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「国語科書写」の学びを創る

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「国語科書写」の学びを創る
教科書新ルネサンス宣言
教科書から
ひろがる学び
対話する
教科書
テキストから
プログラムへ
学習のまとめがゴールになるのではなく、
再び新しいスタート地点となるような円環型の学びを実現したい。
学校での学びが、地域や社会と循環して機能できるような
ネットワークを実現したい。
…三省堂『現代の国語』
『 現代の書写』は、そんな教科書をめざします。
平成18 年度版
『現代の国語』
平成18 年度版
『現代の書写』
(イラスト:たむらしげる)
●ワンテーマ誌上交信
「ことばと文化」金田一秀穂 パックン
……………
2
髙木 展郎 …………
4
●国語教育のトピックを検証する
「読解力」の低下をどう考えるか
●特集
「国語科書写」
の学びを創る
平成18 年度版
『現代の国語』
『現代の書写』
教科書特集号
3
これからの書写の学び 松本 仁志
……………………………………
硬筆を中心として学習課題に取り組む 谷口 邦彦
硬筆につながる毛筆の学び 小西 憲一
6
………
8
…………………………
9
手書きの文字の表現力を知る 木村 まり子
……………………
10
………………………
11
…………………………………
12
筆記具の持ち方を再考する 小林 比出代
平成18年度版『現代の書写』 基本コンセプトと教科書のしくみ
「国語科書写」への理解を深めるために ……………………… 14
10
vol.
CONTENTS
●教室で読む
3
古人との対話を図る古典の授業
松友 一雄 …………………………………………………………………
●ちょっと気になるカタカナ語
16
3
「コーチング」
「ディスコース」
…… 20
「アイエスオー」
「ユニバーサルデザイン」
●平成18年度版『現代の国語』
『現代の書写』SNP
学習指導書・教材 ……………………………………………… 22
●学びを開く
̶北から南から̶ 3
若返りする教育現場 +表紙イラスト
藤川亜矢
+デザイン
石川愛子
+ DTP 制作
田頭ひろみ
矢内 忠
……………………………………………………………………
●読み語りの出前
24
3
「絵本で比較言語学のお勉強をした」
大学生 後路 好章 …………………………………………………………………
25
ことばと文化
所変われば品変わり、
ことば遣いは難しい
都 合のつく 時 間にいろ
と こ ろ が、 所 変 わ れ ば 品 変 わ る で、
ベトナムへ行くと、会って最初に、
﹁い
とはないだろうと思う。失礼である。
初 か ら、﹁ い つ 帰 り ま す か ﹂ と 聞 く こ
るんですか﹂と聞くだろう。会った最
例えば﹁日本ではどんな仕事をしてい
いし、もう一年くらいいるのであれば、
あ れ ば、﹁ お 疲 れ で し ょ う ﹂ と 言 い た
いろ違ってくる。昨日来たというので
かによって、次に聞くべきことがいろ
まり心のこもっているとはいいがたい
る。 沈 黙 し て い る の は よ く な い か ら、
を聞くのは、その場しのぎの質問であ
のこもった質問である。いつ来たのか
こ と は、 と て も 気 持 ち
考 え て み る と、 確 か
に、 い つ 帰 る か を 聞 く
意味は全然ないという。
で あ り、 そ ん な 失 礼 な
迎の気持ちを表すもの
と思うからだという。歓
つ 帰 り ま す か ﹂ と 聞 か れ る の で あ る。
ことばである。それに比べて、いつ帰
いろ歓 待できるだろう
日本で教えていた元学生と現地で会う
るのかを聞き、それをもとに何をして
来 日 し た 外 国 人 に、﹁ い つ 日 本 に 来
たんですか﹂と聞くのは普通のことだ
のはとても楽しいことである。それな
あげられるかを考えることは、かなり
と思う。相手がどのくらい日本にいる
のに、その学生からも、﹁わあ、先生、
親切なことであるといえるだろう。
話し始めのきっかけとするための、あ
よくいらっしゃいました。先生いつ帰
り ま す か。﹂ と 聞 か れ て、 少 し 驚 く。
ちょっとしたことばで、失礼である
と怒っても、あまり利益がない。慌て
無駄な誤解を避けることができる。た
来ちゃ悪かったんだろうか。
何となく気づまりなお客が家に来た
ときには、
﹁あのお客さんいつ帰るの。
﹂
な こ と ば で 聞 か な い ほ う が い い。﹁ い
だ、﹁ い つ 帰 る ん で す か ﹂ と、 直 接 的
る。大切なお客さんが来たのであり、い
ねると、ベトナムの人はきょとんとす
遣いは難しい。
誤解されないだろうとは思う。ことば
つまでいられるんですか﹂と聞く方が
ずに、じっくり理由を聞いてあげれば、
早く帰って欲しいということか、と尋
などとこっそり聞いたりする。だから、
つまでいるのかがわかれば、その間の
金田一 秀穂
〔きんだいち ひでほ〕杏林大学外国語学部教授。
ベトナムなどで日本語教師の指導も行う。著書に
角川 one テーマ新書
『新しい日本語の予習法』
など。
2
〔パックン〕93 年に来日。97 年にパックンマックンを結成。
「ジャスト」
(TBS 系列)や「英語でしゃべらナイト」
(NHK)
などのレギュラーを持つ。http://www.havmercy.co.jp/
﹁ことばと文化﹂
も、文化を解せずしてことばを使いこ
デスカ?﹂と繰り返し発音を練習して
暗記しても、
﹁コノビントロハシンセン
日本語を学ぶことは日本文化を学ぶ
こと。いくら文法を覚えても、漢字を
ステムは、重要かつ有効なものだ。あ
陰。やはり日本で使われているこのシ
は、ひとえに渡辺さんの人のよさのお
くがこの世界で何とか生き残ってるの
やるの?﹂とため口で話しかけた。ぼ
片腕をかけて﹁っちわ。今日はコント
なすことはできない。わかりやすい例
敬語を学ぶ過程で日本文化や日本人
の 考 え 方 が 理 解 で き る か も し れ な い。
のときのことを思い出すと、我ながら
より使い分ける﹂と言われたとき、く
例 え ば 食 べ 物。 茶・ 飯・ 酒 は、 御 茶・
は敬語。日本語の先生に﹁日本語には
らくらした。英語にも丁寧な言い方は
御飯・御酒と﹁御﹂をつけるが、これ
ひやひやする。
あ る が、 系 統 だ っ た シ ス テ ム は な い。
は特別な存在であることを表している
尊敬語、謙譲語、丁寧語という敬語の
だから常に互いの立場を意識してしゃ
おつけ﹂なんて﹁御﹂が三つも!﹁御
のかも。味噌汁の丁寧語である﹁おみ
種類があり、自分と話し相手の関係に
べることは新鮮だ。この﹁新鮮﹂とい
御 御 付 ﹂!
ど れ だ け 大 切 な ん だ!
ぼくたち一般的なアメリカ人が、調理
うのは﹁めちゃくちゃ面倒くさい﹂と
に入っていなかったぼくが初めてお笑
法について取り組むレベルは、日本の
いう意味。数年前、そのシステムが頭
いライブに出演したとき、渡辺正之さ
く﹁スシ﹂
。やたら変なものが乗ってる、
たちが輸入したのは﹁お寿司﹂ではな
は、自身の無知さゆ
不思議な食べ物。彼らアメリカのスシ
それと比べて著しく低い。だからぼく
えに、そのライブの
職人は、ことば遣いも調理法も、とに
た。新米芸人のぼく
プ ロ デ ュ ー サ ー で、
しいお寿司を食べるためにも、彼らは
かく大ざっぱなんだ。アメリカでおい
んと同じ控え室だっ
お笑い界の大御所で
まず、敬語を学ぶべきだね。
もある渡辺さんの隣
に 座 り、 足 を 組 み、
ソファの背もたれに
文化を解せずしてことばを
使いこなすことはできない
次号のテーマは﹁学びとデザイン﹂︵仮︶
。語り手は中洌正堯さん︵大学名誉教授︶
、
中垣信夫さん︵グラフィックデザイナー︶のお二人です。どうぞお楽しみに。
3
パックン
合をみると次のような結果となって
PISA二〇〇三年
いる。
1 調査に見る課題
●わが国の生徒の割合がOEC
D平均よりも多いのは、レベル
二〇〇四年十二月七日に︻PIS
A︵OECD生徒の学習到達度調査︶
5、レベル4及びレベル1未満
二〇〇三年調査︼
︵義務教育修了段
である。また、わが国の生徒の
階の十五歳児を対象とする調査︶の
六十%以上は、少なくともレベ
結果が公表された。この調査は、知
ル3以上に位置している。
識や技能を、実生活のさまざまな場 ●フィンランドはレベル3以上の
面で直面する課題にどの程度活用で
きるかを評価することを目的として
行われた。
この調査は、二〇〇〇年にも読解
力中心に行われ、今回は二回目であ
る。今回は、数学的リテラシーを中
心に、前回と同様に読解力、科学的
リテラシー、さらに問題解決能力に
ついても調査が行われた。
こ れ ら の 調 査 に よ っ て、 数
学 的 リ テ ラ シ ー、 科 学 的
の
リテラシー、問題解決
教育
能力については一位
国語 ックを
トピ する
グ ル ー プ、 読 解 力 に
検証
ついては、OECD平
均と同程度︵十四位︶で、
生徒の割合が約八十%と際だっ
前回二〇〇〇年調査の二位グループ
て多く、韓国、カナダがこれに
︵八位︶であったことよりも、有意に
続いている。また、フィンラン
低下していることがわかっている。
ドはレベル1以下のレベルの生
この調査結果から、読解力の低下
徒の割合が約六%と際だって少
が問題にされるようになった。
ない。
読解力について、得点によって高
い方から低い方へ二〇〇〇年調査と 特に、問題となるのは、次の結果
である。
同様にレベル5からレベル1未満の
六段階に分け、各レベルの生徒の割 ● わ が 国 の 得 点 分 布 は 上 位 五%、
「読解力」の低下を
どう考えるか
横浜国立大学
髙木 展郎
さらにその︵特徴︶として次の四
点をあげている。
上位十%、上位二十五%に位置 ﹁ 解 説 ﹂︵﹁ 論 説 ﹂︶
﹁論証﹂
︵﹁ 推 理 ﹂︶
する者の得点は比較的上位にあ ︵ 連 続 型 テ キ ス ト ︶ に 分 け た。 さ ら
りO E C D 平 均 よ り も 高 い が、 に、一覧表、書式、グラフ、図など
下位十%、下位五%に位置する
の非連続なテキストも取り入れた。
者の得点は比較的低い方にあり ・読む行為のタイプ ︵プロセス︶
