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母島の地質フィールドガイド - 地球学コース

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母島の地質フィールドガイド - 地球学コース
母島の地質フィールドガイド
http://earth.s.kanazawa-u.ac.jp/~umino/Bonin/Bonin_Field_Guide.html
平成22年度版
海野 進(うみの すすむ)
金沢大学地球学教室
〒920-1192 石川県金沢市角間町
E-mail: [email protected]
小笠原群島の地質
小笠原群島の島々は始新世という地質時代に活動した島弧火山です。正
確な年代を決めるのはむずかしいのですが,最新の研究データを加味して考
えると,火山活動の時代はおそらく4,200-4,800万年ほど前であろうと思われ
ます。父島以北の島嶼(父島列島,聟島列島)はやや古く4,500-4,800万年
ほど前の海底火山の集まりで,漸新世(今から3,750-2,250万年前)までに
一旦隆起して島となりました。これらの海底火山は現在の伊豆-小笠原の
火山では産出しない,無人岩というマグネシウムの含有量が高い特殊な安
山岩の溶岩でできています。父島や兄島には無人岩の他にも安山岩,デイ
サイト,流紋岩の溶岩が出現します。これらはケイ酸分では56-58% (無人
岩),58-62% (安山岩),62-72% (デイサイト),72%以上(流紋岩)という違い
があります。
一方,母島は始新世中期に活動した火山島で,現在の伊豆諸島の玄武
岩や安山岩とよく似た岩石でできています。父島同様あまり正確な活動年代
はわからないのですが,最近得られた溶岩の放射年代は約4,400万年前で
す。溶岩の間に挟まれる浮遊性有孔虫化石は4,600-4,200万年前くらいな
ので,化石年代と放射年代はほぼ一致したと考えてよさそうです。母島で一
番新しい地層は石門の石灰岩で,含まれている化石から4,100万年よりは若
いようです。父島以北の海底火山は穏やかな溶岩流出で始まったことから,
数百mよりも深い海底で噴火したと思われます。これに対し,母島の火山は
海面上に顔を出していました。また,母島の南東沖の海底には無人岩の海
底火山が見つかっています。これらのことから,まず聟島から父島を経て母
島の南方に至る広い範囲で無人岩の海底火山が活動し,小笠原諸島を載
せる海底全体が隆起して海が大分浅くなってから母島火山の噴火が始まっ
たと考えるのが自然でしょう。
母島の地質
母島火山と母島列島
従来母島も父島同様の海底火山と考えられていましたが,近年の調査で
火山島として海面上に顔を出していた時期があったことがわかってきました。
母島を構成する岩石は現在の伊豆諸島の玄武岩や安山岩とよく似ていま
す。当時の“母島火山”の海岸では粗い砂地や溶岩のレキがゴロゴロする浅
瀬で大型の貨幣石や貝類が生息していました。噴火の度に安山岩の溶岩
流が陸上から海に流れ込んだり,ときには非常に爆発的な噴火を起こして
火山灰や火砕流を発生したりしました。火砕流の中には山腹を勢いよく流
れ下り,海中に土石流としてなだれ込むものもありました。沖港の岸壁には
このような水中土石流の堆積物が露出しています。これらの火山活動が収
まった後,徐々に島の沈降が進み水没した山稜をおおうように有孔虫や石
灰藻などの造礁生物がリーフを形成しました。これが石門の石灰岩です。
母島で最も古い地層は東海岸の裏南京から裏高根の崖と東崎湾で見る
ことができます。これらは主に安山岩のハイアロクラスタイトと成層した火山
砂岩層と火山角レキ岩層が交互に繰り返した互層からなります。それらを
被って2枚の白色およびオレンジ色の軽石凝灰岩層が裏高根から船木山
まで追跡できます。これらの軽石は爆発的な噴火があったことを示す証拠
です。
これらの地層の上位には乾陸上を流れた溶岩や火砕流堆積物,浅い海
底を流れた板状溶岩およびハイアロクラスタイトからなる地層が母島全島に
わたって見られます。溶岩の間には貨幣石を含む成層した石灰質砂岩-
レキ岩互層や規則的な砂岩-シルト岩互層を挟むことがあります。また,猪
熊湾から長浜にかけての海岸では多数の岩脈が溶岩層に貫入しています。
