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12.08.17 ラテンアメリカのファースト・フードは
ラテンアメリカのファースト・フードは、何か? 先日、ラテンアメリカ愛好家の人びと、4人が集まって、各国のファースト・フードの話 しになりました。 メキシコに長く滞在した一人が、切り出しました。 「各国の物価水準を比較することで、どこの国にもあるマックのハンバーガーが引用され ることがありますが、正確に生活の実態を示しているでしょうか?」 と疑問を出しました。 彼は、 「イギリスの雑誌『ザ・エコノミスト』が7月26日号で、ベネズエラのビッグマック の価格は、世界で最も高く、7.92ドル、続いてノルウェーで7.06ドル、スイスで6.56ドル、 ブラジルで4.94ドル、アルゼンチンで4.16ドル、米国が4.33ドル、メキシコで3ドル、ロ シアで2.29ドルと報告している」が、どれだけの意味があるだろうかといいます。 さらに、彼は続けます。 「マック・ハンバーグの価格の比較は、まずそれぞれの国内通貨と外貨のドルとの換算レ ートに影響されます。さらに、それぞれの国で、国民的食べ物とマックの違い、所得から くるマック利用の頻度の問題もあります。メキシコでは、普通、マックは、40ペソ(1ド ル=13ペソ)で、庶民の間では、子供達、青年達にとってマックに行くのは贅沢にみられ ており、誕生日とか、特別の日に親が連れていく程度です。また、ハンバーグといっても 地のブランドもあり、マックの価格とは競争せず、居住地域により大変安いものがありま す。日本で考えられない幅広い価格帯が見られる社会です。 日常のファースト・フードは、トウモロコシを使ったタコスで、これは、普通の店で食べ ても6ペソ程度、屋台だともっと安く3ペソ程度です。メキシコは、月額最低賃金は、約1,800 ペソです。このタコスの価格は、最低賃金の0.35%に当たります。日本だと300円程度の 感じでしょう。ですから、マックの値段では、メキシコの物価水準を理解できません」。 続いて、ベネズエラに住んだことがある友人が続きました。 「ベネズエラでもそうです。富裕層、貧困層が住む地域により、幅広い価格が見られます。 ベネズエラのハンバーグは、安いもので30ボリーバルですが、マックは、やはり贅沢品と みられています。マックは、富裕層にとっては、十分利用できる価格でしょう。しかし、 一般の低所得の市民にとっては、高値の花で、まず行きません。市民は、ファースト・フ ードとしては、一般にアレパ(トウモロコシで作ったパン)を食べます。このアレパは、 8ボリーバル程度で、月額最低賃金の1,790ボリーバルの0.45%で、これなら、日本の最低 賃金からすれば、350円程度となります。決して国民がファースト・フードに手が出せな いような経済状況ではありません。一般の普通のファースト・フードのハンバーガーが、 『エコノミスト』がいうように7.92ドル(34ボリーバル)だと(一説には55ボリーバル= 12.79ドルという報告もあります)、最低賃金の1.8%となります。マックが最も好まれ、頻 繁に利用されるファースト・フードだとしたなら、一日ハンバーガー1個だけで、1カ月で 1,020ボリーバルとなり、最低賃金の半分以上を使うわけで、これでは、国民は暴動を起 こすでしょうし、チャベス政権は、とっくに崩壊しているでしょう」。 今度は、キューバに事務所を置いている商社の人が話します。 「キューバでは、ハンバーガーは、マックは米国の経済封鎖でキューバに出店できず、店 がありませんが、キューバ風ハンバーガーが、3~5CUC(1CUC=24キューバペソ)で売 られています。キューバの平均賃金は、月額448ペソですから、100ペソのハンバーガー は、賃金の20%をはたいて食べることになります。日本の平均賃金からすれば、ハンバー グ1個、4万5000円程度になり、ひっくり返ってしまいます。 しかし、よく陥りやすい誤りですが、キューバの計算は、こういう計算にはならないので す。各種の無料制度、補助金制度、日常生活の4分の3を稼ぐ副業(賃金は4分の1しかカバ ーできません)を計算しなければなりません。キューバ人は、外食は、ファースト・フー ドであれ、贅沢でほとんどしません。キューバでもファースト・フードとしては、1CUC 程度のホットドッグ、トウモロコシで作ったタマールを安く、買いやすい価格で売ってい ます」。 このように各国を良く知っている3人の話しを聞くと、各国のマックの価格を、為替レー トでドルに直し、それで各国の物価水準を測り、国民生活の困難度を推測するというのは、 あまりに短絡的な方法だと言わざるをえません。 (2012年8月16日 新藤通弘)