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Hirosaki University Repository for Academic Resources
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透析患者のレストレス・レッグス症候群
兼子, 直, 板井, 貴宏
透析ケア. 4(5), 1998, p.508-512
1998-05
http://hdl.handle.net/10129/1957
本文データはメディカ出版の許諾に基づき複製したも
のである。
publisher
http://repository.ul.hirosaki-u.ac.jp/dspace/
「
下肢の不快 感 (
異常感覚) を主訴 とす る ,人工透
はじめに
析 患者 に比較 的 多 く認 め られ る合併症 で あ る. ま
た ,その異常感覚 は夜間 ・
安静 時 に生 じ,二次 的 に
透 析 技 術 . あ る い は cont
i
nuousambul
at
or
y
強 い睡眠障害 を生 じさせ るため患者 に とっては著
pe
r
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onea
ldi
a
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ys
i
s(
CAPD)管理技術 が進歩 し,人
しい苦痛 とな る.RLSに よって生 じる不眠 に対 し
pは多 くの病院 におけ る日常的 な
工透析療法 ,CAf
て は ,一般 的 な睡眠薬 で は効果 が あ ま り期待 で き
医療 となって い る. しか も腎不全患者 の生 命 が長
ず .その ため診断 を確 定 し.適 切 な治療薬 の選択
期 にわ た って維 持 され るよ うにな り,透析 治療 中
が重要 とな る.本症候群 が重症 で長期 にわ た る場
の症例 が図 1の よ うに著 しく増 えて い る1
.透析
合 には ,患者 が うつ状態 に陥 った り,自殺 した り
が長期 に及ぶ結果 ,透析 治療 に伴 う種 々の合併症
す る場合 もある. したが ってRLS
の早期診断 ・
早期
の発生頻度 は必 然 的 に高 くな る,透 析 中断 は死 を
治療 は ,透析患者 のQOLの改善 ・向上 に とって き
招 く状況 下で ,これ らの合 併症 は しば しば透析 中
の患 者の生 に対 す る意欲 を低 下 させ ,心 因反応 ,
うつ病 とい った精神 医学 的間額 の発生 につ なが る
可能性 もあ る. その ため ,患者 の社会復帰 ,患者
の心の 問題 を含 め た生活 の質 (
QOL) 向上 には合
併症 の予防や その適切 な診断 ・
治療 が必要 で ある.
そうよう
透 析 中の患者 は皮膚 の療 樟 感 ,痛 み .ス トレス
な どか ら不眠症 を呈す ることが 多い.表 12
-に示
(
人/1
00
万)
1
5
0
0
1
0
00
5
3
00
0
8
千
85 87 89
91 9
3 95
年度
した ごと く,睡眠 時随 伴症 と して分類 され る睡眠
縦軸 は1
00
万 人当たりの人上透析患者数,
横軸 は西暦年 度を示す
t
l
es
sl
egss
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ome (
RI
J
S) は ,
障害の一つで あるRes
図 1 人 口1
00万対比人工透析患者数の推移 1】
8
0 (508)透 析 ケア
Vo
1
4,N。5
がし
ょう
が ある. この よ うな症状 は患者 が臥床 した直後 ,
表 1 精神科匡l
際診断基準研究会の
睡眠障害診断分類試案 21
夕方 か ら夜間 にかけて生 じやす く.日中には ,ほ
A.睡眠横能異常
1.原発性不眠症
2.ほかの非器質性精神障害 に伴 う不眠症
3.既知の器質的要因に関連す る不眠症
4.原発性過眠症
5.ナル コレプシー
6.睡眠時無呼吸症候群
7.周期性傾眠症
8.ほかの非器質的精神障害 に伴 う過眠症
9.既知の器質的要因に関連す る過眠症
1
0.特定不能の睡眠機能障害
B.睡眠 ・覚醒 リズム障害
1.睡眠相後退症候群
2.睡眠相前進症候群
3.解体型睡眠 ・覚醒 リズム障害
4.特定不能の睡眠 ・覚醒 リズム障害
C.睡眠時随伴症
1.悪夢
2.夜驚症
とん ど認め られない.
か くせい
RL
Sの患者 は入眠期 あるいは中途覚醒後 .異常感
覚 が増強 し,じっ と してお られず ,布 団か ら足 を
出 して冷や した りマ ッサ - ジした り,バ タバ タさ
せ た り,夜間歩 き回 った りす ることにな る.下肢
を動 か した り,マ ッサ ージす ることで異常感覚 は
軽快 す るが ,安静状態 に戻 ると,再び出現す るこ
とが 多 く,入眠 が妨 げ られ る. また ,中途覚醒時
に も異常感覚 は出現す るので著 しい睡眠障害 を来
す.重症化す ると,朝 までほ とん ど眠 れ ない場合
もあ り,結果 と して 日中の過剰 な眠気 をひ き起 こ
して しま う. 日中の眠気 は ,社会復帰 を目指す も
の に とって大 きな障害 とな る. 下肢の不快感 によ
3.夢 中遊行
4,夜尿症
って足 を意識 的 に動 かす以外 に ,安静状態 におい
5.むずむず脚症候群 (
Re
s
t
l
e
s
sl
e
gss
yndr
ome)
6. ミオ クローヌス性睡眠障害
7.特定不能の睡眠時随伴症
て ,患者 の足の周期 的 な背屈運動 が不随意性 (ミ
オ クロ-ヌス様) に認め られ ることもある.
