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変化の中に 生きる人々
地球ギャラリー vol.57 Myanmar [ミャンマー] 写真・文=宇田有三(フォトジャーナリスト) 変化の中に 生きる人々 寺院の回廊で手を合わせる女の子(ラカイン州、2010年) vol.57 地球ギャラリー 観光客の姿をほとんど見かけることのないダウェイの海岸(タニンダイー地域、2003年) バインジーと呼ばれるポルトガル系の子孫が今も存在する (ザガイン地域、2007年) 2 0 1 1 年 8 月、北 部 の 都 市 マ ン ダレーのインターネットカフェで隣 た。 り合った若い男性から話しかけられ ﹁ど ち ら の 国 の 方 で す か。ミ ャ ン マーにはいつ来たのですか﹂ ﹁日 本 か ら だ よ。実 は ね、 年 前 から毎年、通っているんだ﹂ 思うようになっていった。 現地の人々と共有できないかと強く 自分のこれまでの経験を、なんとか した。私は彼の熱いまなざしを受け、 インダーを通して見てきたことを話 いることなど、北から南まで、ファ をしたポルトガル系の子孫の民族が リムが住んでいること、青や緑の目 マレー系のパシューと呼ばれるムス 私は彼に、北部カチン州で初めて 雪山を見たこと、最南端の漁村には じだったの?﹂ ﹁最 近、大 統 領 と 会 っ た ん だ。と ころで、この国の昔って、どんな感 いるけど何が起こったの?﹂ ーさんの写真があちこちに出回って ﹁今 回 は バ モ ー か ら 船 で 川 を 下 っ て 来 た ん だ。︵ア ウ ン サ ン︶ス ー チ 彼 は イ ン タ ー ネ ッ ト そ っ ち の け で、身を乗り出してきた。 ﹁僕が生まれる前からなんだ⋮﹂ 19 カレン民族の伝統舞踊として知られるドーン・ダンス (カレン州、2009年) 最南端の漁村に暮らすマレー系のムスリム (タニンダイー地域、2007年) 中国国境が近い最北端にはチベット人が暮 らす村がある (カチン州、2007年) エーヤワディー川に水くみに出かける幼 い尼僧たち。国民の8割が上座部仏教を 信仰する (ザガイン地域、2003年) 近年、急速に開発が進むヤンゴン (2012年) た。その勢いもあったのか、現地の し か し 幸 運 な こ と に 、 20 1 2 年 8 月末、事前検閲の制度がなくなっ た。 まだまだ慎重を要する題材であっ ゲリラや難民、ムスリムなどの姿は い。人々の生活や意識はそう簡単に その変化が広がっているとは思えな がある。だが、今でも地方を回ると、 市ヤンゴンの変化は目を見張るもの 私自身、この間の動きは〝大変化〟 だが、必ずしも〝民主化〟だとは思 出版できたなあ﹂と驚かれた。 私 の 手 元 に は、も は や も う 二 度 と 撮 影 で き な い、軍 事 政 権 時 代 の 優 し く、し た た か に 生 き た 人 々 の 大手出版社の幹部から﹁よし、君の 変 わ ら な い│。こ の 国 を 歩 き 続 け、 す る 時 代 で あ っ て も、た く ま し く、 テインセイン大統領とアウンサンスーチー氏が会談したニュースを報じる週刊誌。だが、若者はもっぱらスポーツ紙の方に興味があるようだ (ザガイン地域、2011年) っていない。確かに、国内最大の都 日 常 を 写 し た も の だ。民 政 移 管 し 写真集を出版しよう﹂とゴーサイン 肌で感じた経験がそう告げるのであ 万 枚 近 く あ る。軍 が 統 治 た 今、あ の 時 代 の 風 景 を 撮 る こ と が 出 た の だ 。 20 13 年 2 月 、 ヤ ン る。 シュエモードー・パゴダを背景に朝日が昇る (バゴー地域、2005年) 写真が はもうできない。 をよく知る人からは、 ﹁本当か、よく ゴンの書店に写真集が並び、この国 ムスリムは人口の5%ほど。 シーア派のムスリムはさらに少ない (ヤンゴン、2010年) 地球ギャラリー vol.57 昔ながらの鍛冶屋も現役で働く (ラカイン州、2010年) こ の 数 年、街 中 で ア ウ ン サ ン ス ーチー氏の写真はありふれた光景 今や、 このような裏通りでの遊びも消えつつある (ヤンゴン、2002年) に な っ て き た。だ が 依 然、反 政 府 今でも人口の7割が農業に従事する (シャン州、2005年) 10