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Title 『平家物語』の女性 : 「覚一本」を中心に(二〇一四年度卒業論文
Title 『平家物語』の女性 : 「覚一本」を中心に(二〇一四年度卒業論文要旨 集) Author(s) 米永, 裕紀 Citation 札幌国語研究, 20: 109-109 Issue Date 2015 URL http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/7786 Rights Hokkaido University of Education 『平家物語』の女性――「覚一本」を中心に―― 古典文学研究室 一四八二 米永 裕紀 『栄花物語』における源倫子像 古典文学研究室 一五〇二 早川 詩織 ①の「祇王」以下九人の女性名章段の配置に注目すると、章 段が連続する、巻の冒頭にあるといった偏りが見られた。さら 「うれし」と思う最初は皇子を産まなかった娘妍子の誕生で、 子を産んだ娘彰子と嬉子に継がれたことが描かれている。 但し、 くらか」な体型と特別長い髪が、それぞれ長男頼通の血筋と皇 本研究では、『栄花物語』の源倫子像を、同時代の漢文日記 や『紫式部日記』 『赤染衛門集』とも比較しつつ明らかにした。 に、章段の前後では物語の重要な出来事が描かれることが多く、 『平家物語』の流布本「覚一本」における、女性 本研究では、 記事や女性の描かれ方の特徴を明らかにすることを目的とした。 女性名章段の位置は、山田孝雄氏の『平家物語』三部構成説の 和歌の贈答や女房集めの手紙執筆も妍子と威子に限られている。 正続編を通じて、倫子の発言や落涙は家族又は自分に関する ことに限られ、女房など周辺の人物への働きかけは描かれない。 各部の序の部分と一致する。また内容的には、清盛の乱暴さ、 続編の倫子は、従来独りよがりな老女と解されてきた。しか し威子や孫章子を思いやることは、女系の繋がりを重視するこ 『平家物語』の女性は、庶民から皇族・貴族まで全て数える と、一四六人が確認できる。それらを、①章段名になっている 高倉天皇や重衡の風流や愛情深さを、際立てて描く役割を担っ 正編では、敦成親王誕生を『日記』以上に「うれし」と喜ん だことが強調され、基本的には夫道長の意向に従うことや、 「ふ ていた。後者の風流や愛情深さは、義仲を含め、没落が始まっ とである。また依然「ふさやか」な髪が描かれ、曾孫師通の体 女性、②それ以外の物語の中心的な女性、 ③その他に分類した。 てから描かれるのも特徴といえる。 るといえる。 賀歌が女房からも贈られ人間関係の広がりもある。 くり返し登場することが特徴である。 最後には夫の菩提を弔う。 た成親・通盛・維盛・重衡の北の方は皆、夫と死別する妻で、 いう点では、前述の章段名になっている女性達と共通する。ま 見ていくと、政治的には日陰者といえる娘や孫にも存在感があ 花』は道長の栄華と子孫の繁栄を描いているが、倫子を中心に 大切にする母としての面の両面が同じ重みで描かれている。『栄 以上のように、倫子は正続編を通じて、政治的な摂関家の母 としての面と、権力や皇統とは直接関わらない私的な繋がりを 型が「ふくらか」とされており、直接・間接に賛美が続いてい ②の女性では、娘や乳母達も存在感は大きい。逆に徳子と時 子は、存在感を抑えて描かれているため、壇の浦での入水と灌 これを一門全体に広げたのが灌頂の巻で、徳子に限らず女性は る。倫子は、一家全体に光を当てる人物として描かれている。 頂の巻が際立っている。物語の転換点や締め括りに登場すると 男性が目立つ 『平家物語』 においても重要な役割をもっている。 - 109 -