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中心静脈カテーテル 感染の低減に向けた最新の動向

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中心静脈カテーテル 感染の低減に向けた最新の動向
提供:スリーエムヘルスケア株式会社
特別寄稿
中心静脈カテーテル
感染の低減に向けた最新の動向
2010年3月18日から22日まで、
アメリカ合衆国ジョージア州アトランタ市内のハイアットリージェンシーアトランタ
ホテルにて、第5回医療関連感染十年次国際会議が開催されました。この会議は、SHEA(米国医療疫学
学会)、IDSA(米国感染症学会)、APIC(感染管理専門家協会)、CDC(米国疾病予防管理センター)の
4組織の合同により、10年に一度開催されるものです。
この会議の開催期間中に、
日米の感染管理の専門家の先生方が集まり、
「中心静脈カテーテル感染の低減に向けた最新の動向」
と題する意見交換会
が行われました。この議論内容を森兼啓太先生にご報告いただきました。
〈司会、執筆〉
森兼 啓太 先生
山形大学医学部附属病院
検査部 副部長・准教授、感染制御部 副部長
〈ご参加〉
Mark E. Rupp 先生
ネブラスカ大学メディカルセンター 感染症科 内科 教授、SHEA前会長
大久保 憲 先生
東京医療保健大学 大学院 感染制御学 教授
村上 啓雄 先生
岐阜大学医学部附属病院 副病院長 生体支援センター長 教授
満田 年宏 先生
横浜市立大学附属病院 感染制御部・部長 准教授
國島 広之 先生
東北大学大学院内科病態学講座 感染制御・検査診断学分野 講師
「血管内カテーテル関連感染防止のための
CDCガイドライン」について
このガイドラインは2007年より改訂作業が開始され、
改訂にあたって行われた文献検索に関してRupp氏
SHEA(米国医療疫学学会)、AVA(米国血管アク
は、つい先日改訂版が発行されたカテーテル関連
セス学会)、INS(米国輸液看護学会)他、多くの学
尿路感染防止ガイドラインと対比させて、次のように
会が協働している。
述べた。
「尿路感染防止ガイドラインは、旧版が古す
また、昨年パブリックコメントの募集を行ったところ、 ぎる
(註:1981年に発行された)ので、
ガイドラインの
300を超えるコメントが寄せられた。Rupp氏は現在
章立ての再構築に伴う全面的な文献検索が必要
改訂作業中の「血管内カテーテル関連感染防止の
であった。それに対して本ガイドラインは再構築が
ためのCDCガイドライン」の14名の作成メンバーの
不要であり
(註:現行版は2002年に発行)、執筆分
中の1人である。
担者が各々の担当部分について文献検索を実施
この意見交換会ではRupp氏にこの内容と解説を
したのちに、全体会議で整合性を取った」
御願いし、若干の討論を行なった。
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Rupp氏によると、今回の改訂では、1)継続的
な教育訓練 2)中心ラインに関する清潔操作
3)挿入時の皮膚準備 4)
カテーテルの交換の
必要性 5)新しい技術(クロルヘキシジンドレッ
シング、
アルコールや抗菌薬溶液によるロック、抗
菌薬含浸カテーテルなど)
6)バンドル 7)サー
ベイランスが主な修正点となっている
(表1)。
このうち、5)新しい技術に関しては、その他の
標準的な手技を確実に実施し、感染率が目標
血管内カテーテル関連感染防止のための
CDCガイドライン
今回、2002年版からの
変更が予定されているポイント
1)継続的な教育訓練 2)中心ラインに関する清潔操作
3)挿入時の皮膚準備
4)カテーテルの交換の必要性
5)新しい技術
クロルヘキシジンドレッシング
アルコールや抗菌薬溶液によるロック
● 抗菌薬含浸カテーテルなど
とするレベルに達しない場合に活用するものと
●
●
位置づけられている。また、動脈カテーテルの
感染リスクが中心静脈カテーテルに匹敵する
ものであるという点も新しく得られた知見として
盛り込まれる予定である。
6)バンドル
7)サーベイランス
表1
カテーテル挿入部のドレッシングについて
カテーテル関連感染の防止に寄与する新しい
技術として、
クロルヘキシジンドレッシングが注目
されている。カテーテル挿入部における細菌増
クロルヘキシジングルコン酸塩とは?