わめて重要 となる.
「
r
R LS の
臨床的特聖
」
RL
SについてEk
b
o
m 3'が詳細な報告 をして以来 ,
疫 学 お よ び 病 因
」
Ek
b
o
m3'は一般 人口の 5%程度に ,S
t
r
a
n
g4'は
約2
.
5
%にRLSがみ られると推測 している.RL
Sは特
い くつかの報告 があ り,その疾患概 念は以 下の よ
発性の もの だけでな く,貧血 (
鉄欠乏 ,葉酸欠乏),
し
ゅ
よう
悪性腫壕 ,妊娠 .代謝性疾患 (
高 コ レステ ロール
うな もので ある.主症状 は ,下肢の深部 に生 じる
血症 ,糖尿病 ,痛風 など),薬剤性 ,胃切除後 ,感
名状 Lがた く耐 えがたい不快感で ある.むず むず
ぎそうかん
す る,虫がは うような (
蟻走感),引 っ張 られ るよ
染症 (
結核 ,肝炎 ,肺炎 など),静脈血栓 など種 々
うな .ひ りひ りす る,じりじりす る感覚 と表現 さ
も,不安 ,抑 うつ .緊張状態 とい った精神 的要 因
れ る.皮膚の表 面ではな く,両下肢の深部 にある
がR
LS
発症に関与す るとの指摘 もある6
)
.
.身体疾患以外 に
の疾患 に合併 して も認め られ る5
筋 (
と くに脚 腹筋深部や足底部)や骨 に生 じてい
尿毒症 ,人工透析患者 においては ,本症候群 の
るように感 じられ ることが特徴 で ある.重症化す
l
l
a
gha
n7 らは2
0
例 中 5名 に
発生頻度 が高 い.Ca
ると,上肢や顔面 あるいは体幹 に も出現す る場合
RLSが認 め られ ,人工透析で悪化 し.Wa
l
k
e
r8 ら
透析 ケア Vol・
4. No.
5 (
5
0
9)
81
は ,5
4人中1
8人 (
3
3.
3%) がRLSのために二次性 に
しているのか .現在の ところ不明である10'
睡眠障害 を来 してい ると報告 してい る. また ,逮
982-1
993年の間 に精
析施設 における結果 では .1
神 ・神経症状 の ため精神科医の 面接 を必要 と した
41名の うち,強 い不眠 を主症状 とした患者 は
患者4
表 3にアメ リカ睡眠障害連合会のRLSの診断基
6
5名 (
1
4.
8%)であ り.治療薬投与が必要 であった
準 を示 した1
1
)
.表 3と酪述 した臨床的特徴 か らわ
RLS症 例 は20名 (
4.
5%) で あ った (
表 2)9
∫が ,
か るよ うにRLSは ,他覚 的所見 が乏 しいため ,心
RLSの全例 で後述 す るクロナゼパ ムの投 与が必要
気的症状 あるいは一般的 な不眠症 と して通常用い
であった.人工透析 ・尿毒症 が不眠症 ・RLSの誘
られ る睡眠導 入剤が過剰 に授与 され る可能性 が あ
因 になってい ると推測 され るが ,透析患者 には糖
る. この ため頑 固な不眠 を主訴 とす る患者 におい
尿病 を併発 してい る症例 が 多 く.精神的負担 ,貧
ては .RLSによる二次性の睡眠障害 の可能性 をつ
血 な どのRLS増悪 因子 も存在 し,相 互 に作用 しあ
ね に考 えて問診す る必要 がある.RLSにおいては
い複雑 な病態 を形成 してい る可能性 があ り、尿毒
通常の睡眠薬 で は効果 が少 な く,的確 な診 断 が ,
S発現 に対 して どの よ うに関与
症 ・人工透析 がRL
適切 な治療薬の選択 につながるか らである.
表 2 精神医学的介入が必要であった441
名の透析患者に認められた主な精
神 ・神経症状9
対する割合 (
%) 症例数
の投薬率 (
%)
RLS
Z)
2
0
4
.
5
2
0
1
0
0
幻覚.
妄想状態4」
2
0
4.
5
2
0
1
0
0
1)スルビリドによるアカシジア性不眠 2例を含む.
2)R上
s(
Re
s
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sl
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g
ss
y
n
d
r
o
me
) :不眠を主症状とする症例中2
0名はRL
S
であった.
3)多くの症例は,心理的背景を有する.
4)分裂病 ,トリアゾラムによる幻視,各 1例を含む.
82
(
51
0)透析 ケア Vo
l
.
