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- - 21 (2) 交流授業の成果と課題 今年度も校舎が棟続きである利点を
(2) 交流授業の成果と課題 今年度も校舎が棟続きである利点を生かして,様々な教科での小中交流授業と小学校5年生での 算数科乗り入れ指導に取り組んできた。昨年度までの実践例を基に,6月に1年間の実践計画を立 てた。昨年度の反省を生かし,交流授業の意図とねらいを明確にした授業に努めるために,略案に 「本時のねらい 」「授業の視点」を明記した。さらに指導後,指導観の共有化が図れるように,小 中学校教員が授業の視点に沿って「本時のねらいに対する振り返り」と「交流授業を行ったことに 対して,授業の視点からの振り返り」を記録し,実践を積み重ねてきた。以下のような成果と課題 が得られた。 ①中学校教師による専門性を生かした支援による意欲向上と有用感の高まり 音楽科では,音楽専門の教師にTTで指導してもらうことで,子供の音感や感性が磨かれ,非常に効 果的であった。(資料1)小学校教員が同じ内容を指導するにしても,提示の仕方や模擬演奏,伴奏な どの指導法において,参考になることが多々あった。 また,理科では,小学校4年生の「月の動き」「星の動き,星座のさがし方 」,6年生の「大地 のつくりと変化」の学習でも交流授業を実施した。中学校教員は専門性を生かし,多彩な学習環境 作り,資料提示,実験提示などで,子供の知的好奇心をくすぐりながら,その単元のおもしろさや 楽しさを味わわせ,興味・関心を高めることができた。子供たちは中学校教員と学習することで, 専門的な理科学習の一端に触れ,充実感を味わい,中学校での理科学習に期待感を高めていた。 さらに,算数科では中学校教員が年間を通して乗り入れすることにより,中学校の学習を見通し ての系統性を踏まえた指導をすることができた。(資料3)中学校でつまずきやすい学習内容につ いては,その基礎基本となる段階で丁寧に指導し,定着を図ることができた。子供たちは,既習事 項を活用しながら自力解決し,みんなで練り合いながら解決をする学習スタイルを身に付けるとと もに,「分かる」「できる」楽しさを味わうことができた。 子供たちははじめは中学校教員との授業に対して,その難しい言葉遣いやスピーディーな展開な どの授業スタイルに戸惑っていた。しかし,中学校教員が小学生に対する発問の仕方や学習のテン ポ,板書構成などをその学年の実態に合わせて工夫したことにより,子供たちは「分かりやすい」 「もっと勉強したい」と変容していった。また小規模校ゆえ,子供がかかわることのできる人は少 ない。そのため中学校教員と出会える交流授業は,かかわりを増やす機会をもつ 意味でも,様々な教員のよさとふれあう意味でも貴重な時間になった。 資料 1 3年音楽科「音を聞き合って合わせよう」 資料 2 4年理科「月の動き」 - 21 - 資料 3 5年算数科「三角形や四角形の角」 ②TTによる支援 各学年における英語活動では,教員同士もスムーズに意思疎通を図れることで,授業をやりなが ら子供の反応に応じて臨機応変に展開していけるよさがあった。また,英語に対して不安感をもっ ている子供にとっても,自分の意志や思いを直接伝えやすいので安心して取り組めるということが 子供のアンケートからも分かった。分からない発音をすぐに尋ねられる気安さが「できた」「分か った」という自信につながり達成感や成就感を得ていた。中学校教員にとっても,特に5,6年生 との授業では,子供の英語学習に対する期待と不安感を直に感じ,中学校1年生の入門期の指導に生かして いける手ごたえをもつことができた。(資料4,5) 小学校1年生では課題別グループに対する支援をするために,中学校教員とTTの授業をした。 TT指導は,表現力のつたない低学年には ,個に応じて手厚い支援ができるので有効であった 。 (資 料6) ただし,中学校教員がT1あるいは1つコースを担当する場合は授業の打ち合わせだけでなく, 子供の学習状況や実態等を事前に把握しておく必要である。