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コンバイン内部における穀粒の流れ計測(第 1 報)

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コンバイン内部における穀粒の流れ計測(第 1 報)
コンバイン内部における穀粒の流れ計測(第 1 報)
京都大学農学研究科
飯田訓久・姚勇・梅田幹雄
三菱農機株式会社
野波和好
Keywords:精密農業、自脱コンバイン、収量モニター、流量センサ、時間遅れ
Ⅰ
緒言
日本の水田稲作において圃場内で収量がどのようにばらつくかを計測する自脱コンバイ
ン用収量モニターの開発研究を行っている。開発している穀粒流量センサは,グレーンタ
ンク内に設置され流量を計測する方式である。しかし,穀粒の流れはコンバイン内部で刈取,
脱穀,選別,搬送の過程でスムージングされ,グレーンタンクに排出される。したがって,
グレーンタンクへの流量から刈取位置での収量を推定するには,コンバイン内部での穀粒
流れについて把握する必要がある。本報告では,搬送部での時間遅れと選別部での穀粒流
量の分配率を考案したインパクト式流量センサを用いて計測した。
Ⅱ
実験装置及び方法
1.実験装置
実験には四条刈自脱コンバイン(三菱農機 VY48G)を供試した。コンバインの作業能率は
13∼22 分/10a(カタログより)である。グレーンタンクと2番還元される穀粒の流量を
実時間で計測するため,流量センサとしてモミが当たる板を取り付けたロードセル(共和
電業製 LUB-10KB)を用いた。1 番口流量センサは 50N で 5V、2 番口流量センサは 100N で
5V の出力になるようにストレーンアンプ(共和電業製 WGA-100B-10)で調整した。これ
らの信号は,アンプ内蔵のローパス・フィルタ 500Hz を通して出力した。各流量センサは
1番口と2番口から排出される穀粒が当たるように取り付けられた。
2.穀粒の流れ
図1にコンバイン内部の穀粒の流れを示す。刈り取った穀稈は前処理部から脱穀部に入
って脱穀される。脱穀された穀粒は選別部のグレーンパンからチャフシーブまで揺動搬送
される。選別処理の良い穀粒は 1 番横ラセンに落下し,グレーンタンクへ運ばれる(1番
搬送系)。ここで 1 番口流量センサは揚穀ラセンにより排出される穀粒の流量を計測する。
一方,選別処理の不十分な穀粒は再処理するために2番横ラセンに落下し,2番口まで運
ばれ(2番搬送系),グレーンパン上へ排出され再処理される。ここで2番口流量センサは
2 番口から排出される穀粒の流量を計
測する。選別部のチャフシーブ開度は
コンバインの選別制御装置によって,
こぎ胴
Q0 揺動搬送
Qc
前処理搬送
Q’0 ,T2
Tm
グレーンパン
チャフシーブ
1番口流量センサ
グレーンパン上の穀粒量に応じて 11
T 4 , Q2
段階に調整される。このチャフシーブ
開度に応じて1番と2番の搬送系へ分
配される穀粒の量が変わる。
1番搬送
刈取
2番搬送
2番口流量センサ
図1
T 1 , Q1
グレーンタンク
コンバインにおける穀粒の流れ
3.実験方法
今回の実験では,冷蔵庫で貯蔵して
いた稲のモミ(品種:ミナミヒカリ,
表1
コンベヤの供給特性
水分 14.4∼15.5%wb)を用いて,1番
口と2番口流量センサの検定と1番と
2番搬送系の特性を測定した。このた
め,コンバインからグレーンパンと選
別装置を取り外し,直接1番と2番横
ラセンにモミを一定量で供給した。唐
箕ファン等の風の影響をなくすため,
吹き出し口は板を当てて蓋をした。
供給量を一定にするため,モミをベルトコンベ
シリアルポート
コンピュータ
ヤ上に高さが均一になるように並べて一定速度で
高さ 30cm から投入した。このコンベヤは,計測用
コンピュータによって ON-OFF 制御される。供給量
リレー回路
を変えるには,モミの総質量とコンベヤの速度を
モミ
変えた。コンベヤの供給特性は表1で示す。この
ベルトコンベヤ
コンテナ
表は,図2に示すように電子秤上においたコンテ
ナにモミを一定速度で投入したときの時間と質量
電子はかり
の変化を計測した結果である。コンピュータで計
測開始とともに,リレー回路でコンベヤを作動さ
せ,同時に電子秤からの質量の変化を RS232C 接続
図2
コンベヤの供給特性測定
により計測を行った。時間の測定は,コンピュー
タの内部クロックで行った。コンベヤとコンテナ
底の高さは 30cm とした。これは,コンベヤとラセ
ンまでの高さと同じにするためである。この結果,
コンピュータ
AD変換
1番口
リレー回路
ベルトコンベヤによるモミ供給量は設定値に対し
流量センサ
て一定であることが確認できた。また,最初にモ
ベルトコンベヤ
ミがコンベヤからコンテナに達するまで時間は,
蓋
供給量が増加するにつれて減少する傾向を示した。
これは,コンベヤ上に並べたモミが崩れ落ちると
きの安息角による影響と考えられる。
後述する搬送系の時間遅れは,それぞれ計測し
た値から,このベルトコンベヤから横ラセンに達
