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全文 PDF 3.82MB - 研究産業・産業技術振興協会

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全文 PDF 3.82MB - 研究産業・産業技術振興協会
JRIA26 ナノ分析標準
平成 26 年度
新エネ素子の開発加速に資する
ナノ領域元素分析標準化補助事業
報 告 書
平成 27 年 3 月
一般社団法人 研究産業・産業技術振興協会
この事業は、競輪の補助金により作成しました。
http://ringring-keirin.jp
平成 26 年度
新エネ素子の開発加速に資する
ナノ領域元素分析標準化補助事業
報 告 書
平成 27 年 3 月
一般社団法人
研究産業・産業技術振興協会
はじめに
我 が 国 の 経 済 は 昭 和 30 年 代 後 半 以 降 、電 子 工 業 や 機 械 産 業 の よ う に 、高 度
な研究開発に裏打ちされた工業によって牽引されてきたが、近年若者の理科
離 れ 、 製 造 業 離 れ 、 更 に は BRICs 諸 国 の 追 い 上 げ 等 、 我 が 国 経 済 の 更 な る 発
展に対する大きな課題が顕在化してきた。
しかし、将来、少子高齢化が急速に進む我が国が、引き続き発展を遂げて
いくためには、より高度な技術研究開発によって世界最先端の技術水準を確
保していかざるを得ない。最先端分野においては、例えば材料や電子デバイ
スの分野では原子レベル、ナノレベルの精度での研究開発が当たり前になっ
ており、その研究開発段階において、材料、あるいは加工がどのような状況
であるかをより正確に分析できなければ、その研究開発の成果を挙げること
は不可能であるといってもいい。
本事業では、我が国において先端分野の研究開発を強力に推進していくた
め、最先端分野の分析項目について、我が国の異なる分析機関が出した結果
についてどの程度のばらつきがあるかの現状を把握し、その分析結果がより
狭い範囲に収まるためにはどのような課題があり、どのような解決策がある
かについて検討をすることを目的として実施した。
本 事 業 が 対 象 と し た 二 次 イ オ ン 質 量 分 析 法( SIMS)や 透 過 電 子 顕 微 鏡( TEM)
による分析・計測技術は、内部にナノ構造を持つ材料をナノメートルスケー
ルの分解能で分析・計測できる重要な計測手法で、国際標準機関
ISO/TC201/SC6 や ISO/TC202/SC3 で 日 本 が 力 を 入 れ て い る 領 域 で あ る 。
平 成 24 年 度 よ り 開 始 し た 本 事 業 の 最 終 年 度 に 当 た り 、本 年 度 は そ の 目 的 と
した先端分析手法の標準化のための課題の抽出やそのための共通試料の作製
と 品 質 検 証 を 行 い 、測 定 手 順 の 共 通 化 検 討 結 果 に つ い て と り ま と め を 行 っ た 。
国内の複数の分析機関と共同で計測・分析技術上の課題を明らかにすること
で、共通測定の案の作成や分析技術の共通化・高精度化に貢献する貴重なデ
ータを得ることができた。
本 事 業 を 実 施 す る に あ た り 、公 益 財 団 法 人 JKA 殿 の 御 高 配 に 深 謝 す る と
ともに、本事業に御協力いただいた委員各位に心より感謝申し上げる次第で
ある。
平 成 27 年 3 月
一般社団法人 研究産業・産業技術振興協会
目次
目 的 と 実 施 体 制 ............................................. - 1 対 象 と す る 分 析 技 術 と 試 料 ................................... - 5 SIMS 分 析
................................................... - 5 -
手法
.................................................... - 5 -
手法
.................................................... - 6 -
電 子 エ ネ ル ギ ー 損 失 分 光 法 (EELS)分 析
EELS に つ い て
........................................... - 7 -
電 子 の 非 弾 性 散 乱 と EELS の 原 理
EELS の 分 光 器
......................... - 7 .......................... - 7 -
........................................... - 9 -
エネルギー分散
...................................... - 9 -
スペクトロメータの光学系
........................... - 10 -
スペクトルの検出
................................... - 11 -
エネルギー分解能
................................... - 11 -
外乱の影響とその補正
............................... - 12 -
EELS の デ ー タ 処 理
...................................... - 12 -
EELS の デ ー タ 処 理
...................................... - 13 -
参考文献
............................................... - 13 -
EELS エ ネ ル ギ ー 分 解 能 評 価 用 の エ ネ ル ギ ー 軸 較 正 と 標 準 試 料 の 開 発 - 15 エネルギー軸キャリブレーションと標準試料の開発
はじめに
............. - 15 -
............................................... - 15 -
エネルギー軸較正に必要な試料の条件
..................... - 15 -
窒化ホウ素とグラファイトによるキャリブレーション方法
....... - 16 -
第一次較正
............................................. - 16 -
第二次較正
............................................. - 16 -
標準試料と測定
標準試料
測定
......................................... - 17 ........................................... - 17 -
............................................... - 18 -
実用的内な部標準試料の検討
................................. - 19 -
マイクログリッドカーボンの内部標準化の検討
............. - 19 -
マイクログリッドを用いたラウンドロビンテストの測定
ラウンドロビンテストの結果
......................... - 21 -
マイクログリッドカーボン膜の実用可能性
ナノ粒子の内部標準化の検討
測定
. - 19 -
............. - 22 -
............................. - 24 -
............................................... - 24 -
ラウンドロビン測定の結果
........................... - 25 -
シリカナノ粒子の実用可能性
......................... - 27 -
実用的な内部標準試料によるエネルギー軸校正とその今後
... - 28 -
SIMS 分 析 用 標 準 試 料 の 開 発
................................ - 29 -
BN デ ル タ ド ー プ As 高 濃 度 シ リ コ ン ウ ェ ハ 標 準 試 料 の 開 発
開発の目的
....... - 29 -
............................................. - 29 -
各種表面・界面分析法を用いた試作試料の品質評価
XRR に よ る 多 層 膜 構 造 の 評 価
断 面 S/TEM 観 察
SIMS 分 析
......................... - 33 -
.................................... - 34 -
.......................................... - 35 -
TOF-SIMS 分 析
HR-RBS 分 析
..................................... - 36 -
....................................... - 37 -
中性子放射化分析
XRF 分 析
......... - 32 -
................................... - 38 -
........................................... - 39 -
標 準 試 料 に よ る SIMS 分 析 精 度 向 上 と ラ ウ ン ド ロ ビ ン テ ス ト
開発した標準試料と認証標準物質
SIMS 用 標 準 試 料 開 発 の ま と め
......................... - 42 -
............................ - 45 -
BN デ ル タ ド ー プ B 高 濃 度 シ リ コ ン ウ ェ ハ 標 準 試 料 の 開 発
開発の目的
. - 40 -
........ - 47 -
............................................. - 47 -
各種表面・界面分析法を用いた試作試料の品質評価
......... - 49 -
ICP-MS ............................................. - 49 TOF-SIMS 分 析
..................................... - 52 -
SIMS に よ る B の 同 位 体 分 析
断 面 S/TEM 観 察
探針抵抗測定
......................... - 54 -
.................................... - 54 -
....................................... - 58 -
ボロンドープ標準試料の品質評価結果
総括
................. - 64 -
...................................................... - 65 -
本事業活動による成果
今後の活動への提言
....................................... - 65 ......................................... - 68 -
第 1 章 目的と実施体制
目的と実施体制
日 本 が 長 期 に 今 後 も 競 争 力 を 維 持 し 向 上 さ せ る た め に は 、技 術 イ ノ ベ ー シ ョ ン に よ
り 、技 術 の フ ロ ン テ ィ ア を 開 拓 し 続 け る こ と が 必 要 で あ る 。ナ ノ テ ク ノ ロ ジ ー は 米 国
大 統 領 の 一 般 教 書 演 説 で「 21 世 紀 を 牽 引 す る 」産 業 技 術 と し て 位 置 づ け ら れ て 以 降 、
各 国 で ナ ノ テ ク ノ ロ ジ ー の 精 力 的 な 研 究 開 発 が 進 め ら れ て い る 。ナ ノ テ ク ノ ロ ジ ー の
著 し い 進 展 に よ り 、新 機 能 性 材 料 の 出 現 と そ の 産 業 化 に よ る 製 品 の 市 場 投 入 も め ざ ま
しく、学術的・学際的な進展から多数の領域が関わる融合的な展開へと進んでいる。
こ の 科 学 研 究 か ら 工 業 生 産 へ 、実 験 室 か ら 市 場 へ と の フ ェ イ ズ 進 展 に よ り 、ナ ノ テ ク
ノロジーのさらなる発展とその社会への受容のために標準化に期待される役割も大
きくなっている。
技 術 の 国 際 標 準 化 は 、ナ ノ テ ク 等 の 先 端 技 術 開 発 で は ビ ジ ネ ス の 展 開 に も 有 利 に な
る た め 、欧 州 は か ね て よ り 高 い 戦 略 性 を 持 っ て 国 際 標 準 化 を 進 め て い る 。無 論 米 国 や
中 国 も そ の 重 要 性 を 認 識 し て い る 。国 際 標 準 化 に 近 年 急 速 に 関 心 が 高 ま っ た 背 景 の 一
つ に は WTO/TBT 協 定 ( 世 界 貿 易 機 関 /貿 易 の 技 術 的 障 害 ) の 発 効 が あ る 。 こ の 協 定
に よ り 貿 易 に 関 わ る 強 制 的 な あ る い は 任 意 の 標 準 を 国 内 で 設 定 す る 場 合 、国 際 標 準 に
整 合 さ せ な け れ ば な ら な い 。 中 国 を は じ め 様 々 な 国 が WTO に 参 加 し TBT 協 定 遵 守
義 務 を 負 う こ と に な り 市 場 の 拡 大 が 見 込 ま れ て お り 、日 本 は 国 際 標 準 化 へ の 適 合 と そ
の策定への戦略的な関わりがいっそう求められている。
国 際 標 準 化 を 産 業 展 開 の ツ ー ル と し て 位 置 づ け る こ と は 世 界 的 な 流 れ で あ り 、日 本
でも国際標準化を戦略的に推進し産業競争力の獲得を支えていく方向性を掲げてい
る 。経 済 産 業 省 で は 、「 国 際 標 準 化 戦 略 目 標 」を 策 定 し 、「 欧 米 並 み の 国 際 議 長・幹
事 引 受 と 、ISO/IEC に お け る 国 際 標 準 原 案 の 提 案 件 数 の 倍 増 を 2015 年 ま で に 実 現 」、
「 国 際 標 準 化 人 材 の 育 成 」等 を 目 標 と し て 掲 げ 、官 民 を 挙 げ て 国 際 標 準 化 を 推 進 し て
い る 。す な わ ち「 政 府 戦 略 分 野 に 係 る 国 際 標 準 化 活 動 」、「 社 会 ニ ー ズ( 安 全・安 心 )・
国 際 幹 事 等 輩 出 分 野 に 係 る 国 際 標 準 化 活 動 」、及 び「 国 際 標 準 化 横 断 的 推 進 活 動 」を
進めて、国際標準化戦略目標を達成するために必要なニーズに的確に対応していく。
こ れ に よ り 、優 れ た 技 術 を 有 す る 日 本 の 企 業 が「 技 術 で 勝 っ て 、事 業 で 負 け る 」こ と
が な い よ う に 、ビ ジ ネ ス に つ な が る 国 際 標 準 化 を 推 進 し て 事 業 戦 略 と 一 体 と な っ た 戦
略的な国際標準化を展開することが期待される。
日 本 で は 、優 れ た 計 測・分 析 技 術 に よ っ て 、ナ ノ テ ク 分 野 や 分 析 関 連 分 野 の 標 準 化
審 議 体 制 で 主 導 的 な 役 割 も 担 っ て い る 。 ナ ノ テ ク 材 料 と そ の 計 測 関 連 に 関 す る ISO
の 一 例 を 表 1 に 示 す 。 ISO/TC201(表 面 化 学 分 析 )で は 日 本 は 要 職 を 占 め 、 国 際 議 長 、
Sub Committee(SC)の 国 際 議 長 と セ ク レ タ リ ー 、Working Group(WG)の コ ン ビ ー ナ 、
の そ れ ぞ れ の 職 を 担 っ て い る 。 ま た ISO/TC229( ナ ノ テ ク ノ ロ ジ ー ) WG2( 計 測 と
特 性 評 価 )で も コ ン ビ ー ナ の 職 を 担 っ て い る 。今 後 も 日 本 が 先 導 的 な 地 位 を 維 持 し 続
- 1 -
けるためにも計測・分析技術の向上に向けて継続的な努力が必要である。
表 2 .1 -1
ISO/TC201
表面科学分析
ナ ノ 材 料 関 連 の 国 際 標 準 化 機 構 ( I SO )
SC-1
SC-2
SC-3
SC-4
SC-6
SC-7
SC-8
SC-9
SG-1
WG-3
ISO/TC202
マイクロビーム分析
ISO/TC229
ナノテクノロジー
用 語 【 US】
一 般 的 手 順 【 US】
デ ー タ 管 理 と 取 扱 【 UK】
深さ方向の分析【日本】
二次イオン質量分析法【日本】
電 子 分 光 【 UK】
グロー放電質量分析【日本】
走 査 型 プ ロ ー ブ 顕 微 鏡 ( SPM)【 韓 国 】
ナノ材料評価
X 線 反 射 率 分 析 法 ( X R R )、
全 反 射 蛍 光 X 線 分 析 ( TXRF)
WG-4
バイオ材料表面評価
WG-5
Optical interface analysis
SC-1
用 語 【 US】
SC-2
Electron probe microanalysis
SC-3
分 析 電 子 顕 微 鏡 ( AEM)【 日 本 】
SC-4
走 査 電 子 顕 微 鏡 ( SEM)【 日 本 】
JWG-1
用語・命名法
JWG-2
計量・キャラクタリゼーション【日本】
WG-3
健 康 /安 全 /環 境
WG-4
材料分科会
※ S C : S u b C o m m i t t e e , W G : Wo r k i n g G r o u p
※括弧内は幹事国
標 準 物 質 の 開 発 と そ れ を 利 用 し た 校 正 も 国 際 標 準 化 と 並 ん で 重 要 で あ る 。物 質 の 諸
特 性( 例 え ば ナ ノ 材 料 で は 、直 径 、長 さ 、厚 さ 、密 度 、真 球 度・形 状・ア ス ペ ク ト 比 、
組 成 比 、な ど )の 値 づ け に は 正 し い 値 で か つ 所 用 の 精 度 で あ る こ と が 求 め ら れ る 。工
業製品をはじめ医薬品や食料品など品質の保証のためには諸特性を正確に反映した
測 定 値 と な る よ う に 測 定 す る こ と が 必 要 で あ る 。理 想 的 に は 測 定 値 は 、誰 が 測 定 し て
も 、ま た 何 度 分 析 し て も 、ま た い つ 分 析 し て も 同 じ 結 果 が 得 ら れ な け れ ば な ら な い が 、
現 実 に は な か な か 容 易 で は な い 。そ こ で 計 測 の 信 頼 性 を 保 証 す る た め の 一 つ の 方 法 は 、
値 づ け の ”方 法 ”の 標 準 化 で あ り 前 述 の 国 際 標 準 化 機 構 ISO な ど に よ り 国 際 的 合 意 を
形 成 す る も の で あ る 。も う 一 つ は 正 確 な 値 を 特 性 値 と し て 保 有 す る ”標 準 物 質 ”の 作 製
と 頒 布 で あ る 。標 準 物 質 は ISO ガ イ ド 30 で 定 義 さ れ て お り 、そ れ に よ る と 一 つ 以 上
の 特 性 値 が 機 器 の 校 正 、測 定 方 法 の 評 価 ま た は 測 定 値 の 指 定 に 使 い 得 る よ う に 十 分 に
確 定 さ れ た 材 料 ま た は 物 質 と さ れ る 。と く に 認 証 標 準 物 質 は 、認 証 書 が 添 付 さ れ た 標
準 物 質 で あ り 、認 証 書 に 記 載 さ れ た 認 証 値 は ト レ - サ ビ リ テ ィ の 確 立 さ れ た 手 順 に よ
って確定され、不確かさが付与されている。
標 準 物 質 の 主 な 使 用 目 的 は 、① 分 析・計 測 機 器 の 校 正 ② 物 質・材 料 へ の 値 付 け ③ 分
析・計 測 方 法 の 評 価 ④ 分 析・試 験 機 関 あ る い は 分 析 者・測 定 者 の 技 能 の 確 認 、で あ る 。
標 準 物 質 の 利 用 に よ り 、例 え ば ナ ノ 材 料 で は 測 定 方 法 の 選 択 が 重 要 で あ る こ と が わ か
っ て き て お り 、ナ ノ 粒 子 の 標 準 球 の 大 き さ を 各 種 ナ ノ 計 測 方 法 で 測 っ た 場 合 数 % の 違
- 2 -
いがあること、などナノ材料とその測定手法の依存性が議論されている。
効 率 的 に 分 析 精 度 を 向 上 さ せ る に は 測 定 比 較 に よ る 検 討 活 動 が 有 効 で あ る 。半 導 体
デ バ イ ス 開 発 技 術 は 進 歩 を 続 け て お り 、開 発 さ れ た 新 規 材 料・新 規 構 造 に 分 析・計 測
技 術 が 対 応 し て い く た め に は 、分 析・計 測 技 術 の 研 究 開 発 に 対 す る 限 ら れ た リ ソ ー ス
を 最 大 限 に 活 用 す る た め に も 、機 器 分 析 メ ー カ 、分 析 機 関 、標 準 に 関 わ る 機 関 が 協 力
し て 推 進 す る 必 要 が あ る 。ま た 先 端 分 野 の 分 析 技 術 は ど の 分 析 機 関 に よ っ て も 高 い 精
度 で 結 果 を 得 ら れ る よ う に 技 術 レ ベ ル の 互 換 性 を 保 つ 必 要 が あ る 。そ こ で 各 分 析 機 関
が 実 施 し た 測 定 結 果 の ば ら つ き の 現 状 把 握 と 、そ の 分 析 結 果 の ば ら つ き を よ り 狭 い 範
囲 に 収 め る た め の 方 策 の 検 討 な ど を 共 同 で 検 討 し て い く 必 要 が あ る 。ま た 検 討 活 動 で
は分析試料及び分析手順についての国際標準化も視野に入れたものとすることが望
ま し く 、国 際 標 準 に 展 開 で き る 先 端 的 な 共 通 評 価 試 料 の 作 製 方 法 、測 定 の 実 施 に よ る
分析技術水準の向上と先端分析手順の標準化が実施できる。
以 上 の 事 柄 を 鑑 み て 本 事 業 は 平 成 24 年 度 よ り 開 始 さ れ 、 そ の 目 的 と し て 先 端 分 析
手 法 の 標 準 化 の た め の 課 題 の 抽 出 や そ の た め の 共 通 試 料 仕 様 の 検 討 、共 通 測 定 手 順 の
立 案 に 資 す る 検 討 を 行 う こ と と し た 。 と く に 二 次 イ オ ン 質 量 分 析 法 ( SIMS) や 透 過
電 子 顕 微 鏡 ( TEM) に よ る 分 析 ・ 計 測 技 術 を 取 り 上 げ た 。 こ れ ら の 計 測 手 法 は 、 材
料 の 内 部 に ナ ノ 構 造 を も つ も の を ナ ノ メ ー ト ル ス ケ ー ル の 分 解 能 で 分 析・計 測 で き る
重 要 な 計 測 手 法 で あ り 、 そ れ が 関 わ る 国 際 標 準 ISO/TC201/SC6 や ISO/TC202/SC3
は 日 本 が 力 を 入 れ て い る 領 域 で あ る 。そ の た め 本 事 業 で は こ れ ら 技 術 の 高 度 化 を 図 る
た め 、SIMS 分 析 の た め に は 高 濃 度 不 純 物 ド ー プ シ リ コ ン ウ ェ ハ を 用 い た デ ル タ ド ー
プ 多 層 膜 つ き の 標 準 試 料 の 作 製 を 行 い 、 ま た 透 過 電 子 顕 微 鏡 ( TEM) 用 に は そ の エ
ネ ル ギ ー 損 失 分 光 法 ( EELS) の 分 解 能 を 評 価 す る 標 準 試 料 の 作 製 を 行 っ た 。 標 準 試
料 を 活 用 す る こ と に よ り 、高 い 精 度 の 測 定 を 行 う 手 順 の 開 発 と そ の 標 準 化 を 国 内 の 複
数の分析機関と共同で目指した。その結果、計測・分析技術上の課題を明らかにし、
測定手順の共通化に貢献する貴重なデータを得ることができた。
本 事 業 の 実 施 に あ た っ て は 一 般 社 団 法 人 研 究 産 業・産 業 技 術 振 興 協 会 (JRIA) が 学
識 経 験 者 及 び 技 術 者 か ら な る 委 員 会 を 設 立 し 、 財 団 法 人 JKA の 補 助 事 業 と し て 本 事
業 を 実 施 し た 。共 通 試 料 の 分 析・計 測 は 、研 究 産 業・産 業 技 術 振 興 協 会 会 員 企 業 で あ
りまた日本の検査分析分野で中核的な役割を果たしている機関に依頼して実施した。
国 際 標 準 化 の た め の 課 題 抽 出 、共 同 測 定 結 果 の 比 較 と り ま と め は 、当 事 業 の 委 員 会 に
おいて担当委員が中心となって行った。
- 3 -
ナノ領域元素分析標準補助事業
検討委員会委員名簿
(順不同・敬称略)
所属・役職
機関名
独立行政法人
産業技術総合研究所
計測標準研究部門 ナノ材料計測科
黒河
明
寺内
信哉
理学部化学科 教授
宮村
一夫
表面科学第 1 研究室 室長
鮫島
純一郎
形態科学研究部 第 2 研究室
原田
貴弘
高野
明雄
水野
誠一郎
笹川
薫
矢吹
和久
橋本
哲
表面・ナノ分析研究室
研究室長
独立行政法人
計測標準研究部門 ナノ材料計測科
産業技術総合研究所
表面・ナノ分析研究室 主任研究員
東京理科大学
㈱東レリサーチ
センター
㈱東レリサーチ
センター
NTT ア ド バ ン ス
テ ク ノ ロ ジ (株 )
NTT ア ド バ ン ス
テ ク ノ ロ ジ (株 )
(株 )コ ベ ル コ 科 研
(株 )コ ベ ル コ 科 研
氏名
