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移動式クレーンの取扱い上の注意点
建設 工事の 安全衛生 講 座 移動式クレーンの取扱い上の注意点 建災防セーフティエキスパート 永沼 勝昭 ₁ はじめに 今回は「移動式クレーン」について、また移動 式クレーンの操作に付随する派生リスクの項目と しての「玉掛け」について、その法規制の概要を 確認する。 ₂ 取扱い上の注意点(法規制) 【Q1】 「クレーン」とは何ですか? 【A1】 「荷を動力を用いてつり上げ、これを水平 に運搬することを目的とする機械装置」で ある(※)。 ※「昭和47年9月18日 基発602号」を参照 従って、井戸の釣瓶のように「人力でつり上げる 場合」はクレーンに該当しない。なお、 「水平に運 搬すること」には動力を用いない場合も含まれるの で留意したい。ちなみにクレーンという語は、諸説 あるがその姿かたちから英語の「Crane(鶴) 」に 由来するとされている。 【Q3】 「移動式クレーン」の就業制限は? 【A3】 法令により下記の区分がある。 業 務 内 容 1 2 免 許 つり上げ荷重5t以上 移動式 クレーン の運転 3 ※1「昭和46年9月7日 基発621号」を参照 ※2「平成12年2月28日 事務連絡」を参照 10 「建設の安全」2013.9 特別 教育 ○ つり上げ荷重1t以上5t未満 ○ つり上げ荷重1t未満 ○ 特徴としては ① 車両系建設機械(各種)と異なり「免許制度」 を採用していること ② ①に伴う「3段階の就業制限」を設けているこ とが挙げられる。なお、免許、技能講習、特 別教育の3段階の就業制限にはそれぞれ差異 がある。 ★ 特別教育・技能講習・免許制度 【Q2】 「移動式クレーン」とは何ですか? 【A2】 (一社)日本クレーン協会の教育用テキス トである「移動式クレーン運転士教本」に よると、以下の定義がされている。 「荷を動力を用いてつり上げ、これを水平に運搬 することを目的とする機械装置で、 原動機を内蔵し、 かつ、不特定の場所に移動させることができるもの」 つまり陸上のみならず水上を移動する浮きクレーン や、鉄道の上を移動する鉄道クレーンも移動式ク レーンに該当することになる。そして車両系建設機 械(掘削用)は、上記により移動式クレーンに該当 しない。しかし、掘削用のショベルに代えてクレー ンアタッチメントを取り付けたものは移動式クレー ンに該当する(※1)。 また、クレーン機能を備えた油圧ショベルは、当 該機械をクレーン作業に用いる場合には移動式ク レーンに該当するので留意したい(※2)。 技能 講習 試 験 試 験 (有 無) (難易度) 教育の主体 講師の資格 特別 教育 制限は 特にない 制限は 特にない な し - 技能 講習 登録教習機関 学歴、 実務経験等 あ り △ あ り ◎ 免許 免許者(労働局長)は教育を実施しない (実技に関しては指定機関での教習可) 免許制度の「免許」とは、辞書をひくと「政府(官 公庁)でゆるすこと」とある。つまり「本来は禁じ ているものだが、知識・技能が基準を満たすため、 特別に許すこと」の意である。 換言すれば「つり上げ荷重5t未満の機械につい ては、規程で定められた法定時間数で教育しきれる とみなすが、5t以上の機械については個人の学習 能力差もあり、一定の時間数で教え切れるものでは ない。よって、個人のレベルに合わせて知識や技能 を研さんし、国家が管理する試験を受験してほしい」 という考え方である。