...

1 2 10 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 鞘部が電離性放射線の照射

by user

on
Category: Documents
13

views

Report

Comments

Transcript

1 2 10 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 鞘部が電離性放射線の照射
1
2
(57)【特許請求の範囲】
リエステル類からなり、前記鞘部がポリオレフィン類か
【請求項1】
らなり、
鞘部が電離性放射線の照射によってラジ
カルの生成が容易な成分であり、芯部が電離性放射線の
前記グラフト重合の際に、前記芯鞘構造を有する繊維に
照射によってラジカルの生成及び/又は高分子の破壊を
おいて芯部と鞘部の界面の少なくとも一部が剥離される
起こしにくい成分である、芯鞘構造を有する繊維に電離
ことにより、繊維全体の保水性能を高めて吸着性能の劣
性放射線を照射した後、鞘部に重合性単量体をグラフト
化を防止し、且つ前記芯鞘構造を有する繊維は、鞘部/
重合させることからなるガス吸着材の製造法において、
芯部の重量比が0.1∼10の範囲であることにより、
前記吸着材は、ガス中からのSO2 、CO2 、H2 S、N
グラフト重合後に鞘部に襞が生じて表面積が拡大し、ガ
O3 、及び/又はHFの除去用であり、
ス処理における吸着分離速度を向上させることを特徴と
前記芯部は、鞘部に対して、同心式、偏心式、又は海若
10
する前記製造法。
しくは基材を形成する鞘が島を形成する多心を散在させ
【請求項2】
ている海島多島式のものであり、
レートであることを特徴とする請求項1記載の方法。
前記芯部は、芯鞘構造を有する繊維に電離性放射線を照
【請求項3】
射した後の鞘部への重合性単量体のグラフト重合後もそ
織布若しくは不織布、又は前記繊維若しくは織布若しく
の繊維としての強度を維持できるポリオレフィン又はポ
は不織布の加工品より選択されるものである請求項1又
−1−
前記重合性単量体がグリシジルメタクリ
前記芯鞘構造を有する繊維が、単繊維、
(2)
特許第3386929号
3
4
は請求項2に記載の方法。
A(UltraLow
【請求項4】
鞘部が電離性放射線の照射によってラジ
r)フィルタが使用されている。又、これらのフィルタ
カルの生成が容易な成分であり、芯部が電離性放射線の
のプレフィルタとしてガラス繊維以外の合成繊維を構成
照射によってラジカルの生成及び/又は高分子の破壊を
成分とした中性能繊維、粗塵フィルタ等も多く使用され
起こしにくい成分である、芯鞘構造を有する繊維に電離
ている。以上のフィルタは粒子除去を目的としたもの
性放射線を照射した後、鞘部に重合性単量体をグラフト
で、0.1μm前後の微粒子まで効率良く除去できるよ
重合させることによって製造されたガス吸着材におい
う配慮されている。しかし、ガス、イオンなどに対する
て、
除去効果は期待できない。
前記吸着材は、ガス中からのSO2 、CO2 、H2 S、N
【0003】現在のLSI製造工場において、ウエハ表
O3 、及び/又はHFの除去用であり、
10
Penetration
Ai
面の汚染は微粒子によるものとガス、イオンによるもの
前記芯部は、鞘部に対して、同心式、偏心式、又は海若
の両方が考えられている。特に、後者の汚染は接触抵抗
しくは基材を形成する鞘が島を形成する多心を散在させ
を増大させたり、ウエハ内部の特性に影響を与えるなど
ている海島多島式のものであり、
の問題を引き起こしている。ガス、イオンの発生源とし
前記芯部は、芯鞘構造を有する繊維に電離性放射線を照
ては、エッチングなどの製造工程、クリーンルーム仕上
射した後の鞘部への重合性単量体のグラフト重合後もそ
材、外気導入の際における混入など種々のものがある。
の繊維としての強度を維持できるポリオレフィン又はポ
発生したガス、イオンはクリーンルーム内の循環にもか
リエステル類からなり、前記鞘部がポリオレフィン類か
かわらず、空気浄化系で除去されないため、次第に蓄積
らなり、
し、製品の品質のみならず、作業者の健康にも影響を与
前記グラフト重合の際に、前記芯鞘構造を有する繊維に
おいて芯部と鞘部の界面の少なくとも一部が剥離される
えるのではないかと懸念されている。
20
【0004】分離機能性繊維又はイオン交換繊維は、特