先端プロダクツ事業本部 材料分析セ
ンター 表面分析グループ担当課長
先端プロダクツ事業本部 材料分析セ
ン タ ー TEM グ ル ー プ 担 当 部 長
技術本部 エレクトロニクス事業部
技監
技術本部 エレクトロニクス事業部
物理解析センター ナノ組織解析室
JFEテクノ
営業本部 東京営業所 川崎支所
リ サ ー チ (株 )
グループ長
住 友 電 気 工 業 (株 )
研究統轄部 企画部 主席
山下
正史
日 本 電 子 (株 )
EM 事 業 ユ ニ ッ ト 技 師 長
近藤
行人
武蔵事業所 解析技術開発部 主管技師
朝山
匡一郎
ルネサス
エ レ ク ト ロ ニ ク ス (株 )
<事務局>
一般社団法人
研究産業・産業技術振興協会
調査研究部 部長
- 4 -
嵩
比呂志
第 2 章 対象とする分析技術と試料
対象とする分析技術と試料
SIMS 分析
手法
SI M S ( Se c o n d a r y I o n M a s s Sp e c tr o me t r y ) は 、 イ オ ン 源 で 発 生 さ せ た イ
オ ン を 加 速 し て 試 料 に 照 射 し 、試 料 表 面 で 発 生 す る 二 次 イ オ ン の 質 量 を 分 析 す
る 。微 量 不 純 物 に 着 目 し た 、試 料 自 体 を ス パ ッ タ に よ っ て 削 り な が ら 分 析 す る
ダイナミック(動的)
SI M S と 、 ス タ テ ィ ッ ク
限界以下のドーズと言
う温和な条件で表面に
吸着している化学種を
分析するスタティック
( 静 的 ) SI M S の 二 つ の
測 定 モ ー ド が あ り 、分 析
目的に応じて使い分け
る。
図 2 .1 -1 SI M S 分 析 の 原 理
原 理 的 に 破 壊 分 析 で あ る が 、二 次 イ オ ン の 検 出 感 度 が 高 く 、試 料 の 組 成 、化 学
構 造 、吸 着 化 学 種 を サ ブ ミ ク ロ ン の 空 間 分 解 能 で 解 析 で き る 上 、深 さ 方 向 の 分
布 を 求 め る こ と が で き る た め 、半 導 体 や 高 分 子 試 料 の 分 析 に 欠 か せ な い 測 定 法
となっている。
SI M S で は 、 イ オ ン ビ ー ム を 利 用 し て い る た め 、 超 高 真 空 下 で 測 定 を 行 う 必
要 が あ る 。ま た 、イ オ ン 照 射 に よ っ て ス パ ッ タ ア ウ ト さ れ る 深 さ は 原 理 的 に 表
面 数 層 ま で で あ る た め 、ダ イ ナ ミ ッ ク SI M S の 場 合 イ オ ン 照 射 を 続 け て い れ ば 、
照 射 時 間 が 深 さ に 対 応 し た 深 さ 分 析 が 可 能 と な り 、ス タ テ ィ ッ ク SI M S の 場 合
極 々 表 面 で の 有 機 物 種 の 同 定 が 可 能 と な る 。 SI M S で は 、 表 面 に あ る 原 子 や 分
子 に 対 し て 一 次 イ オ ン の 運 動 エ ネ ル ギ ー が 受 け 渡 さ れ 、表 面 か ら の 離 脱( こ の
現 象 を ス パ ッ タ と 呼 ぶ )と イ オ ン 化 が 同 時 に 進 行 す る 。ス パ ッ タ す る 確 率 や イ
オン化する確率は試料及びイオン照射条件によって異なることに注意が必要
で あ る 。ま た 、ス パ ッ タ に よ る コ ー ン 状 や 波 状 の 表 面 荒 れ が 試 料 表 面 に 生 じ た
り 、イ オ ン 照 射 に 伴 っ て ミ キ シ ン グ な ど の 固 体 表 面 で の 原 子 の 再 配 列 が 生 じ た
り す る 。こ れ ら を 最 小 限 に 抑 え た 分 析 を 行 う に は 、加 速 電 圧 や 入 射 角 な ど の 条
- 5 -
件設定には注意が必要である。
SI M S の 測 定 装 置 は 、大 ま か に 分 け て イ オ ン 源 、イ オ ン の 加 速 お よ び 集 束 系 、
試 料 ホ ル ダ 、 質 量 分 析 計 、検 出 器 に よ っ て 構 成 さ れ る 。ダ イ ナ ミ ッ ク SI M S で
用いられるイオンとしては、着目元素の感度を高くすることができる酸素
(O 2 + )や セ シ ウ ム (C s + ) が 用 い ら れ 、 ス タ テ ィ ッ ク SI M S で は ガ リ ウ ム (Ga + )
や (A u n + ) や ビ ス マ ス (B i n + )が 多 く 用 い ら れ て お り 、近 年 で は ア ル ゴ ン (A r ) や メ
タ ン の 巨 大 な 分 子 量 を 持 つ ク ラ ス タ ー イ オ ン が 用 い ら れ る こ と も あ る 。イ オ ン
源で生成したイオンを加速電圧によって引き出して集束レンズ系でイオンビ
ー ム に す る 。集 束 レ ン ズ 系 を 用 い て サ ブ ミ ク ロ ン か ら 数 十 ミ ク ロ ン ま で 集 束 し
た イ オ ン ビ ー ム を 作 る こ と が で き 、イ オ ン に よ っ て 表 面 に あ る 原 子 を ス パ ッ タ
に よ り 弾 き 飛 ば し な が ら 分 析 す る 。し た が っ て 、加 速 電 圧 や 電 流 密 度 を 上 げ る
こ と に よ っ て 、例 え ば 、 深 さ 方 向 分 析 で は 深 さ 方 向 の 分 析 速 度 が 速 く な る 。一
方 、深 さ 方 向 の 分 解 能 の 低 下 な ど の 問 題 も 生 じ る の で 、試 料 や 分 析 目 的 に 応 じ
た適正な条件を設定する必要がある。
SI M S で 用 い ら れ る 質 量 分 析 計 に は 、磁 場 型 、四 重 極 型 、飛 行 時 間 型 が あ る 。
磁場型では電場のエネルギー収束性を利用した高い質量分解能を持つ二重収
束 型 質 量 分 析 計 が 主 と し て 用 い ら れ る 。四 重 極 型 は 、質 量 分 解 能 は 低 い も の の 、
装 置 が 簡 便 ・ コ ン パ ク ト で 汎 用 性 が 高 い 。磁 場 型 及 び 四 重 極 型 は ダ イ ナ ミ ッ ク
SI M S に 広 く 用 い ら れ て い る 。 飛 行 時 間 型 は 高 い 質 量 分 解 能 を 持 ち 、 低 質 量 か
ら 非 常 に 大 き な 質 量 ま で 同 時 に 測 定 で き る た め 、ス タ テ ィ ッ ク SI M S に 用 い ら
れ 、 し ば し ば ス タ テ ィ ッ ク SI M S と 飛 行 時 間 型 SI M S が 同 義 語 と み な さ れ る 。
飛 行 時 間 型 の 原 理 は 、試 料 に イ オ ン を パ ル ス 状 に 照 射 し 、そ こ か ら 電 場 で 引 き
出 さ れ る 二 次 イ オ ン が 、速 度 に 違 い が 生 じ る( 軽 い イ オ ン ほ ど 早 く 検 出 器 に 到
達する)ことを利用した方式である。
手法
シ リ コ ン か ら メ モ リ な ど の 素 子 を 作 成 す る と き に は 、均 一 な 試 料 で は な く 、い ろ い
ろな不純物を加えたり、表面に酸化膜を作ったりして所定の機能を持つようにする。
メ モ リ の 集 積 度 の 向 上 に 伴 い 、作 成 さ れ る 素 子 中 に 導 入 し た 不 純 物 を ナ ノ ス ケ ー ル で
高 精 度 に 分 布 測 定 を 行 う 必 要 に 迫 ら れ て い る の が 現 状 で あ る 。 H24-25 年 度 は シ リ コ
ン 内 に ヒ 素 を 浅 く イ オ ン 注 入 し た 試 料 を 分 析 対 象 と し た 。シ リ コ ン は 真 性 半 導 体 と な
るが、最外殻電子数が一つ多いヒ素をドープすると電子がキャリアとなる n 型半導
体 に な る 。p-n 接 合 な ど を 形 成 す る た め に 、イ オ ン 注 入 法 が 用 い ら れ て い る が 、半 導
体 と し て の 性 質 は 注 入 量 や 濃 度 に よ っ て 変 化 す る た め 、注 入 し た ヒ 素 の 分 布 を 正 確 に
精度よく評価する必要がある。特に集積度の向上とともに注入されるヒ素の深さは、
益々浅くなり分析は難しくなってきている。
- 6 -
こ こ で は 、こ の 分 析 対 象 試 料 を SIMS に よ り 評 価 す る た め に 必 要 な 、深 さ の 物 差 し
と し て 深 さ 標 準 試 料 と し て 機 能 と 、不 純 物 濃 度 を 較 正 す る た め の 濃 度 標 準 試 料 と し て
の 機 能 を あ わ せ 持 っ た 標 準 試 料 の 開 発 を 目 的 と す る 。 不 純 物 と し て H24 年 度 と H25
年 度 は ヒ 素 を 用 い 、 H26 年 度 は ボ ロ ン を 用 い た 。
電子エネルギー損失分光法(EELS)分析
EELS について
ナ ノ テ ク ノ ロ ジ ー や エ ネ ル ギ ー 技 術 に 関 連 し た 物 質 研 究・材 料 開 発 で は 、原 子 レ ベ
ル の 構 造 を 制 御 し 新 た な 物 性 や 機 能 、及 び そ の 発 現 メ カ ニ ズ ム の 解 明 が 要 求 さ れ て い
る 。 電 子 エ ネ ル ギ ー 損 失 分 光 法 (EELS: Electron Energy-Loss Spectroscopy)は エ ネ
ル ギ ー 分 散 型 X 線 分 光 法 (EDS: Energy Dispersion X-ray Spectroscopy)と 並 ん で 、
最 も 広 く 普 及 し て い る 電 子 顕 微 鏡 を 用 い た 局 所 分 析 手 法 で あ る 1)。近 年 は 検 出 器 の 性
能 向 上 に 加 え 、0.3eV 程 度 の エ ネ ル ギ ー 分 散 を 実 現 で き る 冷 陰 極 電 界 放 射 型 電 子 銃 の
普 及 、さ ら に 高 い エ ネ ル ギ ー 分 解 能 に 向 け て 開 発 さ れ た モ ノ ク ロ メ ー タ で は 0.1eV 以
下 の エ ネ ル ギ ー 分 散 も 実 現 さ れ て い る 2)。EELS ス ペ ク ト ル の 一 部 を 選 択 し て 結 像 す
る エ ネ ル ギ ー ・ フ ィ ル タ ー 装 置 が TEM に 組 み 込 ま れ 、 EELS は 元 素 マ ッ ピ ン グ や 電
子 回 折 パ タ ー ン の バ ッ ク グ ラ ウ ン ド 除 去 に も 応 用 さ れ る よ う に な っ て い る 3),4)。 解
析 技 術 面 で は 統 計 解 析 の 一 種 で あ る 多 変 量 ス ペ ク ト ル 分 解 法 (MCR: Multivariate
Curve Resolution)や 主 成 分 分 析 法 (PCA: Principal Component Analysis)を 用 い た 手
法 に よ り 、微 弱 な ス ペ ク ト ル や わ ず か な ケ ミ カ ル シ フ ト を 顕 在 化 さ せ る 手 法 が 開 発 さ
れ て い る 5)。 こ の よ う な ハ ー ド ・ ソ フ ト
両 面 の 技 術 開 発 に よ り EELS は 高 い 空 間
分解能で元素分析や化学結合状態、電子
状態の解析が可能となり、物質・材料の
研究開発には不可欠な計測手段となって
いる。
電子の非弾性散乱と EELS の原理
TEM 試 料 に 入 射 し た 電 子 は 試 料 と
相互作用せずに透過した電子、エネル
ギー損失を伴わない弾性散乱電子、及
び物質と相互作用した結果エネルギー
を失った非弾性散乱電子に分類できる
( 図 2 .1 -1 ) 。
図 2 .2 -1 入 射 電 子 の 散 乱 過 程
- 7 -
このうち非弾性散乱現象に注目し、エネルギー損失を生じた電子を分光した
も の が EE L S で あ る 。入 射 電 子 が エ ネ ル ギ ー 損 失 を 起 こ す 過 程 に は 様 々 あ る が 、
代 表 的 な も の を 表 2 .2 -1 に 示 す 。
表 2 .2 -1 入 射 電 子 の エ ネ ル ギ ー 損 失 過 程
励起現象
現象
損失エネルギー
a
フォノン励起
格子振動による散乱
~ 0 .1 e V 以 下
b
プラズモン励起
価電子の集団励起
~ 30eV
c
バンド間遷移
価電子帯と伝導帯間の
~ 10eV 以 下
遷移
d
コア励起
内殻電位の励起
~ 13eV 以 上
e
二次電子励起
自由電子の励起
~ 50eV 以 下 の バ ッ ク
グラウンド
f
連続 X 線放出
制動放射
バックグラウンド
図 2 .2 -2 は 酸 化 鉄 の
粒 子 を EELS 分 析 し て
得られた典型的なエ
ネルギー損失スペク
ト ル を 示 す 。エ ネ ル ギ
ー損失スペクトルの
左端にはゼロ・ロス
(Z e r o l o s s ) と 呼 ば れ る
エネルギー損失がな
く入射電子のエネル
ギーを持つ電子のシ
ャープで強いピーク
が現れている。
図 2 .2 -2 酸 化 鉄 の E E L S ス ペ ク ト ル 例
Zero loss ピ ー ク よ り 高 エ ネ ル ギ ー 側 に は プ ラ ズ モ ン 励 起 に 伴 い エ ネ ル ギ ー
を 損 失 し た 電 子 の ピ ー ク (l o w l o s s ) が 現 れ て い る 。 続 い て 酸 素 や 鉄 、 試 料 の 支
持 膜 材 料 で あ る 炭 素 の 内 殻 電 子 励 起 に 伴 う エ ネ ル ギ ー 損 失 ピ ー ク (c o r e l o s s )が
観 察 さ れ る 。 こ の よ う に 表 2 .2 -1 の (b ) と (d ) の エ ネ ル ギ ー 損 失 過 程 は ス ペ ク ト
ル に 明 瞭 な ピ ー ク を 形 成 し 、そ の エ ネ ル ギ ー 値 や 強 度 分 布 を 用 い て 、元 素 の 同
定 や 組 成 ・ 化 学 結 合 状 態 の 分 析 が で き る 。 更 に core loss ピ ー ク の 高 エ ネ ル ギ
- 8 -
ー 側 に 広 が る ス ペ ク ト ル は 吸 収 端 微 細 構 造 を 呼 ば れ 精 密 に 解 析 す れ ば 、そ の 物
質 構 造 の 電 子 状 態 が 得 ら れ る 。(c ) は エ ネ ル ギ ー 損 失 ス ペ ク ト ル に 明 瞭 な ピ ー ク
は 示 さ な い が l o w l o s s 側 の ス ペ ク ト ル に 影 響 を 及 ぼ す 。 (a ) の フ ォ ノ ン 励 起 の
検 出 に は 非 常 に エ ネ ル ギ ー 分 解 能 の 高 い 測 定 が 必 要 で あ る 。そ の 精 度 は 汎 用 的
な 電 子 源 の 電 子 エ ネ ル ギ ー の 揺 ら ぎ 幅 (0 . 5 ~ 1 .0 e V ) で は 検 出 で き ず 、 モ ノ ク ロ
メ ー タ 等 に よ り 単 色 化 さ れ た 電 子 源 (0 .1 e V 以 下 ) を 必 要 と す る 。ま た (e ) ,( f )は 特
に 顕 著 な ピ ー ク を 持 た ず ス ペ ク ト ル の バ ッ ク グ ラ ウ ン ド を 形 成 し 、一 般 的 に は
有用な分析情報は含まれていない
EELS の分光器
エネルギー分散
電 子 が 速 度 𝑣𝑣で 運 動 し な が ら 均 一 な 強 度 B の 磁 場 に 入 射 す る と 、 こ の 電 子 は
運 動 方 向 と 直 角 に ロ ー レ ン ツ 力 を 受 け て 円 運 動 を す る 。 こ の 円 の 半 径 は (1 ) 式
で与えられる。
𝑅𝑅 =
𝛽𝛽𝑚𝑚 𝑚𝑚0
𝑒𝑒𝑩𝑩
𝑣𝑣
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ (1 )
𝑚𝑚0 : 電 子 の 静 止 質 量
𝛽𝛽𝑚𝑚 =
1
𝑣𝑣
𝑐𝑐
�1−� �
2
𝑐𝑐: 光 速
式 (1 ) に よ る と 磁 界 の 強 さ B が 一 定 で あ れ ば 電 子 の 軌 道 半 径 R は 電 子 の 速 度 𝑣𝑣 だ
け に 依 存 す る こ と が 分 か る 。様 々 な 速 度 を 持 つ 電 子 が 混 在 し て い れ ば 、そ れ ぞ
れの速度に応じて軌道半径が異なり電子の速度を分析することができる。
ところで電子の運動エネルギーは
𝐸𝐸 = (𝛽𝛽𝑚𝑚 − 1)𝑚𝑚0 𝑐𝑐 2
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ (2 )
で 表 さ れ 電 子 の 速 度 と 運 動 エ ネ ル ギ ー は 一 義 的 に 対 応 し て い る 。し た が っ て 均
一 な 磁 界 を 持 つ 電 磁 石 ( 分 光 器 : s p e c tr o m e te r ) に 様 々 な エ ネ ル ギ ー を 持 つ 電 子
が 入 射 す る と エ ネ ル ギ ー 分 散 が 得 ら れ 、そ の エ ネ ル ギ ー 値 に 対 す る 電 子 数 の 変
化 の 度 合 い 、即 ち エ ネ ル ギ ー ス ペ ク ト ル が 得 ら れ る こ と に な る 。こ の よ う に ス
ペクトロメータを用いることにより試料内で様々なエネルギー損失を生じた
電子のエネルギー分析ができる。
- 9 -
スペクトロメータの光学系
スペクトロメータは光の波長を分散するプリズムと同様のエネルギー分散
作 用 を 持 つ 為 、 磁 界 型 プ リ ズ ム と も 呼 ば れ る 。 ス ペ ク ト ロ メ ー タ は TEM に 使
わ れ る 電 子 レ ン ズ の よ う な 回 転 対 称 レ ン ズ と 構 造 的 に は 異 な っ て い る が 、レ ン
ズ 作 用 の 光 学 特 性 に お い て は 類 似 点 も 多 い 。図 2 .2 -3 に ス ペ ク ト ロ メ ー タ に お
け る 電 子 の 軌 道 を 模 式 的 に 示 す 。 実 線 で 示 す zero loss に 対 し て 点 線 で 示 す エ
ネ ル ギ ー を 損 失 し た 電 子 は 、よ り 小 さ な 半 径 で 軌 道 が 曲 げ ら れ 、そ の 出 射 面 で
焦 点 を 結 ぶ 。 入 射 電 子 の 曲 が る 軌 道 の 角 度 は 偏 向 角 ( Φ )と 呼 ば れ 、 一 般 的 に は
設 計 上 の 容 易 さ か ら Φ =9 0 ° が 採 用 さ れ る こ と が 多 い 。 ス ペ ク ト ロ メ ー タ の 光
学系は点光源入射/点結像と考えられ、凸レンズ型磁界レンズと同様である。
点 光 源 は ス ペ ク ト ロ メ ー タ の 入 射 点 と も 呼 ば れ 、 通 常 TEM の 投 影 レ ン ズ の ク
ロスオーバー・ポイントに置かれている。
エ ネ ル ギ ー 分 解 能 は ス ペ ク ト ロ メ ー タ の 重 要 な 特 性 で あ る が 、レ ン ズ 作 用 の 光
学 特 性 に 影 響 を 受 け る 。結 像 点 は 入 射 電 子 に エ ネ ル ギ ー 幅 が あ れ ば エ ネ ル ギ ー
分 散 面 と な り 、 こ こ に ス ペ ク ト ル が 結 像 さ れ る ( 図 2 .2 -3 ) 。 入 射 点 の ス ポ ッ ト
サ イ ズ 𝑑𝑑0 が 大 き く な れ ば 結 像 点 の ス ポ ッ ト サ イ ズ 𝑑𝑑0 ’ も 大 き く な り エ ネ ル ギ ー
分 解 能 が 低 下 す る 。ま た ス ペ ク ト ロ メ ー タ に 入 射 す る 電 子 の 開 き 角 ( γ )が 大 き
く な る と ス ペ ク ト ロ メ ー タ の 2 次 収 差 が 増 大 し 、電 磁 レ ン ズ の 球 面 収 差 と 同 様
に エ ネ ル ギ ー 分 解 能 が 低 下 す る 。こ の 2 次 収 差 を 補 正 す る た め に 、一 般 に ス ペ
ク ト ロ メ ー タ の 入 射 面 と 出 射 面 に は 曲 率 を 設 け て い る が 、入 射 角 が 大 き い 領 域
ま で 2 次 収 差 を 完 全 に 補 正 す る の は 容 易 で は な い 。近 年 で は ス ペ ク ト ロ メ ー タ
の後段に 4 極子や 8 極子の多極子レンズを組み合わせて 3 次の収差までの補正
が実現している。
図 2 .2 -3 ス ペ ク ト ロ メ ー タ と 電 子 軌 道 の 模 式 図
- 10 -
スペクトルの検出
スペクトロメータが開発された当初は、スペクトルの結像面に電子線フィル
ム を 置 い て 撮 影 す る 方 式 が 採 用 さ れ て い た 。但 し 写 真 フ ィ ル ム は 感 度 が 低 く 強
度 の 弱 い ス ペ ク ト ル が 検 出 で き な い こ と と 、ス ペ ク ト ル の プ ロ フ ァ イ ル を デ ジ
タ ル 化 で き な い 欠 点 が あ っ た た め 、1 9 7 0 年 代 頃 か ら 蛍 光 体 (シ ン チ レ ー タ ) と 光
電 子 倍 増 管 (P M T: P h o to M u l ti p l i e r ) に よ る 検 出 器 が 採 用 さ れ る よ う に な る 。
PMT は 1 次 元 の 検 出 器 で あ る た め 、 エ ネ ル ギ ー 分 散 面 に 置 い た ス リ ッ ト を 機
械 的 に 動 か し て エ ネ ル ギ ー 軸 を 時 系 列 的 に 変 化 さ せ 、ス リ ッ ト 透 過 し た 信 号 強
度 を 記 録 し た 。こ の 方 式 は シ リ ア ル E E L S と 呼 ば れ 検 出 効 率 が 低 い 。こ の 欠 点
を 改 善 す る た め 、 1990 年 代 か ら は エ ネ ル ギ ー 分 散 面 に 並 列 型 検 出 器 を 配 置 す
る パ ラ レ ル E E L S が 開 発 さ れ た 。 最 近 の パ ラ レ ル 検 出 器 は 、 蛍 光 体 (YA G) と フ
ァ イ バ ー プ レ ー ト で つ な が れ た 半 導 体 2 次 元 検 出 器 で あ る C C D (C h a r g e
C o u p l e d De vi c e ) カ メ ラ か ら 構 成 さ れ て お り 、 4 0 9 6 チ ャ ン ネ ル の 信 号 を
1 0 0 0 fp s で 同 時 に 取 得 す る こ と が で き る 。 但 し C C D カ メ ラ の ダ イ ナ ミ ッ ク レ
ン ジ は 比 較 的 狭 い 為 、 ze r o l o s s 近 く に あ る 強 度 の 弱 い プ ラ ズ モ ン ・ ピ ー ク や
内 殻 励 起 の ピ ー ク を 同 一 の ス ペ ク ト ル と し て 取 り 込 め な い 場 合 も あ る 。今 後 は
C M OS イ メ ー ジ セ ン サ ー を 用 い た ダ イ レ ク ト デ ィ テ ク シ ョ ン カ メ ラ 等 の 採 用
が期待される。
エネルギー分解能
EELS の エ ネ ル ギ ー 分 解 能 は 元 素 同
定 や マ ッ ピ ン グ に 加 え て 、化 学 結 合 状
態や電子状態の分析精度を決定づけ
る性能となる。
図 2 .2 -4 は 加 速 電 圧 3 0 0 k V の 冷 陰
極 電 界 放 出 型 電 子 銃 の zero loss 強 度
分 布 で あ り 、そ の 半 値 幅 で 定 義 さ れ る
エ ネ ル ギ ー 分 解 能 は 0 .2 7 e V で あ る 。
通 常 の 加 速 電 圧 3 0 0 K V の T E M -E E L S
の エ ネ ル ギ ー 分 解 能 は 0.3~ 1eV 程 度
である。
図 2 .2 -4 C o ld -F EG の エ ネ ル ギ ー 分 解 能
こ の エ ネ ル ギ ー 分 解 能 は 2 .2 .3 .2 で 述 べ た ス ペ ク ト ロ メ ー タ 固 有 の エ ネ ル
ギ ー 分 解 能 と 電 子 源 か ら 放 出 さ れ た 電 子 の エ ネ ル ギ ー の 広 が り の c o n vo l u ti o n
に よ っ て 与 え ら れ る 。通 常 、高 エ ネ ル ギ ー 側 の 内 殻 電 子 励 起 ス ペ ク ト ル を 測 定
- 11 -
す る 場 合 に は 、強 い 入 射 電 子 線 強 度 を 必 要 と す る 為 、高 い プ ロ ー ブ 電 流 の 電 子
線 を 収 束 さ せ る 。こ れ に よ り 電 子 の エ ネ ル ギ ー 幅 と 収 差 が 増 加 し 、冷 陰 極 電 界
放 出 型 電 子 銃 を 用 い て も E E L S の エ ネ ル ギ ー 分 解 能 は 0 .5 ~ 0 . 8 e V と な る 。 な
お 最 近 、 モ ノ ク ロ メ ー タ を 用 い た 電 子 源 が 開 発 さ れ て お り 、 zero loss の 半 値
幅 で 1 2 ~ 3 0 me V の エ ネ ル ギ ー 分 解 能 も 示 さ れ て い る
6)
。
外乱の影響とその補正
加 速 電 圧 200kV の TEM で 1eV の エ ネ ル ギ ー 分 解 能 を 得 よ う と す る 場 合 、
このエネルギー分解能の加速電圧に対する相対分解能は
δ =
1
= 5 × 10−6 = 5 𝑝𝑝𝑝𝑝𝑝𝑝
200,000
と な り ス ペ ク ト ロ メ ー タ 的 に は 高 い 磁 界 安 定 度 が 要 求 さ れ る 。外 部 磁 場 や 電 源
系 の 交 流 磁 場 が 外 乱 と し て 発 生 す れ ば 、こ れ ら は 全 て ス ペ ク ト ロ メ ー タ の 磁 場
変 動 と し て 作 用 し 、エ ネ ル ギ ー 分 解 能 低 下 の 原 因 と な る 。外 乱 磁 場 が 大 き い 場
