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ぶらり“おかやま”vol.4 - 中国経済産業局

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ぶらり“おかやま”vol.4 - 中国経済産業局
地域パートナーHOT 情報
〔岡山県〕
ぶらり“おかやま”vol.4
~銅山とベンガラで繁栄した街~
長尾
博行(資源エネルギー環境課 課長補佐)
[email protected]
TEL 082-224-5713
ふきや
今回の“ぶらり”は岡山県の中西部、標高約 500 メートルを超える山中にある集落「吹屋」
(岡山県高梁市成羽町)を訪ねてみました。
ここ吹屋は江戸時代から明治にかけて銅山の町として栄えましたが、江戸時代後期以降
ベンガラの生産が盛んになったことから、ベンガラ窯元の商家をはじめ、旅籠や飲食店な
どが集まる街が形成され繁栄を極めました。現在、この一帯は国選定の重要伝統的建造物
群保存地区に指定されており、赤銅色の塩田瓦iとベンガラ色の外観で統一された約 300 メ
ートルの町並みは当時の面影がそのままの形で残されており趣があります。
吹屋の町並み
郵便局舎も景観に溶け込んでいます
銅山の捨石であった磁硫鉄鉱を焼くと、たまたまベンガラの原料であるローハができる
ことがわかり、これがきっかけとなりこの地でベンガラ生産が盛んになったと言われてい
ます。その生産は、江戸時代中期の 1707 年に始まり、全国初とか全国唯一の生産地とも
紹介されています。その後、明治、大正、昭和にかけて生産は続き、最盛期には 4 カ所の
工場がありましたが、銅山が閉山した 2 年後(昭和 49 年)にこの地のベンガラ製造も幕
を閉じることになります。
旬レポ中国地域
2014 年 9 月号
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ベンガラは、酸化鉄を主成分とする赤色の無機顔料で、その
語源はインドのベンガル地方より伝来したといわれています。
焼く温度(酸化)によってその色合いが微妙に変化するため漆
器や陶磁器、ペイント用、製瓦用などの着色材として使われて
いるほか、木痩せや劣化を防ぎまた防虫効果から建材に、更に
は繊維の日焼けや劣化を防ぐといった役割から染色用としても使用
ベンガラ
されるなど、その用途は多岐にわたっています。
当時の製造工程は「ベンガラ館」と呼ばれる当時の工場を復元した施設で見学すること
ができます。また、銅山跡は「吉岡銅山笹畝坑道ii」と呼ばれる観光用の坑道が約 300 メ
ートルにわたって再整備されており、当時の坑内の様子を知ることが可能です。これらの
施設はいずれも当省が認定(平成 19 年)した近代化産業遺産群iiiの一つになっています。
笹畝坑道の入り口
坑道内部
話題を吹屋の中心地区の方に戻しますが、この吹屋の街も高齢化によって、いまでは 3
分の 1 ほどの民家が空き家になっているようです。空き家は観光用として保存・公開され
たり、あるいは都会からデザイナーが入居
したり、古民家や宿としての再生計画など
もあるようですが、いずれも維持管理がな
かなか大変なようです。
一昨年(平成 24 年)3 月に閉校となった吹
屋小学校は、明治 33 年から 42 年にかけて
建築され、閉校当時に現役校舎としては日
本最古の木造建築校舎だったそうです。今
後こういった文化的価値の高い施設を活用
一昨年閉校した吹屋小学校
して集客を図ることも考えられています。
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ベンガラの製造や販売で富を築いた邸宅が
いくつか公開されています。
そのひとつ旧片山邸は、所有者が当時の成羽
町に寄贈し、その後保存修理を経て、数年前か
ら公開されています。片山家は、1759 年に創
業し、約 200 年にわたりベンガラの製造、販売
を手掛けた老舗で、国の重要文化財にも指定さ
れています。片山邸のすぐ近くに同じくベンガ
ラで富を築いた長尾邸(筆者とは無関係)があ
旧片山邸内の弁柄蔵
りました。ここは現在喫茶店になっています。
長尾邸は喫茶を経営
各建物の歴史が紹介されている
吹屋の街から車で 5 分ほど走ると、銅山とローハ製造で巨大な富を築き、お城を彷彿さ
せるような高い石垣の上にそびえる広兼邸を訪ねることができます。
広兼邸は、映画「八つ墓村」で 2 度ロケの舞台(多治見家)になったことから、映画フ
ァンを含め多くの観光客が訪れるようです。敷地面積は 2500 ㎡で、敷地内には母屋、離
れ屋敷、長屋、土蔵 3 棟、楼門などがあります。また、庭園内には「水琴窟iv」と呼ばれ
る装飾が施されているなど、築いた富の一端を垣間見ることができます。
広兼邸
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広兼邸の母屋
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さて、今回ご紹介した吹屋巡りには自動車の利用が便利ですが、もし公共交通機関を利
用される場合、バスの便数が少ないので予めよく計画をたて観光されることをお薦めしま
す。最寄り駅はJR伯備線の備中高梁駅です。下車後は定期バスをご利用ください。平日
は 3 本の往復のみですが、9 月から 11 月の土日祝祭日は観光用のボンネットバスが増便さ
れ、このバスは吹屋地区ほかベンガラ館、笹畝坑道、広兼邸など今回ご紹介した観光スポ
ットを周遊して運行されることになっています。
特に、今月 9 月 20 日と 21 日には、手作りの灯籠が沿道に並べられ、その沿道をベンガ
ラ染めの浴衣を着た踊り子が踊り歩く「吹屋ベンガラ灯り」という祭りが開催されます。
当日は閉校した吹屋小学校の校舎内部も特別公開され、夜はライトアップされることにな
っています。現地には公共の宿泊施設もあります。この秋、訪問されてみては如何でしょ
うか。
■高梁市観光ガイド
(一社)高梁市観光協会HP
http://takahasikanko.or.jp/modules/spot/index.php?cat_id=5
■吹屋ベンガラ灯り
同HP
http://takahasikanko.or.jp/modules/event/index.php?content_id=130
本文中の各施設の紹介には、「成羽町観光協会吹屋支部」が発行するしおりを参考にし、一部で
引用させて頂きました。また、写真は筆者が撮影したものです。
i
石州の瓦職人が地元塩田で焼いていた瓦をいう。地元で産出した良質な粘土や釉薬が使用されて
いたが、現在は残っていない。
ii
吉岡鉱山の支山。吉岡鉱山は 807 年に発見されたと伝えられる。元禄年間に泉屋(住友)、享保
~天保年間に福岡屋(大塚)、明治~昭和年間に三菱(岩崎)が経営し、この 3 期が特に繁栄し
ていた。特に、明治以降は三菱金属(株)の経営となり、水力発電所の設置やトロッコ専用道路の
敷設、削岩機等を使用して精錬等の作業の機械化に成功したほか、日本初の洋式溶鉱炉を造るな
ど、20 世紀初頭には我が国屈指の銅山であった。
iii
「近代化産業遺産群33(経済産業省)」
http://www.meti.go.jp/press/20071130005/isangun.pdf
iv
日本庭園の特殊技法の一つと言われ、江戸時代文化文政の頃(1810 年頃)に庭師により考案された
ものと伝えられているが、詳しい起源は不詳である。地中に小洞窟を造り、その中に水滴を落と
して発生する滴水音を洞窟の壁面に反響させて、その反響音を竹筒などを通して地上で聞きなが
ら風情を楽しむもの。
経済産業省 中国経済産業局 広報誌
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2014 年 9 月号
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