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わたしの小笠原ライフ
わ た し の 小 笠 原 ラ イフ 平成 28 年 7 月に、小笠原諸 島への定期船「おがさわら丸」 は 1 万トン級の船(同船名の 3 代目)に更新されました。思え ば、医学生だった数十年前に、 初代「おがさわら丸」で小笠原 を観光し、レンタルの原付二種 に乗って島内を散策したものです。海と山と空の美しさにひ かれ、この島の診療所か保健所で働くのも悪くないなぁと思 うことがありました。当時は、NHK 衛星放送以外のテレビは 入らず、天気予報もなく、島民は郵便局や水産センターの掲 示板に張ってある天気図を見にきていました。もちろん、気 象の警報や注意報も出ないところ でした。 熱帯低気圧を避けて船が早く島 を離れることになり、予定してい た母島にも行けず、宿泊を切り上 げて内地に戻ることになりました。 悲しい気持ちで船に乗り、見送り のボートを眺めて、また小笠原に 来るぞ、と誓ったものでした。 大 学 卒 業 後 は、内 科 医、監 察 医 を経て都庁の医療監視員、そして 町田市保健所の係長になりました。 当時は通勤に時間がかかっていましたが、現在、私が住んで いるのは、総務局小笠原支庁の職員住宅で、保健所まで徒歩 2 分。勤務時間は、8:00 ∼ 12:00、13:30 ∼ 17:15 で、昼休み が 1 時間半あります。昼には帰宅してゆっくり食事をとって 昼寝ができます。海水浴に行くこともできます。 公務員を含め転勤族が多く、子供たちも元気に誰にでも挨 拶をしてくれます。 生鮮食料品は、入港日に買いに行きます。地物の魚と島野 菜以外は、船で運ばれてくるものしかありません。通信販売 で物を買う人も多いのですが、慣れてくると、船のダイヤに 合わせて注文できるようになりますので、生活に不便を感じ ることはありません。 きれいな海を毎日見ているとダイビングをしたくなり、11 年ぶりにダイビングを再開しました。島のダイビング・ショッ プには「島民料金」が設定されており、観光客よりも 2 ∼ 3 割安くダイビングが楽しめます。職員住宅の下まで迎えに来 てくれるし、ボートでダイビングポイントまで 20 分くらいだ し、大変便利です。東京から伊豆 にダイビングに行った頃は、片道 3 時間かかりました。海と言えば、 正月には日本一早い海開きがあり ます。 人口が少ない割に若い人が多い ので、スポーツが盛んです。父島 のサッカー大会「オガサワラカッ プ」の審判をしていたら、村教育 委員会から「父母交流スポーツ大 会」の主審を依頼されました。そ Kenichi M atsui 島しょ保健所小笠原出張所副所長 松井 健一 の 後、支 庁 サ ッ カ ー チ ー ム の メ ン バーとして競技にも参加させてもら えるようになりました。ダイビング とサッカーを楽しんでいます。 また、母島は父島よりも海がきれ いです。都道最南端から小富士に登 ると、絵葉書のようにきれいな南崎の海が見えます。この写 真を撮った時は、数キロ先でクジラが飛び跳ねており、その 音が波音に混じって聞こえました。 6 日に一便の船しか交通手段がありませんが、世界自然遺 産の小笠原は私にとって非常に居心地のいい島です。難を言 えば、毎日船や飛行機の便がある伊豆七島とは違い、上京の 機会が限られるので、専門医 や認定医の資格維持に必要な 研修受講ができないことくら いです。赴任前に更新単位を そろえておかれるとよいで しょう。 東京都は、どの有人島にも 医療機関がありますが、東京 の島は郡に属していないせいか、管轄する郡市医師会との接 触等がありません。内地の保健所ではいろいろと医師会との 話し合いがありましたが、小笠原では、直(じか)に診療所 の先生と話をしています。 島の保健所出張所は管轄人口が少ないので、感染症や精神 疾患、難病の対応という保健対策課長としての仕事は少ない のですが、観光が盛んなところなので、宿泊施設や飲食店が 多く、旅館業法や食品衛生法にかかわる生活安全課長として の許認可事務が多くなります。また、課長級として赴任して いても、所長業務が経験できます。人口が少なく職員が少な い町村への支援業務もあります。このように、島の保健所出 張所は、他の保健所とは異なる経験を積むことができます。 東京は、都会だけではありません。 業務紹介 24