合 に は ze r o l o s s ピ ー ク が 分 裂 し 、 ス ペ ク ト ロ メ ー タ か ら 出 力 さ れ る 元 素 信 号
の 微 細 構 造 が 失 わ れ る 。ス ペ ク ト ロ メ ー タ は 磁 気 シ ー ル ド ケ ー ス に 収 納 さ れ て
い る が 、さ ら に 積 極 的 な 磁 場 変 動 対 策 が 必 要 と さ れ る 。こ れ に は ス ペ ク ト ロ メ
ータの磁界に外乱磁場とは逆位相の変動磁場を補正用として加える方式が採
られる。
EELS のデータ処理
E E L S 信 号 が デ ジ タ ル 化 さ れ た 後 、様 々 な 数 値 解 析 手 法 の 適 用 が 可 能 に な っ
た 。 特 に 近 年 は 高 性 能 PC の 普 及 や ソ フ ト 技 術 の 進 展 に 助 け ら れ 、 EELS 信 号
を数値化処理する技術が開発されている。エネルギー分解能の改善には
2 .2 .3 .4 で も 述 べ た よ う に E E L S 測 定 結 果 は ス ペ ク ト ロ メ ー タ の 性 能 と 電 子 源
の エ ネ ル ギ ー 半 値 幅 の 広 が り の c o n v o l u ti o n と な っ て い る た め 、こ れ を デ コ ン
ボ リ ュ ー シ ョ ン す る ソ フ ト が 開 発 市 販 さ れ て い る 。こ こ で は E E L S デ ー タ か ら
ノイズを除去し有用なデータを抽出する手法を述べる。
E E L S ス ペ ク ト ル 1 本 当 た り の 信 号 量 は 少 な く 、通 常 の 測 定 で は 数 十 本 か ら
数 百 本 の ス ペ ク ト ル を 取 得 し て 重 ね 合 わ せ る こ と に よ り S /N 比 を 向 上 さ せ る 。
そ れ で も ノ イ ズ 成 分 は 残 り 微 弱 な 信 号 検 出 に は 妨 げ と な る 。こ の ノ イ ズ 成 分 を
数 値 解 析 的 に 除 去 す る 方 法 が 主 成 分 分 析 (P C A : P r i n c i p a l C o mp o n e n t
A n a l ys i s ) で あ る 。 P C A は 変 数 間 に 相 関 が あ る 元 の 測 定 値 を 、 直 交 回 転 を
用いて相関の無い主成分とよばれる値に変換する。結果は固有値の寄与
率として示され、寄与率の高い成分だけを用いてスペクトルを再構成す
ることによってノイズ成分が除去される。
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EELS の 測 定 結 果 は 試 料 の 厚 さ 方 向 の 実 体 構 造 や 試 料 中 の 電 子 線 の 広 が り
を 反 映 し て 様 々 な 組 成 分 布 、 濃 度 、 結 合 状 態 な ど が 含 ま れ て い る 。こ れ ら の 各
点 か ら の ス ペ ク ト ル は 、そ こ に 重 な っ て 存 在 す る 成 分 ・ 状 態 ・ 相 の 濃 度 や 結 合
状 態 に 応 じ た 強 度 で 重 み 付 け し た 純 成 分 ス ペ ク ト ル の 1 次 結 合 で あ る 。多 数 点
のスペクトルデータの集団に成分数を決めた上で交互最小二乗フィッティン
グ を 行 う と 、 成 分 ス ペ ク ト ル と 相 対 濃 度 、お よ び 統 計 ノ イ ズ が 分 離 で き る 。ま
たこの手法によれば結合状態の違いもスペクトルの別成分として分離される
ため、微小な信号やわずかなスペクトル形状の違いを顕在化できる。
これらの手法は「ケモメトリクス」として分析化学の一分野を形成している。
EELS のデータ処理
2 .2 .3 .1 で 示 し た よ う に エ ネ ル ギ ー 分 散 は 均 一 磁 場 内 で の 電 子 の 速 度 に 対 す
る 円 軌 道 の 半 径 に 対 応 し て い る 。し か し 一 方 で ス ペ ク ト ル 検 出 の 際 に は 、注 目
す る エ ネ ル ギ ー 領 域 を 検 出 器 (C C D) に 記 録 さ せ る た め 、ス ペ ク ト ロ メ ー タ の 磁
場 強 度 を 変 化 さ せ 軌 道 半 径 を 変 化 さ せ て い る 。ま た ス ペ ク ト ロ メ ー タ の 本 来 の
エ ネ ル ギ ー 分 散 能 は 1 μ m /e V 以 下 と C C D の 画 素 よ り 小 さ い 為 、ス ペ ク ト ル を
多 極 子 レ ン ズ で 拡 大 し て い る 。こ の た め エ ネ ル ギ ー の 損 失 の 絶 対 値 を ス ペ ク ト
ル か ら 読 み 取 る こ と は で き ず 、ス ペ ク ト ル は 相 対 的 な エ ネ ル ギ ー 損 失 値 を 示 し
て い る こ と に な る 。従 っ て 既 知 の エ ネ ル ギ ー 損 失 値 を も っ た 標 準 試 料 に よ っ て
エ ネ ル ギ ー 値 を 較 正 す る 必 要 が あ る 。ま た ス ペ ク ト ル の 実 測 で は エ ネ ル ギ ー 分
解 能 が 様 々 な 測 定 条 件 で 変 化 す る 為 、常 に エ ネ ル ギ ー 分 解 能 を 測 定 し て お く 必
要 が あ る 。さ ら に 、内 標 準 試 料 に よ っ て 特 定 ス ペ ク ト ル を 再 現 良 く 取 得 す る こ
と が で き れ ば 、同 一 装 置 内 に お け る 異 な る 試 料 や 視 野 で の よ り 詳 細 な 化 学 結 合
状態の分析が可能となる。
参考文献
1) 進 藤 大 輔 、 及 川 哲 夫 : " 材 料 評 価 の た め の 分 析 電 子 顕 微 鏡 法 ", 共 立 出
版 , (1 9 9 9 )
2 ) 向 井 雅 貴 他 : 顕 微 鏡 ,4 8 ( 2 ) ,p .1 2 8 -p . 1 3 2 , (2 0 1 3 )
3 ) 木 本 浩 司 : 電 子 顕 微 鏡 , 3 7 (1 ) , p . 1 3 - p . 1 6 , (2 0 0 2 )
4 ) 木 本 浩 司 : 電 子 顕 微 鏡 , 3 8 (2 ) , p . 11 8 -p .1 2 2 , (2 0 0 3 )
5 ) S .M u to , T. Yo s h i d a , K .Ta ts u mi : M a te r Tr a n s . ,5 0 ,p 9 6 4 -p .9 6 9 , (2 0 0 9 )
6 ) O .L .K r i va n e k , T. C .L o ve j o y, N . De l l b y a n d R . W.C a e p e n t e r :
M i c r o s c o p y,6 2 . p .2 -2 1 (2 0 1 3 )
- 13 -
- 14 -
第 3 章 EELS エネルギー分解能評価のための
エネルギー軸校正と標準試料の開発
EELS エネルギー分解能評価用のエネルギー軸較正と標準試料の開発
エネルギー軸キャリブレーションと標準試料の開発
はじめに
TEM は 試 料 の 二 次 元 平 面 方 向 に 極 め て 高 い 空 間 分 解 能 を 持 つ 観 察 方 法 で あ
る 。 組 成 分 析 法 の E E L S(電 子 エ ネ ル ギ ー 損 失 分 光 法 ) を 組 み あ わ せ る こ と に よ
り、観察試料の元素配置構造を原子レベルで解析できるポテンシャルを持つ。
E E L S で の 分 析 時 や 分 析 結 果 か ら 情 報 を 引 き 出 す 際 に は 、測 定 さ れ た 条 件 と
し て エ ネ ル ギ ー 分 解 能 を 記 録 し て お く こ と が 重 要 で あ り 、E E L S の 分 析 手 法 の
基礎としてエネルギー分解能の測定がまず基本になるといっても過言ではな
い 。第 2 章 の E E L S の 概 要 で 述 べ ら れ て い る よ う に 、E E L S 装 置 で は 、 エ ネ ル
ギ ー 軸 が 相 対 値 で あ り 、正 確 な エ ネ ル ギ ー を 求 め る た め に は 、エ ネ ル ギ ー 軸 の
較 正 が 必 要 で あ る 。 し か し な が ら 、 本 事 業 を 開 始 し た 平 成 24 年 度 時 点 で は 、
こ の エ ネ ル ギ ー 軸 較 正 に 必 要 な 標 準 試 料 ( 標 準 エ ネ ル ギ ー 値 )や そ れ を 用 い た 校
正方法が明確になっていなかった。
本 事 業 で は 、そ の 目 標 と し て エ ネ ル ギ ー 分 解 能 評 価 方 法 に つ い て 測 定 手 順 の
規 格 化 に 資 す る 案 を 作 成 す る こ と と し た 。3 年 間 の 活 動 の 結 果 エ ネ ル ギ ー 軸 較
正 に 必 要 な 標 準 試 料 と そ の 測 定 方 法 を 確 立 し た 。 国 際 標 準 化 組 織
I SO /T C 2 0 2 / SC 3 で は 分 析 電 子 顕 微 鏡 に お け る I SO 化 活 動 を 行 っ て お り 、 本 調
査活動で得られた成果もその活動に貢献できる。
エネルギー軸較正に必要な試料の条件
エネルギー分解能は、第 2 章 に記載されているように、ゼロロスの半値幅
で 定 義 さ れ て お り 、 現 在 の 汎 用 型 透 過 電 子 顕 微 鏡 で は 、熱 電 子 銃 型 の 場 合 1 . 0
~ 2 .0 e V 、 シ ョ ッ ト キ ー 型 電 界 放 出 電 子 銃 で 0 .7 ~ 1 .0 e V 、 冷 陰 極 型 電 界 放 出
電 子 銃 で 0 .3 ~ 0 .5 e V レ ベ ル に 達 し て い る 。近 い 将 来 、モ ノ ク ロ メ ー タ な ど の
普 及 に よ り 、さ ら に エ ネ ル ギ ー 分 解 能 は 向 上 し 、0 .1 e V 程 度 が 実 用 化 さ れ る こ
とも期待されている。
一 方 、汎 用 の 商 品 機 の E E L S ス ペ ク ト ロ メ ー タ の 検 出 器 は 、2 0 4 8 画 素 (p i xe l )
の C C D 素 子 が 採 用 さ れ 、エ ネ ル ギ ー 軸 の 幅 は 、エ ネ ル ギ ー 分 散 ( ス ペ ク ト ル の
倍 率 )で 決 ま っ て く る 。例 え ば 、エ ネ ル ギ ー 分 解 能 0 .3 e V 程 度 を 測 定 す る た め
に は 、 ス ペ ク ト ル の サ ン プ リ ン グ ・ ピ ッ チ と し て 0 .0 2 e V /p i xe l 程 度 の 分 解 能
が必要になって来る。この場合、スペクトルの検出できる幅は、
0 .0 2 (e V /p i x) x 2 0 4 8 (p i x) = 4 0 .9 6 e V
と な り 、 40 eV 以 下 の エ ネ ル ギ ー 値 を も つ 標 準 試 料 が 必 要 に な る 。
- 15 -
一 方 で 、標 準 試 料 と し て 広 く 普 及 さ せ る た め に 、試 料 の 物 質 は 次 の よ う な 条 件
を満たさなくてはならない。
a ) 安 全 な 物 質 あ る こ と (毒 性 、 放 射 性 、 揮 発 性 な ど が な い こ と )
b ) 安 定 で あ る こ と (経 年 変 化 や 酸 化 、 化 学 変 化 が 生 じ な い こ と )
c) 安 価 で 普 遍 的 に 入 手 で き る 物 質 で あ る こ と
以 上 の 条 件 を 考 慮 し 、 H2 4 -2 5 年 度 は 、 窒 化 ホ ウ 素 (B o r o n n i t r i d e )の プ ラ ズ モ
ン ・ ロ ス (π -π * ) の ピ ー ク 値 を 標 準 エ ネ ル ギ ー 値 と し て 選 定 し た 。H 2 6 年 度 は 実
用材料を内部標準とする方法を探索した。
窒化ホウ素とグラファイトによるキャリブレーション方法
第一次較正
六 方 晶 窒 化 ホ ウ 素 (B N )の プ ラ ズ モ ン ・ ロ ス ( π- π* )の ピ ー ク 値 は 、文 献 に よ っ
て も 値 に 食 い 違 い が あ り 8 .0 – 9 .0 e V と 、 定 説 値 が 決 ま っ て い な い の が 実 情
である。そこでこの値を決める必要が生じた。第 2 章 で述べられているよう
に EELS で は エ ネ ル ギ ー の 絶 対 値 が 決 め ら れ な い の で 、 XPS の 手 助 け を 借 り
て、元素の K 殻の束縛エネルギーを基準にしてエネルギー軸の第一次較正を
計 画 し た 。B N は 誘 電 体 で 帯 電 す る た め 、X P S で の 正 確 な 測 定 に 向 か な い た め 、
BN と 構 造 が 似 て い る グ ラ フ ァ イ ト の K 殻 の 束 縛 エ ネ ル ギ ー を XPS で 測 定 し
て、これを第一次較正に使用することにした。
グ ラ フ ァ イ ト に は 、天 然 で 最 も 結 晶 性 が 良 く 、安 定 と 言 わ れ て い る マ ダ ガ ス
カ ル 産 天 然 グ ラ フ ァ イ ト を 使 用 し た 。 X P S に よ る 測 定 は 、 I S O1 5 4 7 2 (2 0 0 1 ) に
準 じ て 較 正 さ れ た J P S-9 2 0 0 (J E OL 製 )で 行 わ れ 、そ の 結 果 か ら グ ラ フ ァ イ ト の
炭 素 の K 殻 の 束 縛 エ ネ ル ギ ー が 2 8 4 .5 e V と 求 め ら れ た 。
第二次較正
第 二 次 較 正 を 目 的 と し て H2 4 年 度 に ラ ウ ン ド ロ ビ ン テ ス ト を 実 施 し た 。 そ
の 際 、各 ピ ー ク の 位 置 を 明 確 に 求 め る た め 、ゼ ロ ロ ス ピ ー ク が 飽 和 し な い 条 件
で コ ア ロ ス を 測 定 す る よ う 測 定 手 順 を 定 め た 。こ の 方 法 に よ っ て 得 ら れ た 結 果
から、以下のような知見が得られた。

測 定 さ れ た ピ ー ク ,吸 収 端 エ ネ ル ギ ー 値 に 大 き く ば ら つ き が 見 ら れ た
も の が あ っ た 。グ ラ フ ァ イ ト の ( π -π* )プ ラ ズ モ ン・ピ ー ク 値 で 約 2 0 %
の最も大きいばらつきが見られた。
このようなばらつきがみられた要因として,

長 時 間 積 算 す る 必 要 が 生 じ ,ゼ ロ ロ ス ピ ー ク 位 置 が 経 時 変 化 し 、そ の
- 16 -
結 果 積 算 ピ ー ク が ブ ロ ー ド に な っ て し ま い 、読 み 取 り 誤 差 が 生 じ た 可
能性がある。

各 エ ネ ル ギ ー 端 ,お よ び 各 ピ ー ク 測 定 で 、十 分 な S /N 比 が と れ て い な
い可能性がある。
ということが考察された。
H2 5 年 度 に は ラ ウ ン ド ロ ビ ン テ ス ト 実 施 方 法 を 検 討 す る に 当 た り 、各 エ ネ ル
ギ ー 端 お よ び ピ ー ク の S/ N 比 を で き る だ け 大 き く と っ て 取 得 す る こ と が で き
るように測定手順を改めた。そして測定値のばらつき抑制の効果を検証した。
標準試料と測定
本 来 の 窒 化 ホ ウ 素 の エ ネ ル ギ ー 値 を 決 め る た め に 、第 一 次 較 正 さ れ た 天 然 グ
ラ フ ァ イ ト と 窒 化 ホ ウ 素 を 同 一 の TEM 用 試 料 グ リ ッ ド に 分 散 さ せ 、 C-K 吸 収
端 、 B-K 吸 収 端 、 N-K 吸 収 端 、 プ ラ ズ モ ン ロ ス の ピ ー ク な ど を 較 正 す る 。
標準試料
<標準試料>: グラファイト
窒化ホウ素
非 晶 質 カ ー ボ ン (T E M 用 試 料 作 製 : 日 本 電 子 )
図 3 .2 -1 標 準 試 料 の 分 布 (T E M 像 )
- 17 -
測定
測定に際して、以下で述べる測定条件を記載することを必須とした。
<測 定 条 件 >
1 電子顕微鏡側設定条件
加 速 電 圧 / kV:
像 観 察 モ ー ド ( 例 : T E M / ST E M ):
ビ ー ム 径 ( 照 射 領 域 の 大 き さ ):
ビ ー ム の 収 束 角 (α ) / m r a d :
2 EELS 設 定 条 件
ス ペ ク ト ロ メ ー タ 入 射 絞 り 径 / m m:
エ ネ ル ギ ー 分 散 / (e V / C H ):
取り込み時間 / s × 積算回数 / 回 :
3 測定目標ピーク、吸収端


プラズモン・ピーク

グ ラ フ ァ イ ト イ ン タ ー バ ン ド (π -π * )

グ ラ フ ァ イ ト (π +σ )

ア モ ル フ ァ ス カ ー ボ ン ( π+ σ )

窒 化 ホ ウ 素 イ ン タ ー バ ン ド ( π- π* )
吸収端

ア モ ル フ ァ ス カ ー ボ ン : C-K 吸 収 端

窒 化 ホ ウ 素 : B-K 吸 収 端

窒 化 ホ ウ 素 : N -K 吸 収 端
測 定 結 果 一 覧 ( 単 位 : e V )を 下 表 に て 作 成 す る 。
表 3 .2 -1 測 定 結 果 一 覧
試料
ゼロロス
プラズモンロス
ピーク
ピーク
試 料 無 (分 解 能 )
グラファイト
--
--
--
π- π*
π+σ
--
エネルギー吸収端
--
--
--
C -K
<2 8 4 .5 >
アモルファス
--
π+σ
C -K
カーボン
窒化ホウ素
π- π*
--
- 18 -
B -K
N -K
実用的内な部標準試料の検討
マイクログリッドカーボンの内部標準化の検討
2 .2 .5 で 述 べ た よ う に 、 E E L S 測 定 に お い て ス ペ ク ト ル は 相 対 的 な エ ネ ル ギ
ー 損 失 値 を 示 し て お り 、ケ ミ カ ル シ フ ト か ら 化 学 結 合 状 態 を 分 析 す る 際 に は 基
準 と な る ス ペ ク ト ル( 内 部 標 準 )が 必 要 と な る 。H2 5 度 ま で に 使 用 し て い た 窒
化 ホ ウ 素 ( B o r o n n i tr i d e ) や グ ラ フ ァ イ ト は 安 定 性 に 優 れ て い る も の の 、 日
常 の 測 定 に 使 用 す る 内 部 標 準 試 料 と し て は 入 手 性 が 低 い 。ま た 、結 晶 質 で あ る
ため電子線を入射する方位によってスペクトル位置が変化する可能性がある
こ と も 懸 念 点 と し て 挙 げ ら れ る 。 そ こ で H2 6 年 度 の 活 動 に お い て は 入 手 性 が
高 く 、 非 晶 質 で あ る マ イ ク ロ グ リ ッ ド カ ー ボ ン を 選 択 し 、 カ ー ボ ン の C-K 吸
収 端 の ピ ー ク 位 置 を 内 部 標 準 エ ネ ル ギ ー 値 と し て 選 定 し た 。ラ ウ ン ド ロ ビ ン テ
ス ト で は 同 一 装 置 内 で 複 数 の メ ー カ 品 の 差 を 比 較 し 、内 部 標 準 化 の 検 討 を 行 っ
た。
マイクログリッドを用いたラウンドロビンテストの測定
H2 6 年 度 の ラ ウ ン ド ロ ビ ン テ ス ト と し て 、3 メ ー カ の マ イ ク ロ グ リ ッ ド カ ー
ボ ン を 同 一 装 置 内 で 測 定 し 、 カ ー ボ ン C-K 吸 収 端 の ピ ー ク 位 置 を 比 較 し た 。
以下、その手順について記す。
カ ー ボ ン C - K 吸 収 端 の ピ ー ク S /N 比 を で き る だ け 大 き く と っ て 取 得 で き る
よ う に ゼ ロ ロ ス - プ ラ ズ モ ン ロ ス と プ ラ ズ モ ン ロ ス - カ ー ボ ン C -K 吸 収 端 を そ
れ ぞ れ 分 け て 取 得 し 、そ れ ら の ピ ー ク 間 チ ャ ン ネ ル 数 を 足 し 合 わ せ 比 較 を 行 う 。
内部標準試料として以下のものを選定した。
(a ) マ イ ク ロ グ リ ッ ド カ ー ボ ン ( A 社 )
- 19 -
(b ) マ イ ク ロ グ リ ッ ド カ ー ボ ン ( B 社
)
(c )マ イ ク ロ グ リ ッ ド カ ー ボ ン ( C 社 )
図 3 .3 -1 内 標 準 試 料 の T E M 像
また、次のような測定条件を記載することにした。
<測定条件>
1. 電 子 顕 微 鏡 側 設 定 条 件
加 速 電 圧 ( k V ):
像 観 察 モ ー ド ( 例 : T E M /ST E M )
ビーム径(照射領域の大きさ)
2. EELS 設 定 条 件
ス ペ ク ト ロ メ ー タ ー 入 射 絞 り 径 /mm:
エ ネ ル ギ ー 分 散 / ( e V /c h ):
取 り 込 み 時 間 /s × 積 算 回 数 / ( 回 ):
3. 測 定 目 標 ピ ー ク 、 エ ッ ジ
カーボンのプラズモンロスピーク
カ ー ボ ン の C -K 吸 収 端
- 20 -
ラウンドロビンテストの結果
ラ ウ ン ド ロ ビ ン テ ス ト に は 5 機 関 が 参 画 し た 。各 機 関 か ら 提 出 さ れ た 結 果 か
ら 、 ゼ ロ ロ ス ピ ー ク - プ ラ ズ モ ン ロ ス ピ ー ク 間 、 プ ラ ズ モ ン ロ ス ピ ー ク -C -K 吸
収 端 間 、 ゼ ロ ロ ス ピ ー ク -C -K 吸 収 端 間 の チ ャ ン ネ ル 数 お よ び 各 機 関 内 に お け
る 試 料 間 の 最 大 値 と 最 小 値 の 差 を 示 す 。 表 中 の A ~E は ラ ウ ン ド ロ ビ ン テ ス ト
実施機関を示す。
表 3.3-1 ゼ ロ ロ ス ピ ー ク -プ ラ ズ モ ン ロ ス ピ ー ク 間 チ ャ ン ネ ル 数 ( 単 位 : ch)
試料/
ゼロロスピーク – プラズモンロスピーク間
チャンネル数
A
B
C
D
E
日本電子
9 5 .4 3
9 8 .8 6
9 6 .5 7
4 7 .6 0
9 7 .0 0
ST E M
8 9 .4 3
9 3 .4 3
8 7 .4 0
4 6 .2 0
8 9 .0 0
日 新 EM
8 8 .8 6
9 2 .5 7
9 1 .3 0
4 7 .2 0
9 1 .0 0
最 大 -最 小
6 .5 7
6 .2 9
9 .1 7
1 .4 0
8 .0 0
表 3 .3 -2 プ ラ ズ モ ン ロ ス ピ ー ク -C - K 吸 収 端 間 チ ャ ン ネ ル 数 ( 単 位 : c h )
試料/
プ ラ ズ モ ン ロ ス ピ ー ク 間 – C -K 吸 収 端 間
チャンネル数
A
B
C
D
E
日本電子
1 0 3 0 .7 1
1 0 3 0 .7 1
1 0 1 8 .2 9
518.40
1 0 2 5 .0 0
ST E M
1 0 3 7 .0 0
1 0 3 7 .0 0
1 0 2 6 .4 3
522.80
1 0 3 1 .0 0
日 新 EM
1 0 3 7 .4 3
1 0 3 6 .5 7
1 0 2 3 .2 9
519.80
1 0 3 0 .0 0
最 大 -最 小
6 .7 2
6 .2 9
8 .1 4
4 .4 0
6 .0 0
表 3 .3 -3 ゼ ロ ロ ス ピ ー ク -C -K 吸 収 端 間 チ ャ ン ネ ル 数 ( 単 位 : c h )
ゼ ロ ロ ス ピ ー ク – C-K 吸 収 端 間
試料/
チャンネル数
A
B
C
D
E
日本電子
1 1 2 6 .1 4
1 1 2 9 .5 7
1 1 1 4 .8 6
566.00
1 1 2 2 .0 0
ST E M
1 1 2 6 .4 3
1 1 3 0 .4 3
1 1 1 3 .8 6
569.00
1 1 2 0 .0 0
日 新 EM
1 1 2 6 .2 9
1 1 2 9 .1 4
1 1 1 4 .5 7
567.00
1 1 2 1 .0 0
最 大 -最 小
0 .2 9
1 .2 9
1 .0 0
3 .0 0
2 .0 0
表 3 .3 -4 エ ネ ル ギ ー 分 散 設 定 値 ( 単 位 : e V /c h )
実施機関
A
B
C
D
E
設 定 値 /eV
0 .2 5
0 .2 5
0 .2 5
0 .5
0 .2 5
- 21 -
マイクログリッドカーボン膜の実用可能性
表 3 .3 -1 ゼ ロ ロ ス ピ ー ク - プ ラ ズ モ ン ロ ス ピ ー ク 間 チ ャ ン ネ ル 数 に つ い て 、
各 機 関 で 試 料 間 の ば ら つ き が 目 立 っ た 。こ れ と 同 様 に 表 3 .3 - 2 プ ラ ズ モ ン ロ ス
ピ ー ク -C - K 吸 収 端 間 の チ ャ ン ネ ル 数 に お い て も 試 料 間 の ば ら つ き が 大 き か っ
た 。 し か し 、 表 3 .3 - 3 に 示 す ゼ ロ ロ ス ピ ー ク -C - K 吸 収 端 間 の チ ャ ン ネ ル 数 を
計 算 す る と 、試 料 間 の ば ら つ き は 非 常 に 小 さ く な っ て お り 、プ ラ ズ モ ン ロ ス ピ
ー ク 位 置 が 試 料 間 で 大 き く 異 な る こ と を 示 唆 し て い る 。こ の 原 因 は 測 定 を 行 っ
た カ ー ボ ン 膜 の 厚 み が 試 料 間 で 異 な っ て い る た め で あ る と 考 え ら れ 、例 え ば 表
3 .3 -1 の ゼ ロ ロ ス ピ ー ク - プ ラ ズ モ ン ロ ス ピ ー ク 間 チ ャ ン ネ ル 数 は 各 機 関 間 で
おおよその傾向が揃うという結果が得られている。
近 年 E E L S 分 光 器 も 目 覚 ま し い 発 展 を 遂 げ て お り 、高 速 シ ャ ッ タ ー を 用 い て