ことにより、繊維全体の保水性能を高めて吸着性能の劣
開平5−111685号公報に示されるように、精密電
化を防止し、且つ前記芯鞘構造を有する繊維は、鞘部/
子工業、医療、製薬、原子力発電又は食品産業などの分
芯部の重量比が0.1∼10の範囲であることにより、
野における用水や排水に含まれるコバルト、ニツケル、
グラフト重合後に鞘部に襞が生じて表面積が拡大し、ガ
水銀、銅などの重金属イオンを効果的に吸着除去するこ
ス処理における吸着分離速度を向上させることを特徴と
とが可能である。又、特公平5−67325号公報、特
するガス吸着材。
開平5−111607号公報、特開平6−142439
【請求項5】
前記重合性単量体がグリシジルメタクリ
号公報では、イオン交換繊維のフィルターにより、気体
レートであることを特徴とする請求項4記載のガス吸着
中の微粒子及びH2 S、NH3 、二酸化炭素、フッ化水素
材。
が除去可能であることが示されている。しかしながら、
【請求項6】
前記芯鞘構造を有する繊維が、単繊維、
30
これらの従来の繊維は、ガスからこのようなものを十分
織布若しくは不織布、又は前記繊維若しくは織布若しく
効果的に除去することができなかった。
は不織布の加工品より選択されるものである請求項4又
【0005】イオン交換繊維の製造法として特公平6−
は請求項5に記載のガス吸着材。
20554号公報(米国特許出願No.08/264,
【発明の詳細な説明】
762号)があるが、この中の実施例ではそのイオン交
【0001】
換繊維が大気中の塩化水素とアンモニアを吸着している
【産業上の利用分野】本発明は、分離機能性繊維の製造
が、塩化水素とアンモニアのよりいっそうの効果的な吸
に係り、特に、放射線グラフト重合を用いる分離機能性
着が望まれている。
繊維の製造方法とそれを用いて得たイオン交換繊維及び
【0006】吸着やイオン交換の速度は表面積が大き
く、また表面積の官能基の密度が大きくなるほど大き
ガス吸着材とに関するものである。
【0002】
40
い。何故ならば、吸着やイオン交換反応は先ず繊維の表
【従来の技術】クリーンルームは、半導体工業、精密機
面で起き、徐々に内部へ進行するため、内部の官能基は
械工業、写真工業、医薬品製造工業、病院などのバイオ
十分に利用されているとは言えない。したがって、繊維
ロジカルクリーンルームなどの先端産業分野は勿論のこ
表面に官能基が密に存在している方が有利である。
と、最近では食品工業、農業分野の他、周辺産業にまで
【0007】一方、放射線グラフト重合法はグラフト重
利用分野が拡大している。このような産業分野における
合の場をコントロールしやすく、分離機能性材料の製法
環境条件としては、温度、湿気、気流とともに空気浄化
として注目されており、この方法によるイオン交換繊維
が極めて重要である。これらの産業における空気の浄化
や吸着材などが検討されている。放射線グラフト重合法
は高性能フィルタとしてガラス繊維を構成成分とするH
は、基材に電離性放射線を照射した後、モノマー液に浸
EPA(High
漬させて反応させる前照射液相グラフト重合法が一般的
culate
Efficiency
Parti
Air)フィルタや更に高効率のULP
50
−2−
である。この場合、反応の初期は基材の表面付近にグラ
(3)
特許第3386929号
5
6
フト重合が起こり、反応時間が経過するに伴い基材内部
の浄化法として、放射線グラフト重合により高分子イオ
にまで重合が進行する。従って、グラフト率100%以
ン交換繊維の不織布フィルタ−を作り、これによるクリ
上の十分高いグラフト率で表面付近にグラフト重合を集
ーンルーム内の空気浄化の方法を示している。この中の
中させることが困難である。気相グラフト重合法におい
実施例では電離性放射線を照射する原材料としてポリプ
ても高いグラフト率においては、基材の内部にまでグラ
ロピレン繊維の不織布、ポリエチレン及びポリプロピレ
フト重合が進行する。したがって、放射線グラフト重合
ンよりなる複合繊維の不織布が用いられているが、ポリ
においても、イオン交換基のような官能基を表面に集中
プロピレン及びポリエチレンは放射線の照射と酸素の存
させた繊維状の分離機能性材料を製造することは容易で
在により酸性物質が発生しやすく、更に照射により劣化
はなかった。
し発塵しやすいことが問題である。
