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外国人不法就労の日本経済への影響 - So-net

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外国人不法就労の日本経済への影響 - So-net
(無断転用禁止)
BRICs経済研究所レポート
外国人 不法就労 の日 本経済への 影響
∼ 外 国 人 の 不 法 就 労が 実質 G D Pを 3000 億 円 押 し 下 げ ∼
2005年 12月 11日 ( 日 )
B R I Cs 経 済 研 究所 代 表 門 倉 貴 史
E-mail: [email protected]
∼要
旨∼
■国内労働 市場 に外国人不 法就労者が参 入すると、日本人雇用の悪 化を通じて マクロの個人消費 に
マイナスの 影響 が現れる。 もちろん、外 国人不法就 労者が日本 国内 で消費活動 を行うのであれば 、
個人消費へ の影 響はニュートラルとなる が、不法就 労者の多く は、 日本国内で 生活するための最 低
限の消費活 動し か行わないというのが実 情。消費関 数に基づい て試 算すると、 外国人が国内で不 法
就労 する こと を 通じ て実 質個 人 消 費 には ▲0.12% ポ イ ン ト の 下 押 し 圧 力が か か る 。
■一方、国 内企 業の側からみると、下請け中小企業 の雇用主な どを 中心に、人 件費抑制を目的と し
て、不法就 労で あっても安 価な賃金で働 いてくれる 外国人労働 者を 採用しよう とする意欲は強い 。
外国人不法 就労 者の存在は 企業の側面か らみれば、 人件費の削 減→ 収益向上→ 設備投資の増加と い
う経路でマ クロ 経済にプラスの影響を与 える。投資 関数に基づ いて 試算すると 、外国人が国内で 不
法就 労す るこ と を通 じて 実質 設 備 投 資に は + 0.08% ポ イ ン ト の 押 し 上 げ圧 力 が 生 じ る 。
■これらを 踏ま えて、実質 GDPへのインパクトに引きなおす と、 個人消費の 減少によって実質 G
D P に ▲ 0.07% ポ イ ン ト 程 度 の 下 押 し 圧 力 が か か る 。 ま た 設 備 投 資 の 増 加 に よ っ て 実 質 G D P に は
+ 0.01% ポ イ ン ト の 押 し 上 げ 圧 力 が 生 じ る 。 両 者 の 効 果 を 合 わ せ れ ば 、 実 質 G D P に は ネ ッ ト で ▲
0.05 % ポ イ ン ト の マ イ ナ ス 効 果 ( 金 額 に す る と 3000 億 円 ) が 生 じ る 。 つ ま り 、 外 国 人 不 法 就 労 者 の
増加 は、 短期 的 に日 本の マク ロ 経 済 にマ イナ スの 影 響 を及 ぼ す と い う こと だ。
(はじめに)
バ ブ ル 期 、 日 本 では 景 気 が 急 拡 大 す る な か労働 力 不 足 の 問 題 が 深 刻 化 し 、 外国 人 の 不 法就労 者 が 急
増 す る こ と と な った 。 バ ブ ル 崩壊 以 降 も 不法就 労 者 は 高 水 準 で推 移 し て おり ( 図 表 1 )、直 近 の 2004
年 末 時 点 で は 20万 7299人 も の 外 国 人 が 何 ら かの か た ち で 不 法 就 労に 従 事 して い る と み られる 。 最 近 で
は 、 外 国 人 の 不 法就 労 が 、 若年 層 を 中 心 に国内 雇 用 の 悪 化 を 招い て い る と指 摘 す る 向 きもあ る 。
以 下 で は 外 国 人 の不 法 就 労 が 日 本 の マ ク ロ経済 に ど の よ う な 影 響 を 及 ぼ し てい る か を 計測し て み た
い 。 な お 、 本 稿 にお け る 「 不 法就 労 者 」とは、 「 出 入 国 管 理 及 び 難 民 認 定法 」 73条 の 2 第2 項 で 定 義
1
(無断転用禁止)
さ れ た 「 不 法 就 労活 動 」 を 行う 者 を さ す 。
( 個 人 消 費 に対 し て は ▲ 0.12% ポ イ ン ト の下押 し 圧 力 )
外 国 人 不 法 就 労 者の 多 く は 、 低 廉 な 賃 金 で働く た め 、 高 卒 の 若 年 層 を 中 心 とし て 少 な からず 日 本 人
