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都薬雑誌 Vol 34 No.3 (2012)

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都薬雑誌 Vol 34 No.3 (2012)
我が国の医薬品産業の
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現状と将来
.、
いとうかつひ
日経BP社日経バイオテク契約記者伊藤勝彦
(株式会社ジェネティックラボ取締役)
前回都薬雑誌V0134N02)は, H本の製
た
薬企業の研究開発力をプロyクバスターから
方で,これらプロックバスターは20年以
評仙した 2010年度の全ブロックバスターは,
上前に作られた化合物であるから.現行の研
107製品企業別には米ファイザー社の13製
究開発力を表しているとは限らないそこ
品がトップ 2位はスイスのロシュ;1..米メ
で,今同から数1川に渡り,ブロックバスター
ルク社,萸アストラゼネカの9成分,5位は
候補として派目されているパイプライン沖.び
米イーライリリー社,次いでスイスのノバル
に最近承認取得をした製品に焦.'瓢を'"てて,
ティス社.米アムジェン社であった 9位に
H本の製桑企業の実力を評価してみたい
は武田薬品」二業が4製品で登場.15位はア
ブロックバスターになる条件として,
ステラス製薬.第一・典,エーザイの2製
ファースト・イン・クラスまたはべスト・イ
11
「111,
22位には大塚製薬と塩野毅製薬の1製品
ン・クラスであることが挙げられるファー
であるブロックバスターを保イiする世界企
スト・イン・クラスは.特に新規性・有用件
業26社のうち,Ⅱ本企業は士.位にはないもの
が,窃く.従来の油療体系を大幅に変えるよう
の6社が入ったこの分析から,日本の製薬
な独創的医薬品をいう。治療薬がない領域に
企業は1礼当たりのブロックバスターの保有
対する新薬も含まれる。「ピカヒカの新繋
数こそ少ないが.プロックバスターを創製す
が縮まって,業界川語では「ピカ新とも呼
る研究ノJを持っている企業が多いと結論づけ
ぱれることもあるファースト・イン・クラ
た加えて.Ⅱ本企業は,スタチン系高垢」Ⅲ
スは.市場に番下で登場したときには址も
症治療薬,2型糖尿病治療薬であるぺルオキ
優れているが、欠点もあるその欠点を人幅
シソーム増殖剤j志答性受容体γ(PPAR・γ)
に改良,ファースト・イン・クラスやその後
作働集,統合失調症治療薬のドパミンD.・受
に登場した薬剤に対して優位性を持たせた薬
容体の部分的作動薬.高血圧症治療薬のアン
剤をべスト・イン・クラスと1呼ぶ
ジオテンシンⅡ受容体佶抗薬など.新しい作
削機序の有川な薬剤を創製したことを紹介し
冒「イムセラ」/「ジレニア」
イムセラⅢ辺菱製桑ジレニア」
伊藤勝彦
薬学博士(東京理科大学).薬剤師
1986年東京築科大学卒,束京理科大薬学部修士課程俸7後,
吉富製薬(現田辺三菱製藥)入社。 2001年からソシエテジエ
ネラル証券,ドイツ証券で証券アナリスト業務に就く。日興ア
ントファクトリーで,バイオベンチャー企業への投資業務を行
う投資先の免疫生物靭究所では,株式公開業務の奨任者とし
τ.取締役経営企画室長を務めた。現在,国際医薬品情報編
集委員,日経BP社日経バイオテウ契約記者。バイオベンチャー
の支援をしながら.製案企業とハイオベンチャーとがWin.vvin
の関係を構築できるか模索してぃる
ノバルティスファーマは,多発性硬化症
multゆlescerosiS の治療楽般名は塩
酸フィンゴリモト以下、フィンゴリモド),
開発コードはFTY720である作用機序は新
しいファースト・イン・クラスの薬剤フィ
ンゴリモドは,米国で2010年9"に,欧州は
2011年3 打に承認、された国内では2011年Ⅱ
^誌 Vd34 N03 (2012) 53
圃
我が国の医薬品産業の現状と将来