【0008】また、放射線グラフト重合を適用して基材
10
【0013】
内部まで反応が進行すると、ポリプロピレン等の基材を
【発明が解決しようとする課題】将来的には、クリーン
用いた場合は、物理的強度が低くなり、また酸化劣化が
ルーム内の清浄度は現在以上に厳しくなることは必至で
生じて分解生成物を放出するなどの問題があった。これ
あり、このため現在以上にフィルタ−自身からの発塵や
に最も近い先行技術として、芯鞘構造を持たないポリプ
ガス状物質の発生が問題になることは明白である。この
ロピレン繊維の基材に放射線グラフト重合によりイオン
ために本発明では電離性放射線の照射によりラジカルの
交換基を導入したガス吸着材の製造法が、特公平6−2
生成及び/又は高分子の崩壊を起こしにくい高分子の成
0554号公報として公知である。
分を芯とし、逆にラジカルの生成が容易な高分子の成分
【0009】一般に、イオン交換材や吸着材などの分離
を使用して、この芯部上に鞘部を形成することにより、
機能性材料は、表面積が大きい程交換速度や吸着速度が
大きく有利である。そのため、表面積の大きな繊維状の
フィルタ自身からの発塵及びガス状物質の発生を防止し
20
た。
イオン交換材や吸着材を使用する頻度が増えている。繊
【0014】本発明は、前記従来技術の問題点を解決
維状の分離機能性材料として、イオン交換繊維を例に説
し、繊維表面に官能基が密に導入され、物理的及び化学
明すると、現在、ポリスチレンが基材(matrix)
的劣化の少ない放射線グラフト重合による分離機能性繊
又は海で、ポリエチレンが基材内のフィラメント状の多
維の製造方法とそれに基づくイオン交換繊維及びガス吸
芯又は島である多芯構造の繊維があり、その基材の部分
着材とを提供するものである。即ち、本発明の分離機能
にイオン交換基を導入したものや、ポリビニルアルコー
性繊維から製造されたイオン交換繊維及びガス吸着材
ル繊維を焼成したものにイオン交換基を導入したものが
は、ガス中のガス汚染物質をよりいっそう効果的に除去
知られている。
することができ、特にクリーンルーム内における微粒子
【0010】特開平5−64726号公報の実施例3で
のみならず微量のガス、イオンなどにより汚染された空
は、電気再生式脱塩装置にポリプロピレンが芯で、ポリ
30
気を浄化することができる。
エチレンが鞘で、スチレン単量体がグラフトされてから
【0015】
転化された複合繊維をイオン交換繊維として使用して非
【課題を解決するための手段】そこで、まず、本発明
常に優秀な結果を示しており、芯鞘構造のイオン交換繊
は、芯鞘構造を有する繊維にイオン化放射線を照射した
維が電気再生式脱塩装置に応用されても優秀であること
後、その繊維に重合性単量体をグラフト重合させ、イオ
が示されている。しかし、この芯部がポリプロピレンで
ン交換特性、キレート特性等の種々の特性を有する分離
ある繊維を大気中で使用した場合、芯部のポリプロピレ
機能性繊維を製造する方法である。即ち、異なる高分子
ンの強度低下及び分解を生じるが、この芯部を耐放射線
からなる芯鞘構造を有する繊維に電離性放射線を照射し
性と耐酸化性が良いポリエチレンテレフタレートで置き
た後、その繊維に重合性単量体をグラフトさせることを
換えることにより、大気中においても安定であることが
これまでの調査で判明している。
特徴とする分離機能性繊維の製造方法である。
40
【0016】次に、本発明は、芯部及び鞘部が異なる種
【0011】近年では薬品を添加した活性炭やゼオライ
類の高分子成分からなる芯鞘構造を有する複合繊維の鞘
ト、マンガン酸化物を担持した素材以外に、イオン交換
に、放射線グラフト重合により、イオン交換基を導入す
繊維を素材にしたガス吸着フィルタが、クリーンルーム
ることによって製造されたイオン交換繊維、及びガス吸
用に開発されている。この中でも特開平6−14243
着材をである。即ち、芯鞘構造を有する繊維の芯部及び
8号(特願平4−294501号)に示されたように、
鞘部が異なる高分子成分からなり、スチレン以外の単量
放射線グラフト重合を用いて製造された高分子樹脂のイ
体を放射線グラフト重合することを経て前記繊維の鞘部
オン交換繊維を使用したものは、クリーンルーム内のガ
にイオン交換基を導入することによって製造されたイオ
ス吸着材として非常に良い結果を出している。
ン交換繊維であり、又鞘部が電離放射線の照射によって