母島で最上位にくるのが石門の石灰岩です。石門石灰岩には始新世末か
ら漸新世(4,100-3,400万年前)の有孔虫化石が沢山含まれています。石
灰岩層の下にはほぼ水平に成層した緑色砂岩層がありますが,これは下位
の溶岩層が浸食されてできた窪地を埋めるように堆積しています。
母島の南西から南の沖合には向島,平島,姉島,姪島など面積1-2 km2
の小島が点在しています。これらの島々は母島本島と同じく溶岩や火山レ
キ岩,岩脈などからなりますが,貨幣石を含む地層は見つかっていません。
母島のように安山岩が見られるのは妹島だけで,その他の島々は主に玄武
岩でできています。玄武岩は母島本島ではほとんど見られません。向島と
平島では溶岩や火山角レキ岩層の他に,よく成層した火山弾を含む降下
スコリア凝灰岩層が発達しています。このことから,浅海で爆発的な噴火を
繰り返していたことがわかります。
母島の観察ポイント
母島列島の観察ポイント
母島:HH-1~16
向島:MK-1, 2
姉島:ANE-1, 2
妹島:IM-1
姪島:ME-1, 2
HH-1: すり鉢の玄武岩ハイアロクラスタイト
すり鉢左)とその下の海岸に露出する玄武岩ハイアロクラスタイト(右)
HH-1: すり鉢の玄武岩ハイアロクラスタイト
すり鉢の崖下から海岸にかけて玄武岩のハイアロクラスタイトが露出していま
す。母島本島では最もマグネシウム含有量が高いカンラン石玄武岩からなりま
す。暗灰色の溶岩の中に,径5-6 mmの大粒の黄褐色~オレンジ色の鉱物が
沢山見られます。これはカンラン石という玄武岩を特徴付ける鉱物が低温で風
化変質してできた粘土鉱物です。元のカンラン石の形を残したまま別の鉱物に
置き換わったもので,“カンラン石の仮像”と言います。
この玄武岩は西側を断層で切られていますが,同じ層準に続きと思われる玄
武岩が母島西岸のワイビーチから南崎にかけて露出します。
すり鉢の玄武岩中のカンラン石の仮象
HH-2: 裏高根の凝灰岩
HH-2: 裏高根の凝灰岩
裏高根対岸の崖に見えるオレンジ色スコ
リア凝灰岩と白色軽石凝灰岩(矢印)
白色軽石凝灰岩
白色軽石凝灰岩層下部の水中火砕流
堆積物
オレンジ色スコリア凝灰岩直上の貨幣
石を含む角レキ凝灰岩
白色軽石凝灰岩中の軽石と岩片(暗色)
水中噴火で生じた噴煙柱が崩れ落ちて
水中火砕流となる
母島の裏高根から東崎までの間の海岸には爆発的な噴火で生じた軽石
凝灰岩の地層が続いています。浦高根北側,海面より少し上に南に傾斜
する軽石凝灰岩の白い帯が見られます。同じ白色凝灰岩の地層は対岸の
母島本島の崖にも露出しており,左下から斜め右上に向かって走っていま
す(左上写真)。
同じ崖の上を見ると,厚さ2 mほどのオレンジ色のスコリア凝灰岩がほぼ水
平に続いていて,左に追っていくと急傾斜の断層を境に南側が落ちて食い
違っている様子が見られます。オレンジ色スコリア凝灰岩の直上には貨幣
石化石を含んだレキ岩層があります(右上写真)。
白色軽石凝灰岩の上にはよく成層した火山岩の円レキ~亜円レキから
なるレキ岩が見られます。火山岩レキは青や緑,赤や灰色,黄土色など
様々な色合いをしており,風化変質が進んでいることを示しています。火山
岩の他にも丸くて小さな軽石,閃緑岩のような深成岩のレキも見られます。
レキの重なり方から,南向きの水流があったことがわかります。
白色軽石凝灰岩は厚さ10 mほどで,径5-20 cmの大きな軽石が集まっ
ており,やや角がとれた少量の火山岩レキを含んでいます(右中写真)。軽
石の周辺は赤みを帯びて酸化しています。軽石の大きさはそろっており,降
下軽石の特徴が現れています。
白色軽石凝灰岩の下位には斜交層理が発達した凝灰岩があります。そ
れぞれの地層の中では大きな軽石は上方に集まり,大きな岩片は下方に
濃集しています。これは二重級化構造といって,水中火砕流によく見られる
特徴です。浅海底で爆発的な噴火が起こると,火山ガスとともに海中に勢
いよく吹き出した軽石や火山灰は,大量の海水と混じって冷やされると同
時に,水の抵抗によって噴火の勢いがそがれるため,軽石や火山灰はあま
り火口から高く立ち上ることなく火口の周囲に降り積もります。火口の周りに
うず高く積み上げられた噴出物は,とても不安定なためにすぐに崩れて,水
中土石流となって周辺の低い海底に向かって流れ下っていきます。水中
土石流の中では軽石や岩片,火山灰と海水が渾然一体となって流れてい
