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伝えよう 深めよう 私の見方 ~空想画の原画鑑賞~ (PDF形式:168KB)

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伝えよう 深めよう 私の見方 ~空想画の原画鑑賞~ (PDF形式:168KB)
第2学年2組
1.題材名
伝えよう
深めよう
美術科学習指導案
私の見方
~空想画の原画鑑賞~
2.目 標
(1) 空想画の原画を見て,描かれた形や色彩の特徴や印象,表された人物の表情などに興味を持ち,
主体的に作品のよさや見方を感じ取ろうとする。
【美術への関心・意欲・態度】
(2) 作品を通して気づいたり,感じたりしたことを自分の言葉で伝え合うことにより,美術作品に
対する自分の見方,感じ方をより深めようとすることができる。
【鑑賞の能力】
3.生徒と題材
(1) 生徒について
〈
略
〉
(2) 題材について
鑑賞資料として,郷土画家である木村榮治氏の絵画,題名「階段 上へ」,「階段 下へ」
の2作品を活用する。この作品は,氏の画業で最も高揚した時代に描かれたもので,2作品と
も同年に仕上げている。これらの作品は,画面全体の色調が暗いので,一見暗いイメージを持
たれやすいが,よく見ると,その絵の主題は作者自身が味わった現実の試練をアイロニカルに
描いている。人は苦しい試練に遭遇した時にどう現実と立ち向かい,どう生きていくかという
ことを,見る者へ考えさせるような自叙伝的作品となっている。題名の一方が「上へ」,もう
一方が「下へ」と作者の心の中の葛藤を描いているかのようである。また2作品それぞれに丸
時計が描かれ,その時計の時刻にも様々な想像がかき立てられる。今回は作者名,作品名,作
品の背景など全て隠して,2枚の作品を見比べて鑑賞を進めるが,作品の持つ表現の独特の雰
囲気や,2作品の動きの変化に引き込まれ,生徒は想像力を発揮し,多くの言葉を発しやすい
と思われる。
この鑑賞学習で生徒に身につけさせたい基礎的,基本的事項は,絵を見て感じ取る力,感じ
たことを言葉にして伝える力,さらには仲間の言葉から自分の考えを深める力である。今回は
作者の原画を使うので 100 号作品の大きさや,見る角度の違いによる画肌や艶の違いなど原画
が発するエネルギーを直に感じ,生徒へ何かしらの揺さぶりをかけられるものと思う。学級生
徒は,今年6月に教科書等の図版から「気になる顔」の感想シートづくりを経験しており,こ
の度の学習では,これまでの文章をまとめる力を土台にして,元気に仲間に伝えられる活動に
したい。今回の鑑賞資料は,次の観点から選定した。
・地元の文化遺産を教育資源として活用し,生徒の生き方やふるさと教育へつながるもの
・造形上の特徴がよくわかり,描かれた表現の色・形の意味がわかりやすいもの
・絵から受ける印象や見え方が見る人によって多様に語られやすいもの
・作品資料が大きく,学級の生徒全員が一斉に細部まで見ることができるもの
今回の鑑賞資料2作品は,描かれた事物の表現が劇的であり,生徒は多様な疑問や独自な見
方のある発言が期待できるものと考える。
(3) 確かな学力を身に付けさせるための具体的方策について
① 目標達成に関わる「言語活動」と育成したい「思考力・判断力・表現力等」について
本題材の言語活動は,原画を見て何が描かれているか,どう感じるかなどを絵の中の色彩や
形,構図,画肌などを根拠に言葉で伝え合う活動である。伝え合い活動の形態は,全体の対話
型鑑賞,班の意見交換,ペアでの伝え合いである。育成したい思考力,判断力とは,鑑賞作品
に描かれた表現の一つ一つがどのように見えるかを考える力と考える。また,絵の表現が醸し
出す雰囲気や印象を自分の言葉に置きかえる力と考える。生徒は自分自身の生活経験を土台に,
描かれた一つ一つの事物に意味づけし,価値づけを行い,自分の言葉を与えるものと思われる。