【0012】特開平6−142438号(特願平4−2
ラジカルの生成が容易な成分であり、芯部が電離放射線
94501号)には、クリーンルーム内の微量汚染空気
50
−3−
の放射によってラジカルの生成及び/又は高分子の崩壊
(4)
特許第3386929号
7
8
を起こしにくい成分である、芯鞘構造を有する繊維に電
【0024】芯鞘構造を有する繊維の鞘部と芯部の重量
離放射線を照射した後、鞘部に重合性単量体をグラフト
比は0.1∼10の範囲が好ましい。0.1以下になる
させることによって製造されたガス吸着材である。
と、十分な官能基量とするには、鞘部のグラフト率を非
【0017】次に、本発明の構成を詳細に説明する。
常に高くしなければならず、強度的に弱くなって芯鞘構
【0018】図1に芯鞘構造を有する繊維の断面を示
造が維持できなくなる。10を越えると、ほとんど鞘部
す。図1に記載のように芯鞘構造の繊維とは、芯部1の
の材質の単一繊維と同じになり、芯鞘構造にした効果が
まわりを鞘部2が取り巻いている構造のものであり、図
消失する。
1(a)のように、芯部と鞘部は同心円でもよいし、図
【0025】図7に示すように、芯鞘構造を有する繊維
1(b)のように同心円でなく偏心していてもよく、ま
の鞘部にグラフト重合を行うと鞘部の寸法が増加して芯
た図1(c)のように海又は基材(matrix)を形
10
部と剥離する。即ち、グラフト前では芯部と鞘部との間
成する鞘2が、島を形成する多芯1を散在させている海
に隙間が存在しないが、グラフト重合後には芯部と鞘部
島多島式であってもよい。
との間に隙間が生じ、鞘部に襞が生じる。そして、官能
【0019】また、前記芯鞘構造を有する繊維の材質
基の導入後には前記隙間が更に広がり、襞も拡大する。
は、鞘部が電離性放射線の照射によってラジカルの生成
【0026】図8乃至図11に、芯部がポリエチレンテ
が可能な材質であり、芯部が電離性放射線の照射によっ
レフタレート(PET)、鞘部がポリエチレン(PE)
てラジカルの生成及び/又は高分子の崩壊を起こしにく
の複合繊維のグラフト前の場合(図8)、メタクリル酸
い材質であるのがよい。
グリシジルを約116%グラフト重合した場合(図
【0020】更にまた、芯部の材質は鞘部の材質より高
9)、更にこれをスルホン化(図10)又はアミノ化
融点のものがよい。その理由は、芯鞘繊維を熱融着法に
よって不織布化できるからである。各繊維が鞘部で融着
(図11)した後の場合の複合繊維の断面写真を示す。
20
【0027】グラフト後の鞘部はグラフト前の場合の平
しているため、繊維の破砕片などパーティクル(粒子)
滑な表面と比べ多数の襞が認められる。このように鞘部
の発生が極めて少ない。これは本発明の適用分野である
表面が起伏の多い構造となっているため、表面積が増加
精密電子工業や原子力発電等での水処理や空気処理にと
し、吸着分離速度の向上に好ましいばかりでなく、微粒
って極めて重要な特性である。
子の物理的補足機能も増加する。更に、芯鞘の剥離は繊
【0021】具体的には、鞘部の材質としては、ポリオ
維全体の保水性能を高める機能を有している。この現象
レフィン系のものが適しており、これは鞘部に放射線グ
は、本発明による分離機能繊維、特にイオン交換繊維を
ラフト重合に適した材質を用いるためである。ポリエチ
エアーフィルターとして酸性及びアルカリ性ガス等の有
レンやポリプロピレンに代表されるポリオレフィン類、
害ガスを除去するのに使用する場合において乾燥による
ポリ塩化ビニルやポリテトラフルオロエチレン(PTF
性能劣化を防止できるので有利である。鞘部のグラフト
E)に代表されるハロゲン化ポリオレフィン類、エチレ
30
により物理的強度がやや劣化するが、繊維全体として強
ン−テトラフルオロエチレン共重合体に代表されるオレ
度は芯部で保たれている。
フィンとハロゲン化ポリオレフィンとの共重合体、エチ
【0028】芯鞘構造を有する繊維の形状としては、長
レン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、エチレ
繊維や短繊維に適用できる。また、繊維の集合体である
ンービニルアセテイト(EVA)等に代表されるオレフ
織布や不織布またはそれ等の加工品にも適用できる。
ィンと他の単量体との共重合体などが材質として適して
【0029】基材である芯鞘構造を有する繊維に放射線