OECD平均よりも低い。
PISA調査で測定したのは、テ
右のことは、上位の生徒の成績は、 キスト︵文章と図表︶を全般的に理
OECD平均よりも高いが、下位の
解して︿情報を取り出し﹀、︿解釈﹀
し、
生徒は、OECD平均よりも低いと
自らの知識に関連付けてテキストの
いうことであり、このことは、日本
内容と形式について︿熟考し﹀
、︿自
の生徒の全体的な読解力に関する格
分 の 意 見 を 論 ず る ﹀ 習 熟 度 で あ る。
差が広がっているということを示し ︵ここでは、〝読むために学ぶ〟こと
ている。
よりも〝学ぶために読む〟ことに焦
点を当てている。︶
このことから、国語科教育におい
ても、読解力をいかに育成していく
・
テ
キストが作成される用途、
か、ということが今日的な課題とし
場面、状況
て浮上している。
例えば、私的な手紙や小説や伝記
は︿私的な﹀用途で、公式の文章は、
PISA調査における
︿
公 的 な ﹀ 用 途 で、 マ ニ ュ ア ル や 報
2﹁読解力﹂とは
告書は︿職業的な﹀用途で、教科書
︻P I S A 二 〇 〇 三 年 調 査 ︼ で 行 わ
やワークシートは︿教育的な﹀用途
れた読解力の︵定義︶は、次のよう
で用いられる。
に示されている。
さらに、この読解力調査の︵ねら
い︶は、次のようになっている。
○自らの目標を達成し、自らの知
○義務教育終了段階にある生徒
識と可能性を発達させ、効果的
に社会に参加するために、書か
が、文章のような﹁連続型テキ
れたテキストを理解し、
利用し、
スト﹂及び図表のような﹁非連
熟考する能力。
続 型 テ キ ス ト ﹂ を 幅 広 く 読 み、
これらを広く学校内外のさまざ
また、読解力の枠組みを、次の三
つの側面によって分け、それぞれに
まな状況に関連付けて、組み立
問題を作成し、測定している。
て、展開し、意味を理解するこ
とをどの程度行えるかをみる。
・読むテキストの形式
︵内容または構成︶
PISA調査では、散文を﹁物語﹂
4
③ 機会や、自分の意見を述べたり
さま ざま な 文 章 や 資 料 を 読 む
①理解するだけではない。
ストの内容や筆者の意図などを﹁解
↓テキストに書かれた情報を理解す
釈﹂
することが必要である。さらに、
るだけでなく、
﹁解釈﹂し、
﹁熟考﹂ そのテキストについて、内容、形式
することを含んでいる。
や表現、信頼性や客観性、引用や数
②読むだけではない。
値の正確性、論理的な思考の確かさ
↓テキストを単に読むだけではな
などを﹁理解・評価﹂したり、自分
く、テキストを利用したり、テキ
の知識や経験と関連付けて建設的に
ストに基づいて自分の意見を論じ
批 判 し た り す る よ う な 読 み︵ ク リ
たりすることが求められている。
ティカル・リーディング︶を充実さ
③内容だけではない。
せることが必要である。
↓テキストの内容だけでなく、
構造・ 特に授業の中では、なんのために
形式や表現法も、評価すべき対象
そのテキストを読むのか、読むこと
となる。
によってどういうことを目指すのか
④文章だけではない。
といった目的を明確にした指導が重
↓テキストには、文学的文章や説明
要である。
的 文 章 な ど の﹁ 連 続 型 テ キ ス ト ﹂
② テキストに基づいて自分の
だけでなく、図、グラフ、表など
考えを書く力を高めること
の﹁非連続型テキスト﹂を含んで 読解にあたっては、単に読んで理
いる。
解するだけでなく、テキストを利用
して自分の考えを書くことが求めら
ISA調査を
れる。テキストの内容を要約・紹 介
3 P
受けての対応
したり、再構成したり、自分の知識
や経験と関連付け意味付けたり、自
このPISA二〇〇三の結果を踏
ま え、 文 部 科 学 省 は、
﹁今後の改善
分の意見を書いたり、論じさせたり
の方向﹂を次のように示している。
する機会を設けることが重要である。
﹁自由記述︵論述︶
﹂に不慣れ
教科国語を中心としつつ、各教科 特に、
や 総 合 的 な 学 習 の 時 間 等 を 通 じ て、 な生徒には、授業のまとめのときに、
次のような方向で、改善の取り組み
自分の考えを簡潔に書かせるなど日
を行う必要がある。
常的な授業の工夫が重要である。
ら読む力を高めること
① テキストを理解・評価しなが
こと。その際、文学的文章だけでな
て、読解力というと、書かれている
く、新聞や科学雑誌などを含め、幅
内容を読み取る、という受容として
広 い 範 疇 の 読 み 物 に 親 し め る よ う、 の読みが中心であった。しかし、こ
ガイダンスを充実することが求めら
のPISA調査での﹁読解力﹂に示
れる。
されたものは、そこに、受容のみで
ないさまざまな﹁読解﹂の要素を含
授業の中で、自分の意見を述べた
り、書いたりする機会を充実するこ
んでいる。それは、今日、日本の学
と。その際、自分の経験や心情を叙
校 で も 行 わ れ 始 め た[ 確 か な 学 力 ]
述するだけでなく、目的や条件を明
としての﹁読解力﹂でもある。
文部科学省が定義する[確かな学
確にして自分なりの考えを述べた
り、論理的・説明的な文章に対する
力 ] と は、﹁ 知 識 や 技 能 は も ち ろ ん
自分なりの意見を書いたりするなど
のこと、これに加えて、学ぶ意欲や
の機会を意図的につくっていくこと
自分で課題を見つけ、自ら学び、主
も大切である。
体的に判断し、行動し、よりよく問
題解決する資質や能力等まで含めた
今回のPISA二〇〇三年の読 解
力に関するテスト問題は、三年 後に
もの﹂である。
同じ問題で調査をするために公開さ OECD諸国をはじめ、世界中で
れていないが、PISA二〇〇〇年に
今、これまでの受容としての学力観
行われた調査問題は公開されている。
から転換しようとしている。地球規
模で学力観が変わろうとしているの
この公開されている問題を見る
と、日本の国語教育でこれまで行わ
である。
れてきたいわゆる読解問題とは、そ 教科書も、それに合わせて変わら
の内容が異なっていることが認めら
なくてはならない。平成十八年度版
れる。
の﹃現代の国語﹄は、その先駆とな
る構成と内容を示している。
そのことは、これからの時代に求
めれる学力観の提示であり、これま
で日本の国語の授業で行われてきた
読解ということに対するパラダイム
転換が図られなくてはならない、と
いうことを示している。
これからの時代に
4 必要な﹁読解力﹂とは
これまでの国語科の授業におい
5
書いたりする機会を充実すること
読む力を高めるためには、テキス
トを肯定的にとらえて理解する
︵
﹁情
読むことについては、﹁朝の読書﹂
報の取り出し﹂
︶ だ け で な く、 テ キ
の推進を含め、読書活動を推進する
﹁読解力﹂の低下をどう考えるか
〔たかぎ のぶお〕横浜国立
大学教授。主な編著書に
『ことばの学びと評価̶国
語科授業への視角̶』
『こ
とばが育つ学びのプラン』
(三省堂)
『国語科教師教育
の課題』
(明治図書)など。
特集
書写」の
平成18 年度版
学びを創る
「国語科
『現代の国語』
『現代の書写』
教科書特集号
3
国語科の学習指導計画に、書写の授業をどのように組み込んでいくのか。
「文字をよりよくしたい」という学習者の願いにどうこたえていくのか。
三省堂が今回初めて刊行する書写教科書『現代の書写』は、
多くの方々との対話を通して新しい書写の学びを提案します。
これからの書写の学び
松本仁志
広島大学
ける伝統の本質は、日本語の文字を︿正し
く﹀
︿整えて﹀
︿ 読 み や す く ﹀︿ 速 く ﹀ 書 く
力の育成、工夫して書くことを支える洗練
された文字感覚の育成にこそあるのではな
いか。自戒をこめていうならば、伝統的な
授業様式に慣れてしまって、学びの本質を
見失いがちになっているのが今の書写の授
業ではなかろうか。
書写力・文字感覚の育成は、何よりも今
を生きる子どもたちの実態からスタートし
な け れ ば な る ま い。﹁ 子 ど も の や る 気 を 引
き出せない。﹂
﹁成果が出ない。﹂
﹁授業時間
が 確 保 で き な い。
﹂ 等 々、 先 生 方 の 率 直 な
悩みをよく耳にするが、伝統の形式的な面
からいったん離れて、今の子どもたちにと
ってどのような授業が効果的なのかを柔軟
に考えてみれば、アプローチは必ず見つか
るはずである。
そこで、書写の授業パラダイム転換に関
する四つの視点を次に提案したい。
授業パラダイムの転換
書写の授業に
1 おける
パラダイム転換
﹁ 硬 筆・ 毛 筆・ 手 本・ 加 朱 添 削・ 清 書・
墨・一斉教授形態﹂
書写の授業には、これらのキーワードか
らイメージされるような﹁見方・考え方を
共時的に規定する概念的枠組み︵パラダイ
ム ︶﹂ が 存 在 す る。 こ う し た 書 写 の 授 業 パ
ラ ダ イ ム は、﹁ 手 習 い ﹂ の 時 代 か ら 受 け 継
がれてきた文字の学びの﹁伝統﹂によって
形成されているところがある。
そ れ で は、 書 写 の 授 業 に お け る﹁ 伝 統 ﹂
とはいったい何だろうか。﹁墨・毛筆・半紙・
硯﹂等々の用具・用材を使用することだろ
うか。﹁説明・示範・毛筆練習・加朱添削・
清書﹂という学びのスタイルだろうか。確
かにこれらも形のうえでは伝統といえる
が、決して本質ではない。書写の授業にお
6
﹃現代の書写﹄における
2 授業パラダイム
転換への提案
①一人一人の文字を育てる
②思考活動を重視した学び
次のキーワードは﹁思考活動の重視﹂で
あ る。 書 写 の 場 合、 反 復 練 習 が 重 視 さ れ、
学びにおける思考活動が重視されない傾向
があるが、思考によって書写技能の理解は
確かになり、同一・類似構造の文字への応
用も容易になるのである。
﹃現代の書写﹄では、思考活動を大切にし
た流れを各学習材ごとにサイクル化してい
る。各学習材の始めに﹁考えよう・話し合
おう﹂を位置づけ、思考活動をとおして典
型字例に内在する書写技能に気づかせてい
く。次にその気づきを生かして書いていく、
という流れである。これならば、書写指導
がやや苦手な先生も、子どもとともに考え
ながら学んでいけるであろう。
③日常使用する硬筆を中心とした学び
三つめのキーワードは﹁硬筆の学習材に
よる日常化の徹底﹂である。国語科書写の