2 つのエ ネル ギー 領 域の ほぼ 同時 測定 が 可能 とな った 。こ の 機能 によ り、ゼロ
ロ ス ピ ー ク - プ ラ ズ モ ン ロ ス ピ ー ク 間 お よ び プ ラ ズ モ ン ロ ス ピ ー ク -C - K 吸 収 端
領 域 を 同 一 箇 所 で ほ ぼ 同 時 に 測 定 す る こ と が で き 、今 回 参 画 し た 4 機 関 が こ の
機 能 を 用 い て 測 定 を 行 っ て い る 。こ の 機 能 を 用 い る こ と で 厚 み の 差 に よ る プ ラ
ズ モ ン ロ ス ピ ー ク 位 置 の 変 化 に よ る 影 響 を 最 小 に 抑 え る こ と が で き 、4 機 関 で
の ゼ ロ ロ ス ピ ー ク -C - K 吸 収 端 の 試 料 間 の 差 は 平 均 で 1 .1 4 5 c h で あ り 、 エ ネ ル
ギ ー に 換 算 す る と 0 . 2 8 6 e V と い う 結 果 が 得 ら れ た 。現 在 の 汎 用 型 透 過 電 子 顕 微
鏡 の エ ネ ル ギ ー 分 解 能 が 冷 陰 極 型 電 界 放 出 電 子 銃 で 0 .3 -0 .5 e V で あ る こ と を 考
え る と 、今 回 得 ら れ た マ イ ク ロ グ リ ッ ド カ ー ボ ン 膜 の 試 料 間 に お け る ゼ ロ ロ ス
ピ ー ク -C -K 吸 収 端 の チ ャ ン ネ ル 数 の 差 は E E L S 測 定 の 再 現 性 を 得 る と い う 目
的に対して十分な結果であると考えられる。
- 22 -
表 3 .3 -5 E E L S 測 定 条 件 別 各 ピ ー ク 間 チ ャ ン ネ ル 数( 単 位 : c h 実 施 機 関 : C )
ゼロロス-
プラズモンロス
ゼロロス-
- C -K 吸 収 端 間
C -K 吸 収 端 間
92
1023
1115
92
1022
1114
93
1021
1114
88
1026
1114
96
1018
1114
平均
9 2 .2
1022
1 1 1 4 .2
標準偏差
2 .9
2 .9
0 .4
測 定 条 件 /チ ャ ン ネ ル 数
プラズモン
ロス間
測定時間の変更
( 50 回 積 算 )
測定時間の変更
( 100 回 積 算 )
測定時間の変更
( 200 回 積 算 )
ビームシャワーの実施
コンタミネーション上で
の実施
表 3 .3 -5 の 結 果 か ら 、各 条 件 間 を 比 較 す る と 、プ ラ ズ モ ン ロ ス ピ ー ク 位 置 が
動 い て い る も の の ゼ ロ ロ ス ピ ー ク -C -K 吸 収 端 間 の チ ャ ン ネ ル 数 は 概 ね 良 く 揃
っ て お り 、 こ の 範 囲 内 の 測 定 条 件 で あ れ ば C -K 吸 収 端 の ピ ー ク 位 置 に 影 響 を
及 ぼ さ な い と 考 え て 良 い 。ま た 、ビ ー ム シ ャ ワ ー 後 の 測 定 結 果 と コ ン タ ミ ネ ー
シ ョ ン 上 で の 測 定 結 果 か ら 、カ ー ボ ン 膜 の 厚 み が 増 す こ と で プ ラ ズ モ ン ロ ス ピ
ー ク が 高 エ ネ ル ギ ー 側 に シ フ ト す る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。マ イ ク ロ グ リ ッ ド カ
ー ボ ン 膜 と コ ン タ ミ ネ ー シ ョ ン( 主 と し て 炭 化 水 素 )の カ ー ボ ン は 厳 密 に は 化
学 結 合 状 態 が 異 な る は ず で あ る が 、C - K 吸 収 端 の ピ ー ク 位 置 に 変 化 を 与 え る も
の で は な い と 思 わ れ る 。な お 、こ の 測 定 は ラ ウ ン ド ロ ビ ン テ ス ト と は 異 な る 試
料 を 使 用 し て お り 測 定 し た 日 も 異 な る 。表 3 .3 -3 の 結 果( 機 関 C )と 比 較 す る
と ゼ ロ ロ ス ピ ー ク -C - K 吸 収 端 間 の 差 は 0 . 3 7 c h ( 0 .0 9 2 5 e V ) で あ っ た 。
- 23 -
ナノ粒子の内部標準化の検討
3 .2 .1 の ラ ウ ン ド ロ ビ ン テ ス ト 結 果 か ら 、 マ イ ク ロ グ リ ッ ド カ ー ボ ン の ゼ ロ
ロ ス ピ ー ク -C -K 吸 収 端 間 の チ ャ ン ネ ル 数 は 概 ね 良 く 揃 っ て い た 。 カ ー ボ ン の
C -K 吸 収 端 は 2 8 4 e V 近 傍 に 現 れ る が 、 そ の 近 傍 の エ ネ ル ギ ー に 現 れ る E E L S
スペクトルを解析する際には内部標準として高い精度が期待できる。しかし、
3 .1 .2 に 記 し た よ う に 、 E E L S 測 定 で は エ ネ ル ギ ー 分 解 能 0 .3 e V 程 度 を 測 定 す
る た め に 小 さ な 分 散 値 ( e V /c h ) を 設 定 す る 必 要 が あ り 、 結 果 と し て 狭 い エ ネ
ル ギ ー 範 囲 の み を 測 定 す る こ と に な る 。 こ の た め EDS の よ う に 広 い エ ネ ル ギ
ー 範 囲 を 一 度 に 測 定 す る こ と が で き ず 、C -K 吸 収 端( 2 8 4 e V 近 傍 )以 外 の エ ネ
ルギー領域に内部標準となり得るスペクトルがあることが望ましい。
そ こ で H2 5 年 度 の 活 動 で 評 価 し た カ ー ボ ン 支 持 膜 上 に 、 シ リ カ 球 を 塗 布 し
た 試 料 を 作 製 し 、 シ リ コ ン の S i -L 吸 収 端 ( 9 9 e V 近 傍 ) お よ び 酸 素 の O -K 吸
収 端( 5 3 2 e V 近 傍 )の ピ ー ク 位 置 を 内 部 標 準 エ ネ ル ギ ー 値 と し て 選 定 し た 。ラ
ウ ン ド ロ ビ ン テ ス ト で は 同 一 装 置 内 で 複 数 の シ リ カ 粒 子 の 差 を 比 較 し 、内 部 標
準化の検討を行った。
測定
ラ ウ ン ド ロ ビ ン テ ス ト と し て 、マ イ ク ロ グ リ ッ ド カ ー ボ ン 上 に 塗 布 し た シ リ
カ 球 を 同 一 装 置 内 で 測 定 し 、 シ リ カ 球 間 に お け る シ リ コ ン の Si -L 吸 収 端 お よ
び 酸 素 の O -K 吸 収 端 の ピ ー ク 位 置 を 比 較 し た 。以 下 、そ の 手 順 に つ い て 記 す 。
シ リ コ ン の S i -L 吸 収 端 お よ び 酸 素 の
O- K 吸 収 端 の ピ ー ク S /N 比 を で き る だ
け大きくとって取得できるようにゼロ
ロ ス -プ ラ ズ モ ン ロ ス と プ ラ ズ モ ン ロ ス シ リ コ ン Si -L 吸 収 端 お よ び 酸 素 O -K 吸
収 端 を そ れ ぞ れ 分 け て 取 得 し 、そ れ ら の
ピーク間チャンネル数を足し合わせ比
較 を 行 う 。内 部 標 準 試 料 と し て 以 下 の も
のを選定した。
内部標準試料: マイクログリッドカー
ボ ン 上 に 塗 布 し た シ リ カ 球 50nm 径
(試料作製:産業総合技術研究所)
図 3 .3 -2 内 標 準 試 料 の HA A DF -ST E M 像
- 24 -
また、次のような測定条件を記載することにした。
<測定条件>
4. 電 子 顕 微 鏡 側 設 定 条 件
加 速 電 圧 ( k V ):
像 観 察 モ ー ド ( 例 : T E M /ST E M )
ビーム径(照射領域の大きさ)
5. EELS 設 定 条 件
ス ペ ク ト ロ メ ー タ ー 入 射 絞 り 径 /mm:
エ ネ ル ギ ー 分 散 / ( e V /c h ):
取 り 込 み 時 間 /s × 積 算 回 数 / ( 回 ):
6. 測 定 目 標 ピ ー ク 、 吸 収 端
シリカのプラズモンロスピーク
シ リ コ ン の Si -L 吸 収 端
酸 素 の O- K 吸 収 端
ラウンドロビン測定の結果
ラ ウ ン ド ロ ビ ン テ ス ト に は 4 機 関 が 参 画 し た 。3 機 関 に て 同 一 装 置 を 用 い て
異 な る シ リ カ 球 を 測 定 し 、シ リ カ 球 間 の ゼ ロ ロ ス ピ ー ク - シ リ コ ン Si -L 吸 収 端
間 お よ び ゼ ロ ロ ス ピ ー ク -酸 素 O -K 吸 収 端 間 の チ ャ ン ネ ル 数 を 比 較 し た 。ま た 、
1 機関にて同一装置を用いて、同一シリカ球内の評価を行っている。
表 3 .3 -6 シ リ カ 球 間 に お け る 各 ピ ー ク 間 チ ャ ン ネ ル 数 ( 単 位 : c h 機 関 A )
試 料 /チ ャ
ゼ ロ ロ ス /プ ラ
ンネル数
ズモンロス間
プラズモンロ
プラズモンロ
ゼロロス
ゼロロス-
ス -Si-L 吸 収
ス -O-K
-Si-L 吸 収
O-K 吸 収
端間
吸収端間
端間
端間
シリカ球 1
46
165
1031
211
1077
シリカ球 2
45
166
1031
211
1076
シリカ球 3
45
166
1031
211
1076
シリカ球 4
46
165
1031
211
1077
シリカ球 5
46
165
1031
211
1077
最 大 -最 小
1
1
0
0
1
標準偏差
0.5
0.5
0.0
0.0
0.5
- 25 -
表 3 .3 -7 シ リ カ 球 間 に お け る 各 ピ ー ク 間 チ ャ ン ネ ル 数 ( 単 位 : c h 機 関 B )
試 料 /チ ャ
ゼ ロ ロ ス /プ ラ
ンネル数
ズモンロス間
プラズモンロ
プラズモンロ
ゼロロス
ゼロロス-
ス -Si-L 吸 収
ス -O-K
-Si-L 吸 収
O-K 吸 収
端間
吸収端間
端間
端間
シリカ球 1
48
166
1031
214
1079
シリカ球 2
46
169
1032
215
1078
シリカ球 3
47
169
1033
216
1080
シリカ球 4
47
168
1033
215
1080
シリカ球 5
46
169
1032
215
1078
シリカ球 6
47
168
1031
215
1078
シリカ球 7
46
168
1031
214
1077
シリカ球 8
46
168
1030
214
1076
シリカ球 9
47
168
1030
215
1077
シ リ カ 球 10
47
168
1029
215
1076
最 大 -最 小
2
3
4
2
4
標準偏差
0.7
0.9
1.3
0.6
1.4
表 3 .3 -8 シ リ カ 球 間 に お け る 各 ピ ー ク 間 チ ャ ン ネ ル 数 ( 単 位 : c h 機 関 C )
試 料 /チ ャ
ゼ ロ ロ ス /プ ラ
ンネル数
ズモンロス間
プラズモンロ
プラズモンロ
ゼロロス
ゼロロス-
ス -Si-L 吸 収
ス -O-K
-Si-L 吸 収
O-K 吸 収
端間
吸収端間
端間
端間
シリカ球 1
49
165
1014
214
1063
シリカ球 2
48
165
1014
213
1062
シリカ球 3
49
165
1014
214
1063
シリカ球 4
48
165
1014
213
1062
シリカ球 5
49
165
1013
214
1062
シリカ球 6
49
165
1013
214
1062
シリカ球 7
49
165
1014
214
1063
最 大 -最 小
1
0
1
1
1
標準偏差
0.5
0.0
0.5
0.5
0.5
- 26 -
表 3 .3 -9 シ リ カ 球 内 に お け る 各 ピ ー ク 間 チ ャ ン ネ ル 数 ( 単 位 : c h 機 関 E )
試 料 /チ ャ
ゼ ロ ロ ス /プ ラ
ンネル数
ズモンロス間
プラズモンロ
プラズモンロ
ゼロロス
ゼロロス-
ス -Si-L 吸 収
ス -O-K
-Si-L 吸 収
O-K 吸 収
端間
吸収端間
端間
端間
シリカ球 1
44
157
1023
201
1067
シリカ球 2
43
157
1022
200
1065
シリカ球 3
44
157
1023
201
1067
最 大 -最 小
1
0
1
1
2
標準偏差
0.6
0.0
0.6
0.6
1.2
表 3 .3 -1 0 エ ネ ル ギ ー 分 散 設 定 値 ( 単 位 : e V /c h )
実施機関
A
B
C
E
設 定 値 /eV
0 .5
0 .5
0 .5
0 .5
シリカナノ粒子の実用可能性
表 3 .3 -6 ~ 表 3 .3 -8 に 示 し た 機 関 内 に お け る ゼ ロ ロ ス -Si -L 吸 収 端 間 に つ い
て は 4 機 関 の 最 大 -最 小 の 平 均 は 1 c h( 0 .5 e V )で あ り 良 く 揃 っ て い る と 言 え る 。
ゼ ロ ロ ス ピ ー ク -O - K 吸 収 端 間 の チ ャ ン ネ ル 数 で は 最 大 - 最 小 の 平 均 が 2 c h
( 1 .0 e V ) と や や 大 き な ば ら つ き が 認 め ら れ た 。 こ れ に つ い て は 電 子 線 照 射 に
よ り 酸 素 の 欠 損 な ど 結 合 状 態 変 化 が 起 き て い る 可 能 性 が あ る 。ま た 、マ イ ク ロ
グ リ ッ ド カ ー ボ ン の 測 定 結 果 で は ゼ ロ ロ ス ピ ー ク -プ ラ ズ モ ン ロ ス ピ ー ク 間 チ
ャ ン ネ ル 数 が 試 料 間 で 大 き く 異 な っ て い た の に 対 し て 、今 回 の シ リ カ 球 間 の 結
果 で は プ ラ ズ モ ン ロ ス ピ ー ク 位 置 は 大 き く 動 い て お ら ず 、 各 機 関 の 最 大 -最 小
の 平 均 で 1 .2 5 c h( 0 . 6 2 5 e V ) で あ っ た 。 プ ラ ズ モ ン ロ ス ピ ー ク 位 置 が 動 い て い
な い こ と か ら 、プ ラ ズ モ ン ロ ス ピ ー ク -Si -L 吸 収 端 お よ び O -K 吸 収 端 間 の チ ャ
ン ネ ル 数 も 概 ね 良 く 揃 っ て い る 。表 3 .3 - 9 に 示 し た 同 一 シ リ カ 球 内 の 比 較 結 果
か ら 、球 内 の 異 な る 領 域 に お け る 各 ピ ー ク 間 の チ ャ ン ネ ル 数 に 大 き な 違 い は 見
られなかった。
マイクログリッドカーボン膜では動いたプラズモンロスピーク位置がシリ
カ 球 で は 動 か な い 理 由 と し て 、チ ャ ー ジ ア ッ プ や 試 料 の 厚 み 変 化 に よ る プ ラ ズ
モ ン ロ ス ピ ー ク の 形 状 変 化 な ど が 考 え ら れ る が 、今 回 行 っ た ラ ウ ン ド ロ ビ ン テ
ストの結果からでは分からなかった。
今 回 の ラ ウ ン ド ロ ビ ン テ ス ト で は Si -L 吸 収 端 と O - K 吸 収 端 の 内 部 標 準 化 の
検 討 を 行 っ た が 、シ リ カ 球 の プ ラ ズ モ ン ロ ス ピ ー ク も 内 部 標 準 と し て 使 用 で き
る 可 能 性 が あ る 。今 年 度 の ラ ウ ン ド ロ ビ ン テ ス ト で は シ リ カ 球 に 対 し て 測 定 時
- 27 -
間 や ビ ー ム シ ャ ワ ー の 有 無 な ど 条 件 を 変 え て 検 証 で き て お ら ず 、今 後 電 子 線 が
与える影響を評価する必要がある。
実用的な内部標準試料によるエネルギー軸校正とその今後
同一機関内における内部標準試料としてマイクログリッドカーボン膜とシ
リ カ 球 ( 50nm 径 ) に つ い て ラ ウ ン ド ロ ビ ン テ ス ト の 実 施 、 結 果 の と り ま と め
作 業 を 行 っ た 。昨 年 度 ま で の 解 析 手 順 を 変 更 し E E L S ス ペ ク ト ル を 一 次 微 分 す
る こ と で ピ ー ク 位 置 の 検 出 が 容 易 に な り 、読 み 取 り 誤 差 が 少 な く な っ た と 思 わ
れる。
- 28 -
第 4 章 SIMS 分析用標準試料の開発
SIMS 分析用標準試料の開発
BN デルタドープ As 高濃度シリコンウェハ標準試料の開発
Si 中 に 浅 く 注 入 さ れ た A s の SI M S 深 さ 方 向 分 析 を 少 な い 不 確 か さ で 測 定 す
る た め の 、 深 さ 校 正 用 ス ケ ー ル と As 濃 度 校 正 用 標 準 試 料 の 機 能 を 併 せ 持 っ た
標 準 試 料 を 開 発 し 、試 作 し た 試 料 の 標 準 試 料 と し て の 妥 当 性 を 種 々 の 測 定 法 お
よびラウンドロビン試験により評価した。
開発の目的
国 際 半 導 体 ロ ー ド マ ッ プ に よ れ ば 、C M O S ト ラ ン ジ ス タ の ド ー ピ ン グ た め の
技 術 課 題 と し て 、 短 チ ャ ン ネ ル 効 果 の 制 御 に 必 要 な ソ ー ス /ド レ イ ン の エ ク ス
テ ン シ ョ ン 領 域 で の ま す ま す 浅 く な る 接 合 深 さ ( ~ 1 0 n m) の 達 成 、 及 び エ ク ス
テ ン シ ョ ン ト チ ャ ネ ル の 接 合 部 分 に お け る 急 峻 な ド ー ピ ン グ と 、浅 く 高 濃 度 に
ド ー ピ ン グ さ れ た ソ - ス /ド レ イ ン 領 域 へ の 低 抵 抗 コ ン タ ク ト の 形 成 が 挙 が っ
ており
(1)
、 そ の 測 定 手 段 と し て SI M S の 役 割 が 期 待 さ れ て い る
(2)
。
し か し な が ら 、一 次 イ オ ン 照 射 に 伴
(3)
うミキシング
や表面荒れ
(4)
に伴う
a -S i
8 nm
深さ方向分解能の劣化による分布の
ダ レ や 、一 次 イ オ ン 照 射 に よ る ス パ ッ
タリングと一次イオン注入が動的平
BN 層
a -S i
0 .0 5 n m 相 当
8 nm
衡に達するまでのトランジェント領
域
(5)
の 存 在 か ら 、SI M S 分 析 で の 表 面
近傍での深さ方向プロファイルは真
の 不 純 物 分 布 と は 異 な る 。 Si 中 の A s
BN 層
a -S i
0 .0 5 n m 相 当
8 nm
の 極 浅 深 さ 分 析 に 関 し て 、以 下 の よ う
な 報 告 が あ る 。深 さ 分 解 能 に 関 し て は 、
C s + の 低 エ ネ ル ギ ー 条 件 下 で 、( 法 線 に
BN 層
a -S i
0 .0 5 n m 相 当
8 nm
対 す る )角 度 が 大 き く な る 70°で 深 さ
方 向 分 解 能 が 悪 く な り 76 ° で 良 く な
る報告
(6),(7)
がある一方、低エネルギ
ー条件下では角度が大きくなるほど
深 さ 方 向 分 解 能 が 良 く 、2 5 0 e V 照 射 条
As ド ー プ Si 基 板
≦ 0 .0 0 5
Ω cm
(A s 濃 度 換 算 ; 1 .2 E19 /c m 3 )
件 で は 30 ° 照 射 で 分 解 能 が 悪 く な る
ことが報告
(8)
されている。
図 4 .1 -1 試 作 さ れ た BN デ ル タ ド ー プ A s
高濃度シリコンウェハ標準試料の概念図
- 29 -
何 れ の 場 合 も 、ミ キ シ ン グ の 深 さ が 一 次 イ オ ン 注 入 の 注 入 深 さ と 関 係 が あ る
(9)
こ と と は 反 し て お り 、C s + 照 射 時 の 表 面 荒 れ に 関 係 が あ る と さ れ て い る
(10)
。
ま た 、 C s + 照 射 の ト ラ ン ジ ェ ン ト 領 域 に 関 し て は 、 P. A . W. v a n d e r He i d e ら
による報告
(11 )
が あ る 。ま た 、表 面 近 傍 で の A s 濃 度 評 価 に 関 す る 研 究
Si O 2 を 通 し た A s の 注 入 プ ロ フ ァ イ ル に 関 す る 研 究
の As の 極 浅 プ ロ フ ァ イ ル の 評 価 の 研 究
の比較の報告
(16)
(15)
(13),(14)
や、O2
+
(12)
や、
照射下で
や 、A s の プ ロ フ ァ イ ル の M E I S と
などがされてきた。
研 究 産 業 協 会 に お い て も 、 Si 中 に 1 ke V で 注 入 さ れ た A s に 関 す る 極 浅 領 域
で の 初 の SI M S に よ る ラ ウ ン ド ロ ビ ン テ ス ト (R R T )が 行 わ れ た
(17)-(19)
。この
R R T で は 、標 準 試 料 と し て N M I J の C R M -5 6 0 3 a を 用 い て 定 量 を 行 い 、深 さ に
関 し て は 標 準 試 料 の ピ ー ク 深 さ か ら ス パ ッ タ レ ー ト を 求 め て 行 わ れ た 。結 果 は
一次イオンエネルギーが低いほどドーズ量の測定結果に機関間でばらつきが
大 き く 、ド ー ズ 量 自 体 の T X R F と の 乖 離 も 一 次 イ オ ン エ ネ ル ギ ー が 小 さ い ほ ど
大 き か っ た 。 こ れ ら の 原 因 と し て 、 極 浅 注 入 に よ る 高 As 濃 度 領 域 で の 感 度 係
数 の 不 確 か さ の 可 能 性 と 、浅 い 領 域 で の ス パ ッ タ レ ー ト の ば ら つ き が 原 因 で あ
る と 考 え ら れ た 。 後 者 に 関 し て は 、 I S O2 3 8 1 2 :2 0 0 9 ( 2 0 ) に 則 っ て 、 デ ル タ 多 層
膜の深さ校正用標準試料の測定によってスパッタレートを決定した分析を行
え ば 、 機 関 間 の ば ら つ き は 小 さ く な る も の と 考 え ら れ る 。 (な お 、 ト ラ ン ジ ェ
ント領域でのスパッタレートの変化
(22)-(24)
(21)
に 関 し て 、O 2
違 い は 、 Cs + 照 射 下 で も あ る も の の O 2
+
+
照射で報告されている
ほど顕著ではない
(8)
ようであ
る。
従 っ て 、Si 中 に 浅 く 注 入 さ れ た A s の 分 析 を 機 関 間 で 少 な い 不 確 か さ で 測 定
す る た め に は 、深 さ 校 正 用 の 標 準 試 料 と 濃 度 校 正 用 標 準 試 料 が 必 要 で あ る 。し
か し な が ら 、実 用 分 析 に お い て 、極 低 一 次 イ オ ン エ ネ ル ギ ー で SI M S 分 析 を 行
う に は 、長 時 間 を 要 す る た め 、標 準 試 料 の 測 定 を な る べ く 短 時 間 で 済 ま せ る 必
要 が あ る 。 本 研 究 開 発 で は 、 深 さ 校 正 用 ス ケ ー ル と As 濃 度 校 正 用 標 準 試 料 の
機能を併せ持った標準試料を開発することを目的としている。
参考文献
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F r u h a u f , A . B e r gma i e r, G . Do l l i n ge r, T. B u yu k l i m a n l i , J . A . Va n d e r B e r g
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M . B e r s a n i a n d J . A . va n d e n B e r g , Sur f . Int er fac e. A nal . 4 5 , 4 1 3 , (2 0 1 3 )
(1 7 ) 研 究 産 業 協 会 , 機 械 工 業 に 係 わ る 先 端 技 術 研 究 開 発 分 野 の 分 析 技 術 高 度
か に 関 す る フ ィ ー ジ ビ リ テ ィ ス タ デ ィ 報 告 書 , (2 0 1 0 )
(1 8 ) 研 究 産 業 協 会 , 機 械 工 業 に 係 わ る 先 端 技 術 研 究 開 発 分 野 の 分 析 技 術 高 度
か に 関 す る フ ィ ー ジ ビ リ テ ィ ス タ デ ィ 報 告 書 , (2 0 11 )
(1 9 ) 研 究 産 業 ・ 産 業 技 術 協 会 , 平 成 23 年 度 機 械 工 業 に 関 わ る ナ ノ レ ベ ル 分 析
技 術 の 国 際 標 準 補 助 事 業 報 告 書 , (2 0 1 2 )
(2 0 ) I S O2 3 8 1 2 :2 0 0 9 , Su r f a c e c h e mi c a l a n a l ys i s – Se c o n d a r y – i o n m a s s
s p e c tr o me tr y
- - M e th o d f o r d e p th c a l i b r a ti o n fo r s i l i c o n u s i n g mu l t i p l e
d e l t a - l a ye r r e fe r e n c e m a te r i a l s
(2 1 ) K . Wi t tma a c k , Sur f. In t . A nal . 2 4 , 6 , 3 8 9 , (1 9 9 6 )
(2 2 Y. Ho m ma , H . Ta k e n a k a , F. To u j o u , A . Ta k a n o , S . H a ya s h i a n d R .
