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顔の治りにくい皮膚疾患—ニキビと白斑、どのような治療が良いですか
顔の治りにくい皮膚疾患—ニキビと白斑、どのような治療が良いですか? 名古屋市立大学大学院医学研究科 加齢・環境皮膚科学 森田明理(もりた 教授 あきみち) 皮膚科疾患では、治るのにすこし時間がかかる病気が少なからずあります。命 に関わったり、他の人にうつるものが少ないので、身体的に重症な疾患に比べ るとどうしても新しい治療や考え方が、取り入れられたりするのに時間がかか っているのが本邦での現状です。しかし、特に顔に病変が出るものでは、非常 に気になって、どうも自信が出ないなど、対面障害となる場合もあります。で すので、身体的に重症な患者さんと同じように、生活の質(QOL)が障害され ていることがわかり、とくに若い世代の患者さんでは、仕事にも支障が出るこ とから、 「気にしないで」すまされることではなく、十分な治療や指導が必要だ という認識が深まりました。本講演では、ニキビの新たな治療方法(レチノイ ド外用薬)を含めた治療指針(ガイドライン)の登場から、白斑(尋常性白斑) の最新の治療を皆様にお伝えしたいと思います。 ここでは、白斑(尋常性白斑)について紹介いたします。 尋常性白斑は、通称「しろなまず」とも呼ばれ、まだ明らかな原因は不明です。 乳幼児から高齢者まで見られる病気で、皮膚の色の抜ける「色素脱失異常症」 の中では代表的なものです。形や大きさが様々で、境界がはっきりしていて、 辺縁の色が濃いことが特徴です。目立つ場所にできると美容的に悩む人が多い と思います。現在では、あとに述べるように治療方法がいくつかありますので、 皮膚科専門医の診察を受け、治療を始めることをおすすめします。 白斑の大きさや形などから、尋常性白斑は 3 つのタイプに分類されています。 限局型:狭い範囲にひとつ、あるいは数個の白斑がある程度のもの 汎発型:顔や全身のいたるところに左右対称に多発したり、くっついて 大きな白斑を作るもの。できやすい場所は、刺激の加わりやすい顔、く び、腹、腰、わきや股、うで・あし、手指など。 分節型:左右いずれかの神経にそって白斑ができるもの。 原因が明らかでなく、確かな治療法もないと考えられていた尋常性白斑ですが、 最近状況は変わってきました。 1. ステロイド外用、ビタミン D3 外用(保険適用外) 2. 光線療法(ナローバンド UVB、PUVA) 3. 皮膚移植(1 ミリミニグラフト、サクションブリスター) 以上の3つが、基本的な治療方法となりますが、年齢、性別、病変範囲・部位、 罹病期間、治療歴、露光部の病変の有無、職業などの個々の症例の状況に合わ せた、いわばオーダーメードな医療が必要なことが多く、また合併症がある場 合にはその治療も行う必要があります。皮膚科専門医とよく相談した上で、治 療を開始してください。 限局型の小さな白斑の場合、できて間もなければ、ステロイドの塗り薬 の効く可能性があるので、まず試してみるべきですが、長く外用すると 毛細血管拡張や皮膚萎縮、にきびなどの副作用がおきるため、数ヶ月外 用しても効果のみられない場合は中止し、以下の治療方法を考慮します。 汎発型では、光線療法が第1選択です。 近年、狭い範囲の波長(311~312nm)のB波(日焼けを起こす紫外線)を 患部に照射するナローバンド UVB 治療があり、これは、ソラレンのような紫 外線増強物質を使う必要がないので、治療後に日光を浴びてもやけどの危険 がなく、顔や手などどの部位にも照射することも可能です。 尋常性白斑の場合は、週に 1~2 回、数分間ナローバンドUVBの照射を受け ます。少なくとも 30 回で色素沈着が起こるか判断して、ふつうは 100 回ぐら い、治療を繰り返すことになります。一回一回は紫外線を浴びるだけの簡単 な治療ですが、長い期間、通院する必要があります。顔では 7 割、体で 5 割 程度の色素沈着がえられますが、手足の白斑にはあまり効果ありません。ご く最近ですが、エキシマライトという新しい光線療法が登場しました。こち らも白斑の治療に効果が期待されます。 分節型では、光線治療で効果があまり期待できないので、正常な皮膚を 移植するという外科的な方法を選択します。 ミニグラフト法 1.0mm 大のパンチで採皮を正常皮膚から行い、同じサイズで白斑病変部にパン チで穴を開け、採皮片をのせていきます。テープなどで固定し、2週間後に はがします。徐々にですが、色素沈着がミニグラフトの周囲から2mm 程度得 えられます。若い人や発症からあまり時間が経っていない方が、色が出やすい ようです。また、この方法で色素沈着のえられない場合は、他の治療方法でも 色素沈着は得られにくいことも経験的に知られています。 サクションブリスター法 正常皮膚から皮膚を採ります。注射筒を吸引装置で皮膚面を陰圧に 2-4 時間程 度持続し、吸引水疱を作ります。切除した水疱蓋を移植皮膚とし、表皮が除か れた白斑病変部にしきつめ固定します。1 週間以内には皮膚が接着し、2〜4 週 間程度で色素再生をみます。 (化粧品の紹介) パーフェクトカバー(資生堂)やカバーマークなどのメーキャップ製品の使用、 R あるいは角質層を着色するジハイドロキシアセトン(ダドレス○ )などで露出部 の白斑部を隠す方法があります。