唐箕
図3
1番横ラセン
1番搬送系の実験方法
するまでの時間を差し引いて求めた。
1番口流量センサの検定は,モミ流量を 0.1∼1.6kg/s の範囲で直接1番横ラセンに供給
し,このときの流量センサの出力を 1kHz で AD 変換して計測した(図3)。2番口流量セン
サも同様の方法で検定した。さらに各搬送系の時間遅れもモミ供給量に対して求めた。
選別部での穀粒流量の分配率は,取り外したグレーンパンと選別装置を再びコンバイン
に組み付けて,モミをコンベヤによりフィードチェーン側から直接グレーンパン上に供給
したときの1番口と2番口に排出されるモミの比率から求めた。チャフシーブ開度は,運
転席のダイヤルで 3∼9 の間で順に設定してモミ供給量 0.1∼1.6kg/s の範囲で分配率を求
めた。
Ⅲ
結果と考察
1.1番口流量センサの検定と 1 番搬送系の時間遅れ
AD 変換した流量センサ出力には,高周波ノイズが含まれるため,カットオフ周波数 25Hz
のローパス・ディジタル・フィルタで処理を行った。カットオフ周波数は,揚穀コンベヤ
の回転数 792rpm(13.2Hz)を考慮して 25Hz とした。出力値はフィルタ処理後,単位時間
積算してセンサ出力電圧とした。図4に1番口流量センサ出力とモミ供給量の関係を示す。
図に示すようモミ供給量に対してセンサ出力は高い相関を示した。
次に,1番搬送系の時間遅れを図5に示す。時間遅れは,モミ流量が増加するにつれて
減少する傾向を示したが,ほぼ一定であった。時間遅れの平均値は 3.0 秒であった。
2
4
3.5
1.5
3
時間遅れ[s]
モミ供給量[kg]
y = 5.9033x
2
R = 0.997
1
0.5
2.5
2
1.5
1
0.5
0
0
0.1
0.2
0.3
0
流量センサ出力値[V]
図4
0
0.5
1
モミ供給量[kg/s]
1.5
2
センサ出力と供給量の関係
(1番口流量センサ)
図5
1番搬送系の時間遅れ
2.2番口流量センサの検定と2番搬送系の時間遅れ
2番口流量センサの検定も1番口流量センサと同様の方法で行った。ただし,2番還元
コンベヤの回転数が 1411rpm(=23.5Hz)であるため,ローパス・フィルタのカットオフ周
波数を 35Hz とした。図6に2番口流量センサ出力とモミ供給量の関係を示す。2番口流量
センサは,0.3kg/s 以下の低流量のときには検出することができなかった。これは,1番
口と比較して2番口の位置が斜めに傾斜しているため,低流量のときはコンベヤの回転に
よりモミが投げ出される前に口から滑り落ちるためだと考えられる。しかし,0.4∼1.6kg/s
の範囲では,図に示すようモミ供給量に対してセンサ出力は高い相関を示した。
2 番搬送系の時間遅れを図7に示す。モミ流量が 0.4kg/s のときのみ時間遅れは大きい
が,1番搬送系と同様にように,モミ流量が増加するにつれて減少する傾向をであった。
しかしながら,その変動は小さくほぼ一定とみなすと,時間遅れの平均値は 2.2 秒であっ
た。この結果,1番搬送系と2番搬送系を比較すると,搬送による時間遅れは搬送経路が
短く回転数の高い2番搬送が小さかった。
3.チャフシーブ開度による分配率
図8に穀粒流量の分配率を示す。横軸は,運転席横の開度調整ダイヤルの目盛で縦軸が
供給量に対する1番搬送系へ流れたモミの比率を表している。目盛が 3 から 6 の間では,
分配率は線形な関係を示したが,目盛6を超えると 75%以上のモミが1番搬送系へ流れる
ことが確認できた。
Ⅳ
結言
本研究では,コンバイン内部での穀粒の流れを計測するため,第一段階として1番搬送
系と2番搬送系の時間遅れと,選別部での穀粒流量の分配率について計測を行った。この
計測では,ロードセルによる穀粒流量センサを用いて行った。以下に本研究の主な内容を
まとめる。
1)流量センサは,1番口では 0.1∼1.6kg/s の範囲で,2番口では 0.4∼1.6kg/s の範囲
でモミの流量に対して線形な関係を示した。
2)1 番搬送系の時間遅れは 3.0 秒,2 番番搬送系では 2.2 秒であった。
3)チャフシーブ開度 3∼6 の範囲では,穀粒流量の分配率は線形な関係を示し,モミ供給
量による分配率の変化も小さかった。また,開度6を越えると1番口には 75%以上の
モミが流れることが明らかになった。
4
y = 9.0211x
R2 = 0.9947
3.5
1.5
3
時間遅れ[s]
モミ供給量[kg/s]
2
1
2.5
2
1.5
0.5
1
0.5
0
0
0.05
0.1
0.15
0
0.2
0
流量センサ出力[V]
センサ出力と供給量の関係
図7
1
モミ供給量[kg/s]
1
y = -0.0199x2 + 0.3594x - 0.7168
R2 = 0.9969
0.8
0.6
0.4
0.2
0
0
2
4
6
8
目 盛
図8
1.5
2番搬送系の時間遅れ
(2番口流量センサ)
比 率
図6
0.5
選別部での穀粒流量の分配率
10
2
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