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検査室からのお知らせ

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検査室からのお知らせ
発行元:臨床検査部.August 07,2006 Vol.34
検査室からのお知らせ
1.髄膜炎起炎菌抗原迅速検査試薬変更のお知らせ
現在、髄膜炎起因菌抗原検査は PASTOREX メニンジャイティス(日本バイオラッド社)を用いて行っ
ていますが、検出感度が十分に得られない検体があることが判明しました。今回、平成 18 年 8 月 1 日依
頼分よりスライデックスメニンギートキット(日本ビオメリュー社)に変更します。
変更に伴い検出対象起因菌は b 型インフルエンザ菌、肺炎球菌、髄膜炎菌(A,B,C 群)となります。新
生児髄膜炎の起因菌のひとつである B 群溶血連鎖球菌は対象外になります。
2.血清アミロイド A(Serum Amyloid A:SAA)院内導入のお知らせ
血清アミロイド A の血中濃度は全身の炎症活動性を鋭敏に反映します。炎症が重症、全身性なほど高
濃度であり、軽症・局所的なものでは低値となります。急性相反応性蛋白として主に CRP が測定されて
いますが、炎症が疑われる場合の約 80%が SAA と CRP の挙動が一致します。一般に CRP 陽性、SAA 陰性
サンプルの出現率は低く、CRP 陰性, SAA 陽性サンプルの出現率は約 17%です。
ウイルス感染症では、一般的にCRP の変動は小さいが、SAA は上昇する例が多いので、細菌感染症との
鑑別やモニタリングに有用です。ステロイド剤投与時で CRP が過度に抑制されている場合でも、SAA は
疾患活動性を反映します。各種炎症疾患(特に自己免疫疾患)
、移植手術後の拒絶反応、免疫抑制状態で
のウイルス日和見感染のモニタリングに有用です。SAA の高値持続はアミロイドーシス発症の促進因子と
考えられていますので、SAA 値のモニタリングが望まれます。
《高値を示す疾患》
自己免疫性疾患(SLE、RA など)
、ウイルス感染症、細菌・真菌感染症、急性心筋梗塞、悪性腫瘍、血管
炎、移植後拒絶反応、免疫抑制剤使用時の日和見感染など
●測定法:ラテックス凝集免疫比濁法
●基準値:8.0 μg/ml 以下
●採血容器:生化学一般用分離剤入り試験管
●JUMP オーダー画面:化学 1 アイコン内(血清アミロイド A 蛋白)
●保険点数:48点
注) CRP 定量と併せて測定した場合は主たる項目のみ算定されます
〔文責 日高裕介〕
1
3.採血時の血小板凝集について
1)採血時の血小板凝集阻止について
血球血算用採血管(紫色ゴム栓・容量 2ml)は、EDTA・2K を抗凝固剤(血液 1ml に 1.5∼2.2mg)に使
用しています。EDTA・2K は,現在使用されている種々の抗凝固剤の中でも赤血球、血小板の膜を保護し、
白血球への障害が少ないと言われています。
血小板凝集は非常に鋭敏で即時的な反応ですので、注射針が血管に挿入された時点からすでに開始し
ています。従って採血に時間を要した場合や、採血管に血液を入れてから充分転倒混和されなかった場
合には血小板が凝集します。
血小板が凝集すると本来の測定値に比べて血小板数は著しく減少する一方、分析装置が血小板凝集塊
を白血球と誤って認識してしまい、真の白血球数にプラスされて計算されます。採血中あるいは採血後
に血小板が凝集する原因は、採血手技によるものが大半であり最大の注意が必要です。
2)EDTA(ethylenediamine tetra-acetate)依存性偽性血小板減少症について
速やかに採血を行い、EDTA・2K と充分混和しても血小板凝集を繰り返す場合には、EDTA・2K により血
小板凝集を生じてしまう偽性血小板減少症が疑われます。
EDTA・2K によって血小板が凝集するメカニズムはまだ解明されていませんが、「血小板膜上の Ca イオ
ンが EDTA によるキレート作用により修飾を受け、血小板膜表面の性状に変化をきたした結果、潜在性抗
原が表出し、 血中の抗体と反応する。
」とする説が有力です。肝疾患、抗生物質投与後、手術後など後
天的に発症し、出現頻度は 0.03∼0.23%といわれています。
①血小板は著しく減少し、大型化した血小板の凝集塊を白血球と誤認し測定するため、白血球は偽性増
加します。
②テオフィリン加 EDTA・2K 試験管で採血すると血小板の凝集が解消されることより、検査部ではテオフ
ィリンを添加する方法で対応しています。ただし、 テオフィリンは白血球の形態に影響を与えますの
で、白血球分類、血液像には使用できませんので注意して下さい。
(他の対応策としては硫酸 Mg、カナ
マイシン、高濃度 NaF を添加する方法、クエン酸 Na 入り試験管などがあります。
)