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スフィンゴシン
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スフィンコシン 1 リン酸【SIP】
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FW7Nりン醒
(15)FN720P)
れてぃなかったため.このミリオシンをりー
おり.これを形成する最11胞は中枢杣経では乏
ド化合物として研究を展開することを決定す
る今から老えると.この判断か良かったこ
とになる ISP.1の持つ強い毒性を嵯減する
突起惨細胞,末梢杣経ではシュワン釧胞であ
ため, m Vル0のアッセイの結果を基に化学
ために早く杣経信号を伝達できるのである
構造の変換が繰り返されたそして,址終的
しかし.多発性硬化症を発症すると、この髄
に副作mが軽減され,効果も高く,構造的に
鞘が口己の免疫によって攻喋されて脱制の状
も新規かつ単純化されたフィンゴリモドにた
態になるため杣経伝達速度が遅くなり,さま
どり許くのである
る慥鞘は絶縁性のりン脂質の屡で形成され
ているこの絶縁性の髄鞘で軸索が覆われる
ざまな神絲症状が引き起こされる多発性硬
ところがフィンゴリモドの作用機牛を研究
化症には特異的な初発症状がないため発見が
すると.ミリオシンのそれとは違う令く新し
難しい症状が進むに従い,視力障害,複
い作j,1」機停であることが明らかとなった当
視,小脳失綱, 1川艘のまひ,感覚障1与.勝
時.効率の惡い方法として認,哉されていた
胱直腸障害、歩1」'障害が生じてくる特に若
m viv0のアッセイでの薬効,平佃iが思いもか
い女竹に発病する多発性硬化症の治療にΠ
けない新規作用機序の発見に結び付いだ浜例
おきの自己洗射はつらいとも開くこのよう
でもあり.興味が持たれるフィンゴリモド
な難病に対して,既存薬よりも高い効釆を小
は,りン1婿質であるスフィンゴシンと同様に
し,経Πで投リ・されるフィンゴリモドに患者
薬のIFNβ製剤よりも高い右効性が臨床試
体内でスフィンゴシンキナーゼによって速や
や医療関係岩の期待は高い
験で検証されていることを挙げる経口剤の
かにりン酸化されて(S)"FTY720Pへと変換
2010年の製品別の光上高は.インターフェロ
フィンゴリモドがご注射剤のみの市場に登場
される(S)、FTY720PがSIP1受容体に結合
ン(1FN)β製剤では「アボネックス」(バ
することで,今後市場がどのように変化して
すると,末梢血に循環しているりンパ球.特
「ハラヴェンエーザイ)は乳がん治療
イオジェン・アイデック1士)が25億1.800万
いくのか. Jシ常に興味あるところである 11i
に成熟T細胞をりンパ節,パイエル板の2汰
薬である般乳はメシル酸エリプリン(以
ドル,「レビフ(ドイツメルク村:)が221意
場性及び右用外からヒーク時の光上高を30億
リンハ管系矧織内にホーミング(移動)され
F,エリプリン,開発コードはE7389 米
るのであるこのような作用機序を持つフィ
1叫では2010年11月に承認を取得し,欧州に
ンゴリモドは.町初.啓臓移植輪乳こ使用する
おいては20H年4j1の英1ホ1を皮切りに.ス
\/
SIP受容体に結合
図1 塩酸フィンゴリモドの作用機序
塩酸フィンゴリモドは体内でスフィンゴシンキナーゼによってりン酸化される。りン酸化された堰酸フィンゴリ
モドは,スフィンゴシン 1リン酸(SIP)と競合する。その結果.二次りンパ節や胸腺からの成熟T細胞の移出
が阻まれ. T細胞の体内移動が妨げられて免疫反応が阻害されるのである。今までにない作用機序である
打28Uに発売となった
多発竹硬化症治療楽の「1i場性は興味深い
130oliドル.ベタフェロン」(バイエル社)
が16位ドル。「コパキソン」(テバファーマ
ドル 3,000億円と予想している
フィンゴリモドの創染については、'11初.
