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特定非営利活動法人 岐阜救急災害医療研究開発機構

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特定非営利活動法人 岐阜救急災害医療研究開発機構
平成23年度版 総務省 地域ICT利活用事例
地域ICT利活用広域連携事業
事業テーマ:救命救急支援
「岐阜県救急医療全体最適化事業」
実施団体:特定非営利活動法人 岐阜救急災害医療研究開発機構
(実施エリア:岐阜市、高山市、美濃加茂市、関市、下呂市、恵那市)
事業概要
岐阜県内6市の二次・三次医療機関をネットワークで連携し、一次受入時のCTやMRI画像等の患者情報を情報センター等と共
有するとともに、それらの情報に基づき二次・三次医療機関の医師やコーディネータとテレビカンファレンスが実施できるシステ
ムを構築する。これにより患者の転送判断の迅速化・適正化を図るとともに、貴重な医療資源の有効活用が可能となる。
事業の経緯・背景
 地域課題
① 他の医療機関では処置できない重篤な患者の受入れを主目的としているにも関わらず、他の医療機関でも処置可能な患
者が全体の20%程度を占めており、医療圏における最適な医療リソースの配分が十分できていなかった。
② 岐阜県では、重症患者の救急搬送を受け入れられなかった事由のうち、「手術中・患者対応中」が全国平均を上回っている。
 取組内容
事業
実施前
県内で二次・三次医療機関への転送人数が近年増加している。転送判断を行う一次受入病院では、知見やノウハ
ウの蓄積不足や地域による偏在、転送先病院との患者情報の共有が不十分などの課題があった。そのような中、岐
阜県では「医療機能の分化」「病院間連携の推進」を進めて「場所によらない救急医療の質の向上」の実現を目指して
いた。また、岐阜大学を中心にGEMITS※(Global Emergency Medical Support Intelligence Transport System)の開発が進
められており、個人の医療情報を格納したMEDICAカードは既に数千枚普及していた。
※「Right patient to the right hospital in the right time」をコンセプトに、救急医療体制全体の最適化を目指す救急医療支援情報流通シ
ステム。
事業
実施後
2病院の間でシステムを使用したテレビカンファレンスが行われ、MRI画像を見ながら患者の転送要否について複
数名で検討することは大いに効果的であることが実証された。また、二次受入病院では、転送患者の情報を把握した
上で手術の準備を行うことができ、患者の到着から処置開始までの時間が短縮された。
サービス内容
「救急医療コミュニティシステム」により、一次受入病院における患者情報(血液型、既往歴等)の共有と、二次受入病院の医師
と転送判断のためのテレビカンファレンスを行うことが可能となる。また、 「統合エージェントシステム」により、転送要否の判断を
支援する各情報(医師の所見・判断履歴、類似症例等)を提供する。
サービスの詳細及びサービスイメージ図
■サービス内容
■実施期間
■対象者
■利用方法
統合エージェントシステム
救急患者が搬送された時
医師(一次受入病院)
救急患者搬送時に他病院にある過去の診療情
報を閲覧し、処置時間を短縮する。
■サービス内容
■実施期間
■対象者
■利用方法
1
救急医療コミュニティシステム
緊急度の高い救急患者の転送の判断を行う時
医師(一次受入病院、二次受入病院)
救急患者搬送時に他病院、及びコーディネータとテレビ
カンファレンスを実施し、転送要否を判断する。
平成23年度版 総務省 地域ICT利活用事例 「岐阜県救急医療全体最適化事業」 実施団体:特定非営利活動法人 岐阜救急災害医療研究開発機構
システム概要
 システム全体概要図
岐阜情報スーパーハイウェイを介して、岐阜大学内の情報センターと各病院が接続されている。
 システム活用イメージ
テレビカンファレンス実施までの流れ及び実施イメージ
一次受入病院
情報センター
二次受入病院
待機
患者受入
・CT、MRIを取得
・コーディネータへカンファレンス依頼
対応判断
・本システムにて画像と患者情報を共有
・CT、MRI画像や患者情報を確認
・必要に応じ二次受入病院の選定実施
・二次受入病院の専門医にカンファレンスを依頼
患者転送
・本システムにて画像と患者情報を共有
・CT、MRI画像や患者情報を確認
・3者カンファレンスにより患者転送を判断
一次受入病院では、搬送患者のCTやMRI画
像等を取得し、システムに取り込む。患者が
MEDICAカードを持っている場合は、専用
カードリーダで読み取って血液型・既往歴・投
薬歴等の情報も取得することが可能となる。
転送の可能性が出てきた場合、情報センター
のコーディネータ及び二次受入病院の医師と
の3者カンファレンスを実施し、転送の要否を
判断する。
二次受入病院で
は、転送される
患者の情報を事
前に詳細に把握
することが可能
となる。
システムではメ
ニュー方式を採
用し、直感的で
簡易な操作を実
現している。
2
平成23年度版 総務省 地域ICT利活用事例 「岐阜県救急医療全体最適化事業」 実施団体:特定非営利活動法人 岐阜救急災害医療研究開発機構
導入概算費用等
有効活用した既存資源・コスト削減要素
基幹ネットワークに岐阜情報スーパーハイウェイを活用
することで、ランニングコストを低減するとともに、セキュ
リティの確保及び高速・大容量通信を実現している。
・導入費用:約13,640万円
内訳:システム開発・構築費8,520万円、設置費用5,120万円
・運用費用:約1,165万円/年
内訳:機器類リース費387万円、ソフトウェア使用料266万円、
回線・データセンタ使用料277万円、保守費235万円