③検査部では、EDTA 依存性偽性血小板減少症であるかを、EDTA・2K 試験管とテオフィリン加 EDTA・2K
試験管の両方を提出してもらい、時間を追って血小板の凝集の発生を比較することにより確認してお
ります。稀なケースとして、 テオフィリン加 EDTA・2K 試験管でも血小板の凝集を生じてしまう場合
もあり、その場合は種々の抗凝固剤を用いての確認も行っております。
〔文責 大門 正博〕
検査のQ&A
1.検体収集室に検査オーダーについて問合せのあった事項です。
Q.DLST(drug lympocyte stimulation test; 薬剤リンパ球刺激試験)のオーダー方法と採血試験の種類
がわからない。
A.検査部からの回答
1.オーダー方法
JUMP 検査オーダー画面から以下の順にオーダーしてください。
自由選択 → 特殊検査(外注)フォルダ内 → DLST
DLST オーダー画面内の必要なアイコンをクリックしてオーダーしてください。
LST1薬
LST2 薬
LST3 薬
LST4 薬
2
LST5 薬
例;1)3薬剤測定の場合は LST3 薬 を選んでください。
2)オーダーは5薬剤までです。追加される場合は、再度オーダーしてください。オーダーすると
専用の依頼用紙が出力しますので、薬剤等必要事項を記入の上、提出してください。
2.採血試験管と採血量
1)採血用試験管;ヘパリン加専用試験管(10mL)を用います。但し、ヘパリンが起因薬剤となる場合
は NK 細胞活性測定用専用試験管を用います。試験管は検体収集室に用意してありますのでお問合せ下さ
い。(内線 2212)
採血量;ある程度のリンパ球数が必要となりますが以下の本数を目安として採血してください。
薬剤数
最低必要量(m 採血本数
薬剤数
L)
最低必要量(m 採血本数
L)
1
12.0
2
4
27.0
3
2
17.0
2
5
32.0
4
3
22.0
3
6
37.0
4
6薬剤以上の採血量については、外注検体問合せ内線 2206 にお問合せください。
3.添付薬剤
外来
検査を行う薬剤は、薬局より院内外来処方箋等により薬剤を出していただき、採血時に専用の依頼用紙
と合わせて採血室までお持ちいだだくように患者様にお話ください。
病棟
検査を行う薬剤と専用の依頼用紙を合わせて、臨床検査部に提出してください。
4.提出時間
平日の日中のみ(17 時まで)の受付となります。日直、夜間は受付できません。
(文責 佐々木 勝一)
2.生化学検査に問い合わせのあった事項です。
Q.分離剤の入った採血管の血清に薬物検査は追加オーダーできますか。
A.検査項目によりできる項目とできない項目があります。
血中薬物測定用試料については、分離剤に薬物が吸着し負誤差になることが報告されています。この
影響は薬物の種類によって異なり、その程度も分離剤に対する採取血液量、放置時間、放置温度などに
左右されます。
●影響をうける項目
フェニトイン(PTN)
、フェノバルビタール(PHNO)
、カルバマゼピン(CARBA)
●影響をうけない項目
ジゴキシン(DGN)、バルプロ酸(VALP)、テオフィリン(THEO)、バンコマイシン(VANC)
、
メソトレキセレート(METO)
薬物検査についてはより正確な結果を提供するうえで、プレーン採血管による採血をお勧めします。
ただし、薬物検査の追加等につきましてプレーン管での再採血が困難な場合などは、検査部にご連絡く
ださい。
現在の測定装置での検体の使用量は、上述の項目はすべて 10μl以下で分析が可能です。小児など採
血が困難な患者様で、薬物検査と生化学検査がある場合などでは、プレーン採血管による検体から、薬
物検査と生化学検査が測定できますので、検体提出時に検体ならびに依頼指示リストにその旨を記載し
て提出してください。
〔文責 澤田威男〕
3
薬剤感受性 MIC 情報
菌種別に見た薬剤感受性 MIC 分布;(2006.1-6 月の集計より)
微生物検査室のコンピュータシステムが変わり半年が過ぎました。本システムでは統計解析が比較的
簡単に行えるようになりました。今後も臨床に役立つ情報として、薬剤別感受性率(%)を中心にお知
らせするようにしたいと思います。
今回は 2006 年 1 月から 6 月までに分離された、主要な分離菌の株数と各種薬剤の感受性率を表に示し
ました。グラム陰性桿菌のうち S.maltophilia(JUMP では Pseudomonas maltophilia)は、メタロβラ
クタマーゼを産生する菌ですのでカルバペネム系薬剤(チエナム、メロペン)には自然耐性です。今回
分離された 18 株におけるバクタの感受性率は94%、クラビットで 100%となっています。P.aeruginosa
はマキシピームと硫酸アミカシンの感受性率はそれぞれ 92%、94%です。この半年で分離された多剤耐
性緑膿菌は 3 株と少なく、院内感染対策や抗菌薬の使い方がうまく行われているものと思われます。