冒「ハラヴェン」
゛、
フインランド
スーティカル・インダストリーズ村:)は33
Ⅲ吉富製薬(現田辺三菱製薬).京都火学の
免疫抑制剤としての開発が先1丁されていた
億1,600万ドル.「タイサプリ"」(バイオジェ
藤多哲朗教授ら,旧台糖(現三井製殺切の
しかし.安令性の点から2007年5"に岡内外
ン・アイデック社)は副作川問題を克服い2
3者が,冬虫夏草の一種であるツクツクボ
での腎臓移植の免疫抑制剤としての開発は小
ダ.ポルトガル.スヘインでも発光となっ
億3.000万ドルとなった。 5製品がプロック
ウシに寄生するツクツクホウシタケ1Saria
止した病"!的にりンハ球やマクロファージ
たシンガポールは 5 Ⅱ,Ⅱ本は 7j1に新
バスターにあるそして.5製品が形成する
Smd加r五の培養液分画に免疫抑制作用がある
が病巣に浸潤する難病の多発竹硬化症に適応
発光となり、承,忍取得国は34力 1叫(20H4ド
市場は108位ドル(簡易的に 1 ドル 100円と
ことを発見した。そして.1Sal'm sindah打の
症を変史したのである
10j1現右D と才1尖に拡大している 8j1に
すれぱ,Ⅱ本円で 1兆800億PI,以下1'D を
培養液から活性物質を取り川した単離棚製
多発性硬化症は,20歳から40歳に突然発症
超えてぃる満たされていない1匠療二ーズを
した活竹1物質はシクロスポリンよりも強い免
するΠご免疫疾患で女竹.に多いいまだに,羊
はタイ,マレーシア,香港で承認11'1訥した
捉えたために大きな市場が形成されているの
疫抑制作111を不したその化介物をISP、1と
細な病例は不明である欧米ではお乍成人の
抗がん剤として広く使われているタキサン
である
乳付けたしかし,1SP、1の化学枇造を同定
御経疾患の中で最も多く発姉・し.川界小には
系化合物は微小管を安定化するが.エリプ
フィンゴリモドの最大の特徴は経「1剤であ
してみると,抗真凶活竹を小す物質として報
700万人の忠者がいるとされる病理的には
リンは微小管の仰長を阻書するエリブリ
ることだ既存薬の5成分全てが注射製剤な
告のあるミリオシンの化学構造と致し.新
炎症性矧胞であるりンハ球やマクロファージ
ンの EMBRACE (Eisai Metastatic Breast
ので,フィンゴリモドの利便性は高いさら
規物質ではないことが判明したただし,幸
が病巣となる脊髄に浸潤して柳経組織を攻撃
Cancer study Assessing physician's choice
に,大剛製品が期待される根拠として.標準
いにもミリオシンには免疫抑制活性が報告さ
する打做神経の周りには舳鞘が取り巻いて
Versus Eribulin と宅,付けられたグローバ
54 都桑雑誌北IM N03 (卸12)
ーデン
イツ,オーストリア,ノルウェー.オラン
はオーストラリア,9月には韓凶.10j1に
都繋雑酷 Vd34 NO.3 (即12)聞
圃
我が田の医薬品産業の現状と将来
ルフェーズⅢ'験は多施設.無作為.非盲
を開始した非小細胞肺がんを対象とした
r・Hが半分になったとはいえエリブリンの化
剤の供給は小可能である工ーザイが,複雑
検.並行2群間比較試験であり,エリプリン
フェーズⅢを開始し.国際共同治験として
学構造は複雑である(図2)ゆえに.エリ
な枇造で化学合成が困難であると考えられる
投芋劉{と治験医師選択療法施行群との問で全
取り釧むタキサン系の抗がん剤でトップ
プリンの製品化において最後まで課題として
エリブリンの合成法を確立し,必要揖の薬剤
生存期間が比較された n 762 この試験
のタキソテールは20仭乍に30億3300万
残ったのが.製造コスト、安価に大量に製造
をがん患Xに供給できるようにしたことは大
は.アントラサイクリン系およびタキサン系
ドルを売り上げている前治療雁の少ない難
するための力法論であ0た工ーザイ・オ
いに称贅されるべきであろう
抗がん剤を含むがん化学療法剤による前治療
治竹乳がんについては2012午度に日歐米での
ンコロジーPCUの大和降志プレジデントは
歴のある,局所再発竹、あるいは転移竹浮Lがん
小請を目擶しており.ブロ yクバスター化に
エリブリンの合成は62T1羊から成っている
の患者が対象である。その結果.主要評価
は,これらの適比、拡大の行力が鍵となると
外資系製薬企業の研究Xからは,クレージー
項目である全生存期問の中央値については.
みている令ての適応症取得に成功すれぱ.
と'われたこともあると'11時を振り返る
10億ドル超の光上げを持つ大削製品を台
エリプリン投与・群が統計学的有意差をもっ
ヒーク時売上げ2,500億円を推定している
この難題を解決した工ーザイの合成技術は.
