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ロサンゼルス港

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ロサンゼルス港
 コンテナターミナルは、カーゴ用高速鉄道「アラメダ・コリダー」に直結。す
べての貨車はダブルスタック(二段積み)編成に設計されており、高い輸送能
力を保持している。
ロサンゼルス港では、船舶から、トラック、鉄道にスムーズに移行できるイン
ターモーダル方式を採用し、効率的なコンテナ輸送を実現している。現在、貿
易相手国の第1位は中国だ。
ソルト・レーク・シティ
サンフランシスコ
ロサンゼルス港
(アメリカ合衆国)
ロサンゼルス港
アメリカ合衆国
太 平 洋
メキシコ
アメリカの西海岸にあるロサンゼルス港は、サンペドロ湾に面している。
背後に1600万人の消費人口を抱える南カリフォルニア州の旅客・流通基地だ。
2004年のコンテナ貨物取扱量は740万TEUとなり、全米最大のコンテナ港の地位を築いている。
を取り入れているのが同港の特色だ。
段積み)対応の車両編成となっている
コンテナ貨物取扱量は、2004年が740
ため、一両編成であっても数百個のコ
ロサンゼルス市中心部から約30km
万TEUで、国内では第1位、世界で
ンテナを運ぶことが可能で、高い輸送
南に立地するロサンゼルス港は、1907
は第8位となっている。
効率を実現している。
年に開港した。20世紀前半には、木材
コンテナ取扱品目のトップ3は、輸
ターミナルには4基のオンドック操
の荷卸し、缶詰工場、造船などに携わ
入は家具、衣料品、電子製品、輸出は
車場が設けられているほか、インター
る港湾労働者、出航待ちのために滞在
古紙、合成樹脂、織物の順となってい
モーダル輸送網がうまく接続できるよ
する乗組員が行き交う港として、周辺
る。また、貿易相手国は第1位の中国
うに、中央交通管制(CTC)システ
にはにぎやかな商業地帯が形成されて
(500億ドル)に次いで日本(219億ド
ムを導入。すべての列車の出発と方向
いた。現在は国内最大級のコンテナ港
ル)
、台湾、タイ、韓国とアジア諸国
転換を管理し、最高レベルの効率と安
に姿を変えているが、様々な職業の人
がトップ5を占めている。
全性に配慮している。
たちが働く港であることは今も同じだ。
コンテナターミナルは、カーゴ用高
ロサンゼルス港は、自動車、ブレー
速鉄道「アラメダ・コリダー」にアク
クバルク、コンテナ、ドライバルク、
セスしている。これはインターモーダ
液体バルク、混載など全部で26のカー
ル輸送の効率化と環境問題の改善を図
ゴターミナルを有している。このうち
ることを目的に、24億ドルをかけて02
コンテナは、チャイナ・シッピング、
年4月に開業した鉄道だ。現在は4つ
ヤンミン、トラパック、日本郵船、エ
の主要路線があり、ロサンゼルスの中
バーグリーン、APLなど8ターミナ
心部近くを走行する大陸横断鉄道網と
ルがある。土地の利用効率を向上させ
の間を移動するカーゴ輸送列車への接
るため、巨大なターミナルを1社ごと
続路線として利用されている。同港か
に運営させる「メガターミナル構想」
ら出発する列車はダブルスタック(二
ターミナルと鉄道が直結
18
クルーズ客船用の港湾施設「ワールドクルーズセンター」は、乗
客3000人以上の大型客船にも対応。ディズニー・クルーズ・ラ
イン、プリンセス・クルーズなどのクルーズ船社が利用している。
ウォーターフロント開発が進行中
西海岸最大級の旅客船専用ターミナ
ル「ワールドクルーズセンター」は、
12のクルーズ船社が利用し、年間100
万人が乗降する活気あふれるターミナ
ルだ。観光事業が大きな柱であるロサ
ンゼルス港では、ウォーターフロント
の景観整備にも力を入れている。
現在進行中の「ブリッジ・ツー・ブ
レークウォーター」プロジェクトでは、
海岸通りの約13kmを整備し、新しい
商業地域を創出する。現在は6つの地
ポスト・パナマックスクレーン4基を備えたチャイナ・
シッピングのコンテナターミナル。ロサンゼルス港にあ
る8つのコンテナターミナルは、利用する海運会社ごと
に運営が任されている。
排気ガス削減に力を入れる
ロサンゼルス港は、ロサンゼルス市
の一部門でありながら独立採算制をと
り、自立した経営を行っている。組織
としては、5人で構成される港湾コミ
ッショナー委員会の管理下に置かれて
いる。港湾の運営には税金が使われる
のではなく、係船や波止場の使用料、
水先案内、貯蔵、設備貸与などから得
られる海運業務の手数料、ロイヤリテ
ィなどが財源となっている。利用企業
にテナントを貸与して、収益を上げる
チャイナ・シッピングでは、ドック内に設置されたコンセントから電源をとるAMP方式を導入。ディーゼル燃料の使用
を止め、排気ガスの削減を図っている。
港湾経営者という位置づけだ。
近年委員会がとくに注力しているの
発掘し、
「グリーンターミナル」の構
区に分けて再開発を進めており、親水
が、環境問題対策である。自然環境と
築を推進している。海運用代替電力プ
地域をさらに広げるため、現状の3倍
の共生を図ることを目的に、中でも問
ログラム、鉄道によるアクセス、代替
のオープンスペースを設ける計画だ。
題視されている船舶の排気ガスによる
燃料の採用、エネルギー節減対策など
ピアーズ地区では遊歩道や緑地、マリ
大気汚染の改善に取り組んでいる。そ
の環境対策を提案するように、ターミ
ーナ/リゾート地区には、ピクニック
のためにも、先進的な環境プログラム
ナルを利用する海運会社に求めている。
が楽しめる公園や植物園を整備し、ビ
の実施を約束するテナントを積極的に
例えば、04年6月に供用を開始した
ーチ地区では、水族館、ユースキャン
チャイナ・シッピングターミナルで
プ、フィッシング用埠頭といった娯楽
は、ドック内に設置されたコンセン
施設を人々が利用しやすいように、ア
トから電源をとるAMP(Alternative
クセス環境を整えることなどが予定さ
Maritime Power)という画期的な方
れている。プロジェクトは今後10年間
法を採用した。この方法をとれば、停
にわたって、長期的に実施される。
泊中の船舶はディーゼル燃料の使用を
ロサンゼルス港は、国内最大規模の
止めて陸側から電力を供給できるため、
物流拠点としての役割を果たしつつ、
排気ガスの削減につながる。今後は、
周囲の自然環境や景観との調和を図る
リース契約の更新を迎えるテナントに
べく、環境共生型の港湾を目指している。
数多くのヨットが係留されている「カブリロマリーナ」
。港周辺
のウォーターフロントには、公園、水族館、ビーチ、レストラン
などの娯楽施設が立地している。
対しては、このような環境対策の実施
を契約更改の条件としていく方針だ。
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(文/小野寺明子 写真提供/ロサンゼルス市港湾局日
本事務所)
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