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大豆の難防除雑草の対策について
2013年7月12日 福島県第2回大豆・麦・そば安全・安心生産対策セミナー 大豆の難防除雑草の対策について (独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター 生産体系研究領域 生態的雑草管理プロジェクト担当 黒川俊二 本日のお話 • 帰化アサガオ類対策について – 大豆、そばでの対策 – ほ場周辺管理の重要性と対策 – 地域ぐるみで対策を • なぜそんな対策が必要か – 理解を深めてもらうために – 外来雑草問題の背景を解説します • 今後警戒してほしい外来雑草について – アレチウリ、オオブタクサ – 第2、第3のアサガオにならないように 帰化アサガオ類の種類と特徴 帰化アサガオ類の種類と特徴 • • • • つる性で作物・機械にからみつく タネで増え、だらだらと発生する 何年もなくならない(水田に戻しても) 除草剤が効きづらい 50%ぐらい大豆に覆われるとアサガオ生育できない 6 月播種(条間 60cm ) 6月播種(条間60cm) 大豆の草高 草高( cm ) 草高 (cm) 60 40 20 0 6月6日 70 80 60 50 60 70 草高( cm ) 80 100 マルバルコウの草高 7 月 26 日 9 月 14 日 90 50 40 30 20 10 10 0 0 6月6日 11 月 3 日 7 月 26 日 100 70 80 60 早いと出芽後90 80 2週間でつるに 70 草高( cm ) 草高 草高( cm ) (cm) 暗くなるのが早い 40 5060 40 3040 20 20 10 20 7 月 26 日 9 月 14 日 0 11 月 3 日 100 相対光量子束密度( % ) 100 120 90 100 80 60 9 月 14 日 7 月播種(条間 36cm ) 7月播種(条間36cm) 120 0 6月6日 60 40 40 30 20 20 6 月播種(条間 36cm ) 6月播種(条間36cm) 80 80 0 0 11 月 3 日 6月6日 60 50 40 30 20 10 7 月 26 日 9 月 14 日 0 11 月 3 日 相対光量子束密度( % ) 相対光量子束密度 (%) 100 100 120 90 100 80 相対光量子束密度( % ) 相対光量子束密度 (%) 相対光量子束密度 相対光量子束密度( % ) 120 7 月播種(条間 60cm ) 7月播種(条間60cm) 100 100 90 80 Relative photon fulx deinsity (%) 相対光量子束密度(%) 50%になるのは条間と同じ高さまで大豆が生育し た時 70 60 50 50 40 明るさ50%の草高/条間比は だいたい1 つまり 条間60cmなら 大豆が60cmの高さ になるまで防除が必要 30 20 10 00 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 Plant height/Interrow space ratio 草高/条間比 <大豆> 甚大な被害が出ているほ場では • 土壌処理剤 – プロメトリンを含むもの(コダール水和剤など)、 あるいはフルミオキサジン(フルミオWDG) • 茎葉処理剤 – 大豆2葉期(本葉2枚)に大豆バサグラン液剤 • 中耕培土 – 大豆が5葉期になるまでのつなぎ • バスタの畦間・株間処理 – 大豆の本葉にかからないようにでも株間もしっかり • 目安は2週間ごとに条間と同じ高さに大豆が成 長するまで つくば市(普通畦60cm)大豆品種:納豆小粒 現地圃場防除体系 土壌処理剤 茎葉処理剤 (ベンタゾン液剤) 7/4 処理日 (播種後日数) (0日) 草高/条間比 7/22 (18日) 0.2 (プロメトリン・ メトラクロール水和剤) 0.0 7/18 茎葉処理剤畦間処理 (グルホシネート液剤) 中耕培土 8/3 (30日) 0.5 7/25 8/8 8/12 (39日) 0.9(ほぼ1.0) 8/15 実践すれば… 収穫不能 2 Oct 2009 こんな畑が 250kg/10a 3 Oct 2011 完全防除に成功 でも、やります?