Sh i mi zu , Sur f . Inter. A nal . 3 5 , 5 4 4 ( 2 0 0 3 )
(2 3 ) F. To u j o u , S . Yo s h i k a wa , Y. H o m ma , A . Ta k a n o , H. Ta k e n a k a , M .
To mi ta , Z . L i , T. Ha s e ga wa , K . Sa s a k a wa , M . Sc u ma c h e r, A . M e r k u l o v, H . M .
Ki m , D. W. M o o n , T. H o n g a n d J . -Y. Wo n , A p p l . Sur f. S ci e. 2 3 1 -23 2 ,
6 4 9 (2 0 0 4 )
- 31 -
(2 4 ) A . Ta k a n o a n d H. Ta k e n a k a , A p p l . Sur f. Sci . 2 5 5 , 1 3 4 8 , ( 2 0 0 8 )
各種表面・界面分析法を用いた試作試料の品質評価
試 作 し た B N デ ル タ ド ー プ A s 高 濃 度 シ リ コ ン ウ ェ ハ 標 準 試 料 の SI M S 深 さ
校 正 試 料 と し て の 妥 当 性 を 確 認 す る た め 、 X R R 分 光 分 析 、 断 面 S /T E M 観 察 、
SI M S 分 析 、 T OF -SI M S 分 析 、 HR -R B S 分 析 、 中 性 子 放 射 化 分 析 及 び X R F 分
析 を 行 っ た 。X R R で は デ ル タ 層 の 間 隔 を 正 確 に 行 う こ と が で き る S /T E M 観 察
で は デ ル タ 層 を 直 接 観 察 す る こ と が で き る の で 、周 期 の 均 質 性 及 び 視 野 内 で の
揺 ら ぎ に つ い て 評 価 す る 。 SI M S 分 析 で は 、 デ ル タ 層 が 認 識 で き る か 否 か 、 マ
ト リ ッ ク ス 効 果 の 影 響 を 与 え る よ う な も の で な い か 否 か 、 基 板 中 で As 濃 度 に
揺 ら ぎ が な い か 否 か 、を 評 価 す る 。T OF - SI M S で は 、デ ル タ 層 中 で の 不 純 物 に
つ い て の 知 見 を 得 る 。HR -R B S で は デ ル タ 多 層 膜 の 組 成 レ ベ ル で の 深 さ 分 布 を
評 価 す る 。 中 性 子 放 射 化 分 析 で は As 濃 度 を 正 確 に 測 定 す る こ と が 可 能 で あ る
こ と か ら 基 板 中 の As 濃 度 の 校 正 を 行 い 、 XRR で As 濃 度 の ば ら つ き に つ い て
評価する。
参 考 の た め 、 図 4 .1 - 2 に 妥 当 性 評 価 の た め の 全 体 説 明 図 を 掲 載 し た 。
図 4 .1 -2 標 準 試 料 の 妥 当 性 評 価 に 関 す る 検 討 項 目 と 分 析 方 法 の 全 体 説 明 図
更 に 、 試 作 し た 試 料 を 標 準 試 料 と し て 用 い 、 As を 極 浅 注 入 し た 試 料 の ラ ウ
ンドロビン試験を行うことによって、試作した標準試料の検証を行った。
4 .1 .2 .1 ~ 4 .1 .2 .9 に 結 果 を 記 す 。
- 32 -
XRR による多層膜構造の評価
SI M S 用 標 準 試 料 の 構 造 は 、 ヒ 素 を ド ー プ し た シ リ コ ン 基 板 と 、 そ の 表 面 に
シ リ コ ン 層 と 薄 い BN 層( デ ル タ BN 層 )と を 交 互 に 積 層 し た 多 層 膜 と で 構 成
さ れ て い る 。 そ の 多 層 膜 の 層 構 造 は X 線 反 射 率 分 光 法 ( XRR) で 計 測 で き る 。
XRR は 、 平 行 な X 線 を 表 面 が 平 坦 な 材 料 表 面 に 小 さ な 入 射 角 で 照 射 し 、 反 射
X 線 は そ の 干 渉 に よ り 角 度 走 査 に 対 し て 振 動 パ タ ー ン が 現 れ る 。こ の 振 動 パ タ
ーンの振幅強度や反射率の減衰の角度依存性を詳細に解析すると多層膜の構
造情報(膜厚・密度・表面及び界面ラフネス)が得られる。
実 験 で 得 ら れ た 反 射 率 プ ロ フ ァ イ ル と 、層 構 造 モ デ ル を も と に 反 射 率 の 角 度
依 存 性 を 計 算 し た 計 算 プ ロ フ ァ イ ル を 比 較 し 、ベ ス ト フ ィ ッ ト 法 で 層 構 造 の 各
パラメータを決定した。計算でのパラメータは密度、膜厚、ラフネスである。
初 期 値 と し て 、 各 層 の 厚 さ の 予 想 値 8 n m を 用 い た 。 Si 基 板 の 密 度 は 2 .3 3
g/ c m - 3 を 用 い た 。解 析 モ デ ル で は 、図 4 . 1 -1 の 設 計 に 基 づ く 多 層 膜 構 造 に 加 え
て 、 表 面 に Si O 2 層 が あ る こ と な ど を 仮 定 し 、 そ れ ら の 層 厚 な ど を フ ィ ッ テ ィ
ングパラメータとして用いた。
図 4 .1 -3 に 実 験 で 得 ら れ た 反 射 プ ロ フ ァ イ ル を 示 す 。シ ミ ュ レ ー シ ョ ン で フ
ィッティングした計算結果はこの実験結果とプロファイルの細部まで良く一
致 し て お り 、計 算
100
で用いた層構 造
モデルが妥当 で
125157A2
measued
calculated
10-1
あったことを 示
10-2
ィッティング の
結 果 に よ り 、 BN
層の平均周期 は
Reflectivity
し て い る 。こ の フ
10-3
10-4
8 .1 6 n m と 得 ら れ
10-5
た 。面 内 の 均 質 性
10-6
も良好であった。
10-7
0
1
2
3
4
5
6
2 theta (degree)
図 4 .1 -3 X R R 測 定 で 得 ら れ た 反 射 プ ロ フ ァ イ ル
- 33 -
7
断面 S/TEM 観察
Si ( 1 0 0 )基 板 上 に 積 層 さ れ た B N デ ル タ 多 層 膜 試 料 が 、SI M S の 深 さ 校 正 試 料
と し て 妥 当 か 否 か の 確 認 の た め 、 断 面 S/ T E M 観 察 に よ り 、 B N デ ル タ 多 層 膜
試 料 の 試 作 品 に 関 し て 、 BN デ ル タ ド ー プ 層 の 平 坦 性 確 認 と 表 面 酸 化 Si 層 厚 、
a -Si 層 厚 、Si 基 板 表 面 酸 化 Si 層 厚 の 評 価 を 行 っ た 。結 果 の 詳 細 は 文 献
(1)
を参
照されたいが、ここでは、その概要を記す。
図 4 .1 -4 に B N デ ル タ ド ー プ 多 層 膜 の 断 面 HA A DF -ST E M 像 を 示 す 。 a - Si
層 中 の BN デ ル タ ド ー プ 層 に 対 応 す る と 思 わ れ る 明 る い 筋 状 の コ ン ト ラ ス ト が
3 本 観 察 さ れ た 。 ま た 、 多 層 膜 表 面 及 び Si 基 板 表 面 に は 酸 化 Si 層 の コ ン ト ラ
ス ト を 確 認 す る こ と が 出 来 た 。 こ の 像 に よ り 、 BN デ ル タ ド ー プ 多 層 膜 の 膜 厚
は 均 一 で あ る こ と 、B N デ ル タ ド ー プ 層 は 平 坦 で 表 面 及 び Si 基 板 表 面 に 対 し て
十 分 に 平 行 で あ り SI M S 深 さ 校 正 試 料 と す る た め に 必 要 な 平 坦 性 を 有 し て い
る 様 子 が 観 察 出 来 た 。観 察 さ れ た HA A DF -ST E M 像 に 対 し て 領 域 を 設 定 し 、コ
ン ト ラ ス ト プ ロ フ ァ イ ル を 得 た 。こ の コ ン ト ラ ス ト プ ロ フ ァ イ ル か ら 求 め た 多
層 膜 表 面 酸 化 Si 層 厚 、 a - Si 層 厚 ( 4 層 )、 Si 基 板 表 面 酸 化 S i 層 厚 を 表 4 .1 -1
に 示 し た 。 以 上 の STEM 観 察 の 範 囲 に お い て は 、 試 作 し た デ ル タ 多 層 膜 試 料
は 、SI M S の 深 さ 校 正 試 料 と し て 膜 厚 の 均 一 性 、B N デ ル タ ド ー プ 層 の 平 坦 性 、
a -Si 層 厚 に つ い て 十 分 で あ る と 言 え る 。
表 4 .1 -1 HA A DF - ST E M 像 か ら 得 た コ ン
トラストプロファイルにより
求めた各層の厚さ
L a ye r
T h i c k n e s s (n m)
⑥
1 .2
⑤
8 .4
④
8 .3
③
8 .3
②
7 .8
①
基板側
⑥ ⑤
④
③
② ①
図 4 .1 -4 B N デ ル タ ド ー プ 多 層 膜 の
断 面 HA A DF -ST E M 像
- 34 -
1 .1
SIMS 分析
(1 ) SI M S 分 析 の 目 的
今 回 、 SI M S 分 析 で は 、 試 作 し た 標 準 試 料 の 特 性 と し て 、 以 下 の 3 点 を 確 認
し た 。 ① 成 膜 し た B N デ ル タ 多 層 膜 が 異 な る 基 板 メ ー カ Si 基 板 上 で 同 程 度 の
出 来 と な る か を 確 認 す る 、 ② HR -R B S で は 、 A s の 分 布 が 基 板 中 よ り も B N 層
中 で 多 量 に 存 在 す る 可 能 性 を 示 唆 し て い た た め 、 SI M S の マ ト リ ッ ク ス 効 果 の
少 な い モ ー ド に よ り こ れ に つ い て の 知 見 を 得 る 、 ③ 基 板 中 の As の 濃 度 揺 ら ぎ
が、深くまで及んでいるか否かを調べる。この結果の詳細は文献
(1)
を参照さ
れたいが、ここでは、概要を記す。
(2 )
異 な る 基 板 メ ー カ の Si 基 板 に 成 膜 し た 試 料 の 比 較
基 板 メ ー カ の 異 な る Si 基 板 に 成 膜 し た 試 料 に お い て も 、 同 等 の 試 料 が 作 製
で き て い る か 否 か を SI M S に よ り 評 価 し た 結 果 、 2 つ の 異 な る メ ー カ の Si 基
板 に 成 膜 さ れ た B N デ ル タ 多 層 膜 の 分 布 に 差 異 は な く 、同 等 の 試 料 が 作 製 さ れ
ていることが明らかとなった。
(3 ) デ ル タ B N 層 中 に A s が 高 濃 度 存 在 す る か 否 か の 検 証
HR -R B S に よ る A s の 分 布 は 、SI M S の A s Si - の 分 布 と 似 て お り 、デ ル タ B N
層 中 で の A s 濃 度 が 基 板 濃 度 よ り も 高 い 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。 SI M S は 主 成 分
が 異 な る と 感 度 が 変 わ る 効 果 ( マ ト リ ッ ク ス 効 果 ) が 大 き い が 、 SI M S 分 析 と
し て は マ ト リ ッ ク ス 効 果 が 少 な い と 言 わ れ て い る Cs + を 一 次 イ オ ン と し た
M C s + 検 出 イ オ ン (M ; 着 目 元 素 ) で 、 A s の 分 布 を 見 る こ と に よ り 、 デ ル タ B N
層 中 で の 高 濃 度 As の 有 無 を 確 認 し た 。 マ ト リ ッ ク ス 効 果 の 少 な い こ の 測 定 で
も 、 デ ル タ BN 層 中 で の As の 強 度 は 、 基 板 中 よ り も 低 く 、 デ ル タ BN 層 中 に
As が 基 板 よ り も 高 濃 度 存 在 す る 可 能 性 は 低 い も の と 考 え ら れ た 。 な お 、 そ の
後 の 調 査 で HR -R B S で 検 出 さ れ た 元 素 は 、成 膜 時 の キ ャ リ ア ガ ス で あ る Kr で
あることが判明した。
(4 ) Si 基 板 中 A s の 揺 ら ぎ が 深 く ま で 及 ん で い る か 否 か の 検 証
(2 ) の 結 果 で は 、Si 基 板 中 の A s の 分 布 が 、界 面 か ら バ ル ク 方 向 に お よ そ 2 0 n m
の 間 で 揺 ら い で い た が 、こ の 揺 ら ぎ が 深 い 領 域 に ま で 及 ん で い る か 否 か を 、低
加 速 条 件 と は 異 な る エ ネ ル ギ ー 条 件 で 評 価 し た 。こ の 結 果 、深 さ 2 .5 m ま で の
A s Si / Si 2 の 深 さ 方 向 分 布 で の 揺 ら ぎ は 見 ら れ て い な い 。 す な わ ち 、 界 面 か ら
2 0 n m 程 度 よ り 深 い 領 域 で は 、A s 濃 度 が 一 定 で あ る と 見 做 し て 問 題 な か っ た 。
SI M S で は 、深 さ 校 正 の 物 差 し と し て の B N デ ル タ 多 層 膜 、A s 濃 度 校 正 の た
め の 高 A s ド ー プ Si 基 板 部 と も に 、SI M S 測 定 の 標 準 試 料 と し て 妥 当 で あ る と
考えられた。
- 35 -
文献
(1 ) 平 成 2 5 年 度 新 エ ネ 素 子 の 開 発 加 速 に 資 す る ナ ノ 領 域 元 素 分 析 標 準 化 補 助
事業報告書, 一般社団法人
研 究 産 業 ・ 産 業 技 術 振 興 協 会 , [J R I A 2 5 ナ ノ 分 析
標 準 ] , (2 0 1 4 ) p .4 0 .