目標が書写力の日常化にある以上、主役は
硬筆である。毛筆は、書写技能への理解を
深める効果はあるが、授業の前面に出しす
ぎると、学びに対する子どもの目的意識を
日常から乖離させてしまう。
﹃現代の書写﹄では、まず硬筆の学習材で
学習課題を把握し、次に硬筆の学習材と毛
筆の学習材で書き確かめて、さらに硬筆の
学 習 材 で 定 着・ 応 用 を 図 る と い う 流 れ を、
学 習 量 の 負 担 に 配 慮 し な が ら 組 ん で い る。
毛筆の学習材は字形例として後掲している
が、毛筆の学習材を軽視しているわけでは
なく、量・内容ともに充実させている。
④さまざまな授業形態への配慮
最 後 の キ ー ワ ー ド は﹁ 柔 軟 な 授 業 形 態 ﹂
である。中学校学習指導要領では、国語の
授業時数における書写の授業時数を、一学
年﹁十分の二程度﹂、二・三学年﹁十分の一
程度﹂としている。なかなかその確保が難
しいのが実情であるが、全くやらないとい
うのでは、文字の上達を願う子どものニー
ズに答えることはできない。
﹃現代の書写﹄では、このような実態に対
応するために、各学校の実情に応じて、例
えば十分程度の時間でも技能定着への道筋
がつけられるような、柔軟な授業形態が仕
組めるように学習材を構成している。トー
タ ル で﹁ 十 分 の 一 ﹂﹁ 十 分 の 二 ﹂ に 到 達 す
れ ば よ い と い う 発 想 で あ る。 ま た、﹃ 現 代
の国語﹄と活動を共有できる学習材も取り
入れて、時間的な負担に配慮している。
〔まつもと ひとし〕広
島大学大学院助教授。初
等カリキュラム開発講座
に所属し、文字学習と書
写学習を融合させたカリ
キュラムの開発に取り組
んでいます。
書写の授業パラダイム転換のキーワード
の一つは、
﹁個々人の文字の成長﹂である。
いわゆる手本があって、それに全員で近づ
いていくという学びのスタイルではなく、
次のイメージのように、学んだ書写技能を
自分の文字に生かしながら成長させていく
という、個人重視の学びのスタイルを提案
したい。
過程を大切にしている。
授業パラダイムの転換
﹃現代の書写﹄では、いわゆる手本を﹁字
形例﹂として別ページに後掲し、学んだ技
能を一人一人が自分の文字に生かしていく
これからの書写の学び
7
1年「自分の文字をよりよくしていこう」
学習者自身が、学習材の「学習のねらい」を理
解し、そこで学んだ書写技能を生かして自分の
文字を成長させていく、という学びのスタイル
を提案している。
硬筆を中心として
﹁国語科書写﹂の
学びを創る
・ほかの文字に応用がきかない
などのマイナス面がある。書写学習にも学
習課題はあるので、その課題に気づき、解
決していくという学習過程をとらなけれ
れるだろう。
硬筆学習を活動の中心に
いうのも、こんな字でいいのだろうか、こ
験から、このような印象をもっている。と
自分の書き文字に自信のある中学生は少
ないのではないか。私は、今までの指導経
段階で、これらの課題を導き出すことがで
代の書写﹄では、﹁考える﹂↓﹁話し合う﹂
中 心 が そ ろ っ て い な い、 な ど で あ る。﹃ 現
ていない・文字間がそろっていない・行の
げられる。例えば、文字の大きさがそろっ
ったとき、読みにくさの原因はいくつか挙
自分の文字は読みにくいし何か変だぞと思
で は、﹁ 学 習 課 題 へ の 気 づ き ﹂ と は、 ど
のようなものなのだろうか。文章を書いて、
確かめることもでき、学習者の実態に合わ
し合う。途中で毛筆を使い、大きく書いて
とらえる学習は、まず硬筆文字で考え、話
の、漢字の左右・上下・内外の組み立てを
字の部分と部分の関係を考えよう﹂
︵一年︶
ができるように配慮されている。例えば﹁文
ろん、必要に応じて毛筆を取り入れること
く段階から一貫して硬筆を使用する。もち
硬筆学習を活動の中心に据え、課題に気づ
学習課題に取り組む
んな書き方でいいのだろうかと迷いながら
きる。さらに例題で﹁気づきを生かして書
〔たにぐち くにひこ〕広島
大学附属中・高等学校教
諭を経て、03 年度から安
田 女 子 大 学 勤 務。 主 に、
書写書道の学習内容、方
法の改善に関する提案を
行っている。
習 に は 欠 か せ な い。
﹃ 現 代 の 書 写 ﹄ で は、
書き続けている学習者を教室で数多く見て
せて学習が進められる。
書きやすく読みやすい文字に改善してい
くことは、伝え合う力をはぐくむ国語の学
き た か ら で あ る。 な か に は、
﹁字なんか読
く ﹂。 考 え な が ら 書 く こ と は、 自 分 の 字 を
ば、書く力の向上は望めない。
めればいい﹂と考えている学習者もいた。
よりよく改善していくことに自然と生かさ
学習課題の見つけ方
平成18 年度版
『現代の国語』
『現代の書写』
教科書特集号
3
これは、課題文字そっくりに書くというこ
安田女子大学
い。
けるようになるに違いな
を、自信をもって書いてい
よく改善された自分の文字
で 学 習 し た 学 習 者 は、 よ り
こ の よ う に、
﹃現代の書写﹄
っ て い る こ と を 確 認 す る。
の文字がより読みやすくな
段 階 で も 硬 筆 を 使 い、 自 分
い。 最 終 の﹁ 確 か め 合 う ﹂
硬筆を学習活動の中心に据えると学習前
の自分の文字と比べやす
1年「文字の部分と部分の関係を考えよう」
それぞれの学習材は、硬筆学習が活動の中心となり、必要に
応じて毛筆を取り入れることのできる構成となっている。
れまでの書写学習と関係があるのではない
だろうか。
課題文字そっくりに書くという作業に
は、
・学習課題がはっきりしない
谷口邦彦
8
硬筆につながる
毛筆の学び
場面に 応じ た文字感覚を養う ためである。
音﹂から始まる。このことばは、以下の三
﹃ 現 代 の 書 写 ﹄ 一 年 生 の 毛 筆 の 課 題 は﹁ 和
つの条件により選ばれた。
エーションをもたせたのは、適宜選択して
場合によっては﹁白い鳥﹂だけを取りあげ
①難易度が比較的低く学習に入りやすいこ
く、画数が適度であるなど。
と。例えば、つまずきやすい右払いがな
ることも可能である。
さらに毛筆を使用することで、点画の整
え方・接し方や、かなの曲線表現の理解な
し国語科書写は、毛筆技能の習熟を最終的
毛筆を使用することで理解は深まる。しか
漢字やかなは、主に毛筆によって生まれ
発 展 し て き た 文 字 で あ る。 そ の 書 き 方 は、
いて、それぞれ穂先がどこを通るのか理解
ぼ決定される。特に、楷書の基本点画にお
毛筆での点画の形は、穂先の通る位置でほ
を、朱墨や墨の濃淡でたびたび示している。
﹃現代の書写﹄では、毛筆の穂先の通る位置
であろう。
につながり、中学校での書写の始まりにふ
意味から、調和・ハーモニーといった連想
響いた音﹂という本来の音楽用語としての
に﹁高さの違うふたつ以上の音が、同時に
﹁和音﹂は、①②の条件をクリアし、さら
③明るい印象のことばであること。
立っている語句であること。
れぞれ左右・上下の組み合わせから成り
②教科書の学習の流れに沿って、二字がそ
な目標にしているのではない。常に硬筆で
行書の筆づかいのときにも必要である。
しておくことが、楷書のみならず、かなや
どを通じ、硬筆での書写技能を補強できる
の日常化を意識する必要がある。
毛筆を有効に利用しよう
﹃現代の書写﹄では、硬筆↓毛筆↓硬筆と
れることを願っている。
と学習者がともに豊かな文字生活を育てら
さわしいことばなのではないかと思う。
﹁ 和 音 ﹂ か ら 始 ま る 学 び に よ っ て、 指 導 者
いう流れを明確にしている。例えば、一年
こうして毛筆によって深められた文字感
覚を、再び硬筆に転移させることができて
初めて書写の目標は達成される。
﹁和音﹂から始めよう
1年「かなを交えて書こう 漢字とかな」
大筆・小筆や縦書き・横書きとバリエー
ションをもたせ、場面に応じた文字感覚
を養うことができる。
生 の 学 習 材﹁ か な を 交 え て 書 こ う ﹂ で は、
まず硬筆によって漢字かな交じりの文章を
整えるポイント︵漢字とかなの大きさ・字
間・行の中心︶に気づき、それを確認する
1年「ていねいに書こう 楷書」
硬筆文字で気づき、毛筆で大きく書いて
確かめることで、文字への理解はより深
まる。
ために毛筆課題﹁大きな白い鳥﹂を学ぶ。
〔こにし けんいち〕香川大
学教育学部教授。専門は
近代篆刻史。文字に対する
美意識をもち、文字を書く
楽しさを子どもたちに伝え
られる指導者を育てたいと
思っています。
大筆・小筆、さらに縦書き横書きとバリ
香川大学
硬筆を中心として学習課題に取り組む/硬筆につながる毛筆の学び
9
小西憲一
手書きの文字の
表現力を知る
選択書写をとおして
﹁国語科書写﹂の
学びを創る
力ある学習活動であ
る。
具体的な学習の流れ
は次のように考えられ
る。
現のイメージをつくり
体験と思いとことば
とをつなぎながら、表
1 表現したいことば
を手書きで
イナミックに展開できないものだろうか。
上げる。
身のまわりにあるさまざまな素材に目を
向け、その中から自分の思いを表現するの
ながら、その素材やことばにこめた自分の
2
書く素材を選ぶ
に最も適したイメージをもつ素材を探す。
思いをことばとして紡ぎだす。それを表現
する手段の一つとして、手書きの文字は大
〔きむら まりこ〕表現活動
における生徒のもつセン
スやパワーに感嘆しなが
ら、それを計画的に伸ば
す指導法を、日々楽しみ
ながら模索中。
4
交流会をもつ
者の眼差しは実に暖かい。
﹁伝えたい﹂﹁聴
きたい﹂思いが高まっていることが伝わっ
てくる。自分と同じように他者にもいとお
なる。これは書写のみならず、国語にも共
思いというものがあることを実感する場と
しむこと・もの・とき、そしてそれらへの
に質問やアドバイスを行う。
形例や筆づかいのページの活用もできる。
バ イ ス を 行 っ て い く。﹃ 現 代 の 書 写 ﹄ の 字
く必要性を感じている。
であり、そのことに計画的に取り組んでい
手書きの文字のもつ力を知ることで﹁書
く﹂行為への意識を高めさせることは重要
通する学習活動といえよう。
6
プレゼンテーション・鑑賞会
﹁ショウアンドテル﹂の要領で作品を示し
まずは半紙に練習をする。この際、机間