いる。特にポリエチレンがイオン交換繊維の鞘成分とし
グラフト重合する方法として下記のような方法が適用で
ては優れている。
きる。
【0022】芯部の材質としては、鞘部の材質と異なる
【0030】先ず、放射線照射用の線源にはα線、β
ものの中から選択でき、鞘部への放射線グラフト重合後
も繊維としての強度を維持できる材質が好ましい。特
線、γ線、電子線、X線や紫外線など種々のものが使用
40
できるがγ線や電子線が本発明には適している。照射線
に、ポリオレフィンの芯材質が使用できない場合には、
量としては、20∼300kGyが好ましい。20kG
ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレ
y以下では反応に十分なラジカルが生成しない。300
ート等に代表されるポリエステル類が芯材質として適し
kGy以上になると、放射線劣化が大きくなり照射コス
ている。
トも高くなるなど問題がある。
【0023】芯鞘の材質の組合せとして、例えばポリエ
【0031】予め放射線を照射した後、重合性単量体
チレン(鞘)/ポリプロピレン(芯)、ポリエチレン
(モノマー)を接触させてグラフト重合する方法は前照
(鞘)/ポリエチレンテレフタレート(芯)などがあ
射グラフト重合法と呼ばれ、基材をモノマーの存在下で
り、特に、耐放射線性に優れたポリエチレン/ポリエチ
放射線照射する同時照射法と比べ単独重合物(ホモポリ
レンテレフタレートの材質のものが好ましいが、これに
マー)の生成量が少ないので、本発明のような分離機能
限定されるものではない。
50
−4−
性繊維の製法としてふさわしい。
(5)
特許第3386929号
9
10
【0032】照射済基材を、モノマー液に浸漬したまま
ろ、鞘部のポリエチレンにのみナトリウムの分布が認め
グラフト重合する場合を液相グラフト重合と呼び、反応
られた。
温度20∼60℃、反応時間2∼10時間が適してい
【0041】この不織布(H型)を20mmφに打抜
る。
き、図2に示すガス吸着実験装置のガラスカラムに0.
【0033】照射済基材に所定量のモノマーを付与して
4g充填し、試験ガスを3l/minで循環し、アンモ
真空中又は不活性ガス中で反応させる含浸グラフト重合
ニアガスの除去試験を行った。
は反応温度20∼60℃、反応時間0.2∼8時間が適
【0042】図2において、3はフッ素樹脂バック(4
している。この場合グラフト重合後の基材が乾燥状態な
0l)で、4はガラスカラム(20mmφ)で中に不織
ので、基材の取扱いが簡単、廃液の発生量が少ないなど
布5が充填されている。6はポンプで、7、8、9がそ
の利点がある。
10
れぞれ試料分析のためのサンプリング部で、10が流量
【0034】照射済基材とモノマー蒸気を接触させる気
計である。
相グラフト重合は比較的蒸気圧の高いモノマーにしか適
【0043】結果を図3に−○−として示す。図3に示
用できず、グラフトむらも発生しやすいが、廃液発生量
すように、本発明の繊維を用いた不織布では、フッ素樹
が少ないことやグラフト重合後の基材が乾燥状態である
脂バック3内のアンモニア濃度は初期が40ppmであ
という利点がある。この場合、反応温度として20∼8
ったが、約50分で10ppm以下に、2時間後には5
0℃、反応時間2∼10時間が必要である。
ppm以下となった。
【0035】本発明は、以上のいずれの放射線グラフト
【0044】比較例1
重合法も用いることができる。重合性単量体としては、
平均径20μmのポリプロピレン単独繊維によりなり、
種々の機能を有する重合性単量体、あるいはグラフト後
目付40g/m2 の不織布を実施例1と同様にアクリル
に2次反応によって機能を導入するような重合性単量体
20
酸の放射線グラフト重合を行い、58%のグラフト率を
を用いることができる。例えば、イオン交換繊維の場
得た。この繊維のイオン交換容量は5.0meq/gで
合、イオン交換基を有するモノマーとして、アクリル
あり、イオン交換基は繊維中心まで比較的均一に分布し
酸、メタクリル酸、スチレンスルホン酸ナトリウム、メ
ていた。
タクリルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナト
【0045】この繊維を実施例1と同様に打抜き、図2
リウムなどがあり、これ等をグラフト重合するだけでイ
のガス吸着実験装置で,アンモニアガスの除去試験を行
