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アユの非感染性スレ症(通称コツキ)の発生原因について
アユの冷水病等対策研究 アユの非感染性スレ症(通称コツキ)の発生原因について 山本 充孝 3.研究結果 スレ症発症試験では、5 月にヤナで漁獲された アユが 1 月および 4 月にエリで漁獲されたアユより 高い死亡率を示し、飼育密度 25 尾/水槽では順に 81%、48%、45%であった。また、高密度区ほど死 亡率が高い傾向を示した(図 2)。 白色板モデルへの噛みつきや体当たりなどの攻 撃回数は各群とも個体毎に大きく異なったが、3 分 間あたりの平均攻撃回数は 5 月ヤナ、4 月エリ、1 月エリの順に 25 回、15 回、6 回であった(図 3)。 モデルへの攻撃回数が多い群ほどスレ症による 死亡率が高いことから、本症の発生原因は頻繁な 噛みつきなどの攻撃行動であると考えられた。この 結果はヤナで漁獲されたアユで高率に発生すると いう現場における状況とよく一致した。 1.研究目的 アユの非感染性スレ症は、主に琵琶湖産アユに 発生する疾病であり、養殖業者の間では『コツキ』 の通称で呼ばれている。4 月以降にヤナ等の河川 およびその近辺で漁獲されたアユを高密度で収容 すると頻発することが経験的に知られている。本症 は、罹病魚の検査で病原体が認められないことか ら、アユが他の個体を攻撃することで発生すると考 えられているが、これまでのところ発生原因は十分 には明らかにされていない。そこで、白色板モデル を用いてモデルに対するアユの攻撃行動を観察し、 スレ症の発生状況との関係を調べた。 2.研究方法 スレ症発症試験としてエリで 1 月と 4 月、ヤナで 5 月に漁獲された琵琶湖産アユをそれぞれ 1 ヶ月以 上飼育した後、25L 容のコンテナ水槽に 13、25 お よび 50 尾/水槽の密度で収容し、14 日間無給餌 で水温 18℃の地下水を用いて流水飼育して本症 の発生状況を調べた。また、これらのアユを 180L 容のガラス水槽に 1 個体ずつ収容し、アユにみた てた白色板モデルへの攻撃回数を記録した。 攻 撃 回 数 70 60 50 40 30 20 1月エリ 4月エリ 5月ヤナ b b a 10 0 b b b ab a a 3日後 1日後 2日後 図3. 3分あたりのアユのモデルに対する攻撃回数 異なる符号間で有意差あり Steel-Dwass 法 図 1.アユにみたてた白色板モデルを攻撃する様子 累積死亡率(%) 100 100 100 13尾 25尾 50尾 80 60 1月エリ 13尾 25尾 50尾 80 60 4月エリ 80 a 0 0 2 4 6 8 10 12 経過日数(日) 0 14 0 50尾 0 2 4 6 8 10 経過日数(日) 12 14 0 2 4 6 8 10 経過日数(日) F test ・13尾区2群間 2 χ test 25尾 d20 c20 20 Scheffe's 40 40 異なる符号間で有意差あり ・25尾区3群間 60 a 40 b 5月ヤナ 12 14 図2.アユの非感染性スレ症発症試験における累積死亡率(%) P<0.01(a,b) P<0.01 (c,d)