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病理組織診断の立場から
!"#$%&' 子宮内膜病変の病理組織診断と細胞診における 相違の原因と対策:病理組織診断の立場から 川崎医科大学(倉敷市) 現代医学教育博物館 川崎医科大学 病理学2・産婦人科 森谷卓也、鹿股直樹、小塚祐司、 中村隆文、下屋浩一郎 <子宮内膜細胞診> 診断の標準化を妨げる要素 • 採取方法や検体処理法の違いによる細胞集塊 出現様式や判定方法の差 • 細胞診を行う上での標本の見方や用語に関す る標準化がなされていない • 内膜増殖症、異型増殖症を想定する細胞像が 得られた場合の診断報告様式が不統一 • 細胞像と対比する対象となるべき病理組織診 断自体に診断者間の差が少なくない 子宮内膜細胞診における良悪性判定と 疾患推定:組織像との乖離の原因 1.サンプリングによる診断不一致 *採取部位の差 *微小な病変 *組織細胞像が多彩な病変 萎縮内膜+ポリープ内の漿液性腺癌 子宮内膜異型増殖症を背景とした類内膜腺癌G1.. 内膜細胞診: 出血性背景に集塊状の 異型上皮塊が散見される ()*+,-.&'-/.0123 !"#$%&' 子宮内膜細胞診における良悪性判定と 疾患推定:組織像との乖離の原因 2.病理診断の普遍性に関する問題 *病理診断の診断者間誤差・ 同一診断者による再現性 ↑ 質的に再現性が得られにくい病変の存在 .. 病理診断の再現性:子宮内膜生検の例 (森谷・名方・石倉:日本婦人科腫瘍学会誌 1999) ・19生検例、同一標本回覧、11名の一般認定病理医 ・癌、異型増殖症、増殖症、その他の4カテゴリー ・病理医間の一致率:平均 66.1%( 45.5 - 100% ) κ値:0.41 (0.13 - 0.84) ・評価を難しくしている要因 ①腺管の癒合(篩状構造)の判定 ②細胞異型(核異型)の判定 ③化生変化の評価 ④年齢の評価 子宮内膜病変:病理組織分類の骨子 分類 ・子宮内膜増殖症 単純型 複雑型 ・子宮内膜異型増殖症 単純型 複雑型 真の篩状構造 (類内膜腺癌、G1) Back to back構造 (複雑型異型増殖症) 子宮内膜増殖症と高分化型腺癌の 病理組織学的鑑別点 ・類内膜腺癌 核異型 間質浸潤 なし なし あり なし あり あり 類内膜腺癌G1の例 • 間質への浸潤を認めるとき:腺癌 (子宮体癌取扱い規約改訂2版,1996) • 概念的に考えられる上皮内腺癌は 子宮内膜異型増殖症に含まれる. 注:内膜固有間質内に浸潤するが内膜にとどまり 筋層浸潤の見られない癌もある 異型核:異型増殖症とG1腺癌の間に本質的な差はない! むしろ 異型増殖症>G1のことさえある ()*+,-.&'-/.0123 !"#$%&' 子宮内膜異型増殖症 細胞異型の組織学的指標 ①細胞の増大 ②極性の乱れ ③核細胞質比の増大 ④核の腫大 ⑤大きさと形の不均一 ⑥円形化 ⑦輪郭の不規則 ⑧クロマチンの増量(淡明化)と核膜の肥厚 ⑨核小体の肥大 化生(細胞変化)の存在. 子宮内膜異型増殖症の核所見 !"#$%&'()*+,-./01234566 子宮内膜細胞診における良悪性判定と 疾患推定:組織像との乖離の原因 3.細胞診断の診断様式・用語の問題 *疑陽性やクラスIIIとされる病変の種類 (増殖症・異型増殖症・その他の病変) *細胞診断の手順 (組織構築と細胞像をふまえた疾患推定) →細胞診と組織診の対比による精度管理 乳頭状・表層合胞状化生 好酸性化生 . 子宮内膜病変と細胞診判定 病 変 非癌・非増殖症性変化 生理的変化 炎症 薬剤など治療による変化 ホルモン異常による変化 ポリープなど器質的変化 等 子宮内膜増殖症・異型増殖症 子宮内膜癌 細胞診 周期性内膜の組織像(増殖期内膜) 陰性 疑陽性 陽性 ・腺管配列の規則性 ・間質成分の付随 核の偽重層 核分裂像 ()*+,-.&'-/.0123 !"#$%&' 単純型子宮内膜増殖症 <内膜細胞診> 周期性内膜・非増殖症内膜 にみられる出現パターン (採取法による影響もある) 単純型子宮内膜増殖症でしばしば出現する 異常集塊(腺管の拡張を反映している) 789:0;<=>?@A)BCDEF0GH )B3-.IJK=)BL-.MN2OP* )B0QR3STUV=*+WXYZ'(/[\66 複雑型子宮内膜増殖症 腺管の割合が増し、間質減少(腺管:間質比3以上) 腺管の形:より不規則に 核所見:異型なし 複雑型子宮内膜増殖症(以上の異型病変)で見られる 複雑な腺管構造と、腺管の密在 類内膜腺癌・G1 篩状構造(腺の癒合) 絨毛管状構造 ()*+,-.&'-/.0123 !"#$%&' 類内膜腺癌に出現しやすい細胞所見 癌の場合に出現しやすい細胞所見 小集塊異型細胞 集塊内に多数の管腔 間質と偽重積性上皮 (直交) 不全増殖内膜(EGBD)(内膜腺間質破綻) 好中球取り込み像 扁平上皮化生細胞 壊死性背景 不全増殖内膜(EGBD)(内膜腺間質破綻) 増殖期内膜の広範な 断片化と間質の凝集 合胞状化生を合併しやすい *間質成分の認識が重要! 不調増殖内膜(DPP)(不規則増殖内膜) 内膜細胞診疑陽性例の内訳 (構造異型の評価による診断精度の変化) (倉敷中央病院・済生会野江病院・宮城県医師会健康センター) 増殖期の腺管+部分的不整(密集) 増殖症との鑑別が難しい場合→時間をおいて再検 組織診断 則松B 良性 28.3% 増殖症 65.5% 癌 6.2% 症例数 113 清水A 清水B 45.1% 33.3% 41.2% 63.7% 13.7% 3.0% 51 34 三浦A 三浦B 63.8% 27.3% 33.8% 72.7% 2.5% 0% 80 33 A: 個々の細胞所見のみによって判定した結果 B:構造異型+細胞像を加味して判定した結果 ()*+,-.&'-/.0123 !"#$%&' 日本臨床細胞学会研究班 ベセスダ2001に準拠した 記述式子宮内膜細胞診報告様式 39歳、女性:検討会では陰性・疑陽性・陽性の意見 扁平上皮は化生変化? 研究班長 矢納研二 (JA三重厚生連鈴鹿中央総合病院婦人科) 報告内容の骨子 1)標本の種類 2)標本の適否 3)記述式細胞診結果報告 (例:単純型増殖症は陰性に分類) 456789:9;<= >?6@ABCDEFG1GH >?UV6789;<= ..WXYQ:9DEF.. 78IJKL6;<=M. .NOPMM.Q:9RST. 病理組織診断からみた子宮内膜細胞診 まとめ 1.細胞像と、同一症例の組織像との対比を 励行する(特に、内膜表層に注目) 2.細胞診判定と病理診断名のみの比較でな く、 具体的な細胞所見 vs. 組織所見 を重視する 3.細胞診判定基準・報告様式の統一化が 強く望まれる(研究班の成果などに期待) ()*+,-.&'-/.0123