...

ヴォートF7U〈鈴鳴《カットラス》マミコ〉

by user

on
Category: Documents
9

views

Report

Comments

Transcript

ヴォートF7U〈鈴鳴《カットラス》マミコ〉
ヴォートF7U〈鈴鳴《カットラス》マミコ〉
(元ネタ:鈴鳴マミコ トゥインクルレビュー / フェアリーテール)
ヴォート社が双発ジェット艦上戦闘機の要求仕様を受けて開発した艦上戦闘機。当初、その特
異な形状から操縦、特に着艦が難しく、制式採用を見送られそうになった。しかし、1948 年の米
独開戦と、その後の東部諸州の連邦離脱…アメリカ連合国 ( 以下、東部連合と記載 ) 成立と言う政
治的な激変を受けて制式機となった。見た目によらない運動性と、最大 2.7 トンに及ぶ搭載量、高
速性能と上昇性能を兼ね備え、戦闘爆撃機あるいは迎撃機として、東部連合軍航空隊の主力の一
角を占めた。
■【開発の経緯】
1945 年、第二次南北戦争が合衆国軍の巻き返しによってその趨勢が変わりつつあった時期。合
衆国海軍は次期主力艦上戦闘機としてジェット艦上戦闘機の案を幾つか提示した。このうち、
ヴォート社が挑む事になったのが「< エセックス > 級航空母艦のエレベーターに乗る双発ジェッ
ト戦闘機」と言う要求である。 これは、ただでさえ大型化する双発機を単発機並みのコンパク
トな大きさにまとめると言う極めて困難なものだった。そこで、同社は米独関係が良好だった時
代にアラド社との技術交流で得られた全翼機に関するノウハウを投入する事を決定し、水平尾翼
をもたない斬新なデザインの機体を設計した。その外見からか、「ペンギンのぬいぐるみのよう
だ」と言う人もいる。 完成したモックアップは人々の注目を浴びた。全長 13 メートル、全幅 12
メートルを越える大柄な機体だが、そのスタイルのせいか実際よりもコンパクトな印象を受け
た。優れた機体は小さく見えると言う言葉もあるが、この機体は海軍当局の注目を浴び、原形機
3 機がXF7U− 1〈鈴鳴《カットラス》マミコ〉として正式に発注された。
■【転機】
しかし、XF 7 U -1 が初飛行目前となっていた 1948 年 5 月、米独開戦により第三次世界大戦が
勃発。同機の運命は大きく転換する。ヴォート社の基盤であるニューヨーク州はたちまち独軍
に席巻され、正常な企業活動は停止。当然の事ながら〈鈴鳴《カットラス》マミコ〉の開発も停
滞した。 しかし、ドイツ北米総軍としては、合衆国の東海岸から五大湖地方の工業地帯を自軍
策源地として取り込みたいと言う意向もあり、7 月にはまずドイツ空軍機の修理請け負いの形で
グラマンやヴォートなどの航空機メーカーも操業再開を認める事にした。 さらに、ドイツ海軍
は空軍との確執から航空機の調達がドイツ本国では難しかった事もあり、合衆国メーカーから次
期主力艦上機を購入する事を決定。まず、戦闘機としては既に合衆国が採用を内定し、最終テス
トを行っていたグラマンF9Fを〈織原《パンサー》聖〉の名で採用。攻撃機にはダグラスのA
- 1〈雛岸《スカイレイダー》希〉の対抗馬に上がっていたマーチンAM - 1 < モーラ > を採用し
た。 ヴォート社としてもこの流れに乗るべく、ドイツ海軍関係者を招いて〈鈴鳴《カットラス》
マミコ〉のプレゼンテーションを実施。そこで主任設計者は「この機体ならば、
〈織原《パンサー》
聖〉の空戦性能、
〈雛岸《スカイレイダー》希〉の対地攻撃力、
〈守桜《サンダージェット》静夜〉
の航続力と言った特徴を兼ね備え、かつ〈音羽《ラングレー》早苗〉への着艦も可能である」
(注
1)と大言し、開発の再開許可を得る事に成功した。 こうして開発を再開した < 鈴鳴”カット
ラス”マミコ > は予定より一月遅れの 1948 年 10 月に初飛行に成功した。
■【問題点】
しかし、
〈鈴鳴《カットラス》マミコ〉は設計者の大言とは裏腹に問題の多い機体だった。速度
性能と運動性は悪くなかったが、コンパクトな見た目に似合わぬ双発エンジンと、長さを切りつ
1
めた代わりに幅を広くして翼面荷重を稼いだ設計は、計算ほどの低速安定性をこの機体にもたら
さなかった…と言うか、むしろ不安定だった。また、航続距離も思ったほど伸びなかった。テス
トパイロット達は「まるで落ち着きの無い女の子だ。何とかしてくれ」と悲鳴を挙げている。 しかし、ドイツ海軍は審査の末評価用に 20 機を発注。開発は続行される事になった。むろん、
ヴォート社としても何とかしてそれらの問題点…特に艦上機としては致命的な低速時の不安定
さを無くすための改良を行っていたが、なかなか問題点は解消しなかった。外からはわかりづら
かったが、開発チームの悩みは深く、主任設計者が海辺のボートに座り込んで考えふけっている
様子がしばしば目撃された。
■【解決】
ようやく〈鈴鳴《カットラス》マミコ〉が満足の行く性能を発揮できるようになったのは、1950
年も末の事である。決め手は機首に先尾翼を追加した F7U-4 型が登場した事であった。これによ
り、外見は奇抜ながら安定性は劇的に向上し、空母からの発着艦性能はもちろん対地攻撃時の精