オン交換繊維が得られる。
った。その結果を図3に−△−として併記したが、フッ
【0036】グラフト重合後にさらに反応を行いイオン
素バッグ内のアンモニア濃度が10ppm以下に低下す
交換基を導入できるモノマーとして、アクリロニトリ
るのに1時間50分かかった。
ル、アクロレイン、ビニルピリジン、スチレン、クロロ
【0046】実施例2
メチルスチレン、メタクリル酸グリシジルなどがある。
30
平均径20μmの芯部ポリプロピレン、鞘部ポリエチレ
例えばメタクリル酸グリシジルグルグラフト物は、亜硫
ン(芯鞘の重量比は1)の複合繊維によりなる不織布
酸ナトリウムなどのスルホン化薬品を用い、スルホン基
(目付40g/m2 )にγ線を窒素雰囲気で200kG
を導入することができる。
y照射した後、メタクリル酸グリシジル/メタノール
【0037】本発明の分離機能性繊維を製造する方法の
(1/1)液に浸漬し、45℃で7時間反応させ、グラ
用途として、主としてイオン交換繊維について述べた
フト率138%を得た。このグラフト済繊維を亜硫酸ナ
が、他にもキレート基を有する重金属吸着剤、触媒、ア
トリウム水溶液に浸漬し、80℃で8時間反応させ、ス
フィニティクロマト用の担体などにも本発明は適用でき
ルホン化を行った。この繊維はイオン交換容量が2.4
る。
2meq/gの強酸性カチオン交換繊維でありスルホン
基のほとんど全部が鞘部に分布していた。
【0038】
【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明す
40
【0047】この繊維(H型)を20φに打抜き、実施
るが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例1と同様の条件で図2の装置を用いて、アンモニアガ
【0039】実施例1
スの除去試験を行った。結果を図4に−○−として示す
平均径20μmの芯部ポリプロピレン、鞘部ポリエチレ
が、フッ素樹脂バック内のアンモニア濃度は初期が40
ン(芯鞘の重量比は1)の複合繊維よりなる不織布(目
ppmであったが、20分以内で10ppm以下に低下
付50g/m2 )にγ線を窒素雰囲気で200kGy照
した。
射した後、アクリル酸50%水溶液に浸漬し、40℃で
【0048】比較例2
6時間反応し、53%のグラフト率を得た。イオン交換
平均径20μmのポリプロピレン単独繊維よりなり、目
容量は4.8meq/gであった。
付40g/m2 の不織布を実施例2と同様にメタクリル
【0040】この繊維を水酸化ナトリウムでNa型に変
酸グリシジルの放射線グラフト重合を行い、グラフト率
換し、X線マイクロアナライザーで断面を観察したとこ
50
−5−
135%を得た。次に実施例2と同様にスルホン化を行
(6)
特許第3386929号
11
12
いイオン交換容量が2.45meq/gの強酸性カチオ
り、1分間で約40mg/lasCuまで低下してい
ン交換繊維となった。この繊維のスルホン基は繊維の中
た。
心付近まで比較的均一に分布していた。
【0056】実施例3及び比較例3より、ほぼ同一のグ
【0049】実施例2と同様に繊維を20φに打抜き、
ラフト率、官能基濃度にかかわらず、本発明の芯鞘構造
図2の装置でアンモニアガスの除去試験を行ったとこ
を有する繊維の方が、重金属吸着性能が優れているのは
ろ、結果は図4で−△−に示すのようになり、フッ素樹
明らかである。
脂バック内のアンモニア濃度が10ppm以下になるま
【0057】実施例4
で35分間要した。
(a)同心円状のポリエチレン(PE)(鞘)/ポリプ
【0050】実施例1、2と比較例1、2より、グラフ
ロピレン(PP)(芯)の繊維(直径約17μm)より
ト率、官能基の種類及びイオン交換容量がほぼ同一であ
10
なる目付50g/m2 の不織布に、窒素雰囲気でγ線を
るにかかわらず、本発明の芯鞘構造を有する繊維の方
照射した後、メタクリル酸グリシジルをグラフト重合し
が、アンモニアガスの除去性能が優れているのは明らか
た。153%のグラフト率が得られた。
である。
【0058】この不織布を亜硫酸ナトリウム8%、イソ
【0051】実施例3
プロピルアルコール12%、水80%のスルホン化液に
平均径20μmの同心円状の芯部ポリエチレンテレフタ
浸し、80℃で8時間反応させてスルホン化を行った。
レート、鞘部ポリエチレン(鞘芯の重量比は0.7)の