の 就 労 者 が 労 働 市場 か ら 締 め出 さ れ て い ると考 え ら れ る 。
外 国 人 に よ る 不 法就 労 が 国 内 雇 用 環 境 に どの程 度 の 影 響 を 与 え て い る か を 試算 す る と 、外国 人 不 法
就 労 者 と 日 本 人 就労 者 の 完 全 代替 を 仮 定 した場 合 、 完 全 失 業 率が 0.30% ポ イ ン ト 押 し上 げら れ る と の
結 果 が 得 ら れ た(図 表 2 ) 。
2004年 の 完 全 失 業 率 ( 実 績 ) は 4.7% で あ っ た の で、 仮 に 外 国 人 の 不 法 就 労 が す べ て 国 内 就 労 者 に
代 替 さ れ る と す れば 、 国 内 の失 業 率 は 4.4% の 水 準 に と ど ま っ てい た と解 釈す る こ と も できる 。
国 内 の 労 働 市 場 に外 国 人 不 法 就 労 者 が 多 く参入 す る と 、 日 本 人 雇 用 の 悪 化 を通 じ て 、 マクロ の 個 人
消 費 に マ イ ナ ス の影 響 が 現 れ るこ と に な る。も ち ろ ん 、 外 国 人 不 法 就 労 者が 日 本 国 内 で消費 活 動 を 行
う の で あ れ ば 、 マク ロ の 個 人 消費 へ の 影 響はニ ュ ー ト ラ ル と なる が 、 不 法就 労 者 の 多 くは、 日 本 国 内
で 生 活 す る た め の最 低 限 の 消 費活 動 し か 行わな い と い う の が 実情 だ 。 不 法就 労 に よ っ て獲得 し た 賃 金
の ほ と ん ど は 海 外に 送 金 さ れて し ま う 。
説 明 変 数 に 失 業 率を 加 え た 個 人 消 費 関 数 に基づ い て 試 算 す る と 、 失 業 率 が 1% ポ イ ン ト上昇 す る と
実 質 個 人 消 費に は▲ 0.41% ポ イ ン ト の 下 押 し圧 力 が か か る 。 先に 行 っ た 計測 で 、 外 国 人不法 就 労 者 に
よ る 失 業 率 の押 し上 げ 幅 は + 0.30% ポ イ ン トで あ る こ と が 分 かっ て い る ので 、 外 国 人 が国内 で 不 法 就
労 す る こ と を 通 じ て 、実 質 個 人 消 費 に は 0.41×0.30= ▲ 012% ポ イ ン ト の 下 押 し 圧 力 が か か っ て い る
ことになる。
図表1
外 国 人 不 法 就労 者 数 の 推 移
図表2
人
%
350000
6
300000
5
完全 失 業 率の 推 移
現実の完全失業率
250000
4
200000
3
150000
100000
2
50000
1
0
90
91
92
93
94
95
96
97
98
99
00
01
02
03
04
外国人不法就労者がいないと仮
定した場合の完全失業率
0
05
80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04
(出 所) 法務 省 資 料よ り 作成
(出 所 ) 法 務省 資料 、総 務 省「 労働 力調 査 」 よ り 作 成
(図 表1 の注 )1990年は 7月 1 日 、91∼ 96年 は 5 月 1 日、 97年 以 降 は 1月 1日 時点 の 調査 。
(図 表2 の注 ) 外 国 人不 法就 労 者 と日 本 人 就 労 者 の 完 全代 替を 想定 。
( 企 業 の 設 備 投 資 は 中 小企 業 を 中 心 に + 0.08% ポ イ ン ト拡 大 )
一 方 、 国 内 企 業 の側 か ら み る と 、 下 請 け の中小 企 業 の 雇 用 主 を 中 心 に 、 人 件費 抑 制 を 目的と し て 、
不 法 就 労 で あ っ ても 安 価 な 賃金 で 働 い て くれる 外 国 人 不 法 就 労 者 を 採 用 しよ う と す る 意欲は 強 い 。
外 国 人 不 法 就 労 者の 存 在は 、 企 業 の 側 面 から み れ ば 、 人 件 費 の 削 減 → 収 益の向 上 → 設 備投 資 の 増 加
2
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と い う 経 路 で マ クロ 経 済 に プラ ス の 影 響 を与え る と 考 え ら れ る。