指導として、字形やバランスを中心にアド
5
練習︵第二次草稿︶↓
完成
ことばの紹介、その素材を選んだ理由な
ど を、 四、五 名 の 仲 間 で 発 表 し 合 い、 互 い
て仲間の発表を聴き、作品を見つめる学習
きな力をもっている。さらに﹁ことば﹂や
﹁ 文 字 ﹂ の 深 み を、 仲 間 の 文 字 を 見、 そ こ
にこめられたメッセージを聞くことによっ
て一層強く認識することも可能であろう。
﹃現代の書写﹄
︵二・三年︶資料編の﹁さま
ざまな素材に書こう﹂は、異素材へのチャ
レンジを引き金に、
﹁書きたい﹂
﹁伝え合い
たい﹂という欲求をおのずと生み出す、魅
足立区立第十四中学校
書体・大きさ・配置などを考えて作品の
ラフスケッチをつくる。
思いを語っていく。身を乗り出すようにし
2・3年「さまざまな素材に書こう」
身のまわりのさまざまな素材を利用して、好きな文字やことばで表
現する。素材と手書きの文字のコラボレーションを楽しむことので
きる学習活動である。
3
第一次草稿をつくる
中学校生活のしめくくりに、過ぎし三年
間に思いをはせ、自分の中にはぐくまれた
ら、手書きの文字によって自己を表現する
平成18 年度版
『現代の国語』
『現代の書写』
教科書特集号
3
ことの楽しさを存分に味わえる活動を、ダ
﹁書写﹂で習得した知識・技能を生かしなが
|
木村まり子
10
筆記具の
持ち方を再考する
づく持ち方である。一方、三指が相互に機
合えるといった、文字を書く際の要件に基
差し指・親指・中指の三指が自由に機能し
方から見て六〇度程度となる。これは、人
じることが明らかになった。
折れや丸みの書き方に大きなダメージが生
と、 日 本 の 文 字 の 特 性 で あ る は ね や 払 い、
方の学習者が書いた文字を分析してみる
能 で き な い 持 ち 方 ││ 例 え ば、 学 習 者 の
す必要性を感じている。中学校での書写学
高校生のこうした実状に鑑み、従来疎か
にしがちだった筆記具の持ち方指導を見直
習を始めるにあたり、まずは、学習者それ
中に多く見られる人差し指が反り返った持
に必要な指の伸縮運動を困難にしてしま
ち方では、指を硬直化させ、文字を書く際
昨 年 度 勤 務 校 で、 書 道 選 択 者 を 対 象 に、
硬 筆 筆 記 具︵ 以 下﹁ 筆 記 具 ﹂
︶の持ち方に
ぞれの筆記具の持ち方について、改めて考
〔こばやし ひでよ〕文字を
書くこと及びその教育につ
いて、さまざまな角度から
研究・実践を試みる。青山
杉雨記念賞第 4 回奨励賞受
賞。
のである。
に生きてはたらく力を育成していきたいも
能のみならず、国語科、ひいては日常生活
﹁ 気 づ き ﹂ で 始 ま る 学 習 に よ っ て、 書 写 技
授業を目指したい。
ることが学習の理解と喜びの原動力となる
として定着させていく。このように、考え
望ましい持ち方を、今度は自分自身のもの
ことばにしてみる。そのうえで理解できた
習者が自ら考え、気づいたことを具体的な
ついて考えることをねらいとしている。学
持ち方を改めて自覚し、望ましい持ち方に
では、各種写真資料をきっかけに日常での
﹃現代の書写﹄の﹁さあ始めよう﹂︵一年︶
われることを期待したい。
いて基礎・基本となる学習内容が大切に扱
えてみてほしい。中学校の国語科書写にお
う。実際に、三指が自由に機能しない持ち
1年「さあ始めよう」
写真資料をきっかけに筆記具の望ましい持ち方を考える。
「筆記具の先端部が人差し指・親指・中指
の三点で支持され、この三本の指と筆記具の軸との接触点を結んだ形が正三角形になる」といった
具体的な例示もある。
関するさまざまな調査を試みた。おおよそ
ながら結果の予測はしていたものの、実際
にその数値をまのあたりにして愕然として
し ま っ た。
﹁高校入学時までに鉛筆の持ち
方を教えてもらったことがない﹂と答えた
さらには、望ましい持ち方で筆記具を把持
学 習 者 が、 全 体 の 四 割 強 に 上 る の で あ る。
できている学習者は二割ほどしかおらず、
多種多様な持ち方が存在している。
望ましい持ち方では、筆記具の先端部が
人 差 し 指・ 親 指・ 中 指 の 三 点 で 支 持 さ れ、
この三本の指と筆記具の軸との接触点を結
んだ形が正三角形になる。このとき、軸の
傾斜角度は、前方から見て二〇度程度、側
松本深志高等学校
手書きの文字の表現力を知る/筆記具の持ち方を再考する
11
小林比出代
平成18 年度版
﹁国語科書写﹂の
学びを創る
『現代の国語』
『現代の書写』
教科書特集号
3
新たなリテラシーにつながる﹁文字の学び﹂を
﹃現代の書写﹄はこうしたご要望にこたえ、
﹃現代の国語﹄と連携した書写教科書⋮
現在の時間数できちんと教えきれる教科書⋮
国語科の﹁書写﹂という性格を明確にした教科書⋮
生徒の文字の成長を保障できる教科書⋮
国語の中で学習でき、
﹁ことばの学び﹂をささえる。
文字の原理を発見し、学び合いをとおして、
﹁自分の字﹂を育てる。
﹃現代の書写﹄は、学習者自らの﹁気づき﹂による主体的な学びを
大切にしています。また、
﹃現代の国語﹄との連携により、
より効果的な文字の学びを可能にしました。
さらに、充実したサポートプログラムをご提供し、
学校生活・日常生活に生きる書写をめざしています。
硬筆から入り、毛筆で確かめ、硬筆で生活にひらく。
基本コンセプトと
教科書のしくみ
『現代の書写』
めざして生まれた書写教科書です。
平成18 年度版『現代の国語』
平成18 年度版『現代の書写』
平成18 年度版
基本コンセプト
12
本編
資料編
◎
文
字
に
つ
い
て
基
礎
的
な
事
項
を
整
理
し
ま
し
た
。
◎
﹁
本
編
﹂
の
学
び
を
支
え
る
た
め
の
資
料
で
す
。
た
し
か
な
学
び
繰硬
り筆
返と
し毛
確筆
認の
し字
た形
い例
事、
毛
項
筆
を
の
ま
筆
と
づ
め
か
ま
い
し
や
た
基
。
本
点
画
な
ど
、
リンク
【本編】
と【資料編】の
二部構成が多様な
学びを実現
姿
勢
・
執
筆
・
字
形
例
学
習
の
流
れ
を
明
確
に
し
ま
し
た
。
﹁
硬
筆
学
習
に
生
き
る
毛
筆
学
習
﹂
の
、
学
び
の
サ
イ
ク
ル
を
考
え
ま
し
た
。
'
ひ
ろ
が
る
学
び
'
◎
書
写
の
学
び
を
豊
か
に
ひ
ろ
げ
る
た
め
の
資
料
で
す
。
'
◎
発
展
的
な
学
習
や
﹁
選
択
書
写
﹂
の
授
業
で
も
ご
活
用
い
た
だ
け
ま
す
。
'
基本コンセプトと教科書のしくみ
『現代の書写』のしくみ
書
写
学
習
の
基
礎
・
基
本
と
な
る
学
習
材
を
精
選
し
て
構
成
し
ま
し
た
。
基
本
の
学
習
材
『現代の書写』
学びのサイクル
課題への気づき
考えよう・話し合おう
気づきの整理
気づいたことを書こう
硬筆
気づきを生かして書こう
気づきを生かした試書と練習
振り返り(評価)
定着へ向けた応用
毛筆で大きく書いて
確かめよう
確かめ合おう
学習を生かそう
気づく
硬筆
生活に生かす
毛筆
・
硬筆
確かめる
13
定着と発展のための実践的応用
学習のまとめ
生活に生かそう
A =基礎的な理論を学びたいときに
B =広く関連情報を得たいときに
C =指導改善のヒントがほしいときに
*定価は 2005 年 3 月現在のもの(税込)です。
『現代の国語』編集委員会
市毛勝雄他
『楽しい国語科授業アイデア
集成 30 言語事項【10】
全国大学書写書道教育学会
楽しい書写の指導』
『新編書写指導』
(明治図書出版 2,345 円 1996 年)
(萱原書房 現在品切れ中)
授業の構想から
指導の工夫まで
ここが魅力
楽しい授業のための
アイデア集成
A C
ここが魅力
B C
楽しい書写授業のアイデアの実際を短時間のう
ちに理解することができます。書写嫌いの子ども
を変える、魅力的な授業づくりヒント集の役割を
果たしてくれるのではないでしょうか。
内容紹介
内容紹介
基礎的・基本的な内容、子どもの書写の意欲を
大切にする学習指導の工夫に、貴重な示唆を与え
てくれる本です。何を基本的な内容としておさえ、
書く意欲を引き出すためにどういうことを扱えば
よいか、パソコン時代の新しい書写の授業を目指
す指導改善に関するヒントがここにあります。
本書の内容は、次のように構成されています。
第一編 授業理論編
年間指導計画の要点と事例、授業の構想、評
価の工夫など。
第二編 授業実践編
授業づくりの要点、授業研究の内容、評価の
実際、教材研究など。
第三編 指導内容編
姿勢と筆記具の使い方、仮名、楷書、行書、
実用的な書式。
第四編 資料編
漢字の字体、筆写の楷書、仮名の字源、平
仮名毛筆文字の参考例。
この構成からも書写指導の基本を身につけるた
めの必携書であることがわかると思います。
執筆者のほとんどが小学校の先生方ですので、
内容によって、中学校の場合は多少修正が必要に
なります。しかし、アイデアとしては小学校と同
様に、子どもの関心をとらえるものと思われます。
例えば筆順の指導に関するアイデア。ここでは、
筆順の原則をしっかり教え、これにネーミングを
することで習熟を図ろうとしています。
中学生になっても、筆順が把握されておらず、
「木」の3画めを右から書いたり、
「光」の上半分を
左から順に書いたりする例が珍しくありません。
個に応じたきめ細かな指導が求められているの
です。こうした子どもに基本を把握させることは、
まさに教師の指導方法の工夫に大きく依存してい
るといえます。
基本が身についていない子ども、書写に抵抗感
をもつ子どもに対する指導のポイントを知るため
の本として、あえて小学生向きのアイデア集成で
ある本書を紹介してみました。もちろん内容は中
学生向きにするとして、そう考えると、活用した
くなるワークシートや練習カードが数多く見出さ
れるのではないでしょうか。
﹁国語科書写﹂の
学びを創る
文字を書くことの意義、書写教育の目標・内容
に始まって、指導展開、評価の実際、さらには具
体的な指導内容の解説までがわかりやすく示され
ています。指導必携といえる一冊です。
平成18 年度版
『現代の国語』
『現代の書写』
教科書特集号
3
14
﹁国語科書写﹂への理解を深めるために
「国語科書写」への理解を深めるために
