Comments
Description
Transcript
最新の透過電子顕微鏡法に関する情報交換、 特に半導体歪デバイスの
Annual Report No.26 2012 最新の透過電子顕微鏡法に関する情報交換、 特に半導体歪デバイスの解析について 1. Microstructure Change of B2 Precipitates in an Fe-Al-Ni Alloy Due to Two-Step Heat-Treatment 2. Microstructure Change of Si0.99C0.01 Thin Films Caused by Arsenic-Ion-, Boron-Ion-, and Silicon-Ion-Implantation and Successive Rapid Thermal Annealing Treatment, 3. An Exchange of Information About New Transmission Microscopy, Especially About Applications to Semiconductor Strained Devices. H23海自44 派遣先(1)2011年先端材料のプロセスと製造に関する国際会議(カナダ・ケベック市) (2)第7回Siエキタキシーとヘテロ構造に関する国際会議(ベルギ・ルーベン市) (3)マックマスター大学ブロックハウス材料研究所(カナダ電子顕微鏡センター) FEI社オランダ工場(カナダ・ハミルトン市およびオランダ・アイントホーフェン市) 期 間 平成23年7月30日~平成23年9月3日(36日間) 申請者 山梨大学 大学院医学工学総合研究部附属クリスタル科学研究センター 准教授 山 中 淳 二 海外における研究活動報告 海外における研究活動状況 1.概要 研究目的 最新の透過電子顕微鏡法(TEM)に関する情 1.幅広い材料を網羅した学会・T H E R M E C 報を得て、半導体歪デバイスや新規耐熱合金の ’ 2011の招待講演を行い、材料の組織制御に 開発に関する知見を深めることを目的とし、マッ 関する成果発表をすると同時に、金属・半 クマスター大学ブロックハウス材料研究所滞在 導体材料の組織に与える局所領域の格子歪 を核とし、その前後に国際会議に参加した。 に関する情報交換を行うことを、目的とする。 2.Siデバイスに関連する基礎技術とデバイス 2.マックマスター大学滞在中の活動 応用に特化した学会・ICSI-7で一般講演 Gianluigi Botton教授のグループの協力を得、 を行い、Si-C混晶半導体に関する成果発 現在派遣者が進めている研究に関して、最新 表を行う。 の電子顕微鏡法でどこまで構造解析が可能で 3.最新の透過電子顕微鏡(TEM)法の、材料 あるか、および山梨大学に既設の機器でどこま 研究への実際の活用方法に関する情報を で解析できるか、について実地で検討を行った。 得る。 まず、半導体歪デバイス中の、歪分布を視 覚的に理解できる新たな手法、STEM−明視 野像を活用した歪分布観察の概要を学んだ。 派遣者とその共同研究者は、実際に歪を応用 ─ 846 ─ The Murata Science Foundation した電界効果トランジスター(FET)の研究を お互いの研究の発展のために、今後も協力関 進めているが、TEMレベルの空間分解能で、 係を維持したいと考えている。 歪分布を実測するには至っていない。この手 法は、今後の我々の研究のためにも、有用な 3.Thermec 2011における招待講演 手法であることがわかった。一方で、この方 構造用材料の分野では、もはや鉄とアルミ 法の観察をするためには、用いる電子線の質 ニウム以外は全て希少元素であると、言われ が問われ、現状での山梨大学の機器には応用 ている。そこで、派遣者とその共同研究者は、 できないことも明らかとなった。山梨大学の 現在広く用いられているNi基耐熱合金に代わ 長期的機器更新計画の参考としたい。また、 る次世代の耐熱合金として、鉄基金属間化合 近い将来に成果を得るという観点では、今後 物を含む合金系に着目している。 もマックマスター大学と協調関係を継続し、 今回の発表では、Fe-Al-Ni系合金中の、不 必要に応じて共同研究を考えたい。 規則A2相/規則B2相組織について報告を行っ 次に、半導体/金属転移を起こす酸化物の、 た。特に、三次元的な内部組織変化を、工夫 状態分析について、データを得た。Gianluigi した電気化学的エッチング後の走査電子顕微 Botton教授のグループが十分な経験のあるTi 鏡(SEM)観察と、集束イオンビーム加工装 とその酸化物からなる系については、電子単色 置(FIB)によるスライス後の高分解能二次電 化装置、集束レンズの収差補正装置、高エネ 子像観察で、明らかにした。