で は 外 国 人 不 法 就労 者 の 存 在 は 、 企 業 収 益にど れ だ け の プ ラ ス の 効 果 を 与 える の か 。 法務省 の ア ン
ケ ー ト 調 査 に よ れば 、 外 国 人 不法 就 労 者の1人 あ た り 賃 金 は 月 17万 円 程 度と な っ て い る。一 方 、 厚 生
労 働 省 の 「 賃 金 構造 基 本 調 査 」に よ れ ば 、日本の 正 規 労 働 者 ( 高 卒 ) の 平均 賃 金 は 月 30万円 程 度 ( 04
年 ) 。 し た が っ て、 不 法 就 労 の外 国 人 を 雇用す る こ と で 、 企 業は 両 者 の 差分 だ け 人 件 費を浮 か せ る こ
と が で き る 。 マ ク ロ の 人 件費 削 減 効 果は 、 外国 人 不 法 就 労 者 数 ( 20万 7299人 ) ×1 人 あ た り の リ ス ト
ラ 効 果 ( ( 30万 円 − 17万 円 ) ×12ヶ 月 ) に よ り、 年 間 ▲ 3233.9億 円 程 度 と な る 。 こ れ に よ っ て 企 業 の
経 常 利 益 は + 0.68% 程 度 改 善し よ う 。
さ ら に 、 説 明 変 数に 経 常 利 益 を 加 え た 設 備投資 関 数 に 基 づ い て 試 算 す る と 、経 常 利 益 が1% 改 善 す
る と 、 設 備 投 資は 0.12% 増 加 す る と い う 関係が 得 ら れ る 。 先 に行 っ た 計 測結 果 に よ り 、外国 人 雇 用 に
よ る 収 益 の 押 し上 げ 効 果 は 0.68% で あ る こ と が 分 か っ て い る の で、 実 質設 備 投 資 は 0.12% ×0.68% =
+ 0.08% ポ イ ン ト 程 度 増 加す る 。
( 実 質 G D Pに 対 し て は▲ 0.05% ポ イ ン ト ( 3000億 円 ) の マ イ ナ ス イ ン パ ク ト)
個 人 消 費 に 対 す るマ イ ナ ス の 影 響 と 設 備 投資に 対 す る プ ラ ス の 影 響 を 合 算 して 、 実 質 GDP へ の イ
ン パ ク ト に 引 き なお す と 、 個 人消 費 の 減 少によ っ て 実 質 G D Pに ▲ 0.07% ポ イ ン ト 程 度 の下 押 し 圧 力
が か か る 。 ま た 設備 投 資 の 増 加に よ っ て 実質G D P に は + 0.01% ポ イ ン ト の 押 し 上 げ 圧力が 生 じ る 。
両 者 の 効 果を 合 わ せ れ ば 、 実 質G D P に はネッ ト で ▲ 0.05% ポ イ ン ト の マ イ ナ ス 効 果(金額 に す る と
3000億 円 ) が 生じ る 。
つ ま り 、 外 国 人 不法 就 労 者 の 増 加 は 、 短 期的に 日 本 の マ ク ロ 経 済 に マ イ ナ スの 影 響 を 及ぼす と い う
こ と だ ( 図 表3 )。
図表3
外 国 人 不 法 就 労者 が 日 本 の マ クロ 経済 に 及 ぼ す 影 響 に つ い ての 試 算 結 果
個人消費変化幅(%ポイント)
-0.124
設備投資変化幅(%ポイント)
0.082
実質GDP変化幅(%ポイント)
-0.053
【個 人消 費関 数の 試 算 結 果】
実質 個人 消費 (前 年 比 ) = 2.64+ 0.48×実 質個 人 消費 (− 1) (前 年 比 ) − 0.41×完 全 失業 率
(4.02) (5.18)
( -2.81)
決定 係数 =0.670
推 計 期 間 : 81年 1 ∼ 3 月 か ら 2005年 4 ∼ 6月
下 段カ ッ コ内 はt 値。
【設 備投 資関 数の 試 算 結 果】
実質 設備 投資 (前 年 比 ) = 0.16+ 0.78×実 質設 備 投資 (− 1) (前 年 比 ) + 0.12×全 産 業経 常利 益( 前 年比 )
(0.34) (15.48)
( 5.54)
決定 係数 =0.88
推 計 期間 :81年 1 ∼ 3 月 か ら 2005年4 ∼6 月
3
下 段カ ッコ 内は t 値。
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