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無声の世界~手話との出会い 陳 正暉 皆さん、こんにちは、私のスピーチ
無声の世界~手話との出会い 陳 正暉 皆さん、こんにちは、私のスピーチのテーマを聞いた皆さんは、私の友達と同じように『何であなた は日本語手話を勉強しようと思ったのですか?』という疑問を持たれたかも知れません。特に外国人 留学生として日本に来た私はこのような質問をよく耳にします。そして、ある日本人の友達から『陳君、 あなたは日本語でもういっぱい、いっぱいでしょう。たまに中国語と台湾語を忘れることもあるのに、ま た、手話まで勉強して大丈夫ですか?』と言われました。確かに、友達が言ったことは事実かも知れま せんが、自分自身、特にそんなことを意識していませんでした。もちろん、日本に来た目的は言葉や 文化、そして専門的な知識などを勉強することです。しかし、それ以上に、人とのふれあいや多くの友 達を作ることなど、自分の世界を広げていくことの方がもっと大切ではないかと私は考えています。だ から、この無声の世界に飛び込んで手話を学び始めました。 最初は、大学の手話入門という講座に参加しました。その時には手話はとても難しいかなぁ~とか、 聾唖者と会ったらどうしようとか、自分の日本語は通じるのだろうかといろいろなことを考えて、とても 不安でした。しかし、先生や聾唖者の皆さんは非常に優しくて丁寧に教えてくれました。日本語のあ、 い、う、え、おと、五十音から順番に指文字を練習し始めました。そして、挨拶の言葉から一個一個の 単語を勉強し、手話の会話は進んでいきました。例えば、今の時間はこんにちはと言おうとすると、ま ず、人差し指と中指を頭の前に立てて自分の左側に倒します。これは午後という表現です。次は両手 の人差し指を胸の前で互いに曲げます。つまり、おじぎを表します。これは手話では挨拶の表現です。 この二つの動作を続けたら、こんにちはという表現になります。会場にいる皆様、もしよかったら、少し やってみてください。他には肩口で手を上から下に2、3回振ると分からないという意味です(実演)。ま た、手を胸もとから下へまっすぐ下すと分かりましたという意味になります(実演)。この様に、楽しい雰 囲気の中で勉強しながら参加者の方々ともいい友達になりました。入門講座を終了した後、手話を続 けて行きたいと考えた私は、大垣手話サークルに入り、勉強を続けることにしました。これがきっかけ で、私はボランティアとして大垣市福祉会館のイベントや障害者芸術文化祭岐阜大会などの活動に参 加し、たくさんの人達と一緒に手話を楽しみました。 一般的に、聾唖者に対する同情や恐怖心、あるいは、言葉が分からないからという理由で嫌な気 持ちを持つ人がいると思いますが、外国人という私の立場から見ると彼らのコミュニケーションの方法 は私たちの話す言葉がただ見る言葉に代わっただけです。ですから、第二外国語を勉強するのと同じ ように身に付ければいいのではないかと私は考えました。 私にとって、聴覚障害者の友達と過ごす時間はとても楽しいものです。この間も難聴者の友達とカ ラオケに行きました。彼らは音楽がほぼ聞こえず、リズムしか感じないので、メロディーは全然合って いませんでした。それなのに、彼らはリズムにあわせて、歌詞を見ながら大きい声で唄い、それと同時 に歌詞の意味を手話で表現しました。この光景を見た私はすごく驚きました。驚いたのは、彼らの歌 がメロディーと合ってないことにではなく、手話で歌う彼らの自信と明るさ、更に自然に発散されるエネ ルギーに対してです。そんな友達の姿が私に(よし)明日も頑張るぞう~というパワーをつけてくれまし た。 今の私の手話はまだまだ未熟なので、もっともっと勉強しなければならないと思っています。手話が 上達すると聴覚障害者の話が分かるようになって、自然に会話ができます。手話の表現はただ手の 動きだけではなく、口の動きや顔の表情、そして体の動きなど、いろいろな表現が必要です。手話は 難しいですが、この無声の世界から私はたくさんのことを学び、たくさんの力をもらいました。だから、 これからも手話の勉強を頑張って続けていきたいと思っています。 もし、皆さんが聾唖者と出会ったら、手話ができなくても筆談というコミュニケーションの方法もあり ます。是非、話をしてみてください。次はあなたの新しい出会いになるかも知れませんよ。 私のスピーチはこれで終わりたいと思います。ありがとうございました。