一方グラム陽性球菌では、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)のオキサシリンの感受性率が 16%と低
く、メチシリン耐性 CNS(βラクタム薬全てに耐性)が 84%を占めています。CNS は鼻腔や皮膚に常在し
ている菌ですので薬の使い方には注意が必要ですが、現在まで VCM 耐性菌は見つかっていません。
臨床の現場において、よりわかりやすい報告をしたいと考えます。MICに関するご意見ご要望は内
線(2202)大野高司(アドレス [email protected])、佐々木一雅までご連絡ください。
平成18年1月∼6カ月(6ヶ月)
63
100
71
100
100
100
100
100
100
73
44
100
94
88
79
0
100
100
100
100
100
100
100
100
100
100
94
88
86
0
100
89
67
85
12
77
78
67
0
0
32
44
91
97
100
92
95
97
100
95
100
100
96
94
84
86
100
100
84
95
99
100
74
43
65
92
88
50
クラビット (LVFX)
シプロキサン (CPFX)
99
100
100
100
100
100
100
100
100
77
100
94
35
バクタ (ST)
92
100
100
100
100
98
100
84
57
100
96
89
29
ミノマイシン (MINO)
硫酸アミカシン (AMK)
98
85
85
65
91
99
100
95
100
97
20
67
0
メロペン (MEPM)
98
100
96
96
100
99
100
95
100
97
84
92
27
ゲンタシン (GM)
98
85
88
63
100
99
100
95
86
100
92
83
57
チエナム (IPM)
モダシン (CAZ)
ケフラール (CCL)
98
87
88
63
100
99
100
89
100
84
アザクタム (AZT)
92
31
0
0
64
98
0
89
0
0
セフォタックス (CTX)
78
31
0
0
86
94
0
95
0
0
セファメジン (CEZ)
92
33
0
0
91
99
0
95
0
0
マキシピーム (CFPM)
83
56
81
61
0
2
100
89
86
65
80
93
0
ユナシンS (sABCP)
72
5
0
0
0
0
0
84
0
0
ペントシリン (PIPC)
ペントレックス (ABPC)
抗生剤
193
39
26
49
22
88
15
19
7
31
25
261
18
177
オーグメンチン (cAMPC)
E.coli
Ctrobavter sp
E.aerogenes
E.cloacae
K.oxytoca
K.pneumoniae
M.morganii
P.mirabilis
Providencia spp
S.marcescens
A.baumannii
P.aeruginosa
S.maltophilia
H.influenzae
感受性率(%)
株数
抗生剤
グラム陰性桿菌
86
100
100
90
95
99
100
89
43
94
96
88
100
100
4
80
100
100
99
100
74
79
43
オキサシリン (MPIPC)
97
31
48
36
バクタ (ST)
100
100
86
89
クラビット (LVFX)
100
100
100
100
100
98
100
ホスミシン (FOM)
98
8
64
64
塩酸バンコマイシン (VCM)
98
46
97
97
タゴシッド (TEIC)
97
42
90
87
14
クロロマイセチン (CP)
74
4
38
33
19
ダラシン (CLDM)
99
98
97
98
ミノマイシン (MINO)
99
96
97
97
ネオサイクリン (TC)
アイロタイシン (EM)
79
56
44
42
ハベカシン (ABK)
100
0
18
16
99
100
18
ゲンタシン (GM)
チエナム (IPM)
ケフラール (CCL)
100 100
0
0
18
18
16
16
98
100
18
セフメタゾン (CMZ)
セフォタックス (CTX)
100
0
18
17
硫酸アミカシン (AMK)
3
0
9
9
40
セファメジン (CEZ)
ペントレックス (ABPC)
バイシリンG顆粒 (PCG)
抗生剤
164
252
77
104
246
65
17
感受性率(%)
MSSA
MRSA
S.epidermidis
CNS
S.pneumoniae
E.faecalis
E.faecium
株数
抗生剤
グラム陽性球菌
96
10
45
43
100
0
18
16
75
24
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