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テクニカルレポートを書きます

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テクニカルレポートを書きます
訳者あとがき
テクニカル・ライティングに関する本というと,特に何の断り書きがなけれ
ば,普通,ジャーナル論文の執筆の仕方に焦点が当てられている.つまり,研究
者の卵である大学院生や研究者を対象としたものになっている.
理系の分野に携わる人の数でいうと,圧倒的に学部生の数が多い.にもかかわ
らず,理系の学部生をピンポイントに対象とした本というのはほとんどない.で
は,理系の学部生は,いったい,どんな情報を求めているのだろうか.
実験レポートの書き方に関するノウハウである
論文執筆のための指南書なら,たくさん刊行されている.でも,巷にあふれて
いるその手の本は,科学英語を書くにあたって必要な「書く技術」を前面に出し
たものがほとんどである.実験レポートを書くための指南書はというと,ほとん
どない.もちろん,「レポートの書き方」を謳った本は少なからずあるが,この
手の本のほとんどが,いわゆるタームペーパー
(つまり学期末のレポート)
に関す
るもので,今ここで問題にしているような実験レポートに関するものではない.
また,どのテクニカル・ライティングの本でも軽視されているものがある.そ
れは,地味ではあるが非常に大事である,参考文献リストのつくり方に関するも
のだ.
ということで,今まであるようでなかった,そして教えてもらいたかったけれ
どなかなか教えてもらうことができなかったものが,実験レポートの書き方と参
考文献リストのつくり方に関するものである.
この 2 つの期待にしっかり応えてくれるもの,それが,本書のもとになって
いる原著の『Successful Lab Reports: A Manual for Science Students』である.
本書をお読みになられた読者の皆さんは,もうおわかりかと思うが,実験レ
ポートを書くにあたり,その核となるのは,実は,仮説の検証の部分なのであ
る.実験という工学部的なもののレポートであっても,仮説という理学部的なも
のがいかに重要であるのか,本書を読んだ皆さんは,よくわかってもらえている
96 かと思う.
実験レポートを書くなかで,学生は,はじめて,
「科学技術」ということばが意
味するところを真に理解することができるのである.つまり,科学(サイエンス)
という理学的なものと技術(テクノロジー)という工学的なものの融合を,実際に,
実験レポートの執筆を通して学ぶことができるのである.このことを知識として
学べただけでも,本書を手にした価値は十分あるといえよう.
さて,本書の特長を再確認したところで,本書の翻訳の舞台裏について簡単に
触れておきたい.本書は大森氏との共訳であるが,大森氏との他の訳書同様,い
わゆる分担執筆のスタイルをとっていない.2 人とも独立して,最初の 1 ページ
から最後の 1 ページまで原著を訳し,そして最後に 2 つの原稿を調整する形で
最終原稿にまとめ上げている.
なお,原著者ならびに原著出版社から,原著の文章の一部を差し替えてほしい
との連絡があり,総合的に考えて取り込めるところは取り込む形で原著者ならび
に原著出版社の意向を反映させた.そのため,ところどころ原著とは内容が異
なっているところがある.
本書を翻訳するにあたり,職場の東京農工大学の先生方にお世話になった.本
書の最後に,出版社との協議の上,
「付録」として論文の下書きや実験レポート
のサンプルを紹介しているが,これについては皆さんはもうおわかりのように,
農工大の学生が実際に書いた論文の下書きや実験レポートの一部である.論文や
レポートの草稿を提供してくれた(元)学生さん,そして本書に論文ならびにレ
ポートの草稿を掲載することを了承してくださった梅田倫弘先生(機械システム
工学科),中村俊先生(生命工学科)
,そして並木美太郎先生(情報工学科)には心
から感謝する次第である.また,
「付録」の作成にあたり,農工大の学生である
金指康明さん(梅田研究室)
,深沢豪さん(並木研究室)
,嶋田裕巳さん(並木研究
室),田口雄大さん(並木研究室)
,關原仁美さん
(中村研究室)
,小澤晋平さん
(中
村研究室)
,そして卒業生の池田正太さん(中村研究室)にお世話になった.彼ら
にも心から感謝したい.ありがとう.
本書はこのような作業の積み重ねによりつくられたのであるが,私たち 2 人
に翻訳の話をもってきてくださった丸善出版の小林秀一郎氏にも心から感謝する
次第である.
最後になるが,本書を読み終え,そして卒業後大学院に進み,将来研究者や技
術者になろうと思っている人は,手前味噌な話ではあるが,次の本を読むことを
訳者あとがき 97
お勧めする.
・『おもしろいように伝わる!科学英語表現 19 のツボ』(丸善出版)
・『テクニカル・ライティング 必須ポイント 50』(丸善出版)
・『理系の人はなぜ英語の上達が早いのか』
(草思社)
研究者や技術者になろうと思ったら,そしてなったのであれば,科学英語を読
大学院生になって英語で苦しまないための「転ばぬ先の杖」となることであろ
う.本書を読み終えた皆さんには,ぜひ,上の 3 冊も続けて読んでいただき,
研究者ならびに技術者に必要とされる本物の英語力を身につけてもらいたいと思
う次第である.
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まずは書いてみよう
み,そして英語を書くことから避けて通ることはできない.上の 3 つの本は,
読者諸氏の健闘を祈る.
2011 年 10 月
畠山 雄二
大森 充香
まずは書いてみよう
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まずは書いてみよう
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