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株式会社ジャパンビバレッジホールディングス

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株式会社ジャパンビバレッジホールディングス
株式会社ジャパンビバレッジホールディングス
西脇誠之様(ジャパンビバレッジエコロジー取締役執行役員)
福塚起一様(ジャパンビバレッジ東京 業務部部長)
齋藤裕紀様(ジャパンビバレッジ東京 業務部採用教育課担当課長)
大野 勉様(ジャパンビバレッジ東京 業務部採用教育課担当課長)
■企業プロフィル
創立
2010年
出資金
5 億円
本店所在地
東京都新宿区西新宿一丁目24番1号
代表取締役会長
西宮 佑二
代表取締役社長
井上 和久
グループ社員数
4508名
■インタビュアー
東京富士大学
藤森ゼミナール(経営学科)
内田誠之(4年)、栗原宏明(4年)、水嶋
司(3年)、小川雄大(3年)
■訪問日・2015 年 11 月 26 日(木)
~自販機の環境性能はかなり進歩してきたと思いますが、現在どんな状況でしょうか。
10 年前と比べて 37%のエネルギーコスト削減ができており、月額 4,500 円かかっていた
ものが、2,900 円程度にまで下がっています。技術開発が進み、一般の方が思っているより
ずっと自販機は電力消費が低くなっているのです。実際これ以上の削減は技術的には難し
いところまできています。また電力消費の多い日中ではなく、夜間に冷やして日中の電力
消費を抑えるという仕組みを使っています。時間設定も設置場所の状況に応じていろいろ
変えることができるようになっています。こうした節電への対応は 3.11 の影響が大きいと
思います。ちなみにカップ式の方が、環境負荷は高いのです。当社が新たに開発した新型
カップ機 Smart café は、従来機に比べると 28〜30%の電力削減ができています。
~自販機の電力を、最近増えている自然エネルギーでまかなうことは可能でしょうか。
太陽光パネルの利用を試験的に行ってきましたが、自然エネルギーのみでの自販機運用
は難しいようです。蓄電ができないことや、設置費用の高さから採算がとれないという問
題点があります。また、大きな面積をとれればいいのですが、自販機の上に設置して照明
に利用するのが限度で、今のところは補助的に使うというのが現実的です。
~通常ペットボトルのリサイクルで蓋と容器の分別を行っていますが、それらを分別せず
に処理することはできないのでしょうか。
当社グループに「リサイクル・プラザ JB」という施設があります。そこでは両者を分別
せずにリサイクルを行っています。ペットボトルはそのまま細かく裁断し、ペットとポリ
プロピレンの比重の違いを利用して分けることができるのです。その点については技術的
に難しくはないのですが、リサイクルのライン上で手作業による異物・残渣の確認をし、
それらを取り除くのは骨の折れる作業です。中をきれいにして出してもらえるとありがた
いのですが、思ってもいないものが入っていることがあります。しかし私たちはこれをあ
えて「原料」と呼んでいます。基本的に「ごみ」ではなく「資源」だという認識が必要だ
と思います。同施設は見学できますので、ぜひ実際に見てください。
~自販機の売れ残り商品については、どのように扱っておられますか。
毎年 4 月に冷たいもの、10 月に温かいものへと切り替えを行います。季節商品の交換を
する際には、対象商品を良く購入頂けている自販機に移し売れ残りが出ないようにする点
と、売場に応じて在庫数調整をして売れ残りが出ないようにするのも大切で、別の商品と
入れ替えたりしてラインナップに変更を加えています。
~最近コンビニでも常温飲料が目立ちますが、自販機で対応できるのでしょうか。
常温自販機は試験的に実施したことはありますが、売上はあまり良くなかったようです。
そもそも常温の基準というものが決め辛く、また外気温や機械自体の熱の影響もあるため
温度の維持が非常に難しいのです。但し薬を飲むとか、鞄の中が結露で濡れるとか、常温
のニーズはそれなりにあると思いますので、今後も動向を見ていきたいと思います。
~商品ラインナップはどのように決めているのでしょうか。どのようなものを並べるかに
よって売り上げも違ってくると思うのですが。
商品をどう並べるかは実は結構難しいことで、そこでは経験やセンスも必要になってき
ます。基本的にはメーカーの希望や、売上データ等をもとに決めています。また季節によ
って、温かいものと冷たい飲み物の比率を変えます。当社の 53 年の歴史を通じて得たデー
タがここに活かされています。但し価格は、オーナーさんが設定します。価格も売上を左
右する要因になると思います。
~新入社員は全員ルートセールスからスタートするそうですが、その評価はどのようにな
っていますか。
当社の場合は企業顧客が主で、だいたい行く先が決まっているので、簡単そうに見える
かもしれません。しかしその反面、お客様を失ってはいけないので大変な面があります。