ます。流下するうちに岩片は重いために沈んでいって先に堆積し,軽石は
浮力によって浮かび上がって最後に堆積することによって,二重級化構造
を生じます。
水中火砕流の上位に降下軽石層があることは,噴火が続くにつれて次第
に激しくなり,ついには軽石や火山灰を含んだ灰かぐらが海面にまで達して,
空中に噴煙柱が立ち上っていったことを示しています。
HH-3: 南崎のプラグ(火道を埋めた溶岩)
HH-3: 南崎のプラグ(火道を埋めた溶岩)
母島南崎のハイアロクラスタイト(左手の岬と鰹鳥島)と塊状溶岩(右手明色の崖)
変質によって白色化した溶岩ドーム Bleached lava dome
母島の南崎に出ると,海に向かって左手に大きな白灰色の崖があ
ります。この崖は直径100 mほどの安山岩の塊状溶岩で,熱水変質
によって脱色・粘土化が進み,岩石がボロボロになっています。塊状
岩体中にはレキ状になった溶岩片からなる破砕帯が走り,特に変質
が激しくなっています。熱水変質帯は海岸から山手に向かって北東
方向に延びています。
塊状溶岩の奥の岬は安山岩のハイアロクラスタイトからなります。
塊状溶岩はこのハイアロクラスタイトで周囲を取りまかれています。こ
のような産状から,おそらく塊状溶岩は火口またはその直下の火道
を埋めた岩体(プラグ)で,固結しかけた溶岩の動きによって破砕さ
れ,それに沿った熱水の通り道が形成されたため,選択的に変質が
進んだものと思われます。
HH-4: 御幸浜と貨幣石(ヌンムリテスNummlites)
御幸浜の全景。上から含貨幣石礫岩/砂岩/安山岩ハイアロクラスタイト
御幸浜の貨幣石。大きな無性世代
御幸浜の含貨幣石礫岩
HH-4: 御幸浜と貨幣石(ヌンムリテスNummlites)
御幸之浜の海岸の崖には円盤型の貨幣石の化石を沢山含んだ砂岩-レキ
岩層がでています。母島の貨幣石は100年以上も前から産出が知られた大型
の底生有孔虫です。有孔虫には海面付近で浮遊生活をするものと,海底に住
みつくものがありますが,貨幣石は後者です。同じ貨幣石でも直径数cmにもな
る平らな円盤型のものと,小さなソロバン玉型のものがあります。ソロバン球型
のものは小型ですが,初房が大きいので顕球型(大球形),大型の円盤状のも
のは初房が小さいので,微球型(小球形)と呼ばれます。顕球型は有性世代
で,成長すると2個体が合体して配偶子を放出します。また,種類によっては
合体することなく配偶子を放出します。2つの配偶子が合体すると微球型が発
生します。微球型は無性世代で,核の染色体数が顕球型の倍あります。微球
型の核分裂によって顕球型(有性世代)が生まれます。このように有孔虫は有
性世代と無性世代が交互に入れ替わりながら繁殖する単細胞動物です。
貨幣石を含む地層は溶岩やハイアロクラスタイトなどの間に挟まれていて,
南京浜,御幸浜,沖村,蝙蝠谷などの石灰質あるいは火山性の砂岩層やレ
キ岩層から多産します。これらの貨幣石は古くはNummlites boniensis
HANZAWAという種類にされていましたが,実際は2~3種類の別の貨幣石と
混同していたようです。
貨幣石を含んだ地層の足下を見ると,黒い輝石安山岩の溶岩が露出してい
ます。割れ目が一杯あって丸みを帯びたサイコロ状のレキが集まっているよう
にも見えます。水底に噴出した溶岩が水冷自破砕してできたハイアロクラスタ
イトと言います(次項参照)。
ソロバン玉状の貨幣石の有性世代
HH-5: 御幸之浜~南京浜
ハイアロクラスタイト
安山岩のハイアロクラスタイト,御幸之浜
赤紫色に酸化した砂岩層に貫入したハ
イアロクラスタイト,南京浜
HH-5: 御幸之浜~南京浜
南京浜では溶岩は割れ目に沿ってだんだんバラバラになっていき,火山角レキ岩に
変わっていきます。この角レキ岩をハイアロクラスタイトと言います。ハイアロクラスタイト
の上には成層した火山性砂岩が載っていますが,赤紫色に変色した砂岩層の大きな
ブロックが溶岩に取り囲まれている所もあります。また,溶岩の割れ目に黄色い砂岩が
詰まっているのも見られます。これは浅い海底にたまっていた柔らかい砂レキ層の上
に溶岩が流下したために生じた構造です。ぶよぶよの砂レキ層は重い溶岩を支えるこ
とができませんから,溶岩は砂レキ層の中にもぐってしまったのです。その時,砂レキ層
の一部がブロックとして溶岩の中に取り込まれ,溶岩に焼かれて赤紫色に酸化しまし