TOF-SIMS 分析
(1 )目 的
本 分 析 は 、試 料 の a - S i 層 お よ び B N 層 中 の 不 純 物 に 関 す る 知 見 を 、T OF -S I M S
を用いて得ることにある。
(2 ) 試 料
本分析では、以下の 2 試料についての測定を実施した。
試 料 名 : 2 0 1 2 ( 1 2 5 1 5 7 A 1 )、 0 1 3 ( 1 2 5 1 5 8 M 1 )
(3)分析方法
本測定で用いた測定条件を、以下の表に示す。
表 4 .1 -2 測 定 条 件
分析装置
T OF. SI M S 5
注目元素
Si , B , A s , O 等
エッチングイオン種
Cs +
エ ッ チ ン グ イ オ ン 加 速 電 圧 ( kV )
0 .5
一次イオン種
Bi +
一 次 イ オ ン 加 速 電 圧 (k V )
25
N e ga ti ve
二次イオン極性
二次イオン検出領域(μm□ )
150
(1 )測 定 結 果
分析結果は以下の通りである。
表 4 .1 -3 分 析 結 果 一 覧
測定番号
試料
1
2012
2
2013
3 ,4
5 ,6
7 ,8
9 ,1 0
2012
2013
測定深さ
測定モード
表 面 ~ Si 基 板
デプスプロファイル
a -Si 層
BN 層
a -Si 層
マススペクトル
BN 層
本測定から得られた結論は、以下の通りである。
・ 両 試 料 と も 、B N 層 中 で は B が 高 い 強 度 で 検 出 さ れ て い る 。ま た 、同 層
- 36 -
中 で は O の 強 度 も 高 い が 、 a - Si 層 と B N 層 と の 二 次 イ オ ン 生 成 確 率 等
の差異によるマトリクス効果の可能性がある。
・ B N 層 と そ の 直 上 の a -Si 層 と の 界 面 で 、 H 、 C 、 F 、 C l の 各 強 度 が 高 い
傾向にある。
・ B N 層 中 で 、 A s 及 び Ge は 検 出 下 限 レ ベ ル 以 下 で あ る 。
・ Si 基 板 直 上 の B N 層 付 近 で は 、 そ の 他 の B N 層 よ り も 不 純 物 濃 度 が 高
い傾向にある。
・ 両 試 料 の a -Si 層 お よ び B N 層 の B 、C 、C l 濃 度( 二 次 イ オ ン 強 度 )に 、
有意な差異は認められない。
・ a -S i 層 お よ び B N 層 の H 濃 度 は 、試 料 2 0 1 3 < 試 料 2 0 1 2 の 傾 向 が あ り 、
F 濃 度 は 試 料 2012< 試 料 2013 の 傾 向 が あ る 。
両 試 料 と も 、 a - Si 中 で 局 所 的 な 深 さ で H 、 O 等 が 高 濃 度 で 検 出 さ れ る 。 ま た 、
これらの不純物の出現する深さは、測定箇所によって異なる。
HR-RBS 分析
(1 )目 的
試作品に関して以下の 2 点について確認を行う。
(a ) 成 膜 に よ り Si 基 板 中 の A s に 濃 度 変 化 が 生 じ る か ど う か を 調 べ る 。
(b ) B N デ ル タ 多 層 膜 堆 積 時 に 界 面 が 酸 化 さ れ る か ど う か を 調 べ る 。
分析試料
試料名
試料構造
N o .1 2 5 1 5 8 M 1
[ a - Si (8 n m ) /Δ -B N ] × 4 p a i r /高 A s ド ー プ Si 基 板
(2 )分 析 条 件
HR -R B S 分 析 を 以 下 の 条 件 で 行 っ た 。
分 析 装 置 : 神 戸 製 鋼 所 製 高 分 解 能 RBS 分 析 装 置
測定条件:項目
HR B S3 5 0 0
パラメータ
450keV
入射イオン:エネルギー
He +
散乱角
77 度
入射角
試 料 面 の 法 線 に 対 し 45 度
試料電流
25n A
照射量
40μ C
(3 )分 析 結 果
A s が 存 在 し て い れ ば そ の ス ペ ク ト ル が 生 じ る は ず の 領 域 に お い て 、Kr に よ る
ピ ー ク が 生 じ た た め 、 デ ル タ ド ー プ 多 層 膜 中 へ の As の 拡 散 を 判 定 す る の に 必
要なスペクトルを得ることはできなかった。
成 膜 後 の デ ル タ ド ー プ 層 の 表 面 に は 1nm 程 度 の 酸 化 層 が 、 基 板 表 面 と 多 層
- 37 -
膜 の 界 面 に は 3 nm 程 度 の 酸 化 層 が 存 在 し て い る こ と が わ か っ た 。 デ ル タ ド ー
プ 層 中 に は 酸 素 は 殆 ど 存 在 せ ず 、意 図 し た デ ル タ ド ー プ 層 が 出 来 て い る と い え
る。
中性子放射化分析
SI M S 用 標 準 試 料 と し て 用 い て い る シ リ コ ン 基 板 は 高 濃 度 の ヒ 素 が 不 純 物 と
し て ド ー プ さ れ て い る 。こ の ヒ 素 の 濃 度 を 評 価 す る た め 中 性 子 放 射 化 分 析 法 を
用いた測定を行った。
中 性 子 放 射 化 分 析 は 、測 定 目 的 元 素 を 含 む 試 料 に 中 性 子 線 を 照 射 し 放 射 性 同
位体を生成しこの放射性同位体が放出する放射線を検出しその強度を測定す
る 元 素 分 析 法 で あ る 。 核 種 毎 の 半 減 期 と そ の 核 反 応 の 例 を 表 4 .1 -4 に 示 す 。
表 4 .1 -4 中 性 子 放 射 化 分 析 対 象 の 核 種 の 例
標的核
37
Cl
11 5
In
75
As
81
Br
197
Au
同位体
0 .2 4 2 2
0 .9 5 7 1
1
0 .4 9 3 1
1
γ 線 (k e V )
核反応
存在度
37
γ)
C l( n ,
38
11 5
γ)
Cl
I n( n ,
11 6 m
75
γ)
γ)
In
A s (n ,
76
As
81
B r( n ,
82
Br
197
( n,γ )
Au
198
Au
半減期
1 6 4 2 .4 ,2 1 6 8
3 7 .2 4 m i n
416.9,1097
5 4 .2 9 m i n
0 .5 5 9
1 .0 9 7 2 d a y
5 5 4 . 3 , 7 7 6 .5
3 5 .2 8 2 h o u r
4 11 .8
2 .6 9 7 4 d a y
試 料 の ヒ 素 含 有 ウ ェ ハ を ダ イ シ ン グ ソ ー で 7 .5 mm × 1 5 m m 角 に 切 り 分 け 、
その中からウェハ中心からの距離が異なりかつ方位角がランダムとなるよう
に 分 析 用 の 試 料 を 選 択 し た 。放 射 化 分 析 は 中 性 子 線 照 射 設 備 の あ る 京 都 大 学 研
究用原子炉施設内で実施した。
内 標 準 法 を 用 い て 測 定 変 動 要 因 を 取 り 除 き 、各 試 料 に 含 ま れ る ヒ 素 の 質 量 を
求 め る と 1 0 6 m g~ 1 4 0 m g で あ っ た 。 各 試 料 の ヒ 素 濃 度 は 0 . 0 7 7 wt %~ 0 . 1 0 2
wt %と な っ た 。
ここでガンマ線計数率、検量線からの推定法、標準液調整、測定繰り返し、
同位体比の違いを考慮して得られた放射化分析の定量の相対標準不確かさは
0 .9 % で あ る 。 ウ ェ ハ 内 で の ヒ 素 濃 度 の ば ら つ き は 、 0 w t% ~ 0 .0 0 2 w t% で
あ り 、そ れ ぞ れ の t 検 定 で は 有 意 差 は な か っ た 。 面 内 の ヒ 素 濃 度 の ば ら つ き は
- 38 -
小さく、面内のヒ素濃度分布は一様である。
な お 、試 料 の ヒ 素 濃 度 の ば ら つ き が 小 さ い こ と を 確 か め る た め に 、表 面 付 近
を 計 測 す る XRF 測 定 と 組 み あ わ せ て 解 析 を 行 い 、 妥 当 性 を 検 証 し て い る 。
SI M S で の ヒ 素 濃 度 の 分 析 精 度 は 予 備 試 験 に よ る と 7 ~ 1 0 % 程 度 で あ る と 見 積
も ら れ て お り 、本 標 準 試 料 は そ れ よ り も 十 分 に ヒ 素 濃 度 が 均 一 で あ っ て 、作 製
し た 標 準 試 料 は SI M S に よ る ヒ 素 濃 度 の ラ ウ ン ド ロ ビ ン 試 験 用 に 適 し て い る
ことがわかった。
XRF 分析
(1 ) 目 的
SI M S 分 析 用 の 高 A s ド ー プ 基 板 に お け る A s の ウ ェ ハ 間 の ば ら つ き を 、蛍 光
X 線 分 析 法 ( X R F : X - r a y fl u o r e s c e n t a n a l ys i s ) を 用 い て 評 価 す る 。 こ の 結 果
の詳細は文献 1 に示す。
(2 ) 実 験 方 法
高 A s ド ー プ 基 板 ( 1 2 5 1 5 7 A l お よ び 1 2 5 1 5 8 M l ) の 両 面 を 、 1 0 ±3 μ m 程 度 鏡
面 研 磨 し 、 XRF 分 析 用 の 試 料 と し た 。 エ ネ ル ギ ー 分 散 型 X 線 分 析 装 置
( J SX -3 1 0 0 R l l 、 日 本 電 子 製 ) を 用 い 、 こ の 試 料 の 表 裏 に お け る A s の 蛍 光 X
線強度を各 3 回測定した。
(3 ) 結 果
高 A s ド ー プ 基 板( 1 2 5 1 5 7 A l お よ び 1 2 5 1 5 8 M l )に お け る 表 裏 の 測 定 結 果 を 、
表 4 .1 -5 に 示 す 。c p s 単 位 で の 実 測 定 強 度 と 、照 射 X 線 の 管 電 流 の 変 動 を 抑 え
る た め 、 照 射 X 線 の 管 電 流 値 で 割 り 込 ん だ 相 対 強 度 ( CPS/mA) と を 示 し た 。
9 5 %の 信 頼 性 で 、 そ れ ぞ れ の 試 料 の 表 裏 で の 相 対 強 度 の 両 側 t 検 定 を 行 っ た
結 果 、い ず れ の 試 料 で も 表 と 裏 で の ば ら つ き は 有 意 差 で は な か っ た 。 一 方 、 表
と 裏 で の 有 意 差 が な い と し て 両 試 料 の t 検 定 行 う と 、 有 意 差 が 認 め ら れ た 。両
試 料 の 全 相 対 強 度 の 平 均 値 に 対 し て 、 相 対 強 度 は 12% 程 度 変 化 し て お り 、 場
所によるばらつきがある可能性がある。
従 っ て 、 今 回 の ウ ェ ハ に お い て は 、 同 一 試 料 の 表 裏 に は As の 濃 度 に は 差 は
認められないが、試料間では濃度のばらつきが存在するものと考えられる。
- 39 -
表 4 .1 -5 X R F 分 析 に よ る 1 2 5 1 5 7 A 1 お よ び 1 2 5 1 5 8 M 1 の A s 測 定 結 果
125157A1
試料
強
度
(cps)
125158M1
相対強度
相 対 強
相 対 強
強
(cps/mA)
度 の 平
度 標 準
(cps)
均値
偏差
度
相 対 強 度
相 対 強
相 対 強
(cps/mA)
度 の 平
度 標 準
均値
偏差
282.0
564.0
295.9
591.8
453.6
299.1
586.4
225.1
454.7
288.4
571.1
裏 -2
228.2
461.0
283.9
567.9
裏 -3
220.4
436.4
286.9
579.6
表 -1
245.5
454.6
表 -2
244.6
461.6
表 -3
224.5
裏 -1
456.6
450.7
4.4
12.8
580.7
1 4 .7
572.9
6 .0
引用文献
1) 一 般 社 団 法 人
研 究 産 業 ・ 産 業 技 術 振 興 協 会 , [J R I A 2 5 ナ ノ 分 析 標 準 ] 新
エ ネ 素 子 の 開 発 加 速 に 資 す る ナ ノ 領 域 元 素 分 析 標 準 化 補 助 事 業 報 告 書 , (2 0 1 4 )
p .6 4 .
標準試料による SIMS 分析精度向上とラウンドロビンテスト
試 作 し た 試 料 を 標 準 試 料 と し て 用 い て 、 A s (1 k e V, 1 E 1 5 c m - 2 ) 注 入 Si 試 料 と
A s (3 k e V, 3 E 1 5 c m - 2 ) 注 入 Si 試 料 に 関 し 、 ラ ウ ン ド ロ ビ ン 測 定 を 行 い 、 試 作 し
た 試 料 の 標 準 試 料 と し て の 妥 当 性 を 評 価 す る こ と を 目 的 と し て 、ラ ウ ン ド ロ ビ
ン 測 定 を 行 っ た 。 参 加 機 関 は 、 U l va c P h i A DE P T 1 0 1 0 で の 参 加 が 2 機 関 、
C A M E C A SI M S4 5 5 0 で の 参 加 が 1 機 関 の 計 3 機 関 で あ る 。 こ の 結 果 の 詳 細 は
文献
(1)
を参照されたいが、ここでは、概要を記す。
1 ke V イ オ ン 注 入 試 料 の 測 定 結 果 か ら 得 ら れ た 面 密 度 、 ピ ー ク 濃 度 、 ピ ー ク
深 さ 表 4 .1 -6 に 示 す 。 3 k e V イ オ ン 注 入 試 料 の 測 定 結 果 を 表 4 .1 -7 に 示 す 。 1
ke V 注 入 試 料 の 機 関 間 の ば ら つ き は C V 値 と し て 、 ド ー ズ 量 で 8 .7 %、 ピ ー ク
濃 度 で 9 .8 % 、ピ ー ク 深 さ で 1 2 %、3 k e V 注 入 試 料 の 機 関 間 ば ら つ き は C V 値
と し て 、ド ー ズ 量 で 1 3 %、ピ ー ク 濃 度 で 9 . 0 %、ピ ー ク 深 さ で 1 2 % で あ っ た 。
ド ー ズ 量 と ピ ー ク 濃 度 に 関 し て は 、機 関 A の 機 関 内 ば ら つ き が そ れ ぞ れ 9 .0 %
程 度 で あ っ た こ と を 考 慮 に 入 れ る と 、試 作 さ れ た 標 準 試 料 を 用 い て デ ー タ 処 理
さ れ た 機 関 間 で の ば ら つ き は 小 さ い と 言 え る 。深 さ に つ い て の 機 関 間 の ば ら つ
き は 、機 関 C で は イ オ ン 注 入 試 料 の 測 定 時 に ス パ ッ タ レ ー ト が 高 く な っ て い る
可 能 性 が あ り 、一 次 イ オ ン 電 流 の 安 定 性 が 向 上 す れ ば 、ば ら つ き は さ ら に 小 さ
く な る も の と 予 想 さ れ る 。こ の よ う に 、試 作 さ れ た 試 料 の 標 準 試 料 と し て の 妥
当性が検証できた。
- 40 -
表 4 .1 -6 1 k e V イ オ ン 注 入 試 料 の ド ー ズ 量 、 ピ ー ク 濃 度 、 ピ ー ク 深 さ
A
B
C
TXRF 結 果
ドーズ量
1 .1 7 ×1 0 1 5
1 .2 2 ×1 0 1 5
9 .9 5 ×1 0 1 4
1 .0 5 6 ×1 0 1 5
a to ms /c m 2
1 .0 3 ×1 0 1 5
ピーク濃度
4 .4 8 ×1 0 2 1
4 .1 4 ×1 0 2 1
3 .5 1 ×1 0 2 1
a to ms /c m 3
3 .9 6 ×1 0 2 1
ピ ー ク 深 さ nm
4 .3 7
4 .5 2
3 .6 2
4 .3 7
表 4 .1 -7 3 k e V イ オ ン 注 入 試 料 の ド ー ズ 量 、 ピ ー ク 濃 度 、 ピ ー ク 深 さ
A
B
C
TXRF 結 果
ドーズ量
8 .6 8 ×1 0 1 4
1 .0 5 ×1 0 1 5
1 .1 0 ×1 0 1 5
1 .0 0 5 ×1 0 1 5
a to ms /c m 2
8 .2 2 ×1 0 1 4
ピーク濃度
1 .6 8 ×1 0 2 1
1 .9 4 ×1 0 2 1
1 .7 3 ×1 0 2 1
a to ms /c m 3
1 .5 8 ×1 0 2 1
ピ ー ク 深 さ nm
6 .4 5
6 .5 1
6 .0 5
6 .4 5
引用文献
(1 ) 平 成 2 5 年 度 新 エ ネ 素 子 の 開 発 加 速 に 資 す る ナ ノ 領 域 元 素 分 析 標 準 化 補 助
事業報告書, 一般社団法人
研 究 産 業 ・ 産 業 技 術 振 興 協 会 , [J R I A 2 5 ナ ノ 分 析
標 準 ] , (2 0 1 4 ) p .6 7 .
- 41 -
開発した標準試料と認証標準物質
本 事 業 の シ リ コ ン 多 層 膜 BN デ ル タ ド ー プ 層 標 準 試 料 は 委 員 会 内 で の 標 準 化
活 動 に 貢 献 し た が 、さ ら に そ の 作 製 の 知 見 を も と に し て 当 委 員 会 の メ ン バ ー が
認 証 標 準 物 質 ( C R M 、 c e r ti fi e d r e fe r e n c e ma te r i a l ) を 開 発 し た 。 ま た そ の
CRM は 計 量 標 準 総 合 セ ン タ ー ( NMIJ) か ら 平 成 27 年 4 月 よ り 供 給 を 開 始 す
る こ と と な っ た 。N M I J ( 1 ) は 国 家 計 量 機 関 で あ り 、 分 析 機 器 の 校 正 、 分 析 方
法 の 評 価 な ど 、化 学 計 測 に お け る 測 定 値 を 決 定 す る た め に 必 要 な 正 確 に 値 付 け
された認証標準物質を生産している。
標 準 物 質 は 、 1) 分 析 ・ 計 測 機 器 の 校 正 、 2) 物 質 ・ 材 料 へ の 値 付 け 、 3) 分
析・計 測 方 法 の 評 価 、4 )分 析・試 験 機 関 あ る い は 分 析 者・測 定 者 の 技 能 の 確 認 、
などの目的で使用される
(2)
。 特 に 、 認 証 標 準 物 質 は 、 ISO ガ イ ド 30「 標
準 物 質 に 関 連 し て 用 い ら れ る 用 語 及 び 定 義 」に 記 さ れ て い る よ う に 、認 証 書 が
添 付 さ れ た 標 準 物 質 で あ る 。認 証 書 は 、認 証 値 が 記 載 さ れ 、ま た そ の 認 証 値 は
ト レ - サ ビ リ テ ィ の 確 立 さ れ た 手 順 に よ っ て 確 定 さ れ て お り 、か つ そ の 不 確 か
さ が 付 与 さ れ て い る 。認 証 標 準 物 質 を 用 い た 精 度 管 理 に よ り 、分 析 ・ 計 測 値 の
平 均 値 と 認 証 値 の 差 の 絶 対 値 を 要 求 真 度 と 比 較 す る こ と に よ る 、真 度 の 管 理 を
行 う こ と が で き る 。し た が っ て 、分 析・計 測 に お け る 真 度( 正 確 さ )の 評 価 あ
る い は 国 際 単 位 系 ( SI) へ の ト レ - サ ビ リ テ ィ の 立 証 に 不 可 欠 な も の で あ る 。
図 4 .1 -7 に 認 証 書 の 例 を 示 す 。本 事 業 で 開 発 し た シ リ コ ン 多 層 膜 B N デ ル タ ド
ープ層標準試料も同様の認証書が添付される。
引用文献
(1 )
独 立 行 政 法 人 産 業 技 術 総 合 研 究 所( A I ST )計 量 標 準 総 合 セ ン タ ー( N M I J )
ホ ー ム ペ ー ジ : h ttp s : // w ww.n mi j .j p / s e r v i c e /C /
(2 )
NMIJ:認 証 標 準 物 質 の 使 い 方 と メ リ ッ ト
h ttp s :/ / ww w.n mi j . j p /s e r vi c e /C /H o w_ to _ u s e _ C R M .p d f
- 42 -
- 43 -
図 1
図 2
認 証 書 の 例 ( NM I J C R M 52 0 5 - a
認 証 書 の 例 ( NM I J C R M 52 0 5 - a
デ ル タ BN 多 層 膜 )
デ ル タ BN 多 層 膜 )
図 4 .1 -5 BN デ ル タ 多 層 膜 標 準 物 質 認 証 書 ( 見 本 )
- 44 -
SIMS 用標準試料開発のまとめ
XRR 法 か ら 、 堆 積 し た 膜 厚 は ウ ェ ハ 中 心 付 近 で や や 厚 い も の の 、 ウ ェ ハ 面
内 の B N 層 平 均 周 期 は 8 .1 7 n m で あ り 、 そ の ば ら つ き ( 標 準 偏 差 ) は 0 .1 n m
以 下 で あ り 、多 層 膜 の 製 造 品 質 が S I M S 用 標 準 試 料 と し て 十 分 良 い こ と が 検 証
された。
S/T E M 観 察 か ら 、 表 面 に 1 .2 n m の 酸 化 膜 が 存 在 し 、 そ れ 以 降 の 周 期 は 表 面
側 か ら 8 .4 n m / 8 .3 n m / 8 .3 n m で あ っ た 。 こ の こ と か ら 、 試 作 し た 試 料 は 、
SI M S 深 さ 校 正 標 準 試 料 と し て 膜 厚 の 周 期 性 、 B N デ ル タ ド ー プ 層 の 平 坦 性 が
適切であることが検証された。
SI M S 分 析 か ら 、 B N デ ル タ 多 層 膜 が 妥 当 に 堆 積 さ れ て お り 、 B N デ ル タ 層 で
マ ト リ ッ ク 効 果 が 生 じ な い こ と が 検 証 さ れ た 。ま た 、濃 度 較 正 の A s は 、膜 / 基
板 界 面 か ら 2 0 n m 程 度 の 揺 ら ぎ が 見 ら れ た も の の 、そ れ よ り 深 く に お い て は 、
2 .5 μ m ま で の 深 さ で 均 一 に ド ー プ さ れ て い る こ と が 検 証 で き た 。 こ の こ と か
ら 、 試 作 し た 試 料 が SI M S の 深 さ 校 正 用 と A s 濃 度 校 正 用 の 両 者 に 適 し て い る
ことが検証された。
TOF-SIMS の 結 果 か ら 、 a-Si / BN 界 面 で H、 C、 F、 Cl が 高 い 傾 向 に あ り 、
ま た 、 H、 O 等 が 局 所 的 に 高 濃 度 検 出 さ れ る 深 さ が 存 在 し た 。
HR -R B S の 結 果 か ら 、表 面 に 1 n m 程 度 、基 板 と の 界 面 に 3 n m 程 度 の 酸 化 膜
の 存 在 が 確 認 さ れ た 。 更 に 、 B N デ ル タ 層 中 で は SI M S 分 析 時 の マ ト リ ッ ク ス
効果を与えるような O が検出されていないことが検証された。なお、分析時
に BN 層 中 で As 又 は Br の 存 在 が 示 唆 さ れ た が 、 そ の 質 量 に 検 出 さ れ た 元 素
は成膜時のキャリアガスであると判明している。
中 性 子 放 射 化 分 析 で は 、ウ ェ ハ 間 で の A s 濃 度 に は ば ら つ き が 見 ら れ た が 、同
じ ウ ェ ハ か ら 切 り 出 し た 試 料 間 で は As 濃 度 の ば ら つ き は 小 さ い こ と 判 明 し た 。
こ の こ と か ら 、 基 板 中 の As 濃 度 を 値 付 け す る た め に は 、 ウ ェ ハ 毎 に 値 付 け す
る 必 要 性 が あ る も の の 、 ウ ェ ハ 毎 に 値 付 け を 行 え ば As 濃 度 校 正 試 料 と し て 十
分であることが検証された。
中 性 子 放 射 化 分 析 法 で は 、ウ ェ ハ の 法 線 方 向 に A s の 濃 度 勾 配 が あ っ た 場 合 に
は 、 値 付 け さ れ た 濃 度 に 問 題 が 生 じ る 。 こ の た め 、 XRF 分 析 よ り 、 表 裏 の 両
面 で の 分 析 を 行 い 、 オ モ テ 面 と ウ ラ 面 と の 間 に 1 %の 水 準 で 有 意 差 が あ る と 認
められる試料はなく、法線方向に濃度勾配がないことが検証された。
ラ ウ ン ド 試 験 に よ り 、 試 作 し た 標 準 試 料 を 用 い て 、 SI M S 分 析 デ ー タ を 解 析
することが有効であることが検証された。
以上から、試作した試料の標準試料として妥当性が検証された。
- 45 -
な お 、本 事 業 で 作 製 し た 標 準 試 料 は 、 そ の 製 法 を 参 考 と し て 、独 立 行 政 法 人
産 業 技 術 総 合 研 究 所 ( A I ST ) 計 量 標 準 総 合 セ ン タ ー (N M I J ) よ り 認 証 標 準 物 質
( CRM) と し て 平 成 27 年 4 月 よ り 世 に 出 る こ と が 決 定 し た 。 認 証 標 準 物 質
( CRM) は 分 析 機 器 の 校 正 、 分 析 方 法 の 評 価 な ど 、 化 学 計 測 に お け る 測 定 値
を 決 定 す る た め に 必 要 な 正 確 に 値 付 け さ れ た も の で あ っ て 、国 家 計 量 機 関 で あ
る N M I J か ら 供 給 さ れ る も の で あ る 。当 委 員 会 が 認 証 標 準 物 質 の 生 産 に 道 筋 を
つけたことは特筆すべきこととしてここに強調したい。
- 46 -
BN デルタドープ B 高濃度シリコンウェハ標準試料の開発
Si 中 に 浅 く 注 入 さ れ た B の SI M S 深 さ 方 向 分 析 を 少 な い 不 確 か さ で 測 定 す
る た め の 、深 さ 校 正 用 ス ケ ー ル と B 濃 度 校 正 用 標 準 試 料 の 機 能 を 併 せ 持 っ た 標
準 試 料 を 開 発 し 、試 作 し た 試 料 の 標 準 試 料 と し て の 妥 当 性 を 種 々 の 測 定 に よ り
評価した。
開発の目的
4 .1 .1 で 述 べ た Si 中 へ の 浅 い ド ー プ は 、 ド ー パ ン ト と し て ボ ロ ン ( B ) に お
い て ニ ー ズ は よ り 高 く 、 そ の SIMS 分 析 の 発 展 に 関 し て は 1990 年 代 か ら 議 論
が さ れ て お り 、 2 年 に 1 度 欧 米 亜 持 ち 回 り で 行 わ れ る SI M S の 国 際 学 会 で も
1 9 9 0 年 代 よ り 毎 回 ” U l tr a Sh a l l o w P r o fi l e ”と し て セ ッ シ ョ ン が 組 ま れ る ほ ど
である。
昨 年 度 ま で 、 ヒ 素 ( A s ) の 極 浅 ド ー プ を SI M S で 測 定 す る た め の 、 深 さ と
As 濃 度 を 校 正 す る た め の 標 準 試 料 を 開 発 し 、 そ の 妥 当 性 を 検 証 し て き た 。
本 年 度 は 、深 さ 校 正 用 ス ケ ー ル と
a -S i
B 濃度校正用標準試料の機能を併せ
8 nm
持った標準試料を開発することを
目 的 と し 、深 さ ス ケ ー ル と し て 実 績
(1)-(3)
BN 層
や、深さ方向分解能の評価の
ための試料としての実績
(4)-(6)
0 .0 5 n m 相 当
a -S i
8 nm
があ
るマグネトロンスパッタ法により
BN 層
標 準 試 料 の 試 作 を 行 っ た 。深 さ 校 正
0 .0 5 n m 相 当
a -S i
用 と し て 、 約 8nm 間 隔 に BN 層
8 nm
(0 .0 5 n m 相 当 ) の デ ル タ ド ー プ 層 を
有 す る 。ま た 、B 濃 度 校 正 用 と し て 、
BN 層
膜 の 基 板 に は B ド ー プ Si 基 板 (抵 抗
0 .0 5 n m 相 当
a -S i
8 nm
値 : 0 .0 0 2 ~ 0 .0 0 4 Ω c m) を 持 つ 。試
作する試料のイメージを図
4 .2 -1
B ド ー プ Si 基 板
に 示 す 。 な お 、 BN デ ル タ 多 層 膜 成
0 .0 0 2 ~ 0 .0 04
Ω cm
膜後に裏面から 4 探針抵抗測定によ
(B 濃 度 換 算 ; 1 .2 E 19 /c m 3 )
ってキャリア濃度の面内バラツキ
5 0 0 µm
を 評 価 す る こ と が 可 能 な よ う に 、裏
面が鏡面である基板を使用した。
図 4 .2 -1 試 作 BN デ ル タ ド ー プ B 高 濃 度
シリコンウェハ標準試料の概念図
- 47 -
試 作 し た 標 準 試 料 は 、図 4 .2 -2 に 示 す 1 8 チ ッ プ で あ り 、基 板 か ら 約 1 0 ×1 0 m
m に 切 り 出 し 、 ST E M 観 察 及 び T OF - SI M S に よ り 深 さ 校 正 試 料 と し て の 検 証
を 行 い 、I C P -M S 基 板 側 の SI M S 分 析 及 び 四 探 針 抵 抗 測 定 に よ り 基 板 中 B 濃 度
と同位体比の標準試料としての評価を行った。
図 4 .2 -2 試 作 標 準 試 料 の チ ッ プ 切 り 出 し 位 置
参考文献
(1 ) Y. Ho mm a , H . Ta k e n a k a , F. To u j o u , A . Ta ka n o , S . H a ya s h i a n d R .