更に塩酸7%に浸漬し、H型へ交換した。この繊維を
複合繊維よりなる不織布(目付55g/m2 )に電子線
(a)PE/PPとする。
を窒素雰囲気で100kGy照射したのち、実施例2と
【0059】(b)次に同心円状のポリエチレン(P
同様にメタクリル酸グリシジルを反応し、グラフト率1
16%のグラフト不織布を得た。この不織布をエチレン
E)(鞘)/ポリエチレンテレフタレート(PET)
20
(芯)の繊維(直径約17μm)よりなる目付50g/
ジアミン溶液に浸漬し、50℃で3時間反応させ、酸吸
m2 に上記(a)と同様の方法でグラフト重合とスルホ
着量が5.3meq/gのキレート基を有する不織布が
ン化及び再生を行った。この繊維を(b)PE/PET
得られた。この不織布の繊維のキレート基はほとんど全
とする。この繊維の断面を図10に示す。
部が鞘部に分布していた。
【0060】繊維(a)と(b)の不織布の引張強度を
【0052】この不織布を20φに打抜き、0.5g分
図6に示す。図において、(a)のPE/PPは−○−
を採取した。これを硫酸銅水溶液(濃度110mg/l
で、また(b)のPE/PETは−△−で示す。このよ
asCu)300mlに浸漬し、撹拌しながら銅濃度の
うに(b)のPE/PETを用いた場合は引張強度は放
経時変化を調べた。その結果は、図5の−○−に示すと
射線の照射線量によって減少しないことがわかる。
おりであり、1分間で銅濃度は20mg/lasCuに
【0061】次に、繊維の化学的劣化による分解性生成
低下した。
30
物の放出を確認するための試験を行った。一般に、合成
【0053】この実施例3で基材膜として使用した不織
高分子系のイオン交換体であっても酸化による高分子骨
布繊維の断面写真を図8に、この繊維のグラフト後の断
格の劣化、それにともなう低分子分解生成物の生成や官
面写真を図9に、グラフト後にエチレンジアミン溶液に
能基の脱離は避けることができず、これらの化学的劣化
てアミノ化した繊維の断面を図11に示す。
に対する耐性の高い、イオン交換体がより望まれてい
【0054】比較例3
る。
平均径20μのポリエチレン単独繊維によりなる不織布
【0062】この劣化による分解生成物の放出を評価す
(目付60g/m2 )に実施例3と同様の条件で電子線
るために上記(a)のPE/PPと(b)のPE/PE
を照射した後、メタクリル酸グリシジルを反応し、グラ
Tの不織布(20cm×4cm)約200gを入れた容
フト率131%のグラフト不織布を得た。さらに同様の
条件でエチレンジアミンと反応させ、酸吸着量が5.1
器に空気を1リットル/min.で流通し排気中に含ま
40
れる分解生成物を超純水で捕集し分析した。有機低分子
9mq/gのキレート基を有する不織布が得られた。こ
分解生成物を評価するためにTOCを測定し、イオン交
の不織布繊維のキレート基は繊維の中心付近まで均一に
換基の脱離を評価するために硫酸イオンの濃度をイオン
分布していた。
クロマトグラフィーで測定した。その結果を表1に示
【0055】この不織布を実施例3と同様20φに打抜
す。
き、硫酸銅溶液に浸漬し、銅濃度の経時変化を調べた。
【0063】
その結果は、図5に−△−として併記したとおりであ
【表1】
−6−
(7)
特許第3386929号
13
14
実施例5(SO2 の除去)
実施例1と同様の不織布にγ線を窒素雰囲気で200k
気で調整した。除去試験開始後、フッ素バック内のNO
10
3 濃度は30分で0.5ppm以下に低下した。
Gy照射した後、メタクリル酸グリシジルの溶液に浸漬
【0069】実施例9(HFフッ化水素の除去)
し、重量で基材の150%を含浸させた。この不織布を
実施例5で使用した弱塩基性アニオン交換不織布と実施
ガラスアンプルに入れ、真空ポンプで減圧にした後、4
例1の装置を使用し、フッ化水素ガス(HF)の除去試
5℃で3時間反応させ、グラフト率141%を得た。こ
験を行った。フッ素バック内のHF濃度は5ppmが除
のグラフト済不織布をイミノジエタノール30%水溶液
去試験開始後30分で1ppm以下に低下した。又フィ
に浸漬し、70℃で3時間反応させ、イオン交換容量
ルタ出口のHF濃度は0.5ppm以下であった。
2.89meq/gの弱塩基性アニオン交換不織布を得
【0070】
た。
【発明の効果】本発明によれば、繊維表面に官能基が密
