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巻頭言∼ITU-Tレビュー委員会の役割 - ITU-AJ
特 集 ITUと他SDOとのリエゾン状況 巻頭言∼ITU-Tレビュー委員会の役割∼ まえ だ 一般社団法人 情報通信技術委員会(TTC) 専務理事 よういち 前田 洋一 この度、ITUジャーナルにおいて特集「ITUとITU以外の TSAGにおいて、標準化戦略的な議論はほとんどされません SDOとのリエゾン」が企画されることとなり、その巻頭言を でした。これでは、本来のTSAGの機能が十分に果たされて 依頼されましたが、これは、2012年11月末、アラブ首長国連 いない、ITU-Tに期待されるグローバル標準化組織として果 邦のドバイで開催されたITU-T総会WTSA-12(World たすべき役割を強化するための見直しが必要である、という Telecommunication Standardization Assembly)において 反省でもあります。 レビュー委員会「Review Committee」が新設され、その初 代議長に私が任命されたことによるものと思います。 レビュー委員会設立の背景としては、ITU-Tが近年の技術 革新や市場要求に対応した標準化活動を推進する上で、現 上記のような背景から、今回のITUジャーナルの特集はタ イムリーであり、ITUと他の標準化機関との連携状況につい て、主要テーマごとに整理いただける企画は今後のレビュー 委員会での検討においても有益であると思います。 状のITU-Tの体制や作業方法が適切なのか?また、ITU-Tと 残りの紙面では、レビュー委員会がこれから何を検討する ITU-RやITU-D、さらに他の標準化組織との連携や協力の仕 のかの活動方針について、WTSA-12の決議82に定められた 方について改善すべき課題はないのか?などの問題意識の高 レビュー委員会の委託事項(Terms of Reference)の記述 まりがあります。 を基に紹介します。 最近のITU標準化活動における傾向の特徴は、標準化領 1. 現在及び未来の標準化環境を考慮しつつ、セクターの 域が従来のICT分野から異分野・異業種にまたがった広範囲 継続的発展を促すとともに、市場の需要に応え得るタ に拡大し、旧来のICT分野だけでなく、電力、自動車、医 イムリーかつ適切な成果に対する要求の高まりに対応す 療、農水産業やアカデミアを含む多種多彩な分野(verticals ることを目的として、ITU-T現状体制の妥当性を調査す と呼ばれる)との連携が必要になっています。それらの代表 る。 的な課題としては、ICTと環境、M2M(Machine-toMachine) 、eヘルス、スマートグリッド、高度道路交通シス 2. 他の標準化団体との現在の協同及び協力メカニズムを 検証し、改善案を提案する。 テム(ITS)などがありますが、これら業界横断的な課題へ 3. 世界的な標準化状況の急速な変化と、消費者/ユーザ の対処に当たっては、ITU-Tの組織的枠組みでは、Lead ーのグローバル標準に対する必要性の急速な高まりを考 Study Groups、Joint Coordination Activities(JCA)、 慮し、ITU-Tと他の標準化団体との協力のための既存の Global Standard Initiative(GSI) 、Technical and Strategic モデルを検証する。 Review(TSR) 、さらに Focus Groups(FGs)などを設置 4. 標準化分野での進化する役割と責任を明らかにし、相 するようにしてきましたが、これらの作業方法が効率的に機 互尊重に基づいた協同と協調の新しい在り方を提案す 能しているかを検証する必要があります。また、これらの課 る。 題は、ITU-Tの分野のみならずITU-Rの分野でも同様の重要 な課題として取り組む必要があるでしょう。 WTSA-12では、現状の10 SG体制を維持することが合意 されましたが、いまだに、SGの統合再編を求める声もあり、 5. ITU-T標準規格と他の標準化組織の標準規格との対立 を最小限に抑える視点を持って、標準化組織との協同 を強化するための方法と手段を明らかにする。 6. 相互運用性を容易にし、更なる革新を促進するITU-T SGとTSAGを含めたITU-Tの組織再編を建設的に行うことが における標準規格開発のための原則の勧告を考案し提 期待されています。ITU-Tの標準化戦略とStudy Groupの組 案する。 織構成を検討することは、本来はTSAGのミッションの一つ 7. 検証を実施するための作業計画を作成する。 ですが、TSAGでは、ITU-T全体の財政的制限(主に途上国 8. 憲章第14A条(注)に従ったITU-Tの戦略計画作成に向け 参加支援や公式6か国言語通訳経費負担など)からTSAG会 たTSAGへの入力が行えるよう、タイムリーな方法で、 合の開催期間が短縮され、時間不足から最近の8年間の その最初の検討を実施する。 ITUジャーナル Vol. 43 No. 6(2013, 6) 13 特 集 ITUと他SDOとのリエゾン状況 9. レビュー委員会はこの総会によって確立され、そのレポ ートはTSAGを通じて、変更を加えることなくWTSA-16 に提案する。加えて、レビュー委員会は定期的にTSAG へ進捗を報告するとともに、その進捗報告に対する TSAGからの意見を考慮する。 15. このレビュー委員会はTSAGの直前に開催される。 16. レビュー委員会の各会合の開催期間は3営業日を超え ない。 17. この検討委員会の管理チームは、議長と、公平な地理 的配分を考慮した6名までの副会長で構成される。 10. 憲章第14A条で記されているTSAGの役割と機能を考 18. レビュー委員会の最終報告書は、WTSA-16前の最終 慮し、レビュー委員会は、特に、短期的に実施又は実 TSAG会合までに、翻訳し、提出される。レビュー委 装可能な特定のアクション、及び/又は、全権委員会 員会はWTSA-16が更新を決定しない限り2016年で終 議での決定に向けTSB局長からのレポートによって伝 えることができる事項を特定するよう、TSAGにレポー トを提供する。 11. レビュー委員会には、ITU-T加盟国、セクターメンバ ーとアカデミアのITU会員のみならず、他の組織の代表 者や専門家も参加することができる。 12. 地域の参加を強化するために、レビュー委員会は、 了する。 注:憲 章 第 14A条 と は ITU憲 章 ( Convention of the International Telecommunication Union)における1章第 14条で、TSAGのミッションを規定している。 レビュー委員会はWTSA-12において日本の提案に基づき 設置された委員会であり、かつ、その議長を日本から輩出し ていることから、日本国としての標準化戦略を反映できる検 ITU-Tの地域研究グループを含む既存のITU地域グル 討体制が確立されることが望まれます。レビュー委員会は新 ープと一緒に作業し、彼らの寄書を考慮しなければい 体制の組織であり、これからの試みはチャレンジです。今後 けない。レビュー委員会はTSB局長と連携し、それぞ の議論のリーダーシップを確保するためには、国内の意見を れの適格な途上国から1名の参加者のフェローシップを タイムリーに国際での議論に反映させていかなければいけま 保証する。 せん。国内での検討体制の確立に当たっては、総務省と連 13. レビュー委員会は英語、若しくは、その要請が出され 携しながら、国内での検討を推進できるようTTCとしても貢 た場合は公式6言語で行う。TSAGレポートは、国連の 献していきたいと思います。皆様のより多くのお知恵と御貢 公式6言語で翻訳される。 献をいただき、実りある活動に発展させていきたいと願って 14. レビュー委員会の会議はペーパーレス化し、決議32に 基づいて電子的作業方法を使用する。 14 ITUジャーナル Vol. 43 No. 6(2013, 6) います。日本ITU協会の活動を含め、皆様の御支援よろしく お願いいたします。