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プロローグ:高校までの勉強って役に立つんだ!
プロローグ(1) プロローグ:高校までの勉強って役に立つんだ! イラストのイメージ(0-2) :父と息子の台所奮闘記 父:我が家の母娘女子組は、ジャニーズのコンサート… 今日は、外に食べに行かないで、君と夕飯を作ってみるか。 息子:何を作るの? 父:冷蔵庫を眺めてみると、麻婆豆腐ならいけそうだけど。 息子:激辛お願い! 父:お願いじゃなくて、君が作るんだよ。 息子:そんなの無理。 父:そうでもないさ。 まずは、ご飯を炊かないと。麻婆豆腐のブッカケ飯だと、2 人で 2 合かな。 息子:僕がご飯を炊くよ。 父:今あるコメは無洗米だから、コメはとがなくていいよ。 でも、水は、こころもち大目かな。 息子:そうなんだ… 父:その調子。 大学はどうだ? 息子: 面白いよ。 高校では習わなかった教科も多いし、第二外国語のロシア語は、なんだかとても新鮮。 父:そうか… 息子:友達と話すのも楽しい。 男子校とちがって、女の子も多いし。結構、かわいい子がいるね。でも、目を引く子っ て、すでに彼氏がいるみたい。 父:そんなこともないんじゃないかなぁ… 息子:きっと、そんなことあるよぉ… プロローグ(2) 父:ダメもとで、トライしたらどうかな。 息子:無理、無理。 父:そうかなぁ… 中華は、料理を始める前に、調味料とスープの準備をしておかないとね。 息子:どう調合するの? 父:iPad からクックパッドのどこかをのぞけば、すぐ分かるから。 息子:今、見ているけど、結構、複雑だよ。 父:そんなことないさ。 くれぐれも、豆板醤は分量どおりにしろよ。入れすぎると、大変なことになるから。 息子:分かった。 砂糖も入れるんだね。 父:すごく辛いものと、すごく甘いものが、ぶつかりあって、味が生まれるってこともあ るよ。 どうしても辛みがすぎたら、最後に、といた卵を落とすってこともできるけど。 父さんは、ショウガ、ニンニク、ネギをみじん切りしておくよ。 息子:お父さんって、包丁、ちゃんと使えるんだ。 父:そうばかにするな。 ところで、大学の勉強で何かものにしてみようとは思わないか? 息子:どういうこと? 父:たとえば、ロシア語をマスターするとか… 息子:そんなの無理。英語だって、マスターしたっていえるレベルじゃないんだから。 父:それじゃ、英語に本格的に取り組んでみたらいいじゃないか。 息子:だって、高校英語や、大学入試の英語なんて、使い物にならないって、よくいわれ ているじゃないか。 父:そうでもないさ。 大学入試までに学んだ英語を土台にして、大学でいっそう精進したら、相当のレベルに 行けると思うけどな。 プロローグ(3) 息子:そうかなぁ… 父:中学や高校で英語という外国語を学んだ経験は、第二外国語の学習にも活かせると思 うよ。 父さんの勤めている大学は、戦前、中国大陸で活躍する実業家を養成することが、1 つの 重要な国家的ミッションだったこともあって、戦前から中国語教育が盛んで、今でも、そ の伝統を引き継いでいる。 父さんのゼミナールに参加している学生の中には、2~3 年間、みっちりと勉強して、中 国語をものにしていくのが、数年に 1 人ぐらいはいるよ。 息子:そうなんだ。 父:高校で学ぶ数学だって馬鹿にできないよ。 息子:そうなの? 高校程度の数学なんて、大学で学ぶ学問にまったく役に立たないと思っていた。 父:君は、文系だけど、国立大学も受けたんで、高校では数Ⅱまではやったんだろ? 息子:そうだけど… 数学は、結構、好きだった。 父:数Ⅱまでの数学知識があれば、大学院で学ぶ理論的な経済学でも、かなりの程度、理 解できると思うな。 息子:そうなの? 父:そうだよ。 みじん切りしたニンニクたちが十分に炒められて、いい香りがするね。 次は、豚のひき肉だ。お母さんがいっていたけど、豚のひき肉、カリカリになるまで炒 めないと、おいしくないそうだ。 息子:ちょっとしたことでも、工夫が必要なんだね。 父:さっきの続き。 英語や数学だけでなく、高校で学んだ現代国語や古典、歴史や地理、物理・化学・生物・ 地学は、相当なレベルまでいっていると、父さんは思うけどな。 父さんは、経済学者の中では、一応「教養人」(?)ということになっているけど(ま ぁ、括弧付きの「教養人」にすぎないけどね)、父さんの教養のベースは、高校までの勉 強と読書体験だと思うな。 息子: 今、お父さんが話していることは、とても驚きっていうか、新鮮というか… 僕たちは、高校までの勉強の目的は、大学に入ることって、当たり前のように考えてき たから。 プロローグ(4) 僕がキャンパスで出会った先生たちも、「大学の学問は、高校までの勉強とまったく異 なる」っていっているし… 高校までに習ったことが、大学でも役立つなんて、どの先生もいっていないんじゃない かなぁ。 「大学の勉強は特別だ」って聞かされてばかりだよ。 父:そういう先生って、「大学の勉強は特別だから、受験勉強のようなガリ勉は通じない」 っていわないか? 息子:いっているかも… 父:父さんは、そうじゃないと思うな。 大学の勉強だって、受験勉強のように猛烈に勉強しないといけないんだよ。「ガリ勉不 要、大いに遊べ」なんていう大学教師って、自分自身が猛勉強したことがないんじゃない かって、父さんなんか、勘ぐっちゃうよ。 息子:… 父:父さんが教えている大学でも、「大学では大いに遊べ」って学生に吹聴している教師 が結構いるね。 息子:… 父:豚のひき肉も、いい感じの炒まり具合。 それじゃ、君が調合した調味料を入れるぞ。 息子:あいよ。 父:次に中華スープを流し込むぞ。それに豆腐もぶち込む。 ちょっと、味見してくれないか。 息子:なかなか、いい感じだよ。 お父さん、何だか楽しそう。 父:何を話していたっけ? そうそう、高校の勉強と大学の学問の関係、とても密接なんだな。 息子:ということは、高校までにやってきたことを、土台にできるわけ? 父:もちろん! 息子:そうだと、なんだか、勇気が湧く話。 「受験勉強に意味があったんか?」って悩むことがときどきあるから。 父:悩むことなんてないさ。 プロローグ(5) 大いに意味があるんだよ。 息子:でも、お父さんがいっていること、なんだか実感できない。 父:そうか… 息子:正直な気持ちだよ。 父:父さんにできることは、あんまりないけど、父さんの講義を受けてみないか? 息子:お父さんの大学に通うってこと? 父:そうじゃなくて、君だけのために、家でマクロ経済学を講じてやるよ。 息子:そんなのいいよ… 遠慮するよ… 父:まぁ、そういうな。 だまされたと思って、受けてみやさ。 息子:ちょっと、考えておくよ。 父:それじゃ、考えておいてくれ。 そろそろ、水溶きした片栗粉を入れないとな。 息子:なんで、そんなのを入れるの? 父:そんなことも知らないのか。トロミをつけるためだよ。 息子:そんなこと、高校では習わなかった… 父:君の高校、何を教えてきたんだか… 息子:どこの高校でも、そんなこと、教えてくれないと思うけど… 父:日本の教育もおしまいだなぁ… 最後に鍋肌からごま油をサッと入れて、花山椒をふりかけて、これで、出来上がり! 先のこと、考えておいてよ。 息子:…