た。一見すると溶岩の上に載っている貨幣石を含んだ砂岩-レキ岩層の方が時代が
新しいように見えますが,実はできた順番から言えば溶岩の方が後だったのです。
ガラスのコップを赤くなるまでガスコンロで熱しておいて,冷たい水を一気
にそそいだらどうなるでしょうか。すぐに想像つきますね。たちまちヒビが入っ
てコップは砕けてしまうでしょう。溶岩でも同じことが起こります。枕状溶岩の
縁が黒いガラス質になっていると述べましたが,窓ガラスも溶岩もどちらもケ
イ酸分を主体とした物質でできています。いわば溶岩は天然ガラスのもとと
思ってよいでしょう。1000℃を越える灼熱の溶岩が冷たい海水の中に一気
に噴火することを考えて下さい。冷やされた部分からたちまちひび割れて,
砕け散ってしまうことは容易に想像がつきます。そのようにしてできた溶岩の
欠片やその集合物のことをハイアロクラスタイトと言います。枕状溶岩の黒
い縁の間を見ると,細かい黄色い砂のようなものが詰まっています。これは
溶岩が水冷破砕してできたガラス片,すなわちハイアロクラスタイトがあとで
風化変質したものです。特にケイ酸分の多い安山岩やデイサイトの溶岩は,
枕状溶岩とならずに溶岩全体が砕けてしまうことが多いのです。
母島には安山岩の溶岩が水底を流れながら砕けてできたハイアロクラス
タイトがいっぱいあります。沖港の北側,鮫ヶ崎の海岸沿いにハイアロクラス
タイトの地層を連続して追うことができます。また,御幸浜から南京浜にかけ
て海岸に出ている黒い岩もハイアロクラスタイトです。父島とちがって母島や
その周りの島々には爆発的な噴火で生じた軽石や,火山弾,火砕流などの
噴出物を見ることができます。
HH-5: 南京浜~万年青浜のベースサージ堆積物
HH-5: 南京浜~万年青浜のベースサージ堆積物
(上)御幸浜から万年青浜にかけての海岸に露出する成層砂岩礫岩は,一見普通の堆
積岩のようですが,実はマグマ水蒸気爆発によって形成されたベースサージの堆積物で
す。
浅海でマグマと海水が反応すると,爆発的な噴火を起こして大量の火山灰が横殴りの
爆風によって周囲に吹き飛ばされることがあります。
(左上)上位の砂岩層は,細粒~粗粒火山灰サイズの明黄色軽石>オレンジ軽石の本
質物質からなり,少量の石質岩片を含んでいます。トラフ型斜交層理は,北東向きに流
れたアンチデユーン構造を示します。
(左下)下位の砂岩礫岩は発泡の悪い軽石と黒灰色の安山岩片や風化の程度によって
赤や黄色に変色した安山岩溶岩片からなります。爆発で吹き飛ばされてきた火山岩塊
が砂岩礫岩層に突き刺さっている様子を観察することができます。
海岸に向かって右手上方には,ベースサージ堆積物の間に白色凝灰岩が挟まれてい
ます(上) 。この凝灰岩層は,軽石中に含まれている鉱物の化学組成から,上部は裏
高根や東崎の凝灰岩に,下部は向島や長浜の火砕流堆積物に対比される可能性があ
ります。
HH-6: ロース石と月ヶ岡神社の石灰岩
HH-6: ロース石と月ヶ岡神社の石灰岩
沖村一帯に分布する粗粒~中粒の石灰質砂岩で,戦前はロース石の名で
石材として利用されました。砂粒の大部分は石灰質の有孔虫の殻でできてい
て,輝石や小さな岩片も含まれます。
沖港西岸の月ヶ岡神社がある小丘は,鍾乳洞が発達した有孔虫化石など
を含む石灰岩からなります。含まれる浮遊性有孔虫化石からおよそ4,0203,850万年前に堆積したと考えられます。沖村一帯に分布する粗粒~中粒の
石灰質砂岩の上位に整合的に重なっており,火山活動が終息した後の母島
火山を縁取ったリーフの一つであったと思われます。
ロース石の露頭
ロース石の近接写真。ソロバン玉状の有孔虫化石
月ヶ岡神社の石灰岩
HH-7: 沖港の水中土石流堆積物
HH-7: 沖港の水中土石流堆積物
沖港の南の岩壁には火砕流が海に流れ込んだために発生
した水中土石流の堆積物が見られます。やや角がとれた安
山岩のレキや岩塊が,粗粒砂ないし細レキ中に埋まっていま
す。岩塊の中には径1-2 mにもなるものもあります。大きな岩
塊の断面を見ると,表面から垂直に細い柱状の割れ目が
入っていることがあります。これは冷却節理といって,高温の
岩塊が水に急冷される時にできた割れ目です。土石流に含
まれていた岩塊の温度が高かく,火砕流が水中に流れ込ん
だことを示す証拠です。
海中に流れ込んだ火砕流堆積物。赤色酸化
したマトリックスに注意。沖港