こんな手間とお金かかる方法 狭畦栽培と大豆バサグラン • 土壌処理剤 – プロメトリンを含むもの(コダール水和剤な ど)、あるいはフルミオキサジン(フルミオ WDG) • 茎葉処理剤 – 大豆2葉期(本葉2枚)に大豆バサグラン液剤 • 狭畦栽培なので – 早く大豆の下が暗くなります 実践すれば… 一部残りましたが まあまあうまくいきました でも失敗すると狭畦なのでリカバリは難 しい <大豆> 甚大な被害が出ているほ場では • お金と手間をかけて徹底防除 • リスクはあるが狭畦と大豆バサグラン • 今はこの二つの方法しかない – 詳しくはお配りした「大豆畑における帰化ア サガオ類の防除技術」をご覧ください <そば> 甚大な被害が出ているほ場では • • • • • • タネの形状・色がそばと似ている 混入すると選別は不可能 そばに登録のある有効な除草剤は皆無 手取り除草しか手はない まん延しているところで作付けしない 大豆と地域が分かれているなら絶対入れ ないように とにかくほ場の中に入ったら厄 介だとわかっていただけたと思 うので… とにかく、これ以上 被害ほ場を増やさないで下さい!! • 作業順に注意 – 土やコンバインで運ばれます – 作業は被害の少ない順に無→甚 • 堆肥は完熟のものを – 60℃以上になれば雑草種子は死滅します – 新たな侵入を防げます • ほ場周辺の管理を徹底してください – 畦畔などほ場周辺が種子源です 5/10(2葉) 5/22(4葉)防除 6/8(開花) 6/22(開花~結実) 実際の事例1(失敗例) 6/26(結実)防除 7/10(0葉)防除 7/30(0葉)防除 8/7(つる) 7/17(つる) 8/21(つる) 7/24(つる) 9/18(開花) 実際の事例1(失敗例) 5/10(2葉) 5/22(4葉)防除 6/26(結実)防除 7/10(0葉)防除 7/30(0葉)防除 8/7(つる) 6/8(開花) 7/17(つる) 8/21(つる) 6/22(開花~結実) 7/24(つる) 9/18(開花) 実際の事例2(成功例) 5/10(3葉) 5/22(7葉) 6/26(3葉) 7/10(つる) 7/30(つる) 8/7(つる) 6/15防除 7/17(つる) 8/21(つる)防除 6/22(2葉) 7/24(6葉)防除 9/18防除 被害ほ場を増やさないために • ほ場周辺の管理→種子をつけさせない 6月上旬、8月中旬、9月下旬の3回は必ず (花をみたらすぐ) グルホシネート剤(バスタ液剤など)を根 元までしっかりかける 草刈りなら地際から、または抜き取る。草 は放置しない。 詳しくは、配布した「帰化ア サガオ類の地域全体へのまん 延を防止するためのほ場周辺 管理技術」をご覧ください 地域ぐるみで対策を • 体制作りのポイント • 順応的管理という考え方 • 実際の流れ 取り組む主体について ①自治体や農協などの団体が主導して事業などで取り 組む場合 •モニタリングや防除のための機器や農薬など共通して導入でき る。 •モニタリングや防除などを行う人員を確保する必要がある。 ②農家や地域住民が協働して取り組む場合 •とりまとめ者が必要。普及センター、農協、土地改良区など。 •各農家や住民がモニタリングや管理を行うことができる •共通の媒体で分布情報を得ることが難しい。モニタリングに使 う媒体としては、GPS付きカメラ、スマートフォン、紙の地図 など様々。 •各人の雑草に対する知識の違いによる誤同定を防ぐ必要あり。 すぐにうまく防除できるとは限らない! という覚悟で… 地域での被害拡大防止のための順応的 管理スキーム 行き当たりばったりとは違います モニタリングと情報共有 モニタリングと情報共有 今はこんなものがあります GPS付きカメラ+Picasa • GPS付きカメラで対象 雑草を撮影 • フリーソフトPicasaで 共有設定する • アルバムを限定公開 • アドレスを共有 • 各写真にノートを付記 できる モニタリングと情報共有 写真がなくても Google map • 写真がなくてもOK • Google mapのマイプ レイスにポイントデー タ • 地図を見ながらも入力 できる • 限定公開 • アドレスを共有 • 各写真にノートを付記 できる モニタリングと情報共有 もちろんこれでもOK 紙の地図 • 取り組みやすい • 情報共有しづらい かも • 定期的に会合を開 く • もしくは、とりま とめ者が電子化し て配布 防除目標の設定 実施した対策の 有効性を評価す るためにも、そ の基準となる目 標を設定してお く 関係者が合意で きる目標設定を 対策を講じるタイミングとかかる コスト 帰化アサガオ アレチウリ Williams (1997)より 帰化アサガオとアレチウリでは目標を変えましょう! もしも以下の状況なら 帰化アサガオ類 •地域全体にあり •ほ場内にも一部侵入済み ↓ •目標:被害ほ場を増やさない アレチウリ •地域内に散発 •ほ場内はまだ ↓ •目標:駆除、撲滅 何年計画でやるか? 