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加齢敏感肌女性における肌やスキンケアへの意識
日心第71回大会 (2007) 加齢敏感肌女性における肌やスキンケアへの意識 互 恵子 (資生堂ビューティーソリューション開発センター) key words: 加齢敏感肌、肌意識、スキンケア意識 加齢敏感肌女性の肌の衰えと敏感度 “肌の衰え”と思う肌状態 目的 敏感肌は皮膚科学上の定義は未だないが「角層のバリア機能の はシミや口周り・額・目尻のしわ、目の下のたるみ、T ゾーンの脂っ 低下や刺激閾値の低下を背景に易刺激性が増し、かぶれや肌 ぽさ、ざらつきやごわつきで、これら肌の衰えと敏感度は“やや関 荒れが起こっている皮膚」(市川,2002) とされる。皮膚疾患がなく 係する”と“非常に関係する”は自称敏感肌が 52.6%、真性敏感 ても化粧品や体調等による肌のトラブル経験から肌が敏感である 肌が 81%であった。 スキンケア化粧品スイッチ心理 スキンケア と思う“自称”敏感肌も多数いる。若年女性におけるアトピー性皮 化粧品を変える意識は“不安・抵抗”では年代と肌意識の各主効 膚炎等の真性敏感肌と自称敏感肌の肌意識は健常肌と比較し、 果があり(p<.01)、両年代で自称と真性の敏感肌は健常肌よりも高 どちらも肯定面は小さく、否定面は大きかった(互ら,2006)。そこ く、中年は若年よりも低かった。“変えて維持・改善”では肌意識の で、敏感肌意識を持つ中年の“加齢敏感肌”女性では、肌やスキ 主効果があり(p<.05)、両年代で自称と真性の敏感肌が健常肌よ ンケアへの意識はどのようであるかについて、同年代の健常肌女 り高かった。 性と若年層の比較から検討した。また、加齢敏感肌女性が新規の スキンケアを長期使用することによる両者の意識変化を探った。 調査 実験 実験参加者 調査参加者と同様の中年の“自称敏感肌”19 名、 “真性敏感肌”21 名。 方法と期間 新規の加齢敏感肌用スキン 調査参加者 中年女性:平均年齢 48.5±6.61 才、通常肌 39 名、 ケア化粧品を3週間、毎日朝晩の2回使用した(06 年1~2月)。 “自称敏感肌”19 名、肌トラブルによる皮膚科通院歴やアトピー素 スキンケアのステップ 朝は化粧水と乳液、夜は化粧水と乳液、ク 因のある“真性敏感肌”21 名。若年女性:平均年齢 25.9±3.7 才、 リームを使用した。メーク落とし・洗顔は本人のものを使用した。 “通常肌”98 名、“自称敏感肌”80 名、“真性敏感肌”68 名。 心理尺度 連用前後で調査と同じ心理尺度や気分状態の日本 方法と期間 中年女性は自宅持帰り調査(06 年 1~2 月)、若年 版 POMS(Profile of Mood State)、自尊感情尺度(Self-Esteem)、 女性は郵送調査(05 年7~11 月)を実施した。 特性不安(STAI-2:State-Trait Anxiety Inventory)を実施した。 心理尺度 本人の素肌イメージ尺度やスキンケア化粧品スイッチ 結果 加齢敏感肌女性の新規スキンケア使用における肌評価 頬の脂 意識尺度(2006)、肌状態のアンケートを用いた。 結果 っぽさやにきび・にきび跡以外は全て良方向に有意に変化した。 加齢敏感肌女性の肌評価 年代と肌意識(通常肌・自称・真性敏 新規スキンケア使用による素肌イメージとスキンケア意識の変化 感肌)の 2 要因(2×3 水準)分散分析より、うるおい感やつや、透 使用前後と肌意識(自称・真性敏感肌)の 2 要因分散分析より、自 明感、きめの細かさの状態評価では各要因の主効果が1%と5% 称と真性の敏感肌とも前後で“加齢”や“不満”が有意に低下し 水準で有意であった。多重比較(LSD,α=.05)より自称や真性 (p<.01)、“美肌”や“自信”が上昇した(p<.01)。“敏感性”は使用前 の敏感肌は健常肌より低く、中年は若年よりも低かった。かさつき 後で変化しなかった。スキンケア化粧品スイッチ心理は“不安・抵 やくすみ、色むら、きめの粗さ、額のしわでも各要因の主効果が 抗”や“変えたくない”態度が各々5%と1%水準で有意に低下し、 1%と5%水準で有意であった。自称や真性の敏感肌は健常肌よ “変えて維持改善”が高まった(p<.05)。 新規スキンケア連用によ り高く、中年は若年よりも高かった。肌あれや赤みは年代と肌意 る日常の気持ちや自尊感情の変化 連用により混乱度が有意に 識の交互作用があり(p<.05)、通常肌は中年が若年より高いが、自 低下し(p<.05)、緊張-不安度は低下傾向(p<.1)であった。自尊感 称と真性の敏感肌は若年と中年のどちらも健常肌より高かった。 情は上昇し(p<.05)、特性不安は低下傾向(p<.1)であった。 加齢敏感肌女性の素肌イメージ “美肌”や“自信”、“加齢”、“不 総合考察 満”尺度において年代と肌意識の各主効果が1%水準で有意で 加齢敏感肌女性では同年代の健常肌と比較し、肌状態の自己評 あった。多重比較(LSD,α=.05)より、“美肌”と“自信”では両年 価はネガティブな傾向があり、素肌イメージでは美肌感や自信が 代で自称や真性の敏感肌は健常肌より低く、中年は若年よりも低 低く、不満や加齢意識が高かった。若年層との比較から加齢によ かった。“加齢”と“不満”ではその関連が逆転していた。 りその傾向が強まることが示唆された。また、加齢敏感肌女性が 思う肌の衰えはシミ・しわ・たるみという 3 大老化現象以外にも脂っ かさつき * 4.0 * * * * 通常肌 自称敏感肌 真性敏感肌 * 3.0 * * * * ぽさやごわつきであり、それらは敏感さと関係するとしていた。以 通常肌 自称敏感肌 真性敏感肌 平均得点 平均得点 3.5 きめの細かさ 2.5 3.0 2.5 2.0 1.5 能性が示された。加齢敏感肌女性のスキンケア化粧品への意識 2.0 は不安や抵抗がありつつ、変えて維持・改善したいという葛藤状 1.5 態であり、若年と同様であった。これらの肌やスキンケアへの意識 1.0 はスキンケアの長期使用により肌状態の良好化を実感することで 1.0 0.5 0.5 0.0 上より、敏感肌意識は肌の広範な老化症状の意識を加速する可 SD SD 0.0 若年女性 中年女性 若年女性 中年女性 図1敏感肌女性本人の肌評価(左図:かさつき、右図:きめの細かさ) ポジティブな方向に変化し、さらに日常の気分や自分への評価が 上昇することが示された。肌状態が変われば気持ちのありようも変 化するという肌から心への好影響が考えられた。(TAGAI Keiko)