沖港わきの火砕流堆積物の中の火山弾。輪
郭に垂直に延びる冷却節理に注意。
沖港の土石流堆積物を内陸に追跡していくと,陸上を流
れた火砕流堆積物に辿り着きます。この火砕流堆積物は
大谷に沿って分布しており,乳房ダム下の沢床や両岸で観
察することができます。赤灰色の基地に赤味を帯びて角が
とれた岩片が点在しています。火砕流が流れる間に,岩片
同士が衝突し合うために,角がとれて丸くなるのです。
HH-8: 蝙蝠谷下のアア溶岩
HH-8: 蝙蝠谷下のアア溶岩
沖港北岸の鮫ヶ崎から西岸に沿って両輝石安山岩ハイアロクラスタイトが続き,
蝙蝠谷下の海岸付近でアア溶岩に覆われる。累重したアア溶岩は西浦の北岸ま
で続き,下位にハイアロクラスタイトが現れる。蝙蝠谷下では,アア溶岩は含貨幣
石砂岩に覆われる。
母島西岸,蝙蝠谷下の海岸。板状溶岩と赤色酸化したクリンカーの互
層が続く。
累重したアア溶岩の上に含貨幣石砂岩が重なる。
HH-9: 西浦と三角岩
母島西浦北岸:陸上を流れたアア溶岩と海底を流れたハイアロクラスタイトの境界が汀線を表す
三角岩:アア溶岩の上に含化石砂岩礫岩が重なり,最上位に石
灰含が載る
三角岩対岸の石灰質礫岩。多数の有孔虫や貝殻化石を含む
HH-9: 西浦と三角岩
アア溶岩が何枚も累積した厚い陸上堆積の岩相は,蝙蝠谷下の海岸から西浦北岸まで続き,西浦の石質火砕流堆積物に覆われる。西浦北岸の湾口付近では,ア
ア溶岩の下位にハイアロクラスタイトがあり,ここがかつての汀線であったことがわかる。
西浦の三角岩はハイアロクラスタイトの上位に整合的に重なり,貝や有孔虫化石を多産する石灰質砂岩礫岩互層と最上位の石灰岩からなる。三角岩は西浦のアア
溶岩とは断層で接する。蝙蝠谷の含貨幣石砂岩礫岩に対比され,アア溶岩の上位にある。貝や有孔虫の石灰質の殻は融食され,穂村状態はあまりよくない。小規模
な鍾乳洞ができている。
HH-10: 火砕流
HH-10: 火砕流
噴火した火山の映像で,火口から黒い噴煙が立ち上っているのをご覧になったこ
とがおありかと思います。噴煙が黒く見えるのは,その中に火山灰や噴石が含まれ
ているからです。地下にあったマグマが火口から出る時に粉々になったものが火山
灰や噴石です。噴煙の元はマグマですから,高温で大気よりもずっと重いのです。
火口を出た後周りの空気を十分取り込んで膨張させることができると,大気よりも
軽くなって空高く上昇していきます。時には成層圏(地上10 km以上)にまで達する
ことがあります。ところが空気を十分取り込めないと,噴煙は大気よりも重くなって火
口から出るなり下に向かって落ちてきます。これが火砕流です。火砕流は高温・高
密度の流れで,前方にあるもの全てをなぎ倒し,焼き払いながら猛烈なスピードで
流下します。速いものでは時速200 kmにもなります。特に高速の火砕流はガスを
いっぱい含んでいて,ホバークラフトのように火砕流の下からガスを吐き出しながら
流れます。そのため地面との摩擦が小さく,高速で移動できるのです。
母島西浦の道路切り割りに露出する陸上火砕流の堆積物。赤
味がかった細粒の火山砂に角がとれた安山岩片が点在する(
母島西浦へ下る谷のすぐ南で道路切り割りに露出する陸上火砕
流の堆積物貫く巨大な吹き抜けパイプ
西浦 道路が西浦に下る谷を横切る少し南の道路際で母島火山の陸上を流れた
火砕流の堆積物を見ることができます。道路の切り割りはネットでおおわれ,アカギ
が茂っていて観察しにくいので,左手の道路際に入って岩の断面をみるといいかも
しれません。全体として赤味がかった灰色をした砂粒の中に,丸く角がとれた安山
岩のレキが点在しています。道路の切り割りの路頭では,小石くらいの大きさで丸
みを帯びたレキがぎっしりとつまった部分が縦に伸びています。これは火砕流が含
んでいた高温のガスが抜けた跡で,吹き抜けパイプと呼んでいます。高速火砕流
の特徴です。
HH-11: 石門層
HH-11: 石門層
ハイアロクラスタイトの上に成層砂岩礫岩互層,石灰岩が順次重なる。成層礫岩は,赤色
酸化した火山岩片を多数含み,全体として赤みを帯びている。
石灰岩には有孔虫などの化石が見られる。
母島石門の崖:上位から石灰岩,成層礫岩砂岩互層,ハイアロクラスタ
イトの順で重なる
母島石門下のハイアロクラスタイトと成層礫岩の境界
石門の石灰岩中の有孔虫化石。保存状態が悪く溶喰が進む
