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共通プラットフォーム 多彩なアプリケーションの礎
1 連載 第 2 部 第1 回 SDP SOA IMS サービス・ストラタム 共通プラットフォームを構築 多彩なアプリケーションの礎 NGNの上位層であるサービス・ストラタムは,実際のサービスでは「サービ ス・プラットフォーム」という形で構築される。一つの基盤上に様々なアプリ ケーションを実現するためにAPIを整備し,それらをオープンにしていく環 境が不可欠になる。 そこでここではそれぞれ「ネットワー ク・インフラ」 , 「サービス・プラットフ ォーム」とし,以降の連載では,この 表記で統一する。 今回の主題はサービス・ストラタム 三栖 利之 は,高速・大容量なネットワーク・イ を形作るサービス・プラットフォーム NEC ネットワークソフトウェア事業本部 ネットワークサービスシステム事業部 事業部長代理 ンフラを提供する部分とアプリケーシ である。 ョンのためのサービス・プラットフォ 電話交換網など従来のネットワー ームを分離していることだ。NGN の ク・アーキテクチャーでは,ネットワ 逸見 直也 定義ではそれぞれ「トランスポート・ ークとそれを制御するネットワーク・ ストラタム」 , 「サービス・ストラタム」 サービス(認証や課金など)は分離さ と呼んでいるが,これらはあくまでも れていなかった。そのため,固定網, 階層の名前であり,そのアーキテクチ 移動網などネットワークごとにサービ NGN(次世代ネットワーク)は新た ャーによって実現される機能や製品, スが構築されていた。そこで,NGN なサービスを生み出す基盤として期待 システム,サービスなどを表さない。 アーキテクチャーでは,ネットワーク NEC マーケティング本部 グループマネージャ されている。☞ITU-Tが定義するNGN の特徴は六つ(図1) 。中でも重要なの 図1 NGN の六つの特徴とそれによって生み出されるもの 「ネットワーク・インフラ」と「サービ ス・プラットフォーム」が分離独立する。 ITU-Tが規定するNGNの特徴 みす・としゆき 1984年,NEC入社。局用交換機,インテリジェ ント・ネットワーク,VoIPに関連するソフトウエ アの開発に従事。現在,SDP関連ソフトウェア 製品の開発と事業推進を担当。 へんみ・なおや 1985年,NEC入社。超高速長距離光通信技術 の研究開発,製品企画に従事。1997年工学博士。 2003年から現部門。IT・NW 統合ソリューショ ン企画,および NGN関連事業全社推進を担当。 78 NIKKEI COMMUNICATIONS 2007.1.15 ❶ 広帯域 ❷ QoS制御可能 高速・大容量な 「ネットワーク・インフラ」を提供 ❸ パケット・ベースのネットワーク ❹ サービス機能と転送技術が分離し, 連携してサービスを提供 ❺ アクセスを制限しない(オープン・インターフェース化) ❻ 汎用的なモビリティとユビキタス・サービスの提供 「サービス・プラットフォーム」と それを利用した 「アプリケーション」を提供 図 2 NGN のアーキテクチャー 従来はサービスごとに別々のネットワークを作っており,新しいサービスの追加には多大な労力や資源を必要とした。 NGNのアーキテクチャーでは共通のネットワーク・インフラを使うことにより,新しいサービスを容易に構築できる。 NGNのアーキテクチャー 従来ネットワークのアーキテクチャー アプリケーション オープン・インターフェース ネットワーク・ サービスA …… ネットワークA ネットワーク・ サービス ネットワーク・ サービスB サービス A サービス B ネットワークB ネットワーク 図 3 NGNによって広がる多様なサービス 様々な企業・個人・社会向けサービスがサービス・ プラットフォームを核として創造され,発展していく。 文教 (生徒所在確認) (生涯教育) 通信/メディア (映像配信) (双方向番組連動) 自治体 (万人への 防災情報提供) 流通 (FeliCa携帯) (ケータイ・クレジット) 個人 (ホーム・セキュリティ) (家電制御) RFID, モバイルなど (ユビキタス基盤) 映像など (情報活用/管理基盤) 官庁 (電子申請) (閲覧) ネットワーク・サービス (3者通話, メッセージ配信など) 交通 (大規模ITS) 企業間連携を支えるWebサービスなど (サービス・アプリケーション基盤) サービス・プラットフォーム 製造 (リアルタイムSCM) 医療 (ホームドクター) (遠隔診断) 金融 (ネット・バンキング) ITS:高度道路交通システム SCM:supply chain management からネットワーク・サービスを分離し は,市場に対して具体的にどのような て共通化し,ネットワーク・インフラ 変化をもたらすのだろうか。 の構造に影響されることなく容易に新 NGN は,いつでもどこでも安心・ しいサービスを構築できるようにして 安全につながり,広帯域の通信サービ いる(図 2) 。ネットワーク・インフラ スを高コスト・パフォーマンスで利用 に依存せず,上位のアプリケーション できるネットワーク環境として期待さ に対して柔軟にサービスを提供できる れている。例えば,個人のホーム・サ 共通的なサービス基盤が「サービス・ ーバーに対して,地球の裏側からモバ プラットフォーム」なのである。 イル端末でアクセスし,オンデマンド … サービス・ プラット フォーム ネットワーク・ インフラ ネットワークに 依存しないため 新たなサービスを 容易に構築可能 本文中☞の付いた用語を解説 ITU-T=International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector。ITU(国際電気通信 連合)の電気通信標準化部門。通信関連 の標準化を定める国際機関。 QoS=quality of service。通信の品質を 制御することや技術を指す。 3GPP/3GPP2=third generation partnership project。第3世代移動通信シス テム「IMT 2000」の仕様作成に携わるプ ロ ジ ェ クト・ グ ル ー プ。3 G P PはW CDMAの,3GPP2はCDMA2000の仕様 を標準化する。 IMS=IP multimedia subsystem。3GPP で最初に標準化された次世代ネットワー クの中核技術。IP網上で音声やデータ通 信などのサービスを制御するためのプラ ットフォーム。 で高精細なストリーミング映像を見る 個人・企業・社会へのインパクト など,様々な利用ニーズが増えてくる。 では,このアーキテクチャーの変化 このような消費者のライフスタイル やサービス・プラットフォームの登場 の変化に合わせて,企業や行政も,IT NIKKEI COMMUNICATIONS 2007.1.15 79