うもちろん,ブロックバスターとなる
次同は, H本企業が創製したプロックバス
ター候補(2)をお送りする
て25力月延長(13.12力"対1065力 jj, P
0.041 した前治療歴のある転移性乳がん
エーザイが抗がん剤の研究開発に取り紕
世界トップクラスにあるクロイソカイメン
ためには明確な有用性をもっている必要
み始めたのは1980年代後半問もなく探
60okgからハリコンドリンBはわずか125mg
がある
患者において,'世界で初めて単剤で統計学的
索チームが同を付けたのが.ハリコンドリ
しか得られない犬然物からの挑出による薬
に有意に全生存期問を延長した。
ンBという物質だったハリコンドリンB
エリブリン投与群で頻度25%以上の有害事
は.浦半島で採取したクロイソカイメン
象は,疲労感,好中球減少.貧血,悦毛症,
Halkhondrm okadan から名古尾大学理!学
無感覚や子足のしびれなどの末梢神経障害,
部の平田義正教授らが単離・精製,構造決
吐き気.便秘であった。この中で,特に重篤
定に成功した化合物である強い抗唖癌活性
な有害事象として報告されたのは好小球減
を持つことが分かった 1992年に工ーザイ
少,投与中止に毛った士な有害事象は末梢神
は、ハリコンドリンBの全合成に初めて成功
経障害(5%であり,既存薬の発生率と同
した米ハーハード大学の岸繋人教授と共向
等以下であると考えられる
研先を開始ハリコンドリンBの活性部分だ
さらに適応症の拡大も積極的に実施されて
けを残して新たな化合物を作り出した側鎖
いる米国で巡イ丁中であった肉腫を対象とし
や結介の種類を変えることで.体内動態や有
たフェーズⅢは,国際共同治験として取り組
効性を改粋最適化の結果生まれたのがこの
むこととなり,日本においてもフェーズⅡ
エリブリンであるハリコンドリンBから分
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研修会のお却、鳥社団法人日本女性薬郵師会の週言゜'
'一般社団法人日本女性薬剤師会の通信教育講座
平成24年度「診療ガイドライン・薬剤コース」
受講期間;'1勺曵24乍 4 H 'r成251ド3 jl
学習疾患スケジュール:
4 Ⅱ:1"1測保;今.原発の影判をぢえる
5jl:睡峨時無呼吸症候群;セルフケアの爪饗性
6":りウマチ;早捌診断と医療帥の連挑
71上小兇呼吸器:籾期抗菌薬療怯の爪要性
1011:習がん;柿助イヒγ:療法の向 kをU指して
U11:1嫡卒小;りハビリテーションと柴物療怯
12jl:てんかん:基本桑の使いガと切り杵え繋
H器年 ljl:めまい;』'本は桑物療法
学習システム
①年岡送付される 8冊のテキストに」'ついて学刊 111Ⅲ40分以上の学習
②11惜の学洲終f後,演習問返に解符し郵送添削後遂送
③スクーリング,筈座への出席イ1二開 11"D
④丁キストによる学習終f後.研修成果のレポートを拙1."
受講料:16,000円都女薬会Uは14,00OU スクーリング講座受部1判・は別途
図2 メシル酸エリプリンの創製
募集締切:4月30訂打
単位認定:通{ロ,削柄研修小.位151n位予定
履修証明:11小;女竹薬剤Ⅷ1会認定般修器、延創、を交村
メシル酸エリブリンは.ハリコンドリンBの構造から抗がん活性に必須な分子構造であるファーマコフ寸ア
申込ノ問合先: H本女竹、柴剤柿会弓i務1可近喚熊樹iD
ハリコンドリンB
メシル酸エリブリン
Pharrr18⑳D卜10re)を抽出して創製された。ラクトン構造をケトン構造に.側鎖にはアミノ基を挿入するな
ど薬剤として相応しい特性を持つ構造に変換してぃる。それでもその合成は62工程から成り.不整点は19
箇所にのぼる。北学合成によって製造される藁剤の中では最も複雑な化合物のひとつだ。
56 都薬雑誌 Vd34 NO.3 即12)
TEL :悌36210489 jl 金 0:30 巧:30 F、X :0336210521
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都薬雑誌 Vd34 NO.3 (即12) 57
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