避温度
環境水温、忌避温度(℃)
25
昼間
23
21
環境水温上限
高温側忌避温度
y = 1.2279x - 1.0207
2
R = 0.981
19
17
15
13
11
9
10
11
12
13
14
15
16
17
基準遊泳水温(℃)
第 55 図
サクラマスの基準遊泳水温と忌避温度の関係
図中の数式は,基準遊泳水温に対する忌避温度の回帰式
Ⅲ)発電所周辺海域における行動の予測
実際の発電所のデータを参考にして発電所周辺海域の温排水,河川水の拡散を模式
化し,その海域でのサケの行動を推測した。定格電気出力 200 万 kw 程度の原子力発電
所を想定し,温排水放水口から 2km 離れた位置に平均流量 0.6
/s程度の中規模河川
が位置するものとした。放水方式については,表層放流と水深約 9mからの水中放流の
二つのパターンを想定した。サケの基準遊泳水温としては,本調査の遡上期中期(11
- 71 -
~12 月)に実施した野外生け簀実験の際の値を用い,これが取水温度と等しいと仮定
して忌避温度を求めた。
第 56 図に,表層放流の場合の発電所周辺海域における忌避温度範囲および河川水の
水平・鉛直断面分布の模式図を示した。
第 56 図
表層放流方式の発電所周辺海域におけるサケの忌避温度範囲の
水平分布(上,海面下 0.5m 層)および鉛直断面分布(下)の模式化
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遡上期盛期のサケは,ごく沿岸に近い浅所を移動することが知られているので,第
56 図の上図のように,温排水放水口のごく近傍を昼間に通過すると仮定した。この移
動経路断面でのサケの行動の模式図を第 57 図に示した。忌避温度範囲は表層に広がっ
ており,忌避温度範囲と海底の間には十分な隙間があるため,サケは昇温層を潜って
鉛直移動を繰り返しながら移動しているうちに河川水に遭遇し,これを辿って河口へ
と到達するものと推察される。
第 57 図
表層放流方式の発電所前面を通過するサケの遊泳行動の模式化
次に水中放流の場合を検討した。第 58 図に,水中放流の場合の発電所周辺海域にお
ける忌避温度範囲および河川水の水平・鉛直断面分布の模式図を示した。サケの移動
経路としては,第 58 図の上図に示したように,①と②の 2 パターンを想定した。
これらの移動経路断面でのサケの行動の模式図を第59図に示した。まず,放水口直
前を通る移動経路①の場合,放水口直前において海面から海底付近までが忌避温度範
囲に覆われ,進路が阻まれてしまう(ここでは,岸壁の海底付近に開口した放水口か
ら温排水を放流する場合を想定しており,海底から放水管を立ち上げたり,ケーソン
マウンド上から放水したりする方式の場合には忌避温度範囲は海底に接しないと考え
られる)。一方,放水口直前を沖合に250mほど迂回する移動経路②の場合には,忌避
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温度範囲と海底の間に隙間ができるので,そこを潜って移動し,再び表層を遊泳する
ことによって河川水と遭遇することができると考えられる。
第 58 図
水中放流方式の発電所周辺海域におけるサケの忌避温度範囲の
水平分布(上,海面下 0.5m 層)および鉛直断面分布(下)の模式化
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第 59 図
水中放流方式の発電所前面を通過するサケの遊泳行動の模式化
(上:移動経路①,下:移動経路②)
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サクラマスについても同様に検討することができるが,試験生け簀実験の際に観察
されたように,サクラマスは昇温層の直下を主に遊泳する性質があるので,表層に広
がる忌避温度範囲の直下を移動することが予想される。
Ⅳ)サケ・サクラマスの行動に対する温排水の影響の評価
沿岸域における遡上期のサケ,サクラマスは,鉛直移動を繰り返しながら海域の表
層に存在する河川水を探索し,母川水に遭遇すると,それを辿って母川へと到達する
と考えられる。表層放流の場合,忌避温度範囲は表層に限られるので,その下層にお
いて鉛直移動を繰り返しながら,やがて河口から拡散する河川水の層に到達し,これ
を辿って河口に到達するものと推察される。また,水中放流の場合は,放水口のごく
近傍においては,忌避温度範囲が海面から海底までを全て覆ってしまうケースも想定
されるが,水平方向の影響範囲が狭いので,放水口近傍の忌避温度範囲を沖側に迂回
して移動することができると推察される。
河川への移動に支障を来すケースとしては,温排水による忌避温度範囲が表層の河
川水の下面全体を覆ってしまい,河川水の探索を阻害する場合が考えられる。ただし,
温排水が河川水の下に大きく潜り込むような状況は,河川水と温排水の塩分の差が大
きい場合に発生する(水鳥・片野,1988)ので,放水口と河口がごく近接している場
合に限られると予想される。また,そのような立地条件でも,河口方面への温排水の
拡散を防ぐ防波堤や導流堤が設置されている場合には,河川水の下への温排水の潜り
込みは軽減されると考えられる。さらに,本調査の生け簀実験においてサケ,サクラ
マスともに時折表層の昇温層を突破して海面に達する行動が見られたこと,および河
川水の誘引効果を確かめた陸上実験において,温海水の層を突破する行動がしばしば
見られたことから,成熟が進んで河川への遡上の欲求が高まった個体は,多少の高水
温層ならば突破して河川水の探索を行うことが可能と思われる。
以上のことから,サケ,サクラマスは,温排水による昇温を忌避はするが,その影
響は母川への遡上を阻むほどではないと考えられる。
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参考文献
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年度東北ブロック増養殖研究連絡会議報告書, 12-21.
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演会論文集, 239-244.
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:サクラマス,サケ.水産生物適水温図,10-11.
田中秀二(2009):母川を目指すサケの旅を遡る.「動物たちの不思議に迫る バイオロ
ギング」(日本バイオロギング研究会編),pp. 92-95,京都通信社, 京都.
土田修二(2002)
:沿岸性魚類の温度選好に関する実験的研究. 海生研報, No.4, 11-16.
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報告書(温排水拡散域における魚類行動実証試験). 186pp.
財団法人海洋生物環境研究所(2007):平成 18 年度大規模発電所取放水影響調査(大
型魚類温排水影響基礎調査)最終とりまとめ(平成 14~18 年度).63pp.
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