HH-12: 母島北西沿岸のアグルーチネート:母島火山の噴火中心
HH-12: 母島北西沿岸のアグルーチネート:母島火山の噴火中心
母島の北西岸に沿って長浜から乾崎までのおよそ5 kmにも渡ってアグルーチネートとその
中に貫入した岩脈群が海岸の崖や岩礁をつくっています。母島火山の中心部がそっくりそのま
ま露出しています。アグルーチネートとなっている溶結火砕物は噴煙柱から降下堆積したもの
と,横殴りの爆風で吹き飛ばされてきたサージ堆積物があります。
火山弾を含むアグルーチネートからなる母島大高根北の海
食崖と岩礁群
庚申岳西の岩礁の硬く溶結したアグルーチネート
サージ堆積物起源のアグルーチネート。
明瞭な斜交層理を示す
HH-13: 大沢海岸の火道角礫岩
HH-13: 大沢海岸の火道角礫岩
母島の北部の大沢海岸から東山にかけての一帯には,母島北西岸と平行に延びる割
れ目火口列があった。大沢海岸では,割れ目火口を埋積した火道角礫岩が幅40 m以
上にわたって露出している。
斑状オージャイト斜長石安山岩が破砕し,巨レキ~ラピリサイズの角レキになり,無斑
晶状ないし斑状安山岩に取り込まれている。後者は前者に対して急冷されている。細粒
の安山岩レキからなる幅230 cmの比較的狭い凝灰角レキ岩帯をはさむ。さらに西側で
は火道角礫岩中に数枚の岩脈が貫入。
細粒凝灰角レキ岩帯:無斑晶状安山岩の発泡度が低いスコリアと火山弾からなり,溶
結している。レキ径は5-10 cmで,リボン状や扁平な火山弾を多く含む。径3-20 cmの
発泡した斑状安山岩レキを多数取り込んでいる。
粗粒凝灰角レキ岩:細粒帯の外側の粗粒角レキ岩は,変質した緑褐色斑状安山岩の
角張った岩塊(30-50 cm)を多数含む。細粒のオージャイト+斜長石斑晶を有する安
山岩中に変質斑状安山岩レキが取り込まれている。ホスト安山岩は発泡度の低いスコリ
アや火山弾で,溶結しているおり,急冷縁は無斑晶状に近い。
大沢海岸:火山弾を含むアグルーチネートからなる火道角礫岩
同岩質の安山岩片からなり,強く溶結している
発泡したコアを取り巻く緻密なリムから溶結した岩片の輪郭がわかる
HH-14: 北港の岩脈群
HH-14: 北港の岩脈群
母島の北部の大沢海岸から東山にかけての一帯には,母島北西岸と平行に延びる割
れ目火口列があった。北港の入り江は,岩脈群の北北西走向と平行に深く切れ込んで
いる。破砕した岩脈の中に次々と岩脈が繰り返し貫入したためにシート状岩脈群となって
いる。
東山から北港を望む
北港の岩脈群:岩脈の中に岩脈が貫入し,シート状岩脈群を形成する
破砕した岩脈群に貫入した岩脈
HH-15: 東山のアグルーチネート
HH-15: 東山のアグルーチネート
庚申塚から東港と北港の分岐点へ向かう道路を下っていくと,行く手の東山の手前に赤い
地肌の斜面が見えてきます。近寄ってみると厚さ数10 cm~1 mほどの赤橙色~暗赤色の地
層が積み重なり,側方に数10 m以上追跡できます。それぞれの地層は径1 cm以下から2030 cmほどのやや発泡した角ばったスコリアからなり,固くこう結しています。スコリア層の間に
は何枚かの灰色~暗赤色の板状溶岩が挟まれていて,多数の気孔が空いた部分が不均質
に分布しています。このような産状は火口近傍に降下堆積したアグルーチネートに特徴的なも
のです。火口の近くに降り積もったスコリアや火山弾は高温のまま地表に落下するため,自重
と熱で表面が溶けてくっつき合い,部分的に溶岩のような地層を作ります。アグルーチネートの
存在は,火口がすぐ近くにあったことを示しています。残念ながら,東山には火口の跡を示す
ような地形はなく,既に侵食によって失われてしまったと思われます。
東山の赤紫色に酸化したアグルーチネートの壁
東山の赤紫色に酸化したアグルーチネート。黒い粒粒は単斜輝
石の大きな斑晶
HH-16: 臥牛角の軽石凝灰岩
HH-16: 臥牛角の軽石凝灰岩
上位から下位に向かってハイアロクラスタイト/白色軽石凝灰岩/赤色凝灰角礫岩
/ハイアロクラスタイトの順で重なる。白色凝灰岩は,細粒で成層した上部層と粗粒軽
石からなる塊状下部層に分けられる。鉱物化学組成から東崎の軽石凝灰岩に対比さ
れる可能性がある。下位の赤色凝灰角レキ岩はマトリックスまで酸化していることから,
火砕流起源の土石流堆積物と思われる。成層し,北向きの古流向を示す覆瓦構造が
見られる。
臥牛角の白色凝灰岩と赤紫色礫岩