4.No5
眠
期
に
不
表 3 アメリカ睡眠障害連合会の RLSの診断基準11J
A 夜間中途覚醒時 .あるいは入
快 な感
覚が下肢に起 こるとい う訴 え
B 耶腹筋部の内部か ら生 じる我慢 で きない "
蟻
走感'
'が .下肢全体の痛み様の感電 とともに
出現す る
C 不快感は下肢 を動かす ことによって軽減す る
D 睡眠 ポ リグラフ イ検査では ,人眠期 に下肢の
運動が見 られる
鷲 ,不眠 ,消 化器症状 (
悪心 .食欲低下),循環器
とうき
症状 (
立 ち くらみ ,動惇 ),不随意運動 な どの副作
用 が生 じる こ とが あ るの で注 意 が必要 で あ る. ブ
ロモ ク リプチ ンはLドーパ よ りも効果 は弱 く単独治
療 で は症 状 の コ ン トロール が困難 で あ るが ,耐性
の 上昇 が起 こりに くいため長期投与 が可能 で あ る.
E Dの運動 は .ほかの内科的あるいは精神科的
また ,Lドーパ とブロモ ク リプチ ンの併用 が長期の
な疾患によるものではない
ほかの睡眠障害 があったとして も,症状がそ
れによって出現す るものではない
Lドーパ単独投与 よ り治療効果 の減弱 を起 こ しに く
F
い とい う観 点 か ら ,効 果 的 で あ る とい う報告 もあ
る12'.
3) オ ピオイ ド系薬剤
オ ピオ イ ド系薬 剤 が有 効 で あ る とい う報告 が あ
るが ,薬物 依 存 や耐性 を生 じやす く.臨床 上 ,倭
「
治療
」
RLSの病 因 はい まだ不 明 で あ り.根 本 的治 療 法
用 を制 限 す る必要 が あ る.使 用せ ざるを えない場
合 は必要最小 限 にす るべ きで ある.
は確立 されていないが .以下の薬剤 が有効 である.
1)ベ ンゾジアゼ ピン系薬剤
引用 ・参考文献
RLSに伴 う不眠 は通常 の睡眠 薬 で は効 果 が乏 し
1) 日本透 析 医学 会統 計調 査 委 員会 :わ が国の慢
く,治療 に クロナ ゼパ ム (
1-2mg)の就寝前投
1
9
9
5
年1
2月31日現在).透析 会
性透析 療法 の現況 (
与 が有効 で あ る.本剤 はRLSの第一 選択 薬 と考 え
誌 ,3
0:12
5
,
1
9
9
7
られ ,下肢の異常感覚 を改善 させ ,熟眠感の改善 ,
2) 本 多
中途覚 醒頻 度 の減少 ,睡 眠 時 間の延長 とい った睡
6
6
1
71,朝倉書店 ,1
9
9
4
会 :睡眠学ハ ン ドブック,1
眠 の質 的 お よび量 的 な改善 を もた らす .効果 が十
3)Ekbom KA:Res
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egs.
Ac
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amedSc
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分 で ない ときには 日中の眠 気 ,失調 ,物 忘 れ な ど
1
5
8:卜1
2
3
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1
9
4
5
の ハ ングオ ーバ ー (
前夜 の睡眠 剤 の効果 が翌 日ま
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で持 ち越 され る) に注 意 しつつ ,ク ロナゼパ ム を
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,1:1
21
1
1
21
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,
1
9
6
7
増量 す る.効果 が不 十 分の ときに は .以 下 に示 す
5)塩沢全司 .間野忠明 :Re
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症候群 .臨
裕 :睡 眠 障害 の診 断 分類 . 日本睡 眠 学
二
ドーパ ミン作動性薬剤 を加 える.
床精神医学 ,1
4:5
9
5
6
0
0
,
1
9
8
5
2) ドーパ ミン作動性 薬剤
6)Gom a
nnCA,Dy
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S:Sy
mp
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Lドーパの少量 (
2
0
0
mg)投与 に よって ,就床時
1
5:1
5
5
1
6
0,
1
9
6
5
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に生 じる下肢 の異常感覚 と不随意運動 が軽快 す る.
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Lドーパ は長期投 与によ り耐性 が生 じ.治
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療 効果 が次 第 に減弱 す る.用量 を増加 す る と ,幻
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透析 ケア Vo]
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直 :透析患者への向精神薬 の使 い方.
透析患者 と生 きる (
春木繁一 編),91
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デ ィカルセンター,1
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2)江川
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0)福西勇夫 :人工透析 中に見られたRe
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見られたRe
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s
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e
gs
症候群 に対す る ドパ ミン作動
s
yndr
omeに対す るLdopaの有効性 と精神科 コンサ
性 薬 に よる治療効果 .臨床精神 医学 ,38:741
ル テ ー シ ョンの意義 .臨床 精神 医学 ,20:6051
7
45,
1
9
9
6
61
0,
1
9
91
84
(
51
2)透 析 ケア 1
'
01
.
4,No.
5
功 ,杉田義郎 ,手島愛雄 :透析患者 に
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