密性も格段に良くなった。 また、航続力では大型の増槽を装備し、さらに空中給油装置を追加
する事で、原形機の 1,000 キロ強から 2,700 キロへと大幅に延長されている。この時ドイツ海軍で
はグラマン F9F を後退翼に変更した〈織原《クーガー》聖〉を開発中だったが、それまでの繋ぎ
として〈鈴鳴《カットラス》マミコ〉を戦闘爆撃機として採用する事を決定した。 しかし、当
時カリブ海戦線ではマルティニーク島での激戦が続いており、高性能とは言えレシプロで低速の
マーチンAM - 1〈モーラ〉を代替する機体として〈鈴鳴《カットラス》マミコ〉は大活躍する。
それまでは〈雛岸《スカイレイダー》希〉の独壇場だった精密近接支援爆撃(通称:モーニング
コール任務)においても、時速 900 キロ以上で飛来しては、搭載している 2 トン以上の爆弾をば
らまいていく〈鈴鳴《カットラス》マミコ〉は枢軸陸軍将兵から「エルボードロップ」
「フライン
グボディアタック」などと呼ばれて恐れられた。 このため、F9F〈織原《クーガー》聖〉の実戦
投入後も〈鈴鳴《カットラス》マミコ〉は第一線で使用され、対空、対地任務両方に活躍する。そ
れは、多芸な声優を思わせるものだった。
■【北米航空戦】
1950 年後半、カリブ海戦線において欧州連合軍の退勢が著しく、
〈鈴鳴《カットラス》マミコ〉
を載せる母艦が無くなってくると、東部連合軍は同機をその高速性能を活かした迎撃機に転用す
る。こうして、空中授油装置を外して機上レーダーを追加し、エンジンを強化した F7U-6N〈鈴鳴
《カットラス》マミコ〉が登場。東部連合領域の空を守る事となった。このレーダーは敵機の方向
に向くと「ピコピコプチューン」と言う奇妙な音を立てるものだが、精度は抜群であったため、
〈鈴
鳴《カットラス》マミコ〉パイロットの間では会敵の願いを込めて戦闘前に「ピコピコプチュー
ン、ピコプチューン。もうすぐ敵機は現れる。多分ヤツらは気づかない…」と歌うおまじないが
流行した(注2)。 これより 1952 年の終戦まで 1 年以上に及ぶ戦略爆撃に対し、時速 1100 キロ
と < 富嶽改 > や < ピースメーカー >
(富嶽改をコンソリデーデット社がライセンス生産したもの)、
ボーイング B- 47〈南条《ストラトジェット》紗也香〉などの枢軸軍主力戦略爆撃機群より 200
キロも優速で、AAM-9〈”サイドワインダー”ポチャ〉
(注3)4発を運用する〈鈴鳴”カットラ
ス”マミコ〉は枢軸軍戦略爆撃部隊に多大な打撃を与えている。爆撃隊の護衛を務めるリパブ
リック F-84〈守桜《サンダーストリーク》静夜〉装備の部隊も〈鈴鳴《カットラス》マミコ〉に
は手を焼き、同機を〈お化け〉と呼んで恐れていた。 戦闘中の編隊交信もまことに賑やかで、
レーダーとパイロットの両方が発する「ピコピコプチューン」にくわえて <”サイドワインダー”
ポチャ > の「みゅーっ」と言うシーカー音が交錯し、闇に住む夜間戦闘機部隊とは思えないもの
があった。
2
■【その後】
1952 年、第三次大戦終結後もしばらくの間〈鈴鳴《カットラス》マミコ〉は一線にとどまって
いたが、まず空軍ではマッハ 2 級の画期的な迎撃戦闘機であるロッキードF -104〈スターファイ
ター〉の登場と共に第一線を外れる事になり、海軍でもその 2 年後には同じヴォートのF -8〈佐
原《クルセイダー》みるく〉に譲って現役を退き、
〈鈴鳴《カットラス》マミコ〉が第一線で活躍
した時代は 7 年と短いものだった。しかし、WW 3 の激戦期を支えたその功績とインパクトは大
きく、現在も多くのファンに親しまれている。
■【要目】
F 7U-4〈鈴鳴《カットラス》マミコ〉(艦上型最多量産機)全長:12.09 メートル全幅:13.13 メー
トル全高:4.42 メートル自重:9,045 キログラム全備重量:13,888 キログラムエンジン:ウェスティ
ングハウスJ 46- W E-8(推力 2,597 キログラム)×2最大速度:1,030 キロメートル海面上昇率:
5,383 メートル/分実用上昇限度:12,950 メートル航続距離:2,780 キロメートル(増槽搭載時)武
装:20 ミリ機関砲×4 AIM-N-7 空対空誘導弾×4
F 7U-6N〈鈴鳴《カットラス》マミコ〉(迎撃機型)全長:12.09 メートル全幅:13.13 メートル全
高:4.42 メートル自重:9,245 キログラム全備重量:14,188 キログラムエンジン:P&W J46-P8-A
(推力 3,289 キログラム)×2最大速度:1,137 キロメートル海面上昇率:5,790 メートル/分実用
上昇限度:13,180 メートル航続距離:1,340 キロメートル武装:20 ミリ機関砲×4 AIM-N-7 空対
空誘導弾×4
注 1:
「しょせん物まねだろ」という厳しい意見もある。注2:これを恥ずかしがるようでは一人
前の〈鈴鳴《カットラス》マミコ〉パイロットにはなれないらしい。注3:ドイツのツヴェルク
空対空赤外線誘導弾をレイセオンがライセンス生産したもの。
3
Fly UP