そして,その自分の言葉は,感想としてシートにまとめたり,話し言葉として仲間に伝えたり
することで生徒の表現力が育成されるものと考える。
② 主な「言語活動」と「発問・指示の工夫」について
○ 活発な「言語活動」を進めるために
・生徒の発言は,全体の「正解」や「間違い」と限らず,自分にとっての「正解」であるこ
とを理解させ,発言することへの戸惑いや不安感をなくす。
・全体の場で話せる生徒とそうでない生徒のために,伝え合いの型に変化をつける。
ペア:ささやきや呟き⇒
全体:対話型鑑賞⇒
グループ:意見交換などの伝え合い
・話し手が気持ちよく話ができる土台として,聞き手は話し手の話をよく聞く態度を教える。
○「発問の工夫」とコーディネイターの進行の留意点
・すべての生徒の発言を受容し,発言した生徒に充実感を持たせる。
・生徒の発言はできるだけ話の内容を具体化し,位置づけしてみる。
・個の発言の事実と意見は,区分けして伝えられるようする。(板書など)
・つなげる言葉かけで生まれる新展開を生徒と共に楽しむ。(1対1⇒1対複数の関係へ)
・「発言の全体像を組み立てていく」(多くの発言を整理し,共通理解を図る)
・ふりかえりは記録だけでなく,幾人かの生徒の感想発表で終えるようにする。
○「発言のコツ」-根拠のある考えを導くために-
・思いつきの発言ではなく,絵の中の色彩や形などと自分の見方を結びつけて話すことがで
きるよう話し方の基本を教室内に明示し活用させる。また,発言の根拠がわかるよう,根
拠となる対象例を例示し活用させる。
(○○の色が,○○の色彩が,○○の表情が,全体の色調が,全体の構図が・・・)
・考えをうまく伝えられない生徒へは予め学習シートに書かせ,伝え合いに役立てさせる。
○安心して鑑賞するために
・絵を見る時間,考える時間を確保する。
・絵の細部まで見られるよう資料の大きさ,提示物と生徒座席の位置関係を配慮する。
・鑑賞活動の流れがわかる学習シートを準備する。
③ 題材における「知識・技能」について
鑑賞授業に関わる知識は,感じたことや考えたことを伝えるための言葉の習得にある。その
言葉とは,感情を表す言葉,色彩や形などの状況を表わす言葉,基礎的な美術用語などでそれ
らの言葉を用語例としてまとめたものを学習シート裏に添えた。具体的には「私の美術紹介」
シートを仕上げるために,シート裏面に上記のような用語例を印刷して,生徒の鑑賞のまとめ
に役立てるようにした。また,美術鑑賞で生かす知識として,表現上の技法名や関わる作家名,
時代などを Q&A のフラッシュカードにして教室内に掲示し,自主的に読んで学べる環境をつ
くり,鑑賞活動などに生かせるようにした。また,美術鑑賞における見方,伝え方のポイント
を図示し,通年掲示し,その掲示を見て,さまざまな美術作品を見て,自分の考えを周囲に安
心して伝えられるようにした。本題材は,感じたことや考えたことを伝えるために必要な言葉
を習得し,それを生かして伝えることを美術鑑賞の技能と考えたい。
4.全体計画(総時数2時間)
評
価
規
準
時
1
2
美術への関心・意欲・態度
鑑賞の能力
空想画の原画に興味を持ち,主体的に作品のよさや見方を感じと
ろうとしている。
作品を見て,感じたり,考えたりしたことを伝え合うことにより,美術
作品に対する自分の見方を広げたり,深めたりしている。
ねらい
主な学習活動
・2対の絵の1枚を鑑賞し
て,感じたことや考えた
ことを伝え合うことで,
自分の見方や考えを広げ
たり,深めたりすること
ができる。
・絵を見て,感じたり,気づ
いたりしたことなどを全体
で発言し合う。
・2枚目の絵の鑑賞や,前
回の絵との比較鑑賞を通
して,感じたことや考え
たことを伝え合い,自分
の見方を広げたり深めた
りすることができる。
・2枚目の絵を見て,感じた
り,気づいたりしたことな
どを全体で発言し合う。
・班内で意見交換をすること
で,絵の見方を広げたり,