に導入され、また、物理的、化学的劣化が少なく、強度
【0064】この不織布を20φに打ち抜き、実施例1
の装置を使用して二酸化イオウ(SO2 )の除去試験を
20
が十分に保持できる分離機能性繊維が得られた。また、
行った。フッ素バック内のSO2 濃度は初期30ppm
この分離機能性繊維は、分離機能に優れており、短時間
が40分で1ppm以下に低下した。
でガス分離あるいは液体中からの重金属分離等ができる
【0065】実施例6(CO2 の除去)
ため、ガス除去用フィルタ、重金属吸着剤等に使用でき
実施例1と同様の不織布に同様の放射線照射を行った
る。
後、クロロメチルスチレン(CMS)の溶液に浸漬し、
【0071】更に、イオン交換繊維としては再生可能で
40℃で7時間の反応を行って、CMSのグラフト率1
あるため、フイルター枠、セパレーターを含む全構成成
12%の不織布が得られた。この不織布をトリメチルア
分に再生剤によって犯されない物を用いてフイルターを
ミン10%水溶液に浸漬し、50℃で3時間の四級アン
作ることで、使用後に再生剤を用いて再生することが可
モニウム化反応を行った。この不織布を5%の水酸化ナ
能なイオン交換ガス除去フイルターとすることができ
トリウム水溶液に浸漬し、OH型に再生した。この不織
30
る。
布は中性塩分解容量が2.38mg/gの強塩基性アニ
【0072】前記具体例は、他者が通常の知識により、
オン交換不織布であった。
本発明の一般的特性を十分に示している。
【0066】この不織布を20φに打ち抜き、空気と触
【図面の簡単な説明】
れぬよう真空及びN2 雰囲気で乾燥し、実施例1の装置
【図1】本発明の芯鞘構造を有する繊維の断面図。
に充填し、二酸化炭素(CO2 )の除去試験を行った。
【図2】実施例で用いたガス吸着実験装置の概略構成
なお、フッ素バック内のCO2 は130ppmとなるよ
図。
う純空気で希釈した。除去試験開始後、フィルタ出口の
【図3】実施例1のバッグ内アンモニア濃度の経時変化
CO2 は0ppmを示し、バック内のCO2 濃度は50分
を示すグラフ。
で1ppm以下に低下した。
【0067】実施例7(H2 S硫化水素の除去)
【図4】実施例2のバッグ内アンモニア濃度の経時変化
40
を示すグラフ。
実施例6と同様の不織布を実施例1の装置に充填し、硫
【図5】実施例3の銅濃度の経時変化を示すグラフ。
化水素(H2 S)の除去試験を行った。なお、H2 S濃度
【図6】放射線照射線量と引張強度の減少率を示すグラ
2 は3ppmとなるよう純空気で調整した。除去試験開
フ。
始後、フィルタ出口のH2 S濃度は0.0ppmを示
【図7】芯鞘構造を有する繊維の鞘部にグラフト重合を
し、フッ素バック内のH2 S濃度は初期の3ppmが約
行い、次に官能基を導入する際に芯部と鞘部との間の寸
30分で1ppm以下に低下した。
法が増加して鞘部が芯部から剥離する過程を示す図。
【0068】実施例8(NO3 の除去)
【図8】グラフト前の芯部(PET)及び鞘部(PE)
実施例5で使用した弱塩基性アニオン交換不織布と実施
を有する複合繊維の断面写真。
例1の装置を使用し、NO3 ガスの除去試験を行った。
【図9】グラフト後の芯部(PET)及び鞘部(PE)
フッ素バック内のNO3 濃度は2ppmとなるよう純空
50
−7−
を有する複合繊維の断面写真。
(8)
特許第3386929号
15
16
【図10】グラフト後にスルホン化した芯部(PET)
【図11】グラフト後にアミノ化した芯部(PET)及
及び鞘部(PE)を有する複合繊維の断面写真。
び鞘部(PE)を有する複合繊維の断面写真。
【図2】
【図1】
【図3】
【図4】
−8−
(9)
【図5】
特許第3386929号
【図6】
【図7】
−9−
(10)
【図8】
【図9】
−10−
特許第3386929号
(11)
特許第3386929号
【図10】
【図11】
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(72)発明者
嶋
弘之
東京都大田区羽田旭町11番1号
社
(72)発明者
(56)参考文献
株式会
特開
平5−64726(JP,A)
荏原製作所内
藤原
(58)調査した分野(Int.Cl.7 ,DB名)
邦夫
D06M
神奈川県藤沢市本藤沢4丁目2番1号
株式会社
荏原総合研究所内
−11−
14/00 - 14/36
Fly UP