マトリックスまで酸化した赤色礫岩
赤紫色礫岩の上に重なる白色凝灰岩をハイアロクラスタイトが覆う
発泡の悪い石質岩片を含む白色軽石凝灰岩
MK-1: 向島小湊の降下スコリアと岩脈
MK-1: 向島小湊の降下スコリアと岩脈
小湊の入り江に向かって右手(東)の崖を見ると,手前に向かって傾く縞模様のある地
層が続いています。硬く突き出た地層と柔らかく浸食されて凹んだ地層が交互に積み重
なることで縞模様ができています。突き出た地層は小指の先くらいから拳大の黄褐色の岩
片がびっしり詰まっています。この岩片はいずれもやや爆発的な噴火で吹き飛ばされたマ
グマの欠片で,スコリアと言います。スコリアに混じって,大きめで黒く縁取られた丸味を帯
びた岩片は火山弾です。いずれも空から水底に降り積もったもので,このような地層を降
下スコリア凝灰岩と言います。凹んだ地層も同様の岩片でできていますが,より細粒です。
また,玄武岩岩脈が数枚降下スコリアの地層を貫いて上に伸びています。岩脈の中に
は重複岩脈を作るものもあります。
向島小湊の降下スコリア凝灰岩(縞を作る地層)
向島小湊の降下スコリア凝灰岩中の火山弾。周囲が暗灰色に縁取られ,
内部がやや発泡している。
MK-2: 向島コぺぺ浜のうぐいす砂と岩脈群
MK-2: 向島コぺぺ浜のうぐいす砂と岩脈群
小湊の北には父島の初寝浦や石浦に見られるような緑の砂浜が拡がっています。浜辺
を取り囲む山々の地肌には小湊で見たのと同じよく成層した降下スコリア凝灰岩が露出し
ています。父島のうぐいす砂の場合は古銅輝石が主体ですが,向島の緑の砂の正体は同
じ輝石の仲間でも,大部分はオージャイトという鉱物です(図3-13)。コペペ浜の周囲の岩
石にはオージャイトを含むものが多いため,風化した岩石中から洗い出されたオージャイト
が波によって選別されて濃集したのです。
コペペ浜の中央にある沢の出口の左手(北側)には,海へ向かって突き出た岩がありま
す。これはカンラン石や斜長石の結晶を含んだ玄武岩の岩脈で,数枚あり北東-南西方
向に延びています。
降下スコリア凝灰岩に貫入する玄武岩岩脈群(赤矢印)
向島コペペ浜のうぐいす砂。緑色をしたオージャイトという鉱物が濃集した
もの
ME-1: 姪島の給源岩脈とハイアロクラスタイト火山
姪島西のハイアロクラスタイトの火山体の断面
ME-1: 姪島の給源岩脈とハイアロクラスタイト火山
4. Uplift and erosion of the volcanic edifice
3. Growth of the volcanic edifice by collapse of the
outer crust of endogeneously growing of lava dome on
the top
2. Growing crust of lava dome capping the summit vent
broke into blocks that collapse down on the slope of the
vocanic edifice
1. Opening of a fissure vent on the shallow seafloor
ME-2: 姪島の降下スコリア凝灰岩
ME-2: 姪島の降下テフラと荷重痕
(上)東海岸に沿って姪島の下部をなす降下テフラが分布する。この上位に
ME-1のハイアロクラスタイトが来る。降下テフラは,灰色凝灰角礫岩を挟在す
るよく成層したスコリア凝灰岩からなり,最上部は厚い塊状の黄褐色スコリア
凝灰岩とよく成層からなる。
(下)最下部の成層凝灰岩層は上位の灰色スコリア凝灰岩の荷重によって変
形し,両者の境界は火炎状構造を示す。
姪島東海岸の降下スコリア凝灰岩
下位の凝灰岩がつくる火炎状構造
ANE-1, 2: 姉島の枕状溶岩
ANE-1: 姉島の玄武岩枕状溶岩
姉島南端から西岸に沿って玄武岩枕状溶岩が分布する。枕状溶岩は破砕
して礫状になった岩相からハイアロクラスタイト中に溶岩片が点在する岩相へ
と側方にも上方にも漸移し,姉島の主要な構成物であるハイアロクラスタイト
へと移化する。
ANE-2: 姉島の玄武岩枕状溶岩
枕状溶岩の近影。黒褐色の急冷縁が密に重なった枕の輪郭を示す。
姉島西岸の玄武岩枕状溶岩
姉島南端の玄武岩枕状溶岩
IM-1: 妹島の岩脈群
妹島南壁のハイアロクラスタイトと降下テフラに貫入した岩脈群
妹島南端の厚い岩脈