1950 年代に抗マラリア薬として開発された。米国では術前
皮膚消毒や手術時手指消毒、カテーテル挿入前の皮膚消毒、
殖を抑制し、特に中心静脈カテーテル関連血流
カテーテル表面へのコーティングや、カテーテル挿入部被覆
感染(Central line associated bloodstream
ドレッシングなど、幅広く用いられている消毒薬である。
infection, CLA-BSI)の発生率を抑えることが
期待できる。
クロルヘキシジングルコン酸塩含有器材に関し
ては、2009 年にCLA-BSIを1000カテーテル
日あたり1件以下のレベルに減少したというフラ
クロルヘキシジングルコン酸塩は細菌の細胞壁や細胞膜と結
合し、結果として殺菌力を発揮する。
クロルヘキシジングルコン酸塩の
安全性について
日本では、クロルヘキシジングルコン酸塩の安全性に関して、
アナフィラキシーショックを懸念する声がある。欧州の研究によ
ンスの研究など、数多くの研究が発表されてい
れば、アナフィラキシーショック発生の報告は、粘膜組織に使用
る。本ガイドライン改訂にあたり、
この新しい技
された事例に限られており、健常皮膚に使用した事例での発症
術をどのような勧告レベルにするかに関しては、
ドラフトであいまいな点がみられた。そのため
昨年多数のパブリックコメントが寄せられている
(筆者も投稿した)。Rupp氏によれば、それを
踏まえた最終的な詰めの作業が現在行われて
いる。
はない。日本では、クロルヘキシジングルコン酸塩の消毒薬に
よる皮膚消毒部位の穿刺によってショックを発症した数例の報告
があるものの、潜在的なリスクを想定した上で適切に使用する
ことで高いベネフィットが得られることは公知である。このよう
な情報は、クロルヘキシジングルコン酸塩を含む材料を臨床現
場で使用するにあたって大いに参考にするべきものである。クロ
ルヘキシジングルコン酸塩は非選択的に皮膚上の微生物を殺菌
するが、耐性については解明されていない。
次 項 カテーテル感染低減に関する病院の動きについて
カテーテル感染低減に関する
病院の動きについて
米国では、最近まで病院のCFO(最高財務責任者)
一方、
日本では、
日本環境感染学会の事業として
が感染予防の経済的メリットを見出すことはなかった
JHAISシステムが確立され、少数の施設のデータ
が、近年の保険償還ルールの変更(CLA-BSIの治
ながらも諸外国との比較がようやく可能な状況にな
療に対して原則として保険償還が行われなず、病院
ってきた。それによれば、CLA-BSI発生率は米国
がその費用を100%負担することになる)にともない、
のそれに匹敵するものである。さらに医療関連感
CFOを含めた病院全体の意識が変化してきている。
染に関する訴訟は増える傾向にあり、病院としての
CLA-BSIが一例発生したときに必要とされる医療費
リスクマネージメントの観点からもCLA-BSIを含む
は、ICUで4万ドルから6万ドル、病棟で1万ドルとい
院内感染の低減は重要になってきている。
われている
(表2)。また、CLA-BSI発生率の報告
を義務化する州も増えてきている。
表2.
CLA-BSIが一例発生したときに必要とされる医療費(米国)
ICU
4万ドル∼6万ドル(約400万円∼600万円)
病棟
1万ドル(約100万円)
最後に、Rupp 氏は、ガイドラインはあくまでガイドラインで
あり、各施設では患者や施設の特性に合わせてどのように
有効活用するかを考えるべきであるとした。その上で、医療
者としての心構えを次のように結んだ。
「医療従事者
は、コストダウンや感染率報告という活動を
ますます求められる傾向にありますが、
この
ような活動に過剰にとらわれてほしくありま
せん。私の病院のスタッフには、私たちの
仕事の本質は、患者を治療することであり、
目の前の患者が自分の家族や大切な友人
だったら、
と思いうかべて仕事をするよう
に教育をしています。」
Mark E. Rupp 先生
「目の前の患者が自分の家族や大切な友人だったら」
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