表現のよさにふれる。
・前回の絵と今回の絵を比較
鑑賞し,感じたり,気づい
たりしたことを全体で発言
し合う。
思考力・判断力・表現力等を育てる方策
~「言語活動の充実」の観点から~
評価規準【観点】
・全体での対話型の鑑賞活動と,班毎の
意見交換を通して,生徒の思考力・判
断力・表現力を育てる。
(気づいたこと,気になる表現,疑問
に思う表現,比較して想像したり,
考えたりしたことなど)
・空想の世界の絵画に興味を持ち,主体
的に作品のよさや見方を感じとろうと
している。
【関心・意欲・態度】
・全体での対話型の鑑賞活動と,班毎の
意見交換を通して,生徒の思考力・判
断力・表現力等を育てる。
(気づいたこと,気になる表現,疑問
に思う表現,比較して想像したり,
考えたりしたことなど)
・空想の世界の絵画に興味を持ち,主体
的に作品のよさや見方を感じとろうと
している。
【関心・意欲・態度】
・作品を見て気づいたり,感じたりした
ことを相互に伝え合うことにより,美
術作品に対する自分の考えを広げたり,
深めたりしている。
【鑑賞の能力】
・比較鑑賞し,双方の表現に違いから気
づいたり,感じたりしたを相互に伝え
合うことにより,美術作品に対する自
分の考えを広げたり,深めたりしてい
る。
【鑑賞の能力】
・班内で意見交換することで
絵の見方を広げたり,表現
のよさを深めたりする。
5.本時の学習(2/2)
(1) ねらい
2枚目の絵の鑑賞と,前回の絵との比較鑑賞を通して,それぞれの絵の中の色彩や形,構図から,新たに気づいたり,感じたりしながら,自分の
見方を広げ,深めることができる。
(2) 本時のねらいを達成するために取り入れる言語活動について
前時の作品と本時の作品の両方の比較鑑賞をしながら,新たな自分の感じ方や考えを全体や班で伝え合う。
学
習
活
動
形態
指
導
と
支
援
○評価規準〔評価方法〕【観点】
☆努力を要する生徒への手立て
1.今日のめあてと学習の流れ,活動の約束 一斉 ・じっくり見せるめに鑑賞マナーを確認し合う。
事を聞く。
伝えよう
深めよう
私の見方
2.2作目の原画を見て,自分の考えを伝え
たり,仲間の考えを聞いたりする。
個
ペア
3.2作を比較して見て,感じたことや考え
たことを伝える。
一斉
・絵を見る時間,考える時間を確保する。
☆話しが苦手な生徒には,ワークシートに自
・始めの30秒は無言で見せる。
分の感じ方をメモさせ,伝えたいことを整
・隣同士の伝え合いは許容する。
理させておく。
・気になる表現があったら簡単な記録を勧める。
・発言は根拠を付けて発言できるようにする。
○主体的に作品のよさや見方を感じとろうと
絵の中の色彩や形,全体の構図,人物の表情,
している。〔鑑賞態度・発言の観察〕
しぐさなど,様々な表現の要素から発言を促す。
【美術への関心・意欲・態度】
・指導者の立ち位置を変え,生徒が絵を見ながら,
全体に発言できるようにする。
・視点の異なる発言は全体に返し,反応を見る。
(新たな表現の要素,見え方,感じ方などに注目
した生徒発言を次につなぐ。)
・全体の発言や話題の中心や傾向を確認する。
・考えたことや想像したことを物語風に記録させ
班内の伝え合いに生かす。
4.比較鑑賞で思い浮かんだ自分の感想や想
像を根拠を交えて班内で伝え合う。
班
○比較鑑賞から気づいたり,感じたりしたこ
とを相互に伝え合うことで,美術作品に対
する自分の考えを広げたり,深めたりして
・話し合いが深まった班を選んで話題の中心を報
いる。〔発言の観察・ワークシート〕
告してもらう。
【鑑賞の力】
5.ふりかえりをする。
一斉
・ふりかえりの記録をまとめる。
・数人の生徒に今日の学習の感想を答えてもら
い,個々の見方をさらに深める。
※下線部は主たる言語活動
・グループリーダーに司会をさせる。
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