子供を理解をするために,棟続きの利 点を生かして気軽に授業参観したり,業間にふれあったりしてする積極的な姿勢が求められる。ま た同時に,小中学校教員双方による深い教材研究と授業の打ち合わせも適切な指導のためには必要 である。しかし,そのためにの時間の確保が難しく課題となった。 TT指導の課題として,中学校教員がT1で進めていく場合,小学校教員は主に個別支援に当た っていた。学習効果を上げるためには,より充実した支援のあり方を検討する必要がある。また, TT指導に加え,専科による乗り入れ指導も視野に入れて指導法を考えていきたい。 資料 4 1∼3年英語活動「買い物ごっこをしよう」 資料5 6年英語活動「どこに行きたい?」 資料 6 1年国語科「おむすびころりん」 ③合同授業での伝え合う活動の充実 中学生が相手・目的意識をもって小学生に伝え合う活動を設定し たことは,互いの自尊感情や期待感を高める上で有効だった。(資料 7)事前にスピーチ原稿を準備したり,質問事項を用意したりするだ けでなく,担当の教員間の綿密な打ち合わせがねらいを達成できる 鍵となる。合同授業までに課題意識を高め,話し合いの準備をさせ ることで,質問したり詳細を尋ねたりなど活発に伝え合いができる ものと考える。相手や目的に応じて適切に話し合い,多様な見方・ 考え方のできる児童生徒に育てていきたい。 - 22 - 資料7 中 1 と小6合同授業「中学生って」 ④授業を見合うことで児童生徒の理解を深め,指導観の共有を図る姿勢 小学校教員が中学校の授業参観を通して,自分の指導したことが どのようにつながっているのか確かめたり,何がギャップになって いるのかを考えたりするのは,有意義なことである。逆に,中学校 教員が小学校の授業を参観して,どのような学びを経て中学生にな ったのかを自分の目で確かめることも,中1ギャップの解消には有 意義なことである。そのため,小中互いの子供を理解し,一貫した 指導観をもてるように,交流授業をオープン提示にするとともに実 施日を週案に明示して参観の機会を設けてきた。しかし,実際には 資料 8 5年道徳の時間 中学校教員による参観授業 授業や教材研究,生徒指導などの理由から参観する教員は少なく,指導観の共有を図るための研修 の場にすることができなかった。 今年度は,12月に小学校5年生の道徳の授業を中学校教員に提示し,高学年の「話し合う」姿 や「自分の考えをまとめる」姿を参観してもらう機会を設定した 。(資料8)この機会を通して, 小学校教員の授業展開,発問,板書等など小学校の授業スタイルも理解してもらうことにつながっ た。参観後に書いてもらったメッセージカードには , 「小学校は進め方が丁寧で分かりやすい 。」 「一 人一人の子供に対する支援や言葉かけがあり,きめ細やかだ。」とあった。 小学校と中学校では,指導法の違いがあり,それが中1ギャップにつながっている場合もある。 互いの授業を見合う機会を年間計画の中に位置付け,指導観の共有化を図る機会を設けていく必要 がある。 ⑤小中の施設活用 棟続きではあるが,ふだん小学生が中学校の校舎へ足を運ぶこと は数少ない。今年度は小学校2年生が中学校探検を通して中学校教 員や施設に対する関心を高め,その後もかかわりを求め,職員室や 校長室を訪れるようになった。中学校教員と折り紙遊びや紙飛行機 づくりをしながら楽しんでふれあっている様子が見られた。また, 小学校3年生では音楽室を活用して交流授業が行われた。中学校の 音楽室での授業は新鮮であり,好奇心をくすぐられた子供たちは興 味津々に金管楽器に触れていた。(資料9)音楽室の活用は小学校4 資料 9 2年音楽科「金管楽器のひみつを調べよう」 年生の弦楽器の学習でも有効であり ,来年度から活用していきたい 。 他にも小学生が有効活用できる施設として,多目的ホール(図書館)や理科室,体育館も考えら れる。互いの時間割を再吟味して積極的に活用していくことで,小中一貫の考えに立った指導のも とで学習しているという実感をもたせたい。特に高学年での施設活用は,中学校への進学に期待感 を高めることにつながると考える。 - 23 -