防除戦略の策定 防除戦略の立て方 • 分布が集中しているとこ ろを対策したくなるが • 優先すべきは… 東側にぽつんとあるところ (次のソースになる) • 次に… 集中分布の周辺 • 最後に… 中心部分 実際にはこのようにゲリラ的に発 生する場合も多い • このような分布になる理由 として考えられるのは… – 堆肥を投入したところで 発生 – 最初に侵入した圃場と同 じ農家さんの圃場に機械 を通じて移動 • こうなるとどこを優先して いいかわからない 区域を分けて、どの 区域を誰が防除する かを明確にしておく 防除計画の作成 片っ端から防除するというのもいいですが… 防除ツールは何を使うか? 防除とその記録 防除後のモニタリングで評価 具体的に動き出しましょう 1. 地区の設定(合意形成ができる単位) – 「優良事例を作りましょう」という呼びかけ 1. 2. 3. 4. 5. 6. 取りまとめ者の選定 モニタリングと防除の地区(?)割 モニタリング方法の決定 情報共有の方法の決定 目標・戦略・計画 防除ツールの選定 実際に活動が始まってい ます 実際に活動が始まってい ます ←この制度を活用 して活動組織で帰 化アサガオ、アレ チウリ対策を始め ている地区もあり →農家さんが発案 (後半です) なぜそんな対策が必要か • 理解を深めてもらうために • 外来雑草問題の背景を解説します 飼料用トウモロコシ畑のイチビ 飼料用トウモロコシ畑のショクヨウガヤツリ 飼料用トウモロコシ畑のアレチウリ 小麦畑のネズミムギ ダイズ畑のマルバルコウ ダイズ畑のアレチウリ 外来雑草の発生パターン • • • • とにかく被害が大きい 次々と新しい雑草種が発生する 突発的に蔓延圃場が出てくる あっという間に蔓延圃場が地域全体に広 がる なぜ??? 外来雑草がなぜ侵入するか -酪農の事情乳価の低迷 1頭の生産性向上 濃厚飼料多給化 多頭化 処理し切れない量の家畜排泄物 外来雑草侵入のチャン ス増大 侵入後の外来雑草の拡散パターン 自然に広がる 近隣に広がる 水・風で広がる 人が広げる 汚染ほ場から未汚染ほ場への土の移動 生きた雑草種子が入った(未熟)堆肥の投入 外来雑草問題の特徴 • 外国での防除プログラムを潜り抜けてき た難防除雑草 • 輸入穀物などに種子が混入して絶えず外 国から侵入 • 家畜糞尿を介した突発的な(に見える) 分布拡大 なので • 畜産も含めた地域ぐるみの対策が重要 • できれば河川敷や道路の法面など非農耕地 の関係者とも連携されることが望ましい 最後に、アレチウリとオオブタクサに注意 実際にひどいところを見てきました 中耕培土を繰り返してみても… 大豆ごとラウンドアップかけてみたり… あきらめて何度潰してみても… アレチウリの特徴と対策 被害大 • つる性⇒アサガオより速くて長い(10mになるこ とも) 難防除 • ダラダラ発生⇒アサガオよりダラダラ出てきてそ う • 除草剤⇒土壌処理剤効かない、大豆バサグラン効 かない • 中耕培土⇒株間が残るので、やらないのと同じ • 非選択性除草剤の畦間処理⇒つるが絡まって作業 できない アレチウリの特徴と対策 被害大 • つる性⇒アサガオより速くて長い(10mになるこ とも) 難防除 • ダラダラ発生⇒アサガオよりダラダラ出てきてそ う • 除草剤⇒土壌処理剤効かない、大豆バサグラン効 かない • 中耕培土⇒株間が残るので、やらないのと同じ • 被害の大きさも難防除性も 非選択性除草剤の畦間処理⇒つるが絡まって作業 できない アサガオと比べものにならない アレチウリの特徴と対策 • 今できる対策は… • 警戒と少ないうちの手取り除草のみ 2012.6.11 オオブタクサも 2012.7.5 飼料用トウモロコシ 畑に大発生 どちらも • 水で広がります • 水田地帯に入ったらすぐにまん延します • とにかく監視の目を光らせてください • 第2、第3のアサガオにならないように…