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(2 ) F. To u j o u , S . Yo s h i k a wa , Y. Ho mma , A . Ta k a n o , H. Ta k e n a k a , M . To mi ta ,
Z . L i , T. H a s e ga wa , K. Sa s a k a wa , M . Sc u ma c h e r, A . M e r k u l o v, H . M . Ki m , D.
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20 3- 204 , 2 9 8 , ( 2 0 0 3 )
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Sa s a k i a n d S. Ta k e n o , A p p l . Su rf . Sci . 2 55 , 1 3 11 , (2 0 0 8 )
- 48 -
各種表面・界面分析法を用いた試作試料の品質評価
試 作 試 料 の 妥 当 性 を 検 討 す る に あ た り 、 デ ル タ 多 層 膜 の 繰 り 返 し 性 、 SI M S
分 析 と し て の マ ト リ ッ ク ス 効 果 を ほ と ん ど 持 た な い こ と 、基 板 の B 濃 度 と 同 位
体 比 及 び そ の 面 内 均 一 性 に つ い て 評 価 を 行 っ た 。 具 体 的 に は 、 TEM に よ り デ
ル タ 多 層 膜 の 周 期 性 の 観 察 、T OF - SI M S に よ り デ ル タ 多 層 膜 の 繰 り 返 し 性 の 評
価 と 膜 中 の 不 純 物 評 価 及 び マ ト リ ッ ク ス 効 果 の 有 無 の 評 価 、I C P -M S に よ る 基
板 の B 濃 度 の 評 価 と 同 位 体 比 の 評 価 、SI M S に よ る 基 板 中 の B の 同 位 体 比 の 評
価 、4 探 針 抵 抗 測 定 に よ り 基 板 の 抵 抗 率 の 面 内 の ば ら つ き 言 い 換 え る と 基 板 の
キ ャ リ ア 濃 度 の 面 内 の ば ら つ き の 評 価 を 行 う こ と に よ っ て 、試 作 試 料 の 妥 当 性
を 検 討 し た 。深 さ 校 正 標 準 試 料 と し て の 妥 当 性 を 検 証 す る た め の デ ル タ 多 層 膜
の 評 価 、濃 度 校 正 標 準 試 料 と し て の B 濃 度 の 評 価 を 行 う こ と は 当 然 な こ と で あ
る。しかし、B の同位体比を評価する必要性は、B の天然同位体比はおよそ
10
B:
11
B ≒ 20: 80 で あ る と 知 ら れ て い る が 、 厳 密 に は 鉱 石 毎 に 同 位 体 比 は
若 干 異 な っ て お り 、通 常
11
B だ け を 測 定 す る SI M S 測 定 に お い て 、標 準 試 料 の
同位体比を把握することは重要なことなのである。
こ れ ら の 評 価 結 果 の 詳 細 を 4 .2 .2 .1 ~ 4 .2 .2 .6 に 示 す 。
ICP-MS
(1 ) 目 的
SI M S 分 析 用 の B N デ ル タ 多 層 膜 付 き 高 ド ー プ 基 板 に お け る 基 板 中 の B 濃 度
の ウ ェ ハ 間 の ば ら つ き を 調 べ る た め 、 I C P -M S 分 析 ( I C P -M S : X -r a y
fl u o r e s c e n t a n a l ys i s ) を 用 い て 評 価 し た 。 B 濃 度 と し て
した。合わせて、
10
B と
11
10
B と
11
B とを分析
B の同位体比も評価した。
(2 ) 実 験 方 法
<試料>
一 つ の 基 板 内 の 異 な る 位 置 か ら 切 り 出 さ れ た 3 つ の 試 料 を 分 析 し た 。そ の 試 料
番号は
( 1 ) 1 6 、( 2 ) 1 7 、( 3 ) 1 8
計 3 試料である。
(3 ) 測 定 方 法
<試料前処理>
各 試 料 に 対 し 、 機 械 研 削 に よ り あ ら か じ め 表 面 の BN 層 の 除 去 を 行 っ た 。
図 4 .2 -3 に 示 す よ う に 、 チ ッ プ の 四 隅 お よ び 中 央 の 厚 さ を 計 測 し 、 研 削 前
後 の 厚 み の 差 が 5 μ m 以 上 に な る ま で 研 削 を 行 っ た 。 表 4 .2 - 1 に 、 各 試 料 の 寸
法および研削前後の厚さを示す。
- 49 -
1
4
中
央
2
3
図 4 .2 -3 試 料 厚 さ 計 測 位 置
表 4 .2 -1 試 料 寸 法 お よ び 研 削 前 後 の 厚 さ
厚 さ (μ m )
試料名
寸法
( m m)
16○
1 0 .2 1 4 ×9 .4 8 1
17○
1 0 .4 9 3 ×9 .4 7 9
18○
1 0 .1 4 2 ×9 .7 6 8
四隅
中央
1
2
3
4
研削前
504
501
502
504
504
研削後
487
490
488
485
491
研削前
501
501
505
507
506
研削後
485
485
486
487
489
研削前
508
508
506
507
507
研削後
475
470
470
477
473
研 削 し た 試 料 を 、リ ン 酸 、硝 酸 お よ び フ ッ 化 水 素 酸 を 用 い て 加 熱 分 解 し 、超
純水を用いて希釈・定容した。
<B 濃度(
10
B、
11
B) お よ び B 同 位 体 比 (
10
B / 11 B ) 測 定 >
超 純 水 に よ っ て 希 釈 し た 試 料 溶 液 を 測 定 溶 液 と し 、 四 重 極 型 ICP 質 量 分 析
装 置 ( A gi l e n t 7 5 0 0 c s 、 ア ジ レ ン ト ・ テ ク ノ ロ ジ ー 株 式 会 社 製 ) を 用 い て 、 B
濃 度(
10
B 、 11 B ) お よ び B 同 位 体 比 測 定 (
10
B / 11 B ) を 行 っ た 。 そ の 測 定 条 件
を 、 表 4 .2 -2 に 示 す 。
B 濃 度 測 定 に は 、ほ う 素 標 準 液( 関 東 化 学 株 式 会 社 製 )を 用 い 、 9 Be を 内 標
準とした検量線法によって
10
B、
11
B 濃度を測定した。
- 50 -
表 4 .2 -2 測 定 条 件
積 分 時 間 (s /p o i n t )
データ点数
0 .3 3
3
(p o i n ts /p e a k)
1000
スキャン回数
(4 ) B 濃 度 お よ び 同 位 体 比 の 算 出 方 法
ほ う 素 同 位 体 標 準 物 質 で あ る N I ST SR M 9 5 1 a を 用 い て 、 検 量 線 に 用 い た ほ
う素標準液の
試 料 の B(
10
10
B,
B、
11
B の同位体存在比を求め、各試料の測定値を補正し、各
11
B) 濃 度 と し た 。
ま ず 、 I C P -M S 装 置 の 質 量 数 ご と の 感 度 補 正 の た め 、 ほ う 素 の 同 位 体 比
(
10
B / 1 1 B ) が 既 知 の N I ST SR M 9 5 1 a を 超 純 水 で 溶 解 し た も の を 分 析 し た 。
そ の 測 定 値 に 対 す る 認 証 値 の 比 の 逆 数 を 補 正 係 数 と し た 。次 に 、検 量 線 に 用 い
たほう素標準液の
10
B 、 11 B の 測 定 値 に 、 こ の 補 正 係 数 を 乗 じ て 補 正 し た 。 最
10
後 に 、ほ う 素 標 準 液 の
11
B 、1 1 B 同 位 体 存 在 比 の 補 正 値 を 用 い 、各 試 料 の
B の 測 定 値 を 補 正 し 、そ れ ぞ れ の 濃 度 と し た 。ま た 、各 試 料 の
10
10
B および
B、
11
B
について補正した濃度の比から、B 同位体比を求めた。
表 4 .2 -3 に 、 今 回 行 っ た N I ST SR M 9 5 1 a の 測 定 値 、 認 証 値 、 お よ び 補 正 係
数 を 示 し 、 表 4 .2 -4 に ほ う 素 標 準 液 の 測 定 値 と B 評 価 の た め の 補 正 値 を 示 す 。
表 4 .2 -3 N I ST SR M 9 5 1 a の 分 析 結 果
10
B / 11 B
同位体存在比
10
B
11
B
N I ST SR M
測定値
0 .2 2 7 2
0 .1 8 5 2
0 .8 1 4 8
951a
認証値
0 .2 4 7 3
0 .1 9 8 3
0 .8 0 1 7
1 .0 8 8
1 .0 7 1
0 .9 8 3 9
補正係数
表 4 .2 -4 ほ う 素 標 準 液 の 分 析 結 果
10
ほう素標準液
B / 11 B
同位体存在比
10
B
11
B
測定値
0 .2 2 9 7
0 .1 8 6 8
0 .8 1 3 2
補正値
0 .2 5 0 0
0 .2 0 0 0
0 .8 0 0 1
注 )表 4 .2 - 3 の 補 正 係 数 を 表 4 .2 -4 に 示 さ れ て い る 測 定 値 に 乗 じ る こ と で 、補
正値を求めた。
- 51 -
(5 ) B 濃 度 お よ び B 同 位 体 比 の 分 析 結 果
10
B、
11
B の 存 在 比 率 が そ れ ぞ れ 100%で あ る と 仮 定 し 、 検 量 線 法 に よ
っ て 測 定 し た 、 各 試 料 に お け る B 濃 度 を 表 4 .2 -5 に 示 す 。
こ の 測 定 値 に 対 し 、 B 同 位 体 の 補 正 を 行 っ た 分 析 値 を 表 4 .2 - 5 に 示 す 。
B 濃 度 は 、 試 料 間 で 2 4 2 ,2 4 9 , 2 5 1 ( μ g /g ) と ば ら つ き は 少 な い か っ た 。
こ の 試 料 の 同 位 体 比 は 、 天 然 同 位 体 比 と し て 知 ら れ る 0 .2 5 程 度 の 、 1 /2 0 程
度以下と、かなり
10
B が少ないものであった
表 4 .2 -5 補 正 前 の B 濃 度 測 定 結 果
試料番号
B 濃 度 ( μ g / g)
試料重量
( g)
10
B
11
B
16
0 .1 0 3 4
1 4 .2
299
17
0 .1 0 6 5
1 3 .5
308
18
0 .1 0 2 5
1 2 .9
3 11
表 4 .2 -6 試 料 の B 濃 度 お よ び B 同 位 体 比 の 分 析 結 果
(表 5 の実測結果から補正したもの)
試料番号
B 濃 度 ( μ g / g)
10
B
11
B
to t a l
10
B / 11 B
16
2 .8
239
242
0 .0 11 9
17
2 .7
246
249
0 .0 1 0 9
18
2 .6
249
251
0 .0 1 0 4
TOF-SIMS 分析
(1 ) 目 的
本 分 析 は 、試 料 の a - S i 層 お よ び B N 層 中 の 不 純 物 に 関 す る 知 見 を 、T OF -S I M S
を用いて得ることにある。
(2 ) 試 料
本 分 析 で は 、 試 料 番 号 : N o .6 に つ い て の 測 定 を 実 施 し た 。
(3) 分析方法
本測定で用いた測定条件を、以下の表に示す。
- 52 -
表 4 .2 -7 測 定 条 件
T OF. SI M S 5
分析装置
軽元素、ハロゲン
注目元素
メタル元素等
元素等
O2
Cs +
エッチングイオン種
エ ッ チ ン グ イ オ ン 加 速 電 圧 (kV)
0 .5
一次イオン種
Bi +
一 次 イ オ ン 加 速 電 圧 (k V )
25
N e ga ti ve
ニ次イオン極性
+
P o s i ti v e
二次イオン検出領域(μm□ )
150
(4 ) 測 定 結 果
分析結果は以下の通りである。
表 4 .2 -8 分 析 結 果 一 覧
測定番号
二次イオン極性
1
N e ga ti ve
2
P o s i ti ve
3 ,4
N e ga ti ve
測定深さ
測定モード
表 面 ~ Si 基 板
デプスプロファイル
BN 層
a -Si 層
5 ,6
7 ,8
マススペクトル
BN 層
P o s i ti ve
a -Si 層
9 ,1 0
本測定から得られた結論は、以下の通りである。
・
BN 層 中 で は B が 高 い 強 度 で 検 出 さ れ て い る 。 O 2
+
イオンでエッチングし
た 場 合 に 比 べ 、C s + イ オ ン で エ ッ チ ン グ し た 場 合 は 深 さ 分 解 能 が 劣 る た め 、
B の分布が比較的ブロードになる。
・
各 B N 層 /a -Si 層 に お い て 、 B N 層 と そ の 直 下 の a - Si 層 と の 界 面 で H 、 C、
F、 Cl の 各 強 度 が 高 い 傾 向 に あ る 。
・
A s 及 び Ge は 、 Si 基 板 直 上 の B N 層 を 除 き 検 出 下 限 レ ベ ル で あ る 。
・
Si 基 板 直 上 の B N 層 付 近 で は 、 そ の 他 の B N 層 よ り も H 、 C 、 F 、 C l の 二
次イオン強度が高い傾向にある。
・
多 層 膜 表 面 近 傍 で In が 、 同 膜 深 部 側 で Na、 Cu が 比 較 的 高 い 強 度 で 検 出
さ れ て い る 。 ま た Si 基 版 直 上 の B N 層 付 近 で は 、 K 及 び F e が 検 出 さ れ て
いる。
・
Al、 Ca、 Ni は 、 多 層 膜 中 で ほ ぼ 検 出 限 界 レ ベ ル で あ る 。
・
L i 、 B e 、 M g 、 V 、 Ti 、 C r 、 M n 、 C o 、 Z n 、 Ga 、 Y 、 Z r 、 M o 、 Hf 、 Ta 、 P b
は本測定の検出限界レベルにある。
- 53 -
SIMS による B の同位体分析
(1 ) 目 的
BN デ ル タ 多 層 膜 付 き 高 ド ー プ B 基 板 に 対 し 、 裏 面 か ら SIMS 分 析 を 行 い 、
Si 基 板 中 に お け る
10
B,
11
B の同位体比を求める。
(2 ) 試 料 番 号
・ No.3
BN デ ル タ 多 層 膜 付 き 高 ド ー プ B 基 板
(3 ) 装 置 お よ び 測 定 条 件
装置
AT OM I KA
4500 型
一次イオン条件
Cs + , 5keV、 45°
照射領域
約 400×565μ m
分析領域
約 200×283μ m
二次イオン
3 8 BSi -
酸素吹き付け
無し
バックサイド分析
無し
二次イオン質量分析装置
、 3 9 BSi - 、 4 0 BSi - 、 4 1 BSi - 、 4 2 HBSi -
(4 ) 分 析 結 果
・基板中における
10
B と
11
B の同位体比
注 1)
は
10
B:
11
B = 0 . 0 11 : 1 で あ っ
た。
注 1 )同 位 体 計 算 方 法 :
39
を
38
B Si - の 結 果 を
38
( 1 0 B + 2 8 Si ) - と し 、
{( 1 0 B + 2 9 Si )+ ( 1 1 B + 2 8 Si ) } - と 仮 定 し た 。
39
( 1 0 B + 2 9 Si ) - の 強 度 を 算 出 し 、 そ れ を
39
( 1 1 B + 2 8 Si ) - の 強 度 を 求 め た 。 こ の
度より
10
B と
11
38
39
38
39
B Si - の 結 果
( 1 0 B + 2 8 Si ) - の 結 果 か ら
B Si - か ら 引 く こ と に よ っ て
( 1 0 B + 2 8 Si ) - と
39
( 1 1 B + 2 8 Si ) - の 強
B の同位体比を計算した。
断面 S/TEM 観察
(1 ) 目 的
B 高 濃 度 Si (1 0 0 ) 基 板 上 に 積 層 さ れ た B N デ ル タ ド ー プ 多 層 膜 試 料 が 、S I M S
の 深 さ 校 正 試 料 と し て 妥 当 か 否 か の 確 認 の た め 、断 面 S /T E M 観 察 に よ り 、B N
デルタドープ多層膜試料の試作品に関して以下の点について妥当性確認を行
った。
(a )
BN デ ル タ ド ー プ 層 の 平 坦 性 確 認
(b )
表 面 酸 化 Si 層 厚 、 a - Si 層 厚 、 Si 基 板 表 面 酸 化 Si 層 厚 の 評 価
- 54 -
(2 ) 分 析 条 件
断 面 TEM 観 察 及 び STEM 観 察 を 以 下 の 条 件 で 行 っ た 。
観察試料:試作品
試 料 番 号 : No.15
a - Si ( 8 n m) /B N (0 .0 5 n m 相 当 )/ 高 ド ー プ B 基 板
ST E M 像 観 察 装 置 : 日 本 電 子 株 式 会 社 A R M -2 0 0 F
加 速 電 圧 : 200kV
観 察 倍 率 : ×4M
検 出 器 : Ga t a n 製 Di gi S c a n
観 察 モ ー ド : HA A DF -ST E M
1048×1048
倍 率 校 正 : T E M 像 及 び HA A DF -ST E M 像 の 倍 率 校 正 は 、 そ れ ぞ れ の 高 分 解 能
像 の F F T パ タ ー ン に 現 れ る Si 基 板 (0 0 4 ) 由 来 の ス ポ ッ ト 間 距 離 0 .1 3 5 6 n m を 内
標準として行った。
(3 ) 観 察 結 果 及 び a - S i 間 隔 測 長 結 果
ST E M 像 観 察 結 果
図 4 .2 -4 に B N デ ル タ ド ー プ 多 層 膜 の 断 面 HA A DF - ST E M 像 を 示 す 。 a - Si
層 中 の BN デ ル タ ド ー プ 層 に 対 応 す る と 思 わ れ る 明 る い 筋 状 の コ ン ト ラ ス ト が
3 本 観 察 さ れ た 。 ま た 、 多 層 膜 表 面 及 び Si 基 板 表 面 に は 酸 化 Si 層 の コ ン ト ラ
ス ト を 確 認 す る こ と が 出 来 た 。 こ の 像 に よ り 、 BN デ ル タ ド ー プ 多 層 膜 の 膜 厚
は 均 一 で あ る こ と 、B N デ ル タ ド ー プ 層 は 平 坦 で 表 面 及 び Si 基 板 表 面 に 対 し て
十 分 に 平 行 で あ り SIMS 深 さ 校 正 試 料 と す る た め に 必 要 な 平 坦 性 を 有 し て い
る様子が観察出来た。
観 察 さ れ た HA A DF - ST E M 像 に 対 し て 領 域 を 設 定 し ( 図 4 .2 - 5 青 枠 )、 コ ン
ト ラ ス ト プ ロ フ ァ イ ル を 得 た ( 図 4 .2 -6 )。
コ ン ト ラ ス ト プ ロ フ ァ イ ル に お い て BN デ ル タ ド ー プ 層 の 位 置 は 明 確 な ピ ー
ク と し て 示 さ れ ( 図 4 .2 -1 8 黄 矢 印 )、 多 層 膜 表 面 酸 化 Si /a - S i 層 、 a -Si 層 / 基
板 表 面 酸 化 Si の 界 面 位 置 を 像 と の 対 応 か ら コ ン ト ラ ス ト プ ロ フ ァ イ ル 中 に 決
定 し た 。 こ の 結 果 か ら 求 め た 多 層 膜 表 面 酸 化 Si 層 厚 、 a - Si 層 厚 ( 4 層 )、 Si
基 板 表 面 酸 化 Si 層 厚 を 表 4 .2 -9 に 示 し た 。
以 上 の ST E M 観 察 の 範 囲 に お い て は 、 試 作 し た デ ル タ 多 層 膜 試 料 は 、 SI M S
の 深 さ 校 正 試 料 と し て 膜 厚 の 均 一 性 、 B N デ ル タ ド ー プ 層 の 平 坦 性 、 a -Si 層 厚
について十分であると言える。
- 55 -
図 4 .2 -4
B N デ ル タ ド ー プ 多 層 膜 (A d d r e s s 1 5 _ a -S i (8 n m) /B N (0 .0 5 n m 相 当 ) /
高 ド ー プ B 基 板 ) の 断 面 HA A DF -ST E M 像
- 56 -
⑤
④
③
②
①
⑥
図 4 .2 -5 HA A DF -T E M 像 か ら コ ン ト ラ ス ト プ ロ フ ァ イ ル を 得 る た め の R OI
(青枠)
- 57 -
3400
3380
3360
3340
3320
Th ick nes s ( nm )
x 10^3
3300
⑤
3280
3260
3240
3220
3200
3180
⑥
3160
3140
3120
④
⑥
③
1. 2
⑤
8. 4
④
8. 1
③
8. 1
②
7. 2
5
15
10
①
1. 5
①
0
②
20
nm
25
30
35
40
図 4 .2 -6 HA A DF -ST E M 像 か ら 得 た コ ン ト ラ ス ト プ ロ フ ァ イ ル
表 4 .2 -9 HA A DF -ST E M 像 か ら 得 た コ ン ト ラ ス ト プ ロ フ ァ イ ル に よ り 求 め た
各層の厚さ
T h i c kn e ss (n m)
⑥
1 .2
⑤
8 .4
④
8 .1
③
8 .1
②
7 .2
①
1 .5
探針抵抗測定
(1 ) 目 的
ホ ウ 素 濃 度 の 校 正 用 の 標 準 試 料 と し て 、基 板 の ホ ウ 素 濃 度 の バ ラ ツ キ を 評 価
す る こ と は 重 要 で あ る 。 こ こ で は 、 基 板 の ホ ウ 素 濃 度 の バ ラ ツ キ の 評 価 を 、抵
抗のバラツキを評価することによって行った。
(2 ) ウ ェ ハ 状 態 で の 裏 面 の 抵 抗 測 定
試 作 さ れ た 標 準 試 料 は 、基 板 の ホ ウ 素 濃 度 の バ ラ ツ キ を B N デ ル タ 多 層 膜 の
成 膜 後 に 評 価 す る こ と が で き る よ う に 、裏 面 も 鏡 面 研 磨 さ れ た 4 イ ン チ ウ ェ ハ
である。ここではウェハ状態での裏面の抵抗率のバラツキを評価した。
- 58 -
(3 ) ① 測 定 条 件
測 定 は 、 J I S H0 6 0 2 に 準 拠 し て 行 わ れ た 。 以 下 に 、 測 定 条 件 等 を 記 す 。
・装置
四探針測定装置:
KY O WA R I KE N
K -5 0 3 R X 1 5 0
探針間隔:
0 .1 c m
直流電源;
TA KA SA GO
T P 0 7 0 -1 D
電圧計:
KE I T HL E Y
2500
M u l ti ma te r
1 0 0 mA
・印加電流:
・ ウ ェ ハ 厚 さ に よ る 補 正 項 : 今 回 の ウ ェ ハ 厚 : 500 μ m で の 係 数 参 照 。
・ウェハの直径及び測定位置による補正項;
4 インチウェハの各点の位置での係数参照。
・温度による補正項:
今 回 の 測 定 温 度 : 21℃ で の 係 数 参 照 。
・シリコン抵抗率の温度係数:
0 .0 0 4 0 (p 型 )、 2 1 ℃ で の 係 数 参 照 。
②結果再現性の確認
中 心 に お い て 、 中 心 に お い て 測 定 の 再 現 性 を 調 べ た 。 結 果 を 表 4 .2 -1 0 に 示
す 。 C V 値 と し て 1 .9 %程 度 の 再 現 性 が 得 ら れ た 。
表 4 .2 -1 0 中 心 付 近 で の 抵 抗 の 再 現 性
I
V ( -)
V ( +)
V (平 均 )
V /I
 (2 5 )
(mA )
(mV )
(mV )
(mV )
(Ω )
Ω ・cm
1 回目
100
1 .6 6
1 .6 5
1 .6 6
0 .0 1 6 5 5
0 .0 0 3 7 7
2 回目
100
1 .6 6
1 .5 4
1 .6 0
0 .0 1 6 0 0
0 .0 0 3 6 4
3 回目
100
1 .5 9
1 .5 7
1 .5 8
0 .0 1 5 8 0
0 .0 0 3 6 0
4 回目
100
1 .5 7
1 .6 0
1 .5 9
0 .0 1 5 8 5
0 .0 0 3 6 1
5 回目
100
1 .5 9
1 .5 9
1 .5 9
0 .0 1 5 9 0
0 .0 0 3 6 2
平均
100
1 .6 1
1 .5 9
1 .6 0
0 .0 1 6 0 2
0 .0 0 3 6 5
R SD
0 .0 0 4 3
0 .0 4 1
0 .0 3 1
0 .0 0 0 3 1
0 .0 0 0 0 7
CV
2 .6
2 .6
1 .9
1 .9
1 .9
(% )
(4 ) オ リ フ ラ と 平 行 方 向 の 抵 抗 率
オ リ フ ラ と 平 行 方 向 の 抵 抗 率 を 図 4 .2 -7 に 示 す 。ま た 、中 心 付 近 で 測 定 点 数
を 細 か く 測 定 し た 結 果 を 図 4 .2 -8 に 示 す 。バ ラ ツ キ は 、C V 値 で 4 .5 %以 内 に 収
ま っ て い る 。な お 、オ リ フ ラ と 平 行 方 向 に 抵 抗 率 に 分 布 を 持 っ て い る こ と が わ
か る 。こ の 分 布 は +方 向 と -方 向 と で 異 な る 傾 向 が 見 ら れ 、中 心 か ら 同 心 円 状 に
抵抗が分布しているわけではない。
- 59 -
図 4 .2 -7 オ リ フ ラ と 平 行 方 向 の 抵 抗 率 の 測 定 結 果
図 4 .2 -8 オ リ フ ラ と 平 行 方 向 の 抵 抗 率 (中 心 付 近 の 詳 細 ) の 測 定 結 果
(5 ) オ リ フ ラ と 垂 直 方 向 の 抵 抗 率
オ リ フ ラ と 垂 直 方 向 の 抵 抗 率 を 図 4 .2 -9 に 示 す 。 抵 抗 率 の バ ラ ツ キ は 4 .4 %
以 内 に 収 ま っ て い る が 、わ ず か に オ リ フ ラ と 垂 直 方 向 に 抵 抗 率 に 分 布 を 持 っ て
いることがわかる。
- 60 -
図 4 .2 -9 オ リ フ ラ と 垂 直 方 向 の 抵 抗 率 の 測 定 結 果
(6 ) ③ 測 定 上 の 問 題 点
今 回 の 試 料 は 、裏 面 の 抵 抗 測 定 を 行 い 易 い よ う に 、基 板 は 両 面 研 磨 基 板 で あ
っ た 。し か し な が ら 、場 所 に よ っ て 、測 定 中 に 印 加 電 流 が ふ ら つ い た り 、場 合
に よ っ て は 、絶 縁 破 壊 音 が す る な ど し た 。こ の た め 、抵 抗 値 の ば ら つ き が 、面
内のばらつきを反映したものか否かの区別がつかなかった。この理由として、
成 膜 時 に 裏 面 に 高 抵 抗 物 質 が 付 着 し た 可 能 性 が 考 え ら れ た 。従 っ て 、チ ッ プ を
切り出した後に、両面を再度研磨し、抵抗測定を行うこととした。
(7 ) チ ッ プ 化 し た 後 、 両 面 を 再 度 研 磨 し た チ ッ プ 状 態 で の 抵 抗 測 定
(8 ) ① 測 定 場 所
図 4 .2 -1 0 に 示 す 通 り 、 オ リ フ ラ に 垂 直 な 方 向 の 中 心 付 近 を 1 0 m m □ に 切 り
出 し 、 そ の #5、 #7、 #8 に 関 し て 、 抵 抗 測 定 を 行 っ た 。
- 61 -
オリフラ
図 4 .2 -1 0 測 定 チ ッ プ ( 抵 抗 測 定 は 、 # 5 、 # 7 、 # 8 に つ い て 、 行 う 。 )
(9 ) ② 測 定 条 件
測定条件等は以下の通りである。
・前処理:
両面を数 μm 研磨した。
・ 装 置 、 印 加 電 流 は 、 (3 ) ① と 同 様 で あ る 。
・ウェハ厚さによる補正項:
今 回 の ウ ェ ハ 厚 : 490μ m で の 係 数 参 照 。
・ウェハの直径及び測定位置による補正項:
2 0 mmφ の 端 を 測 定 し た 時 の 係 数 で 代 用
(1 0 m m □ 試 料 の た め )
・温度による補正項:
今 回 の 測 定 温 度 : 21℃ で の 係 数 参 照 。
・シリコン抵抗率の温度係数:
0 .0 0 4 0 (p 型 )、 2 1 ℃ で の 係 数 参 照 。
な お 、測 定 位 置 に よ る 補 正 項 が 、今 回 の 場 合 適 当 で は な い の で 絶 対 値 に は 不 確
かさを伴う。
(1 0 ) ③ 結 果
オ リ フ ラ と 平 行 方 向 の 1 0 m m□ の チ ッ プ # 5 、 # 7 、 # 8 の オ モ テ 面 と 裏 面 の 抵
抗 率 を 測 定 し た 。 #5 の オ モ テ 面 は 5 回 、 他 は 3 回 測 定 し た 。 な お 、 #5 は 中 心
か ら -5 m m、 # 7 は 同 -2 5 mm、 # 8 は 同 -3 5 m m に 相 当 す る 。 結 果 を 図 4 .2 -1 1
に 示 す 。 こ の 結 果 は 図 4 .2 -9 と 類 似 の 分 布 を 持 っ て い る 。
- 62 -
図 4 .2 -1 1 チ ッ プ 化 し 両 面 研 磨 し た 試 料 の 抵 抗 率 測 定 結 果
( 横 軸 は 、 元 の ウ ェ ハ の 中 心 か ら の 距 離 で あ る 。)
○;オモテ面、
●○;裏面.