IM-1: 妹島の岩脈群
(左)妹島南壁は高さ100 mを越える断崖絶壁となっており,最下部の黄褐色スコリア凝灰岩層とそれを覆う安山岩ハイアロクラスタイトが一望にできる。
写真中央には,3枚の岩脈がほぼ垂直に延び,南壁最高点から少し左に下った尾根筋まで追跡できる。また,写真右端には厚い岩脈が屏風のように海
に突き出ている(右の写真)。
(右)左写真右端の厚い岩脈
母島の地質フィールドガイド
用語の解説
島弧
マグマ
溶岩
アア溶岩
枕状溶岩
火山岩
弓なりに連なる列島のこと。列島の凸になった側には海溝を伴う。日本列島は千島-北海道,東北日本,西南日本の3つの島弧が連なったもの。伊豆-小笠原諸
島,マリアナ諸島など。
地下にある融けた岩石のこと。
火山の噴火で地表に液体として出てきたマグマのこと。また,それが冷えて固まった岩石のこと。
陸上の溶岩流の一種。板状の溶岩の上下にクリンカーと呼ばれるとげとげの溶岩の破片を伴うもの。クリンカーは溶岩の表面が固結して生じた皮が,流れる溶岩に引
き裂かれるようにしてできる。
円柱状の溶岩が細くくびれた連結部でウインナーソーセージのように連なった形態を示すもの。数度以上の傾斜をもつ水底を流れる溶岩に見られる。
噴火で地表に出てきたマグマが冷却してできる岩石のこと。マグマが液体として流れ出た溶岩のほか,爆発的な噴火で火山灰や軽石となったものも火山岩と総称す
る。
火山岩の種類
玄武岩
安山岩
デイサイト
流紋岩
無人岩
火山灰
火山レキ
火山岩塊
軽石
スコリア
火山弾
火砕物
火砕岩
降下火砕物
降下火砕岩
火砕流
火砕流堆積物
岩脈
冷却節理
化石
ケイ酸分の少ない火山岩。SiO2 = 48-52 %。地球上のマグマの大部分は玄武岩の化学組成をしている。
ケイ酸分がやや多い火山岩。SiO2 = 52-63 %。日本のような島弧に多い。
ケイ酸分の多い火山岩。SiO2 = 63-71 %
ケイ酸分が非常に多い火山岩。SiO2 >72 %
安山岩の一種で,マグネシウムに富むもの(MgO > 8 %)。米国海軍提督ペリーが父島に来島した際に,乗船していたオランダ人博物学者Warburgが扇浦から持ち
帰ったものが学術上最初に報告された無人岩。扇浦には無人岩の枕状溶岩は分布していないので,おそらく海岸付近の凝灰角レキ岩中のレキの一つと思われる。
噴火で固結したマグマが砕けて生じた破片のうち,粒径2 mm以下のもの。
噴火で固結したマグマが砕けて生じた破片のうち,粒径2-64 mmのもの。
噴火で固結したマグマが砕けて生じた破片のうち,粒径64 mm以上のもの。
噴火で固結したマグマが砕けて生じた破片のうち,明色で気孔を多く含むもの。
噴火で固結したマグマが砕けて生じた破片のうち,暗色で気孔を多く含むもの。
噴火でマグマが半ば固結した状態で砕けて生じた破片のうち,外皮が緻密で内部に気孔を多く含むもの。
火山灰,火山レキ,火山岩塊,軽石,スコリア,火山弾など噴火の際にマグマから生じた破片の総称。
火砕物が固結して岩石となったもの。凝灰岩,火山角レキ岩など。
噴火によって大気中に飛散した火砕物が地表に降り積もったもの。降下軽石,降下スコリア,降下火山灰などがある。
降下火砕物が固結して岩石となったもの。降下凝灰岩,降下軽石凝灰岩,降下スコリア凝灰岩など。
火砕物が地表に沿って低い方に流下する現象。いわゆる火砕流は噴火で発生する高温の火砕物の流れ。低温の火砕物の流れには火山泥流,ラハールなどがある。
火砕流が停止して生じた堆積物のこと。
火山岩の板状岩体。岩石の割れ目を満たしたマグマが固結したもの。火山の地下にあるマグマの通り道。
溶岩や岩脈が冷えて固まる際にできる収縮割れ目。強熱したガラスを急冷したときに割れるのと同じ原理。割れ目は冷却面に垂直に生じる。冷却節理によって四角,
五角,六角柱状の岩塊を生じることが多く,しばしば「豆腐岩」などと呼ばれる。
過去に生存していた生物の痕跡のこと。全てが石になっているわけではなく,シベリアの凍土に冷凍保存されたマンモスの遺体も化石である。生物の遺骸に限るわけ
ではなく,恐竜の足跡など過去の生物の生活の痕跡は全て化石である。また,何年以上前に死んだ生物を化石と呼ぶかセ確な定義はないが,およそ1万年以上前
のものを化石と呼ぶことが多い。
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