参考図書のご紹介
文部省
『中学校国語指導資料
相川政行ほか監修
『書の手帖』
第3集 書写の学習指導』
(小学館 2,243 円 1991 年)
(東洋館出版社 現在品切れ中)
書の名品鑑賞と書道入門
ここが魅力
A B
ここが魅力
A C
書道・書写の教育の基盤にはどのようなことが
あるか、教師としての教養と書の楽しみを伝えて
くれる本です。
書写に関する指導の進め方、指導のポイント、
書き方、用具に関することなど、指導についての
基礎が、一読することによって手にできます。
内容紹介
内容紹介
この本を読むことによって、書の魅力、書写の指
導を通じて子どもに伝えたいものが理解されます。
とにかく楽しい。わかりやすい。書写の指導にあ
たるものとして、この本の内容にふれておくこと
には意味があると思います。授業展開の工夫のと
らえ方が広がり、奥行きが出るに違いありません。
全体は
1章 書体とその名品
楷書、行書、草書、和様漢字、仮名などの書
体についての解説、名品の紹介、さらにその習
い方までが盛り込まれています。
2章 文房四宝
筆、墨,硯、紙、その他の文房具についての
基礎知識が得られます。
3章 作品の主な形態
半切、聯落、聯、長条幅、短冊、色紙、懐
紙などについて解説されます。選択的な学習や
発展的な学習を企画するときに役立つ情報が盛
り込まれています。
というように、構成されています。
教師としての教養を高め、同時に書写・書道教
育の意味を考えさせてくれる本です。
15
書写指導の基本が
把握できる
私たちは、一般的に書写の指導は大切であり、
書写にかかわる学習活動を授業で大切にしなくて
はと考えています。指導にあたっても、
「正しく
書こうね」
「整えて書くことが大事だよ」などと
生徒に声をかけています。しかし、書写の指導で
はどのような力をどこまでつけようとしているの
か、厳密にとらえて指導に位置づけるまでにはい
たっていないのではないでしょうか。
「書写への意欲を喚起し、書写能力を高めるた
めにもっとも大切なのは常に指導方法を工夫する
ことである。
」
本書は、この考えに基づいて、指導に関する基
礎的な事柄、指導のための基本的な留意事項、そ
して指導効果を高めるための工夫のあり方が平易
に記述されます。
例えば、指導の工夫については、一斉指導の場
合、グループ指導の場合、個別指導の場合につい
て、どの教室においても役立つ情報が提出されて
います。
書写の指導に若干の不安をもっておられる方に
は、示範の方法やその際のポイントに関する記述
などは特に貴重な情報といえそうです。
1
古典に親しむための
三つの試み
いくための下地︵能力︶を
身 に つ け る 学 習︵ 読 み の
準備︶に配慮していると
レディネス=読むための
いうことであろう。
﹁ことばの壁﹂がある学
る。しかし、古語ということばの壁をな
と で、 よ り 多 く の 学 習 者 が 古 典 の お も
みのレディネスを施していくこ
習材に対してこういった読
んとかして乗り越えて、学習者が古典作
しろさを感じることが可能になると考え
中学校の古典教育は、入門期というこ
ともあって、指導が難しいといわれてい
品と親しむことをねらいとする実践が積
ける余裕はないのが実情であろう。
準備である。現実的にはここに時間をか
しかし、読みのレディネスは、あくま
でも古典学習材を実際に﹁読む﹂学習の
られる。
学習材の内容を深めることを授業の
中心に置く試み。
②調べ学習や物づくりを通して古典世
界に関する知識を広げて、学習材の
内容理解に活かそうとする試み。
朗読や群読、劇化など音声言語活動
③
を作品との関係を結ぶ足がかりに
し、活動における工夫と学習材の内
容理解を関係づけて行う試み。
これらに共通するのは、古典を読んで
さが存在しているのである。
ていくことができるか、という点に難し
しかし、その時間的制約の中で、いか
に古典学習を充実したものとして構想し
ると考えている。
私は、十分に時間をかければ、中学生
とで古典世界に向き合いやすくし、
にも充実した古典指導を行うことができ
①訳文を積極的に授業に取り入れるこ
こうした実践は、大きくいえば以下の
三種類の試みとして集約できる。
み重ねられてきた。
教 室で
3
読む 古人との対話を図る古典の授業
̶ 現代とのつながりの重視 ̶
松友一雄 福井大学
16
〔まつとも かずお〕国語学力の形成過程や定着のあり様を明
らかにすることで、より効果的な国語学習を模索している。
また教員研修の e- ラーニング化、対話型授業支援システム
の開発を進めている。
(URL:http://www.lesis-k.com)
領域への位置づけ
2 ﹁読むこと﹂の
古典の学習を通して中学生に感じさせ
たい﹁おもしろさ﹂とは、いったいなん
視点で学習材分析を行う必要がある。
読むときに起こる思考の道筋であり、学
りのステップを表しているが、それは、
師のもののとらえ方に斬新さを感じるこ
、
﹃徒然草﹄といった随筆学
﹃枕草子﹄
習材を読んでいると、清少納言や兼好法
能にしてくれると考える。
の時間を軽減し﹁読む学習﹂の充実を可
か。そして、この学びこそ、レディネス
の対話が深まっていくのではないだろう
なることで、古典学習材を通した古人と
代とのつながりを発見する学習が起点と
そのように考えたとき、最も重要なの
は②の学習であろう。古典作品の中に現
習過程でもある。
発達段階ではない。むしろ、古典作品を
こうした視点に立つならば、読みの学
習材としての古典学習材の可能性が明ら
かとなり、訳文を効果的に用いることが
可能となる。
感じ取ることができる。このリズムの
﹁お
4 現代社会の特徴をとらえる。
なのであろうか。
もしろさ﹂も、書かれている内容への理
とがある。もっとも、時間的に向こうの
3 古典世界と現代社会との相対化を
進め、その違いを知る。
3 古人との対話
解が深まることで、相乗的に感じ取れる
方が先なのだから﹁斬新さ﹂ではないの
2 古典世界と現代社会との
つながりを学ぶ。
古文や漢文を音読したときに感じる現
代のことばとのリズムの違いは、確かに
ようになるものである。ここでもレディ
だが。
現代社会に目が向いてくる時期である
中学生だからこそ、古典学習材を学ぶこ
1 古典世界の知識を学び、
古典世界をイメージする。
古典独特のものとして﹁おもしろさ﹂を
ネスは重要である。
れてしまうのである。ゆえに指導者は、
とで時間を越えた認識の広がりを丁寧に
化がもたらすものは少ない。
といった現代と古典世界との単純な相対
が、
﹁昔はこうだった﹂
、
﹁今はこうだ﹂
識を相対化することに一つの目標がある
それでは、レディネスを時間的に軽減 古典学習材の内容理解は、古人の認識
し、
﹁読む学習﹂を充実させるためには、
に迫り、そこから現代の私たちのもつ認
どうすればよいのだろうか。
まず思い浮かぶのは、訳文を積極的に
用いる方法であろう。しかしながら、現
代語になおされた古典学習材は、学習者
現代語で書かれた小説学習材や随筆学習
学ばせたい。
の側で現代文学習材との相対化にさらさ
材と比較して、古典学習材の何がおもし
下に示した四つの項目は、認識の広が
17
ろく、どこに学ぶ意義があるのかという
古人との対話を図る古典の授業
古典学習による認識の広がり
き
ょ
う
﹁ 国
え
だ
て 国 破 一
い 破 れ 面
る れ て の
。 て ⋮ 草
山
む
河 青 ら
み
在
と
り た な
、 り っ
城 � て
春
い
に 杜と る
し 甫ほ 。
て の
草 詩
木 ﹁
深 春
望
し
﹂ ﹂
を に
ふ あ
ま る
兼
房
右
��
増ま
し
尾お
の
十
郎ろ
う
兼
房
。
義
経
と
と
も
に
戦
っ
て
戦
じ
ゅ
う
も
ほ
ん
の
一
時
の
こ
と
で
、
今
で
は
そ
の
跡
も
な
く
て
、
た
功
名
一
時
の
草
む
ら
と
な
る
�
功
名
を
立
て
た
が
、
そ
れ
﹁
義
臣
﹂
は
、
義
経
を
守
っ
て
戦
っ
た
者
た
ち
を
指
す
。
�
義
臣
す
ぐ
つ
て
�
忠
義
を
尽
く
す
家
臣
を
え
り
す
ぐ
っ
て
。
廷てい 蝦 南
に 夷 部
服 � 口
�
従
し 昔
な 、 南
か 東 部
っ 北 地
た 地 方
人 方 の
を か 出
指 ら 入
す 北 り
。 海 口
道 。
へ
か
け
て
住
み
、ち
朝ょう
攻 父 和 南 っ
め 秀 泉 部 た
ら 衡 が � 所
と
れ の 城
て 遺 � 南 い
自じ 命 和い 部 わ
ず 地
刃じん に
れ
泉み 方
し 従
て
の
た っ 三さぶ 。 い
。 て 郎ろう 現 る
義 忠ただ 在 。
経 衡ひら の
を の 岩
守 館 手
県
っ の
た あ 盛もり
が っ 岡おか
、 た 市
兄 所 一
泰やす 。 帯
衡ひら 忠 。
ら 衡
に は
高 秀 大 夢
館 衡 門 の
が � よ
�
跡
う
源 � 藤 に
の
原 は
義しよ 秀 氏 か
つ 衡
経
[ ね [ のや な
館かた く
で 消
あ え
]
の っ て
た 。
] 館
の の 平らひ
い 跡 泉
た 。 館ちた
館
の
︵
表
判うほ
門
官んが
。
館ちだ
︶
の
あ
み
な
も
と
い
ず
み
一
睡
の
う
ち
に
し
て
�
う
た
た
寝
を
し
て
い
る
間
に
見
る
﹁
え
え
う
﹂
と
も
い
う
。
三
代
の
栄
耀
�
藤ふじ
原わら
の
清きよ
衡ひら
・
基もと
衡ひら
・
秀ひで
衡ひら
三
代
の
栄
華
。
�� おくのほそ道
おくのほそ道 ��
『おくのほそ道』
「平泉」
(3年)
自然と人、その移り変わりの速さの違いに芭蕉は思いを
巡らせる。芭蕉の目に映っていた景色を考えることで、読みを深める観点を獲得できる。
為のはかなさ﹂という答えを導くことと
教室で読む
を提案する方が意義のあることと思う。
は、視点が少し違うように思う。
いずれにせよ、何もない景色を眺めな
がら、これだけイメージを広げ、その感
そこで、今回は芭蕉の目にこだわって読
むことを提案したい。
動を表現する芭蕉の旅のあり方には現代
後半の中尊寺の記述は、前半とは対照
的に、実存するものを描いている。その
この学習材において、芭蕉の目にはど
のような景色が映っているのだろうか。
即していえば、
﹁高舘に登った芭蕉の眼
淡々とした語り口の中に、