やはりルート業務(営業)は笑顔が大切ですし、きちんとお客様とコミュニケーションが
とれなければいけません。営業は当社と顧客を結ぶ大事な仕事ですし、そこで様々なこと
を学ぶことができますので、入社後は全員がルート営業の経験をするようにしています。
前年より良くなったかどうかで人事評価をしますが、数字だけではなくて、顧客とどれ
だけコミュニケーションがとれているかも重視します。顧客拡大には、人脈を通じた紹介
が大きなきっかけとなりますが、それも普段の顧客とのコミュニケーションが大切です。
~ルートセールス経験の後は、どのようなキャリア形成が考えられているのでしょうか。
全社員がルートセールスから始まり、ルートセールス主任、アシスタントスーパーバイ
ザー、スーパーバイザー、支店長…とステップアップしていきます。適材適所が大事です
ので、2 年に 1 回キャリアシートで希望調査を行い、どういう方向が本人を生かし、また会
社にとってプラスになるかを判断します。
当社ではルートセールスの下積みはとても重要であると考えていて、そこでの経験がそ
の後の仕事人生を左右します。ルート業務(営業)の中で得た知識や経験から管理・監督
職へステップアップしたり、開発営業へ進んだり若しくは、人事・総務関連に進んだりと
様々ですし、異動することは別に悪いことではありません。私たちも随分多くの異動をし
てきました。それぞれの希望をもとにキャリアは構築されていくので、同じルートセール
スからスタートしても最終的には大きな違いが出ることはあります。ルート業務(営業)
の中で多くの能力が磨かれ、得意なことも見えてくるはずです。ぜひ皆さんもルート業務
(営業)を経験して、ご自身の能力を開花させていただきたいと思います。
~当ゼミでは環境に配慮した新しい自販機の案を考えました。実際に自販機を扱っておら
れる立場からのアドバイスを頂戴し、今後の研究の参考にさせていただければ幸いです。
<提案>取り出し口にマイボトルを設置し、飲み物を購入するという自販機。マイボト
ル自体もデザイン性を高くし、「マイボトル=おしゃれ」という価値観を提案する。マ
イボトルは重い・かさばる等のデメリットがある反面、容器代のコストを抑えられる。
設置場所は高校・大学などとし、若年層に浸透させてから広く社会に展開していく。
発想は非常に面白いと思います。学生の皆さんからこのような意見を頂くのはとても参
考になります。ただ実際の設置には難しい点がいくつかあります。その一つが法律の壁で
す。紙コップ式の自動販売機には喫茶店営業の許可が必要になります。その許可を一つ一
つ取り、駅や街中に多くの自動販売機を設置していくのはなかなか難しいでしょう。
それから衛生上の問題もあります。例えば、利用者が飲み物を飲んで体調を崩したとし
て、その原因が自動販売機に問題があったのか、利用者のマイボトルに問題があったのか、
因果関係を特定するのが難しいのです。ご提案の中には自販機に洗浄機をつけるというア
イデアもあり、技術的には可能ではありますが、そうすると機械のサイズが大きくなりす
ぎるというきらいもあります。
こうしたリスクが考えられると開発や設置に進むのは難しいですね。環境面を考えれば
この提案が実現されると素晴しいと思いますが、私たちはあくまでビジネスの観点から、
それ以外の様々な要素を考慮する必要があるのです。しかし、こういった提案があるから
こそ新しい自動販売機の開発が進みます。今後の参考にしますね。
■インタビュー所感
今回私たちは、自動販売機オペレーターの大手である株式会社ジャパンビバレッジ東京
様に訪問し、以前から藤森ゼミで研究・考案をしてきた、環境に配慮した新しい自動販売
機の提案について講評をいただくとともに、様々な質問をさせていただきました。
私たちが考えたのは、マイボトル対応の自動販売機でした。紙コップ式の自動販売機の
応用で、取り出し口にマイボトルをセットし、飲み物を購入するというものです。環境に
配慮するということを念頭において提案をいたしましたが、実現には法律の壁が存在する
ということで難しいとのことでした。紙コップ式の自動販売機には喫茶店営業の許可が必
要となることや、衛生上の問題等の課題が残ることが分かり、製品化までの過程がいかに
大変なものかを知ることができました。それが環境に優しく独特で斬新なものであったと
しても、商業的観点から利益が見込めなければ実行できないということを具体的な事例を
通して知ることができ、大変勉強になりました。
その他、実際に自動販売機の環境性能の進歩やリサイクルの現場の苦労、ルート営業の
大変さや働きがいなど、興味深い話をたくさん聞かせていただきました。あっという間に
時間が過ぎ、終了予定時刻を過ぎても「まだ大丈夫だよ」と言って、熱心にお話をしてい
ただきました。本当に有意義な企業訪問でした。西脇様、福塚様、齋藤様、大野様。お忙
しい中、誠にありがとうございました。
(経営学科 3 年・水嶋司)
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