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性同一性障害者や性的指向を理由として困難な状況に置かれている若者

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性同一性障害者や性的指向を理由として困難な状況に置かれている若者
特 集 「子ども・若者ビジョン」∼先進的な取組事例の紹介∼
3 困難を有する子ども・若者やその家族を支援する取組 イ 教員への講演活動
教員に対する講演活動もしています。自らの体験を聴いてもらうことによって,アルコール
を含む薬物依存症が病気であることについて理解を深めてもらっています。また,当事者を排
除することではなく,依存症の治療と再発防止のための支援をすることが,最大の予防策であ
ることを説明しています。
予防教育支援活動については,学校等との連携をしながら,このような取組を積極的に続けて
いきたいと考えています。
薬物依存の青少年の回復支援のためには,従来あるダルクよりも教育的なプログラムがある施
設が必要不可欠であると考えています。
また,早期に治療につなげるための制度がぜひ必要です。すでに,グアムでは青少年が薬物の
問題で州立病院の窓口に相談に行くときには保険証を必要としない制度があります。日本におい
ても,学校や家族に知られることなく相談できるようなシステムを持ったセンターが必要だと感
集
特
じています。
(5)性同一性障害者や性的指向を理由として困難な状況に置かれている若者をつなぐ活動
NPO 法人ピアフレンズ
NPO 法人ピアフレンズは,孤立しがちな10代,20代の性同一性障害者や性的指向を理由とし
て困難な状況に置かれている若者(セクシュアルマイノリティ)をつなぐ活動を平成14年より
行っており,平成21年に NPO 法人化して活動を行っています。
ピアフレンズの主な活動内容としては,隔月に開催している若年層の男性同性愛者(ゲイユー
ス)向けイベント「ピアフレンズ」があります。このイベントの特徴は,自分以外の仲間に出会
い,支え合う環境づくりを,スタッフ全員が同じ当事者という環境の下で,「ピア=仲間」とし
て行うということです。このことは,参加者のプライバシーを守る安全な環境をつくると同時に,
当事者同士で日頃の悩みを語り合うことで,お互いに抱える問題の解決へとつなげていくことが
できるという二つの面で有効であると考えています。
開催回数は既に58回(平成22年11月現在)を数え,延べ3,000人以上の参加者を集めています。
活動拠点は,主に東京を中心とした首都圏ですが,大都市以外の,特に孤立の状況が厳しい地域
でも開催実績があり,地方の状況にも適応した
活動を展開しつつあると言えます。
平成22年10月に行われた第58回ピアフレンズの様子
(大阪府立男女共同参画・青少年センター)
当事者の実態としては,昨今,人口の3∼5%
程度が同性に性的指向が向くと指摘されている
ことや,性的違和や性自認などの問題が広く報
道されていることが挙げられます。そして,同
じく広く報道され,また深刻な問題となってい
るのが自殺の問題です。
「男性同性間の HIV 感染対策とその評価に関
する研究」(平成17年度厚生労働科学研究費補
助金エイズ対策研究事業)では,ゲイ・バイセ
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「子ども・若者ビジョン」∼先進的な取組事例の紹介∼
クシュアルの男性の約半数が学校でいじめに遭い,3人に2人が自殺を考え,14%は自殺未遂の
経験があるということが報告されています。
ピアフレンズでは,平成21年度の厚生労働科学研究費補助金エイズ対策研究事業における研究
(
「沖縄県における男性同性愛者への HIV 感染予防介入に関する研究」)に対し,関東地方の大都
市圏で生活する男性同性愛者の若年層の生活課題という分野で協力しました。
この研究結果では,孤独感や人間関係で悩んだ経験を有していることや,相談する相手が存在
しないことが結果として表れ,相談相手がいたとしても,当事者の友人のみであるということが
明らかになっています。そして,自らの課題を公的機関に伝えることに対して,「自分が同性愛
者(ゲイ)であることがわかってしまうのが嫌」であったり,「どんな対応をされるか不安」で
あることから,困難や課題を有していることも明らかになりました。
このように,当事者の日常生活における困難や社会的支援の必要性が浮き彫りとなっており,
支援の在り方を検討する上で重要な手がかりとなっています。
この問題に対してピアフレンズでは,自分の性的指向に気づく思春期のサポートが重要である
と考えています。
この研究成果を踏まえ,より一層充実した活動を展開するとともに,今後の課題として,公的
機関と当事者や団体がつながり,抱える困難や問題を解決することについて,中間組織の在り方
なども視野に入れた上で,積極的に検討していきたいと考えています。
4 地域における多様な担い手の育成
ビジョンでは,地域におけるつながりの弱体化が指摘されていることから「新しい公共」による
子ども・若者を支える多様な活動等を支援することとしています。
また,一部地方公共団体で「子どもオンブズパーソン」等の名称で設けられている,子ども・若
者に関する権利侵害等様々な問題を第三者的立場から調整しつつ解決していく仕組みの普及を図る
こととしています。
これらに関連する施策のうち,川西市の子どもの人権オンブズパーソンの取組について紹介しま
す。
(1)川西市子どもの人権オンブズパーソン
川西市 子どもの人権オンブズパーソン事務局
川西市子どもの人権オンブズパーソンは,日本で最初に,条例により設置された子どもの人権
擁護・救済のための公的第三者機関です。平成11年より,いじめ,体罰,虐待等で苦しむ子ども
の SOS を受けとめ,子ども自身が権利の主体として問題解決に取り組めるよう支援してきました。
子どもは,おとなが考える以上に,おとなに話を聴いてもらえていないと感じています。多く
のおとなは「子どものため」を思って子どもに関わりますが,おとな自身が日々の生活の中で余
裕を失い,不安に苛まれていると,時に子どもの意見・心情が置き去りにされてしまいます。
オンブズパーソンは,親でも教員でもない立場で,何よりも子どもの話を聴くことを大切にし
ています。そのことが,「子どもの意見表明権」の保障を通じて「子どもの最善の利益」を確保
するという,「子どもの権利条約」(児童の権利に関する条約)の理念の具体化へ向けた第一歩と
なります。
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