﹁すでに退廃
人として斬新なものを感じる。
前にあるのはいったいどのような景色だ
空虚の草むらとなるべきを∼しばらく千
筆者は、かつて、授業で生徒たちにそ
の景色を描かせたことがあった。原文に
ったのか﹂
、という問いであった。
消え去ってしまった景色を思い描くこ
との方が、残された史跡を目の当たりに
歳の記念とはなれり﹂という記述をみる
た。
﹁ 大 門 の 跡 ﹂ や﹁ 和 泉 が 城 跡 ﹂ が、
するよりも、旅としてははるかにおもし
と芭蕉の複雑な気持ちがうかがえる。
当時どのような形で残っていたのかわか
ろいという考え方は、中学生にとっても
﹁田
本文を読み進めていく中で、結局、
野﹂と﹁山﹂と﹁河﹂と﹁草むら﹂しか
ら な い が、
﹁功名一時の草むらとなる﹂
斬新なものであろう。
見えなかっただろうという結論に至っ
などの表現から、判別が不可能な状況だ
ったろう、という意見が大勢を占めた。
長 曾 死
野 良 し
県 右 た
︶か �� 老
上み
武
諏す [ 士
訪わ
。
の
生
ま
れ ]
。 姓
は
芭ば
か
し
ょ 河わ
蕉う
の 合い
門 。し
人 信な
。 濃の
芭 の
蕉 国
︵
に 現
従 在
っ の
��
二 た か
堂 。 ね
て
�
耳
中
驚
尊
か
寺
し
の
た
経
る
堂
�
と
光
以
堂
前
︵
か
こ
金ん
ら
色じ
き
驚
堂
嘆た
ん
︶
の
し
こ
て
と
聞
。
い
て
い
で、本格的に﹁読む学習﹂を進めていき
は 三
文も
ん将
殊じ
ゅ �
菩ぼ
薩さ
つ清
・ 衡
優う ・
填て
ん基
大だ
い衡
王お
う・
・ 秀
善ぜ
ん衡
財ざ
いの
童ど
うこ
子じ と
の 。
三 実
像 際
が は
安 、
置 経
さ 堂
れ に
たい。特に﹁平泉﹂は、芭蕉の時空を越え
�
と
っ
く
に
今
で
は
崩
れ
落
ち
て
、
玉 七 三 て
の 宝 尊 い
扉 � の る
仏 。
�
仏 �
宝 教
玉 で 阿あ
を い 弥み
ち う 陀だ
り 、 如に
ょ
ば 金 来ら
い
め ・ ・
た 銀 観か
ん
扉 ・ 世ぜ
。 瑠る 音お
ん
璃り 菩ぼ
な 薩さ
つ
ど ・
の 勢せ
い
七 至し
種 菩ぼ
の 薩さ
つ
宝 。
。
|
芭蕉の目にこだわる
す
で
に
⋮
な
る
べ
き
を
じ
や
う
﹁時の移るまで
何もない野原を見て、
涙を落とし﹂た芭蕉、いったいどうして
し
ょ
う
す
っ
か
り
荒
れ
は
て
て
な
く
な
っ
て
し
ま
っ
て
い
る
は
ず
の
せ
き
そんなことができるのか、という点が最
覆 四 と
う 面 こ
鞘さ
ろ
や新
堂ど
を
うた
が に 。
建 囲
て み
ら て
れ �
、
の 正
ち 応お
う
、 元
か︵
寛ん
一
永え
い
二
四
︵ 八
一 八
六 ︶
年
二
に
七
光
︶
年 堂
に を
こ
ろ
も
���������
し
ば
ら
く
の
間
は
、
て
﹁
お
く
の
ほ
そ
道
﹂
の
旅
に
出
た
。
ひ
か
り
こ
ろ
も
������
�
補
修
さ
れ
た
。
���������
し
ば
ら
く
千
歳
の
記
念
と
は
な
れ
り
ら
�
下――平泉・高館周辺の地図
千
年
の
昔
の
記
念
を
残
す
こ
と
に
な
っ
た
の
で
あ
る
。
そ
い
ず
み
た視点が随所にみられ、読み応えがある。
上――現在の中尊寺金色堂(鞘堂)
し
つ
ぽ
う
ひ
ら
過去と現在の様子を相対化しながら、自
東北本線
平泉駅
もう つう
毛越寺南大門跡
き
よ
平
泉
4
98m
か ら の ご しょ
く
う
ひ
ら
三
代
の
栄えい
耀えう
一
睡
の
う
ち
に
し
て
、
大だい
門もん
の
跡
は
一
里
こ
な
た
に
あ
り
。
後の課題であった。
﹁歴史的知識が十分
金鶏山
平泉館(平泉政庁)跡
伽羅 御所(秀衡・泰衡の屋敷)跡
た
い
は
い
や
す
秀ひで
衡ひら
が
跡
は
田でん
野や
に
な
り
て
、
金きん
鶏けい
山ざん
の
み
形
を
残
す
。
ま
づ
高たか
館だち
に
登
然の流れと人の移り変わりの速さの違い
67m
ぞ
れ
ば
、
北きた
上かみ
川がは
南
部
よ
り
流
る
る
大
河
な
り
。
衣
川がは
は
和いづ
泉み
が
城
を
巡
り
﹃おくのほそ道﹄﹁平泉︵
﹂3年︶
の場合
高館
だ
う
え
て
、
高
館
の
下
に
て
大
河
に
落
ち
入
る
。
泰
衡
ら
が
旧
跡
は
、
衣
が
関
を
にあったから﹂という意見が多かった中
旧
北
上
川
義
経
堂
経堂
き
や
う
へ
だ
に思いを巡らせる芭蕉の文章は、中学校
旧
衣
金色堂(光堂)川
(衣が関)
中尊寺
さ
ん
ぞ
ん
隔
て
て
南
部
口
を
さ
し
固
め
、
蝦
夷
を
防
ぐ
と
見
え
た
り
。
さ
て
も
義
臣
﹃現代の国語﹄は、三年生の学習材とし
お
ほ
せ
つ
か
ね
ふ
さ
す
ぐ
つ
て
こ
の
城
に
こ
も
り
、
功
名
一いち
時じ
の
草
む
ら
と
な
る
。
国
破
れ
て
で、
﹁当時活躍した人々に対する思い入
衣川
さ
う
ひ
つ
ぎ
う
山
河
あ
り
、
城
春
に
し
て
草
青
み
た
り
と
、
か
さ
う
ち
敷
き
て
時
の
移
る
ま
で
涙
を
落
と
し
は
べ
り
ぬ
。
夏
草
や
つ
は
も
の
ど
も
が
夢
の
跡
卯
の
花
に
兼
房
見
ゆ
る
し
ら
が
か
な
曾
良
完成期の学習材としては適当であろう。
北上川
和泉が城跡
こ
が
ね
か
ね
て
耳
驚
か
し
た
る
二
堂
開
帳
す
。
経
堂
は
三
将
の
像
を
残
し
、
光
て﹃おくのほそ道﹄から、﹁月日は﹂と﹁平
い
ら
か
だ
う
れ、共感から﹂といった考えに行き着い
み
堂
は
三
代
の
棺
を
納
め
、
三
尊
の
仏
を
安
置
す
。
七
宝
散
り
う
せ
て
玉
の
泉﹂の部分を取りあげている。
た
扉
風
に
破
れ
、
金
の
柱
霜
雪
に
朽
ち
て
、
す
で
に
頽
廃
空
虚
の
草
む
ら
と
た。 こ れ は、
﹁なぜ涙を落としたのか﹂
か
な
る
べ
き
を
、
四
面
新
た
に
囲
み
て
、
甍
を
覆
ひ
て
風
雨
を
し
の
ぎ
、
し
さて、この学習材は、授業実践も多く
積み重ねられている。新しい試みよりも、
ざ
い
れ
という問の答えとして﹁自然に対する人
せ
ん
だ
﹁読みの観点﹂としてこだわりたい箇所
み
中学校三年生にもなると、古文学習材
の基本的な学習もほぼ終わっているの
さ
�
ば
ら
く
千
歳
の
記
念
と
は
な
れ
り
。
五
月
雨
の
降
り
残
し
て
や
光
堂
18
受容された作品を
5 読み比べる 漢詩
︵2年︶
の場合
などは思いもつかなかった。
しかし、インターネット上には多様な
解釈が、それぞれの思い入れや人生と重
ねられて表現されているのである。以下
�
�������
]
に一例をあげる。
山河あり、城春にして草青みたり〟と
芭蕉の﹁おくのほそ道﹂に〝国敗れて
ある。芭蕉は旅にも杜甫の詩集を携え
ていたと言われるが、
﹁唐詩選﹂のこと
�
[
ことばの壁を乗り越えて、学習材の読
み取りに時間をかけようとしても、漢詩
のように凝縮された表現性をもつ学習材
の場合、その方法が難しい。訳者の違い
による解釈の幅が大きいため、注意深く
ではなかろうか。この詩は杜甫の代表
的な、五言律詩の傑作です。特に首聯
の二句はよく知られ、この句だけでも
よく口誦さまれている。人の世に、争
い興亡は絶えないが、自然は何時の世
も変わらず美しい。
先の大戦で荒廃
を体験した私達も、この杜甫の﹁国敗
感慨深いものがあり、千二百年以上経
れ て 山 河 在 り ﹂ は ひ と し お 身 に し み、
た今でも新鮮さを感じる。
とう し せん え ほん
�������
ものか、研究者による緻密な解釈しか見
漢詩などは特にその傾向が強く、これ
までは、詩人が日本語の詩に作り替えた
楽しんだり役に立てたりしているかを知
だけ多くの現代人が、自分なりに鑑賞し、
﹁漢詩なんてなんのために勉強するの
しみをもって漢詩とつきあっていくこと
詩に対する中学生の姿勢を柔軟にし、親
現代文化の中にとけ込んだ漢詩の世界
を、自由に楽しく感じていく学習が、漢
たちも数多く見受けられる。
あたらず、どちらも入門期の中学生には
るいい機会にもなる。
にして、自分で小説を書いている若い人
黄鶴楼 (
『唐詩選画本』による)
やや縁遠いものでしかなかった。そのた
か﹂といった素朴な疑問に対して、どれ
﹄
チ
ャ
ン
チ
ヤ
ン
現代語訳を提示していかないと、一つの
読みに規定されてしまい、多様な鑑賞を
妨げてしまう危険があるからである。
どうしたら漢詩の授業に、多様な作品
鑑賞を取り入れることができるだろう
か。
最近、多くの人々が、古典作品をそれ
ぞれ独自に解釈・鑑賞した文章をインタ
ーネット上に公開するようになってき
た。専門家から素人まで、老若男女を問
わず、実に多くの人々が作品の解釈をし
春
暁
春
の
夜
明
け
方
。
処
処
あ
ち
ら
こ
ち
ら
。
夜
来
昨
夜
以
来
。
啼
鳥
さ
え
ず
る
鳥
の
声
。
中
国
の
唐と
う
時
代
の
チ
ョ
ウ
一 ヲ
花
落
つ
る
こ
と
知
り
ぬ
多
少
ぞ
さ
ぞ
花
が
た
◆
孟
浩
然
く
さ
ん
散
っ
た
こ
と
だ
ろ
う
。
チ
ヤ
ン
ノ
多
少
詩
人
。
清
新
な
作
風
で
自
然
を
詠よ
ん
だ
歌
ん 安 が
だ に 多
。 上 い
り 。
、 四
李り 十
さ
白は
く 歳い
・ で
王お
う 郷
維い 里
ら か
と ら
親 唐
唐
交 の
詩
を 都
選
結 長
下
︿
出
典
詩
の
原
文
は
﹃
漢
詩
選
7
に
よ
る
﹀
黄
鶴
楼
現
在
の
中
国
武ウ
ー
漢ハ
ン
市
の
南
西
、
長
江
か に
い 面
た し
黄 て
色 建
い っ
鶴つ
る て
に い
乗 た
っ 高
て 楼
飛 。
ん 仙
で 人
い が
っ 、
て 絵
し に
ま
っ
た
と
い
う
伝
説
が
あ
る
。
広
陵
揚
州
の
別
名
。
現
在
の
江
蘇ス
ー
省
揚ヤ
ン
州
市
。
リ
ヌ
声
ゾ
二 ク
知
李り
白はく
がつながると思う。
︵
﹃趣味の漢詩﹄
http://bun.dokidoki.
