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乳酸菌スターターの利用法とMLF
16 .乳酸菌スターターの利用法とMlLF舳 ・ 1 ほ=し;6b1こ 16 MLF(ma1o −1actic fermentation)はマロラクティック醗酵とも呼ばれ 、乳酸菌の作用に より 、ブドウ酒中のL 一リンゴ酸がL 一乳酸に代謝されると共に 、香味に寄与する各種成分が生 成して酒質の向上に役立つことが知られている 。 乳酸菌は通常のブドウ酒醸造環境にも広く分布しており 、従来 、ブドウ酒を乳酸菌の増殖し 易い環境にすることにより 、こうしたブドウ酒中に自然に存在する乳酸菌の増殖を促してML Fを誘導するといった手法が一般的に用いられてきた 。乳酸菌は菌株の保存や培養が難しいこ ともあっ て、 優良乳酸菌を培養して添加することは余り行なわれなか ったが 、近年 、MLFに ついても取扱いの簡便な乳酸菌スターター が開発され 、その利用が普及しつつある 。 なお 、MLFは辛口の熟成タイプのブドウ酒製造に有効とされており 、酸味の少ないブドウ フルーティな酒質や甘口のブドウ酒の製造には通常不向きと考えられる 酒、 。 ・2 乳酸菌スターターの取扱い 16 スターターは 、製品形体として乳酸薗をそのまま凍結 、或いは凍結乾燥したもの 、その使用 法として前培養してから添加するものと 、そのままブドウ酒に直接添加するものが知られてい 価格的には高くなるが 、保存性と作業性の面で優れた直接添加する凍結乾燥品のスターター る。 が適当と考えられる 。 スターター 保存上の注意 : 凍結乾燥品のスターターはフリー ザーで冷凍保存することにより 、1年から1年半の保存 が可能である 。気密性の高いラミネート袋に入 っているが 、一旦開封してしまうと保存性は なくなるので 、開封後は全量を速やかに使用することが必要である 16 。 ・3 MLF案施ブドウ酒の田製 市販スターターは 、性質の優れた乳酸菌を1種類 、若しくは複数混合してあるが 、こうした 乳酸菌が順調に生育して 、その機能を十分に発揮するためには使用するブドウ酒についても注 意が必要であり 、以下のようにブドウ酒の環境を整える必要がある 。 @ 晶温 適温は20℃前後 、品温低下の可能性がある場合には貯蔵庫か貯蔵容器の保温が必要とな る 。15℃を下回る場合には加温することが好ましい 。一方 、品温が高過ぎる場合は乳酸菌 の生育が抑制されるため25℃を超えないように管理する 一53一 。 @PH リンゴ酸の多い酸味の強いブドウ酒の酒質改善にMLFを利用することも多いが 、こう したワインはpHが低いため乳酸菌の生育が抑制される 。 pH3 .2以上が女手ましい 。pHが低い場合には除酸によるpH調整も併せて行なう必要があ る 。 亜硫酸 亜硫酸は乳酸菌の生育を阻害するので 、MLFの実施を予定するブドウ酒については 、 アルコール醗酵後に亜硫酸を添加しないことに加え 、原料処理の段階での使用量について も注意が必要である 。総亜硫酸として30ppm 以下が好ましい 。 亜硫酸はブドウ酒醸造において有害微生物の汚染防止に重要な役割を有しており 、単に 原料処理時の亜硫酸使用を中止したり 、大幅に減少させると有害微生物による汚染の危険 性が高くなる 。この為 、亜硫酸の使用量を減らすにあたってぽ 、原料ブドウの病果混入を 極力抑えると共に 、醸造設備の洗浄 ・殺菌を徹底する等により微生物汚染防止対策を併せ て進める必要がある 。 @ アルコール分 アルコール濃度の上昇は乳酸菌の生育を抑制するので13%以下が好ましい 。 これらMLF阻害要因の複数が限界値に近い場合には乳酸菌の増殖はより一層抑制され るが 、ひとつの要因のみの場合には多少限界値を超えてもMLFが進行する事もある 。一 般には赤ブドウ酒の方がMLFが起こりやすく 、白ブドウ酒では前述のような条件の制約 を受けやすい 。また 、果汁やブドウ酒の清澄化は乳酸菌の増殖を遅らせることも知られて いる 16 。 ・4 MLFの実施 その詳細は 、購入したスターターに添付されている使用説明書に従う 。 通常 、前述のような条件の整 ったブドウ酒に 、指定された量のスターターである乳酸菌の凍 結乾燥粉末を直接添加するだけで良い 。なお 、スターターの添加時期については 、ブドウ酒酵 母が乳酸菌の生育を抑制することも知られており 、アルコール醗酵が終了したことを確認して からにする必要がある 。 ブドウ酒にスターターを添加した後 、順調に乳酸菌が増殖すれば 、ブドウ酒の表面から微細 な気泡の発生がみられる 。これはMLFによりL 一リンゴ酸からL 一乳酸に代謝される際 、炭酸 ガスが副生するためである 。順調に行けば2∼3週間でMLFは終了する 。MLFの終了は炭酸 ガスの発生が休止することにより判断できるが 、正確には分析してL 一リンゴ酸あ消失を確認 する 。 分析には液体クロマトグラフィーによる有機酸分析や酵素定量法等が用いられる MLFが終了したら亜硫酸を添加した後 、通常の原酒管理に準じて取扱う 一54一 。 。 スターター 添加後のブドウ酒はMLF乳酸菌に限弓ず野生微生物にとっても増殖し易い環境 にあり 、酢酸菌汚染による揮発酸の増加等による酒質劣化の危険性があるので 、MLF乳酸菌 の増殖が期待出来ない場合には速やかに亜硫酸の添加等の処置が必要である 。 なお 、酒税法でブドウ酒醸造に乳酸菌スターターを使用することが認められているが 、その 使用時期は主醗酵終了時(赤プドウ酒のカモシ仕込みの場合は粕分離後のものであること 。) で、 スターターを添加したときをもってブドウ酒が製成されたときとして扱うことになってい る。 その他不明な点については税務署に確認する必要がある 一55一 。