これらの手法は、 ルギー分解能電子エネルギー損失分光分析装 最新の装置(例:TEMトモブラフィーやFIB/ 置(EELS)を兼ね備えたTEMを用いて、大変 FE-SEM複合装置)を使用しなくとも、一定の 有用なデータを得ることができた。派遣者と 三次元形状を明らかできることを示したもの その共同研究者が作製した試料中に、金属Ti、 である。 TiO, TiO 2 が共存していることを、実験的に証 また、他の発表者による講演から、Ni基耐 明できた。この結果については、データ数を 熱合金の分野においても鉄基金属間化合物の 増やして、今後成果発表したいと考えている。 分野においても、相分離と歪の関係性は、依 一方、合金系によっては、これらの装置を利 然、重要な課題であることを認識した。 用しても、十分な状態分析ができないことも、 確かめられた。そういった合金系に対しては、 4.ICSI7における一般講演 EELS以外の手法でのアプローチが必要である。 Si-C系混晶半導体薄膜を用いた歪ヘテロデ 例えば、マックマスター大学でも保有してい バイスは、Si-Ge系混晶半導体薄膜を用いた歪 ないが山梨大学で新規に整備した、超高感度 ヘテロデバイスと同様、次世代高速FETとして、 エネルギー分散型X線分析装置(EDX)を備え 注目されている。しかし、Si-C系では固溶体は たTEMで、局所領域の半定量分析を進めると 熱力学的安定相ではなく、デバイス化工程で いったアプローチが必要であると考えられる。 の種々の熱処理の影響が、問題点である。 以上のように、今回の滞在中の実験により、 今回の発表では、ドーパントをイオン注入 マックマスター大学の最新機器の威力を知る した S i - C の結晶化条件を明らかにし、発表 とともに、研究対象によってはむしろ山梨大 した。ただし、ドーパントをイオン注入した 学の最新機器が優れていることも認識できた。 Si-Cは、その結晶化過程で欠陥が導入される ─ 847 ─ Annual Report No.26 2012 この派遣の研究成果等を発表した こと、ドーパントではなく化学的効果の少な いSi+イオンを注入した場合でも同様の結果 であることを、示した。このように、現状で 著書、論文、報告書の書名・講演題目 1) Microstructure Change of B2 Precipitates in an Fe-Al-Ni Alloy Due to Two-Step Heat-Treatment, は高濃度ドープしたSi-C相をチャネルとして Junji Yamanaka 1, a, Chiaya Yamamoto 2, b, 利用することは困難だが、ソース・ドレイン Ya s u h i r o K u n o 3 , M i n o r u D o i T H E R M E C ’ 2011, International Conference on PROCESSING としては、応用が可能であることを示した。 & M A N U FA C T U R I N G O F A D VA N C E D MATERIALS, August 1-5, 2011, Convention Center 5.まとめ – Quebec City, Canada 以上のように、今回の渡航によって、電子 2) Microstructure Change of Si 0.99 C 0.01 Thin Films 単色化装置、集束レンズの収差補正装置、高 Caused by Arsenic-Ion-, Boron-Ion-, and Silicon- エネルギー分解能電子エネルギー損失分光分 析装置(EELS)を兼ね備えたTEMの能力を実 地で調査し、また、金属材料分野・半導体分 野の研究者達から、材料の組織制御に関する 最新情報を得ることができた。 Ion-Implantation and Successive Rapid Thermal Annealing Treatment, Shigenori Inoue 1, Keisuke Arimoto1, *Junji Yamanaka1, Kiyokazu Nakagawa1, Kentarou Sawano 2, Yasuhiro Shiraki 2, Atsushi Moriya 3, Yasuhiro Inokuchi 3 and Yasuo Kunii, 7th International Conference on Si Epitaxy and Heterostructures(ICSI-7), Leuven, Belgium, August 28-Sept 1st 2011. 6.謝辞 今回の渡航を援助下さいました、村田学術 振興財団に、心より謝意を表します。 ─ 848 ─