︶
ne.jp/users/tokiwa/kansi.html
ツ
ル
コ
ト
﹁春暁﹂や﹁春望﹂などの世界をベース
ているのに出会う。
流ル
ルヲ
め、
﹁解釈や鑑賞文を読み比べる学習﹂
古人との対話を図る古典の授業
19
つ
さ
い
漢詩の世界 ��
�� 漢詩の世界
一 ヲ
キ
一 ニ
尽
ニ
煙 す 故
花 。 人
花
こ
に
こ
立
で
ち
は
こ
旧
め
友
るか
の
霞す
こ
み
の
と
こ
。
と
孟
。
浩
然
を
指
選
下
﹄
て
ん
二 ル
黄
鶴
楼
揚
州
ニ
天
際
]
く
う
二 シ
ノ
中
国
の
唐
時
代
の
詩
人
。
ヨ
ウ
シ
ュ
ウ
へ
き
か
う
碧
空
青
い
空
。
ヲ
覚
え
い
エ
イ
ち
や
う
チ
ョ
ウ
コ
ウ
天
際
天
の
果
て
。
空
の
は
る
か
か
な
た
。
レ
啼
鳥
し
う
ガ
ツ
長
江
◆
レ エ
春
眠
不ず
夜
来
風
雨
り
よ
う
コ
ウ
リ
ョ
ウ
く
わ
う
花
落
や
う
ゑ
ん
エ
ン
遠
影
碧
空
ル
[
暁
処
処
聞
て
う
チ
ョ
ウ
し
よ
シ
ョ
し
よ
シ
ョ
コ
ウ
ダ
李
白
あ
か
つ
き
春
眠
暁
を
覚
え
ず
て
い
さ
ん
サ
ン
見
自じ
由ゆ
う
奔ほ
ん
放ぽ
う
な
詩
風
で
知
ら
れ
、
杜と
甫ほ
と
と
も
に
二
大
詩
人
と
さ
れ
る
。
ま
た
、
そ
の
作
風
か
ら
﹁
詩し
仙せ
ん
﹂
と
もし
称ょ
う
さ
れ
唐 た
詩 。
︿
出
典
詩
の
原
文
は
﹃
漢
詩
選
7
に
よ
る
﹀
み
ん
孟まう
浩こう
然ねん
モ
ウ
げ
う
漢
詩
の
世
界
し
ゆ
ん
春
暁
シ
ュ
ン
ギ
ョ
ウ
し
ゆ
ん
処
処
啼
鳥
を
聞
く
や
ら
い
夜
来
風
雨
の
声
こ
く
わ
う
花
落
つ
る
こ
と
知
り
ぬ
多
少
ぞ
黄
鶴かく
楼ろう
に
て
孟
浩
然
の
広
陵
に
之ゆ
く
を
送
る
ぐ
わ
つ
じ
ん
く
わ
故
人
西
の
か
た
黄
鶴
楼
を
辞
し
え
ん
こ
煙
花
三
月
揚
州
に
下
る
カ
は
ん
孤
帆
の
遠
影
碧
空
に
尽
き
た
惟
だ
見
る
長
江
の
天
際
に
流
る
る
を
故
人
西ノ
カタ
辞
ノ
煙
花
三
月
下
孤
帆
惟
|
「漢詩」
漢詩は、
さまざまな解釈・鑑賞文がインターネット上に公開されている。これを取り入れることで、
現代文化の中に溶けこむ古典の世界を感じ取ることができる。
る
講演・講話・談話・談論・音声言語による伝達
「ディスコース」は大変広い意味内容をもっている。話をするという意
味のフランス語 discours から「ディスクール」とも言われる。主に音
声言語に属する、会話、会談、談話、話法、講演、演説などがディスコー
スとされるが、他に、論文自体を指す場合もある。また、あることば
や言語行為が、それが語られた、あるいは行われたコンテクスト(脈絡)
の中で、何を意味しており、またなぜそれを意味するのかを分析する
ための概念としても使われている。つまり、あることばに包括されて
いる意味・イメージと、その原因となるメカニズムや
プロセスを検討することもディスコースなのである。
したがって、ディスコースは一般には、言語学や日
本語学の世界では「談話」
、物語論や文体論では研究対
象としての「物語・文体」を指し、さらに、例えば「異
文化理解のディスコース」というような主張やイデオ もっと知りたいときは…
ロギーをも含んだ、社会的・文化的なコンテクストと ジョン = ガンパーズ 他著
井上逸兵 他 翻訳
して、言語行為の内部構造を研究することにまで、そ
『認知と相互行為の
の意味対象がひろがるのである。ディスコースを単なる
社会言語学 ̶ディス
談話分析に押し込めず、言語・非言語を統合したコミュ コース・ストラテジー』
2004 年 松柏社
ニケーションや認知にかかわる相互行為として新たな
視座から捉え直すことがたいせつになってきている。
カタカナ語
と
discourse ディスコース
ユニバーサルデザイン(以下、UD)とは、全ての人
にとって使いやすいよう意図してつくられた製品や情
報、環境などのデザインのことである。これは、1 誰に
でも使いやすく公平に利用できる、2 使用の際の自由
度が高い、3 使用方法が簡単ですぐに理解できる、4
必要な情報がすぐに理解できる、5 ミスや危険につな
がらない、6 少ない力でもらくに使用できる、7 使い
やすいサイズや規模、の7つの原則に基づいている。
「バリアフリー」が障害や障害者の視点を中心として、
3
「障害があること」を切り離せない概念であるのに対し
て、UD は、ユニバーサル(=普遍的)という語が示す
とおり、障害の有無に関わらず、より広く、全ての人
を対象とした考え方となっている。今、学校教育においては、心身障
害者教育から特別支援教育への移行が話題になりつつあるが、基本コ
ンセプトは「一人一人のニーズに応じた教育」である。これまでの心
身障害学級や養護学校と、通常の学級との違いを「バリアフリー」的
に解消するのではなく、
「ユニバーサルデザイン」として再構築しよう
というものである。学習者の様々な実態に応じて、柔軟な対応をする
指導が「UD」の教育であると言えるだろう。
もっと知りたいときは…
日経デザイン編集
・中川聡
『ユニバーサル デザインの教科書』
2002 年 日経 BP 社
ユニバーサルデザイン(ユーディー)
UD (Universal Design) 共用品・共用サービス
20
ちょっと気になるカタカナ語
コーチング
coaching もっと知りたいときは…
ローラ = ウィットワース 他著、
CT I ジャパン 翻訳
『コーチング・バイブル』
2002年 東洋経済新報社
もっと知りたいときは…
米戸靖彦
『最新 やさしくわかる
ISO9001』
2003 年 技術評論社
指導・訓練
スポーツのコーチというのは耳慣れているが、その coach とは少し
違うニュアンスを持つのが、コーチングという考え方である。コーチ
ングは、目標達成や自己実現のために、必要なスキルや知識を身につ
けることを目指して、双方向型のコミュニケーション機能を大切にす
る指導者の行う「行為」のことである。指導者は、信頼関係に基づき、
目的に応じて自己肯定的な問題解決の方法やものの見方や考え方の見
直しによる現状克服の方向性を示す。ティーチングが「教え込むこと」
であるのに対し、コーチングは「可能性を引き出すこと」
ともいえるだろう。
今後の学習活動にはこのようなコーチングの発想を取
り入れることが求められる。コーチングにおいては、1
情 報 ラ イ ブ ラ リー
相手の可能性を信じること。2 成長や進歩を認め、評価
すること。3 任せて支えること。4 話をする中で解決策
を見いだしていくこと(オートクライン)
。5 過去を見つ
めるカウンセリングではなく、未来に向かうコンサルティ
ングであること。6 よく聞き、質問をすること。などが
必要であるとされている。促進者(ファシリテーター)
としてのコーチということになる。コーチングの唯一の
前提は「自ら変わろうとする気力」があるかどうかである。
ちょっと
気になる
ISOは、国際標準となる工業規格の作成・制定、およ
前から気になっていた、
び規格適合の認証を行っている国際機関(1947 年設立)
最近よく目にする、
である。ただ、実際には機関そのものよりも、
「規格」
そんな「知りたい」
を 指 す 呼 称 と し て 使 わ れ る こ と が 多 い。 日 本 で は、
カタカナ語を
「ISO9000シリーズ」
(品質管理システムと品質保証の
わかりやすく解説。
国際規格)と、
「ISO14000シリーズ」
(環境マネジメン
もっと詳しく知るための
トシステムの国際規格)が有名である。
文献もご紹介します。
学校現場では、環境問題に積極的な教育委員会や学校
が ISO14001 取 得 へ 取 り 組 み を 進 め て い る。ま た、
ISO9001 については、2003 年に盛岡中央高校が日本
の高等学校としては初めて取得したが、学校などの教育
機関においても、学校経営に基づいて、運営をマニュア
ル化したり、外部監査を迎えたりしながら、目標を明確に数値化し、
いわゆる「品質管理・品質保証」をしている。同校の富澤正一校長に
よれば、職員一人ひとりの責任と権限を明らかにすること、文書のマ
ニュアル化による合理化、内部・外部で監査を行い透明な経営を行う
こと等を ISO取得の目的としているという。教育機関では、数値化で
きる目標を明確にすることにより、具体的な学校経営と評価の一体化
が図れるという点において、参考になる部分も多いと考えられる。
アイエスオー(アイソ・イソ)
ISO (International Organization for Standardization) 21
国際標準化機構
平成 18 年度版
SNP
現代の国語
1 学習指導のために 1 2・ 3・
︵各8分冊セット︶
①②学習指導と解説 本編︵上・下︶
﹃現代の国語﹄本編の全学習材について、
授業研究・学習材研究に役立つ情報をもらさず収録。
資料編
③学習指導と解説
④学習指導と解説 言語事項ノート
⑤学習指導事例集
﹁学習指導と解説﹂の中の学習実践分野に焦点をあてた、
多角的で多様な実践事例集。
学習材に即した豊富な問題例と、
﹁ねらい﹂や
発問例集
⑥テスト問題例集 ・
﹁予想される解答例﹂
﹁留意点﹂などを付した発問例を収録。
関連する図版・データを豊富に集めた補足・発展資料集。
各領域の学習材について、ワークシートや
⑦コピー用学習材集
学習指導書
CD ROM
⑧デジタル情報
2﹁話す・聞く﹂学習指導AV資料