導入効果(アウトカム)と導入規模(アウトプット)
導入効果(アウトカム)
導入規模(アウトプット)
単独
二次受入医療機関の主観的応急処置レベル向上率(実感)
単独
救急医療コミュニティシステム人材教育研修受講者の
習得度(実感)
:6機関
連携自治体数
(平成24年2月時点)
86%
平成24年3月に実施したアンケートにて、
処置時間の短縮に「有効」「ある程度有効」と回答した割合
:7機関
連携医療機関数
(平成24年2月時点)
100%
平成24年3月に実施したアンケートにて、
「システム操作を理解できた」と回答した割合
単独
救急医療コミュニティシステム設置数 :9式
(平成24年2月時点)
不適切な転送事案数の削減数(推計値)
救急医療コミュニティシステム
6件削減
平成23年度中に脳卒中により二次救急医療機関より転送され
た事案のうち、不適切だった件数の削減見込み数
人材教育プログラム参加者数
(平成24年2月時点)
:30人
※本効果は事業成果の抜粋であり、全ての効果を掲載しているわけではありません。
事業実施体制
事業主体
:特定非営利活動法人 岐阜救急
災害医療研究開発機構
サービス提供対象 :医療機関の医師
本システムの構築にあたっては、県内各医療圏の高度医療機
関のほか、県・市、医師会、消防本部も救急医療情報連携地域
協議会に参加し、県内の幅広い関係者による事業推進体制を
構築した。
事業実施体制
事業実施相関図
凡例
:実施主体等
:協力団体
県内の二次・三次医療機関の医師
:ベンダ等
特定非営利活動法人 岐阜救急災害医療
研究開発機構(事業主体)
サービス提供
特定非営利活動法人 岐阜救急災害医療研究開発機構
救急医療情報連携地域協議会
岐阜大学
医学部
附属病院
岐阜市民
病院
高山
赤十字
病院
下呂市立
金山病院
木沢
記念病院
中濃
厚生病院
岐阜市民病院
高山赤十字
病院
助言
協力
救急医療情報連携地域協議会
木沢記念病院
助言
協力
中濃厚生病院
恵那市立病院
システム構築
・保守
下呂市立
金山病院
恵那市立
病院
協議会
運営
岐阜大学医学
部附属病院
システム
構築事業者
システム構築事業者
3
平成23年度版 総務省 地域ICT利活用事例 「岐阜県救急医療全体最適化事業」 実施団体:特定非営利活動法人 岐阜救急災害医療研究開発機構
事業主体のコメント・エンドユーザの声
岐阜大学大学院医学系研究科救急・災害医学分野 教授
(特定非営利活動法人 岐阜救急災害医療研究開発機構 常務理事)
小倉 真治 氏
 事業実施後の評価等
連携病院間では画像データ等のスムーズな共有が行われている。平成23年度には別事業(患者情報利活用事業)での開発シ
ステムと連携させ、導入病院数を12拠点へと拡大させた。今後も県の補助によりさらなる導入の検討を進めている。また、当事業
の一環として、ドクターヘリと病院の間のデータ連携の仕組みも構築し、6月から本格運用開始の予定である。
システムの鍵となっているMEDICAカードの普及が1万枚を超え、当事業を含むGEMITSプロジェクトの発展に寄与している。ま
た、県外からの引き合いもあり、今後はより広範囲での展開が期待される。
今後は、システム管理者、システム運用担当者等の役割を明確にし、システム運用を円滑に行う為の運用管理規定の策定が必
要であり、地域協議会において検討しているところである。
利用者の声①
不明点があった際に連絡するケースがたびた
びあるため、診察した医師名まで管理できるよう
になっていることは大変役に立っている。
利用者の声②
服用薬の状況は、治療にて投与する薬品に大
きく影響するため、投薬歴が管理されていること
は大変役立っている。
(医師(35~54歳:男性))
(医師(35~54歳:男性))
利用者の声③
診療情報の入力など、時間との勝負が求めら
れる救急の現場にて負担が大きい作業があり、
より簡単に入力できるインターフェースの検討が
求められている。
(医師(35~54歳:男性))
事業成功のポイント
既存プロジェクトを基盤とした開発の実施
岐阜大学を中心に進められてきたGEMITSの一部分として構想されたため、既存のプラットフォームを有効活用して開発が行わ
れ、他システムとの連携・統合も進められた。GEMITSは県や国の文書でも紹介されるなど注目が高く、モジュール単位での引き
合いもある。
標準規格の採用による接続互換性の確保
患者情報の画像系(CTやMRI等)のフォーマット、及び映像によるコミュニケーション用のデータフォーマットとして、医療や通信に
おける標準規格を採用し、異なるベンダー間や新旧のシステムの接続互換性を確保している。これにより連携病院の拡大も容易
となる。
強力なリーダーシップによる事業実施体制の確立
プロジェクトリーダーの強力なリーダーシップにより、行政、医療機関、医師会、消防など県内の幅広い機関が参画して、強固か
つ継続的な事業実施体制が確立されている。
今後の課題
• 最適化のためには各病院で同じ水準の通信環境が必要だが、現状は病院によって差がある。
• 各病院で同じ水準の通信環境を整えるために、高速かつ安価なネットワークの確保が望ましい。
• 個人情報保護の観点から、個人を特定できるような医療情報の収集・伝達・共有に十分配慮する必要があり、各病院を包含す
るセキュリティポリシーの策定が求められている。
<本件に関する問い合わせ先、導入検討・視察の相談等>
特定非営利活動法人 岐阜救急災害医療研究開発機構
事務局 電話:058-230-6447
E-mail: gedmro [atmark] gemsis.jp
※スパム対策としてメールアドレスを一部変更して記載してあります。
eメールを御送付の際は、「[atmark]」を「@」に変えてご利用ください。
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