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九州の自然学散歩-10「大崩 山の花崗岩塊と環状岩脈」

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九州の自然学散歩-10「大崩 山の花崗岩塊と環状岩脈」
おおくえ
九州の
九州 の 自然学散歩-
自然学散歩 -10「
10 「大崩山 の 花崗岩塊と
花崗岩塊 と環状岩脈」
環状岩脈 」
宮崎県北の大分県境に近い山地に「大崩山」と称する、花崗岩からなる急峻
な山があります。山名の由来は、花崗岩が風化して表土の真砂土が大雨で土
石流となり、たびたび大きく崩れた事に依るものだと推測されます。
県北部は約2億年~3千万年前に掛けて、海洋性の石灰岩、チャートと呼ば
れる深海の堆積物、メランジュと称する砂岩・泥岩・頁岩が深海底で複雑に
混ざった乱雑層等が次々にユーラシアプレートに付加された堆積岩層です。
これらの海洋性堆積岩に 1,500 万年前頃マグマが貫入して熱変成を受け、
金・銀・銅・鉛鉱床が生成されました。同地には海底熱水沈殿物のマンガン
鉱床等も多く埋蔵していました。従ってこの地は平安時代末期より昭和 40 年代後半まで、合計 100
以上の鉱山で盛んに採掘されていた歴史が残されています。
さて本題の大崩山ですが、当初この地に火山が発生し、多くの噴出物を周囲に撒き散らしてカル
デラを成形しました。その後地下のマグマがゆっくりと押し上がり、花崗岩ができました。
その際、楕円形のカルデラの周囲の断層破砕帯(長径 30km×短径 15km)にも同じマグマが貫入
したのです。この部分は薄かったので比較的早く冷えたため、より硬い花崗斑岩の環状岩脈(リング
ダイク)となったのです。この地質構造は非常に珍しく(下図参照)、日本では最大級のものです。
長い時を経て上部にあった堆積岩が風化し、大崩山の巨大な花崗岩塊が地表に現れ、現在の急峻な山
容となった訳です。一方環状岩脈も風化を免れ、全長 40kmもの屏風状山塊として残されています。
登山対象としての大崩山は標高がさほど高くないので(1,643m)、九州では比較的マイナーな山な
のですが、いわゆる通好みで「岩登りオタク」と呼ばれる様な人達に好まれているようです。
この山は花崗岩峰のクライミングを伴った中級者以上のルートが多く、しかも宮崎県の秘境と呼ばれ
る奥地にあり、交通の便が悪いため初心者はあまり寄り付かないようです。
この地方で「ダキ」と呼ばれる岩壁と渓谷美が素晴らしい、醍醐味のある登山が楽しめますので、
一度挑戦してみて下さい。但し一般ルートでも経験者同行が必要な中級者向けの山ですので念のため。
下湧塚の花崗岩峰
大崩山周辺の地質図
小積ダキの花崗岩壁(標高差 320m)
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