﹁話すこと・聞くこと﹂領域の学習材に対応した
視聴覚素材を収録。
3 学習指導書 総説編
カリキュラム開発のために
﹃現代の国語﹄の編集の方針、年間学習指導計画案など
カリキュラム開発のための資料。
4﹁読むこと﹂
学習材の研究 1 2・ 3・
作品を﹁読む﹂という視点から文責・研究した資料。
﹁読むこと﹂領域のすべての学習材について、
5 学習指導資料︵4分冊セット︶
韻文・古典学習材の解釈と鑑賞、展開例、板書例などを収録。
俳句編 ③古典編
④和歌編
①詩編
②短歌 ・ 6 朗読CD 1 2・ 3・
﹁読むこと﹂領域のすべての学習材を、
正確・多彩な朗読で録音した音声素材集。
補充学習材や読書活動についてのデータを収録。
7 読書の森へ CD ROM
裏面には、図版の詳しい解説とともに授業展開に沿った活用法などを記載。
︵6巻まで刊行中︶
鑑賞だけでなく、授業での活用を考えたビデオ教材。
ていねいな解説書と具体的な学習指導案例が付属。
﹁壁に残された伝言﹂
﹁メディア・リテラシー﹂ほか
︵予定︶
①自分を表現する スピーチとインタビュー
②古文入門 言語編
③この小さな地球の上で
④平家のほろび 壇の浦の合戦
⑤おくのほそ道
⑥敦盛の最期 平家物語
−
−
−
教科書原文やテスト問題例ほか、お手元のパソコンで
1
0
0
︵A2判 ・
枚︶
﹃現代の国語﹄の学習材のイメージをひろげる写真や絵を、大判のカードにした資料集。
1 ピクチャーカード
そのまま読み込んで活用できるデータ集。
−
2 学習材ビデオ
指導用教材
3 サポートDVD
−
−
『現代の国語』
『現代の書写』
サポート・ネットワーク・プログラム
学習指導書
・教材
22
予習、自主学習、学習のまとめや整理に役立つ﹁必携学習ノート﹂
。
1 ワークブック1・2・3
2 漢字・語句学習ノート1・2・3
漢字を完全マスターし、語彙力をつけることを目指したドリル形式の学習ノート。
1年から3年までの﹁文法の窓﹂
﹁文法のまとめ﹂の学習に沿って活用できるワークブック。
3 文法学習ノート
確実に国語の学力を身につけるための教科書完全準拠版問題集。
4 実力アップ問題集1・2・3
学習材のねらいや学習のポイントがよくわかる解説と考え方の指導をまとめた資料集。
5 教科書ガイド1・2・3
6 ステップ式常用漢字ドリル
生徒用教材
すべての常用漢字を、覚えて使うことによって確実に習得できる積み上げ式のドリル。
平成 年度版﹃現代の国語﹄
﹃現代の書写﹄SNP︵サポート・ネットワーク・プログラム ︶ 学習指導書・教材
18
ピクチャーカードの内容(例)
1年
・クジラが餌を取るようす
・シロナガスクジラ(
「クジラの飲み水」
)
・蓬莱の玉の枝 ・竜のくびの玉
・富士山(
「わたしたちと古典−かぐや姫の物語」
)
・熱海軽便鉄道(
「トロッコ」
)
2年
・ベロニカ(ルオー)
(
「わたしが一番きれいだったとき」
)
・
「春望」の風景 ・黄鶴楼(
「漢詩の世界」
)
・現在のシラクスの町(
「走れメロス」
)
3年
・鮟鱇の吊し切り ・俳画(生徒作品)
(
「俳句の世界」
)
・ゲルの構造 ・内モンゴルの草原
・世界言語地図(
「
『ありがとう』と言わない重さ」
)
・紹興の街 ・香炉と燭台 ・纏足(
「故郷」
)
現代の書写
学習指導書(各3分冊セット)
①学習指導と解説
『現代の書写』の全学習材について、授業研究・学習材研究に役立つ情報をもらさず収録。
②指導ワークシート集(はぎ取り式)
教科書にそった硬筆・毛筆のワークシートや、補足資料プリントを収録。
③指導用CD−ROM(執筆実技映像・指導案のテキストほか)
学習材の実技を収録した映像や指導案のテキストデータなどを収録した資料集。
23
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数年前まで平均五十のラインに届くか
どうか、といった話が一般的だったは
編集後記
r
● 自 分 の 字 に つ い て 意 識 し 始 め る の は、
ずなのだ。
﹁自分の勤務校でも四分の
一が過去四年間に新規採用された教員
いつのころからでしょうか。
のは、だれしもがもつ思いではないでしょ
﹁自分の文字をよりよくしたい﹂という
することが多いのではないかと思います。
手紙を書くというような、教室の外で
字を書く必要に迫られたときに、意識化
です﹂と校長。
若返ってよかったじゃないですか、
この前までどこの病院が具合がいいと
か、職員室の話題がそんなのばかりだ
とボヤいてたじゃないですか⋮などと
うか。しかし、自分の文字のどこを、ど
ンティアで来ているような大学生風の
軽口が叩けるような話ではないらし
最近、ちょっと驚くような話を聞い
た。それは単に筆者の取材不足に過ぎ
若者が、よく見ると今年配属された教
﹁まず、
﹃授業力﹄
、そして﹃社会性﹄
。
どんどん厳しくなっているわけでしょ
﹁私の知っているケースでは、校内の
度を伴って進んでいるというのだ。
が、世代間のギャップというのは案外
も大変そうだな。筆者にも経験がある
ここは当面、ベテラン勢にハッスル
してもらうしかないのではないか。で
第
号
八幡
統厚
定価 一〇〇円︵本体九六円︶
二〇〇五年五月一〇日発行
編集・発行人
東京都墨田区両国三ー一ー一二
振替 東京
〇〇一六〇ー五ー五四三〇〇
︹印刷所︺泰成印刷株式会社
TEL
〇三︵三二三〇︶九四二七︹編集︺
東京都千代田区三崎町二ー二二ー一四
〒一〇一ー八三七一
三省堂
︹発行所︺株式会社
三省堂が初めて刊行する書写教科書﹃現
代の書写﹄
。実は、この教科書でもう一度
自覚できないことが多いように思います。
うすればよくなるのか、具体的な方法は
ないし、問題に直面している先生がた
員だったりする、というのだ。
東京都内の学校では、教員の定年退
職による自然減を補う新規採用数がこ
何も若手教員の問題とは限りません
い。ちょっと見には、授業補助のボラ
にとっては、知っているも何もないわ
書写をやり直したいと思っている編集子
こ数年急増し、二〇〇四年度は小・中・
が、それらに対する社会の要求水準は
が学校現場の﹁若返り﹂をもたらすと
う。
﹂と、くだんの校長。
引き締める。
高合わせて二千人を超えた。このこと
いうのは当然の理だが、問題はその進
平均年齢が三十六歳まで一気に下がっ
しんどいものがありますからね。
み具合である。感覚的には相当な加速
たという小学校があります﹂と東京都
東久留米市内の小学校の校長は語る。
10
留めておきたい。
﹁彼らをいかに育てていくか。これは
矢内 忠
けだが、地域差もあることなので書き
教育ジャーナリスト
です。
︵太郎︶
若返りする
教育現場
大きな問題ですよ﹂と、校長は表情を
03
ni
10
es
005.5
e2
.
[やない ただし]1960 年生
まれ。國學院大學哲学科卒
業。元日本教育新聞社記者。
24
「絵本で比較言語学の
お勉強をした」大学生
3
後路好章
〔うしろ よしあき〕アリス館編集長。俳
句をたしなむ。俳号「高笑」。「読み語り
の出前」にいって、ながながと俳句談義
をしてしまった失敗あまた。
ち に 表 紙 を 見 せ る と、 一 様 に、﹁ か っ
﹁ こ と ば あ そ び ﹂ 絵 本 で あ る。 学 生 た
ち ぷ ち ﹄ と﹃ ち も ち も ﹄。 幼 児 向 き の
読 み 語 り の 出 前 は、 大 学 か ら の 注
文もある。持参する絵本の定番は﹃ぷ
へえー、うそー。ことばにならない
複雑なざわめきが起きる。
とんど存在しないといっていいのです﹂
﹁じつは欧米の言語に、擬態語は、ほ
学生たちは、目を宙に浮かせて考え
ながら、自信なげに首を横に振る。
﹁ あ あ、 し ん ど!﹂ な ん て、
ろがるものだから、途中で息が切れて
﹁ころ
ころ
ころ
ころ
ころ、、、﹂
と、ころがる場面。なにせ七〇回もこ
大団円は、かえるになめられて、
る﹁ ぷ ち ぷ ち 君 ﹂ の ぼ う け ん 絵 本 だ。
﹃ぷちぷち﹄は、擬態語だけで展開す
﹁
﹂
︵クスクス笑う︶、
﹁ bubble
﹂
chuckle
︵クックと笑う︶
、など擬態語を含ん
英 語 は、﹁ sneer
﹂
︵ フ フ ン と 笑 う ︶、
スクス
クック﹂などの擬態語をかぶ
せて表現するのが日本語。それに対し、
﹁ 笑 う ﹂ と い う 動 詞 に、﹁ フ フ ン、 ク
考えてみましょう﹂
﹁﹃ 笑 う ﹄ と い う こ と ば を 例 に と っ て
わいい!﹂といってくれる。
アドリブを入れながら読むこ
だ動詞で表現する。
﹃ちもちも﹄は擬態語の中で
ることば︽畳語︵じょうご︶︾
﹁新しい擬態語を、いかようにも作る
いのだ。
も、同じことばを重ねてでき
だけの展開である。
ン 豊 か な 表 現 が 自 在 に で き る の で す。
ことができる日本語は、バリエーショ
この二冊の絵本は、日本語の文化その
﹁すっごーい!﹂絵本に変身する。
学 生 た ち に、 単 に﹁ か っ わ い い!﹂
と 思 わ れ て い た 二 冊 の 絵 本 が、 突 然
ものなんです﹂
態語の絵本を見たことありま
﹁翻訳絵本で、このような擬
たかが絵本、されど絵本なのである。
比較言語学のお勉強になる。
すか?﹂
学生たちと、たっぷりこと
ば あ そ び を 楽 し ん だ あ と は、
﹁ゆらゆら
びくびく
ちも
ちも
どきどき、、、、﹂
だから、英語では﹁鬼がニカッと笑
う﹂というような微妙な表現はできな
とになる。
『ぷちぷち』
『ちもちも』
(ひろかわさえこ
・さく アリス館・発行)各 202ミリ×
155 ミリ 24 ページ 各 840 円
(税込み)
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