以 上 、 4 .2 .2 .5 (2 ) 及 び 4 .2 .2 .5 (3 ) の 結 果 か ら 、 抵 抗 率 の バ ラ ツ キ は C V 値 で
5 %以 内 に 収 ま っ て お り 、 SI M S 測 定 の 繰 り 返 し 精 度 を 考 慮 に 入 れ る と 、 本 試
作 品 は SI M S の 濃 度 標 準 と し て 十 分 に 有 用 で あ る と 結 論 付 け る こ と が で き る 。
- 63 -
ボロンドープ標準試料の品質評価結果
B 極 浅 ド ー プ を SI M S で 評 価 す る 際 に 、標 準 試 料 と な る B N デ ル タ B 高 濃 度
シ リ コ ン ウ ェ ハ を 試 作 し た 。本 試 料 は 、深 さ 較 正 の た め の B N デ ル タ 多 層 膜 と 、
B 濃度較正のための B 高濃度ドープシリコンウェハからなっている。
本 試 料 の デ ル タ 多 層 膜 と し て の 評 価 を 、断 面 S /T E M と T OF - SI M S に よ り 評
価 し た 。S /T E M 観 察 結 果 か ら 、試 作 し た デ ル タ 多 層 膜 試 料 は 、SI M S の 深 さ 校
正 試 料 と し て 膜 厚 の 均 一 性 、 B N デ ル タ ド ー プ 層 の 平 坦 性 、 a -Si 層 厚 に つ い て
十 分 で あ る こ と が 検 証 さ れ た 。ま た 、T O F -SI M S か ら 、試 作 し た デ ル タ 多 層 膜
試 料 は 、実 際 の SI M S の 深 さ 校 正 に 使 用 で き る こ と が 検 証 さ れ 、膜 中 に 種 々 の
不 純 物 が 検 出 さ れ た も の の 、 膜 /基 板 界 面 に 存 在 す る BN 層 を 除 き マ ト リ ッ ク
ス効果を引き起こすような高濃度不純物の存在は示唆されなかった。
裏 面 の SI M S に よ り シ リ コ ン ウ ェ ハ 中 B の 同 位 体 比 の 評 価 を 、I C P -M S に よ
りシリコンウェハ中 B 濃度の評価と B の同位体比評価を、四探針抵抗測定に
よりシリコンウェハの抵抗率の面内分布評価を行った。この結果、B 濃度は
2 5 0 μ g /g ( ≒ 3 .2 × 1 0 1 9 a t o ms ・ c m - 3 )で あ り 、 そ の 面 内 で の バ ラ ツ キ は 5 % 以
内に収まっており、同位体比は、
10
B /
11
B ≦ 0.012 で あ る こ と が 判 明 し た 。
こ れ ら の 結 果 か ら 、試 作 さ れ た B 高 濃 度 シ リ コ ン ウ ェ ハ が 、B 極 浅 ド ー プ を
SI M S で 評 価 す る 際 の 、深 さ 校 正 と B 濃 度 校 正 の た め の 標 準 試 料 と し て 妥 当 性
が検証された。
な お 、 余 談 で は あ る が 、 高 B ド ー プ Si 基 板 中 の
10
B 濃度が少ない点は、次
の 2 つ の 点 で 極 浅 ド ー プ 標 準 試 料 と し て 、当 初 想 定 し て い な か っ た 長 所 を 包 含
す る も の で あ っ た 。 極 浅 ド ー プ は 、イ オ ン 注 入 で 形 成 さ れ る た め 、測 定 イ オ ン
は
11
B だけとなる。今回、濃度校正は、ほとんど
11
B 濃度から決まる試料で
あ る た め に 、測 定 イ オ ン が 測 定 さ れ る べ き 試 料 と 標 準 試 料 と で 同 じ で あ り 、こ
の 点 に お い て 都 合 が 良 い 。ま た 、極 浅 ド ー プ を 評 価 す る 際 、 そ の 測 定 時 の 深 さ
方 向 分 解 能 を 常 に 気 に し て い る 必 要 が あ る 。こ れ に 対 し て 、基 板 中 の
が 低 い た め 、B N デ ル タ 層 か ら 基 板 中 に か け て
10
10
B 濃度
B に広い濃度勾配が得られる。
こ の こ と は 、 10 B を 測 定 す る こ と に よ っ て 、深 さ 方 向 分 解 能 の 内 の 少 な く と も
下降端ディケイ長を同時に評価できる長所が生まれたのである。
- 64 -
第 5 章 総括
総括
本事業活動による成果
本 報 告 は 、 平 成 24 年 度 か ら 開 始 し た ナ ノ 材 料 評 価 の 標 準 化 活 動 に つ い て 最
終 年 度 の 成 果 を 中 心 に と り ま と め た も の で あ る 。ナ ノ 材 料 の 分 析 評 価 技 術 で あ
る 二 次 イ オ ン 分 光 法 ( SI M S ) と 透 過 電 子 顕 微 鏡 の エ ネ ル ギ ー 損 失 分 光
( T E M -E E L S)に つ い て 、そ れ ぞ れ の 分 析 評 価 技 術 の 高 精 度 化 の た め 、各 手 法
の 標 準 試 料 の 開 発 と 作 製 と 品 質 評 価 を 行 い 、そ の 標 準 試 料 を 用 い て 分 析 機 関 に
よ る 共 通 測 定 を 行 い 、そ れ ら よ り 明 ら か と な っ た 測 定 上 や 分 析 上 の 課 題 と そ の
解 決 方 法 の 検 討 を 行 っ て き た 。こ の 手 順 を 踏 ま え な が ら 各 年 度 新 た な 課 題 を 設
定 し 、そ の 解 決 を 行 う 研 究 会 の 開 催 に よ り 、新 た な 知 見 の 獲 得 と そ の 共 有 を 参
加分析機関と行って、ここに報告書として取りまとめた。
本 事 業 の 動 機 の 一 つ は 、震 災 復 興 の 流 れ か ら エ ネ ル ギ ー 問 題 を 解 決 す る 技 術
開 発 、 例 え ば リ チ ウ ム イ オ ン 電 池 や 高 輝 度 LED 等 の 製 品 開 発 な ど が 進 展 し て
い る が 、そ の 開 発 を 計 測 ・ 評 価 の 領 域 か ら 支 援 す る こ と で あ る 。製 品 の 性 能 向
上 の た め に は 、材 料 の 表 面 や 界 面 を ナ ノ ス ケ ー ル で 分 析 す る 技 術 が 不 可 欠 で あ
り 、そ の 技 術 向 上 を 本 事 業 で 目 指 し た 。も う 一 つ は ナ ノ テ ク ノ ロ ジ ー 進 展 へ の
対 応 で あ り 、ナ ノ ス ケ ー ル 構 造 を 持 つ こ と に よ っ て 新 機 能 を 発 現 さ せ る 様 々 な
ナ ノ 材 料 の 設 計・開 発・生 産 に 計 測・評 価 技 術 が 対 応 し て い く 必 要 性 か ら で あ
る 。微 細 プ ロ セ ス 技 術 に よ る ナ ノ ス ケ ー ル 加 工 技 術 を 含 め ナ ノ テ ク ノ ロ ジ ー は
そ の 産 業 と し て の 発 展 が さ ら に 加 速 す る と 見 込 ま れ て い る 。増 加 し 続 け る ナ ノ
構 造 材 料 に 対 応 し て 、計 測 ・ 評 価 技 術 も よ り 一 層 の 測 定 技 術 の 向 上 や 測 定 信 頼
性の向上が求められている。
計 測 技 術 や 測 定 精 度 の 向 上 の た め に は 時 間・資 産・人 の リ ソ ー ス 投 入 が 必 要
で あ る が 、各 分 析 機 関 ・ 企 業 が そ れ ぞ れ 独 自 に リ ソ ー ス を 投 入 し て 開 発 す る よ
り も 、各 社 が 分 析 試 料・ 測 定 条 件 ・ 測 定 方 法 ・解 析 手 法 を 共 通 に し 、標 準 試 料
を測定比較してその計測値のばらつきの原因を突き止めていく方法が効果的
で あ る 。こ の よ う な 共 同 で の 測 定 比 較 作 業 に よ っ て 分 析 機 関 間 で 計 測 ・ 分 析 技
術 の ノ ウ ハ ウ の 共 有 化 が 行 え 、ま た そ の 分 析 計 測 手 法 を 国 際 標 準 化 の 体 系 に 組
み込んでいくことで日本の分析技術の優位性を保つことにもつなげることが
で き る 。 国 際 標 準 化 機 構 I S O で は 、 T C 2 0 1 ( 表 面 化 学 分 析 )、 T C 2 0 2 ( マ イ ク
ロ ビ ー ム 分 析 )、T C 2 2 9 (ナ ノ テ ク ノ ロ ジ ー ) 等 に お い て 日 本 の 果 た す 役 割 は 大 き
いものとなっている。
本 事 業 で 目 指 し た も の は 、ナ ノ 材 料 の 分 析 技 術 の 国 際 標 準 化 に 関 連 す る 測 定
技 術 や 手 法 を 開 発 支 援 す る 活 動 を 行 う こ と で あ る 。 T E M -E E L S 分 析 に 関 す る
本 事 業 の 成 果 は 、 日 本 が 主 導 的 立 場 に あ る I S O/T C 2 0 2 / SC 3 の 活 動 が 目 指 す 方
- 65 -
向 性 に 沿 っ た も の と な っ て い る 。 ま た 、 SI M S 分 析 に 関 す る 本 事 業 の 成 果 は 、
品 質 の 高 い SI M S 用 標 準 試 料 の 開 発 で あ り 、こ れ に よ り ナ ノ ス ケ ー ル 材 料 の 表
面 元 素 分 布 の 分 析 手 法 で あ る SI M S の 高 精 度 化 が 目 指 せ る 。本 活 動 で は 標 準 試
料 の 試 作 を 行 い 、そ れ ら を 現 状 で 考 え ら れ る 限 り の 手 法 で 品 質 検 証 し た 。ま た
ラ ウ ン ド ロ ビ ン テ ス ト に よ り 、標 準 試 料 を 用 い る こ と で SI M S 分 析 が 高 精 度 化
できることを実証できた。
以下に本事業で行った研究開発の成果概要を述べる。
(1 ) 透 過 型 電 子 顕 微 鏡 (TEM )の E EL S 分 析
T E M -E E L S 分 析 は 、 観 察 試 料 の 二 次 元 の 元 素 配 置 構 造 を 原 子 レ ベ ル の 高 い
空 間 分 解 能 で 解 析 で き る 方 法 で あ り 、ナ ノ 構 造 材 料 の 評 価 に 重 要 な 役 割 が 期 待
さ れ る 分 析 法 で あ る 。 本 事 業 で は 、 TEM-EELS の エ ネ ル ギ ー 分 解 能 評 価 方 法
に つ い て 国 際 規 格 化 す る た め に 必 要 な デ ー タ 収 集 活 動 を 行 っ た 。具 体 的 に は 共
通 試 料 の 選 定 、測 定 手 順 の 検 討 、 各 社 に よ る 共 通 試 料 の 測 定 、測 定 手 順 の と り
まとめを行った。
T E M -E E L S 分 解 能 評 価 用 の 共 通 試 料 と し て 窒 化 ホ ウ 素 (B N ) と グ ラ フ ァ イ
ト を 取 り 上 げ た 。エ ネ ル ギ ー 分 解 能 を 評 価 す る た め に ま ず エ ネ ル ギ ー 軸 の 較 正
を 行 い 、 炭 素 K 端 を 2 8 4 .5 e V の 位 置 に 設 定 し 、 対 象 ピ ー ク の エ ネ ル ギ ー 位 置
を 同 定 す る こ と と し た 。 初 年 度 に は 、 BN お よ び グ ラ フ ァ イ ト に つ い て 品 質 を
基 準 に し て 製 造 社 や 製 品 を 選 択 し た 。2 年 度 で は E E L S の エ ネ ル ギ ー 測 定 手 順
に 着 目 し 、各 エ ネ ル ギ ー 端 お よ び ピ ー ク の S/N 比 を で き る だ け 大 き く と っ て ス
ペ ク ト ル を 取 得 す る こ と が で き る よ う に 測 定 手 順 を 改 め た 。こ れ に よ り 、炭 素
K 端、ボロン K 端、窒素 K 端のエネルギー位置の測定値の標準偏差を向上さ
せ た 。 ま た グ ラ フ ァ イ ト と 窒 化 ホ ウ 素 の イ ン タ ー バ ン ド プ ラ ズ モ ン (π -π *)の
エ ネ ル ギ ー 位 置 に つ い て も 測 定 値 の 標 準 偏 差 を 小 さ く す る こ と が で き た 。最 終
年 度 で は 、2 年 度 ま で に 開 発 し た 特 定 の グ ラ フ ァ イ ト を 内 部 標 準 と す る 方 式 を
もとにして、内部標準試料用にさらに汎用性を重視した材料の探索を行った。
こ れ は 、窒 化 ホ ウ 素 や 特 定 の グ ラ フ ァ イ ト は 安 定 性 に 優 れ る と さ れ て い た た め
であるが日常の測定での使用には試料の入手性がよいことも必要であるとの
ユーザーの利便性を考慮したためである。
T E M -E E L S 測 定 に お い て 、 各 元 素 の エ ネ ル ギ ー 値 の ば ら つ き を 抑 制 で き る
こ と を 示 す こ と が で き た 意 義 は 大 き い 。本 委 員 会 が 使 用 し た 測 定 技 法 は 、T E M
― E E L S 分 析 を 利 用 す る 分 析 機 関 に お い て 容 易 に 利 用 で き る 方 法 で あ り 、測 定
精度の高度化と分析測定値の信頼性向上に寄与することができる。
- 66 -
(2 ) B N デ ル タ ド ー プ 層 付 き の 不 純 物 ( ヒ 素 お よ び ボ ロ ン ) 高 濃 度 シ リ コ ン ウ
ェ ハ の SI M S 分 析
二 次 イ オ ン 質 量 分 析 法( SI M S )は 、材 料 表 面 の 元 素 分 布 の 測 定 手 法 で あ り 、
深 さ 方 向 に 分 析 で き 、か つ ナ ノ ス ケ ー ル の 空 間 分 解 能 が あ り 、極 微 量 で も 感 度
良 く 計 測 で き る 手 法 で あ る 。そ の た め 多 数 の 分 析 機 関 で 用 い ら れ 利 用 分 野 も 広
い 。 SI M S 測 定 に つ い て 測 定 手 順 や 評 価 手 法 を 共 通 化 す る こ と に よ り 得 ら れ る
効 果 も 大 き い 。 SI M S 分 析 で は マ ト リ ク ス に よ る 感 度 依 存 性 が 大 き い た め 分 析
す る 材 料 ご と に 組 成 が 既 知 の 標 準 試 料 を 用 い た 校 正 が 必 要 で あ る 。ま た 望 ま し
く は 、分 析 値 を 相 互 比 較 す る ラ ウ ン ド ロ ビ ン テ ス ト に よ り 各 機 関 の 精 度 向 上 を
図ることが必要である。
本 事 業 で は 、 共 通 測 定 用 の 標 準 試 料 を 新 た に 開 発 し た 。 そ の 特 長 は 、 SI M S
分析のイオンビームによるエッチングレートを校正するための深さ校正スケ
ー ル と 、不 純 物 濃 度 の 校 正 の 機 能 を 併 せ 持 つ こ と に あ る 。な お 深 さ 校 正 用 ス ケ
ー ル は 、 ( Si 8 n m- B N 層 0 .0 5 n m) を 1 組 と し て 計 4 組 を 堆 積 し た 多 層 膜 で あ
る。
試 作 し た 標 準 試 料 を 複 数 の 分 析 法 に よ り 品 質 評 価 を 行 っ た 。標 準 試 料 の 深 さ
校 正 ス ケ ー ル の 部 分 に つ い て は 、 T E M 、 HR -R B S、 SI M S、 R B S を 用 い た 。 不
純 物 を 高 濃 度 で 混 入 し た 基 板 の 評 価 に は 、 中 性 子 放 射 化 分 析 、 X R F 、 SI M S を
用いた。
初 年 度 で は 、 ヒ 素 濃 度 校 正 用 と し て 、 基 板 に ヒ 素 を 高 濃 度 ド ー プ し た Si 基
板 ( 抵 抗 値 ≦ 0 .0 0 5 Ω c m )を 用 い た 多 層 膜 付 き 標 準 試 料 を 作 製 し た 。
2 年 度 で は ラ ウ ン ド ロ ビ ン 試 験 を 行 い 、標 準 試 料 を 用 い て イ オ ン ビ ー ム で の
エ ッ チ ン グ レ ー ト を 校 正 し 、次 に 極 浅 ヒ 素 注 入 試 料 の 分 析 結 果 結 果 を 校 正 し 比
較 を 行 っ た 。 そ の 結 果 各 分 析 機 関 の SI M S 分 析 値 に つ い て 、 装 置 間 ・ 機 関 間 の
再 現 性 向 上 を 確 認 で き 、 I)ス パ ッ タ 時 間 と 深 さ を 直 線 関 係 で 現 す こ と が で き る
こ と 、I I )機 関 間 で も 分 析 装 置 の 機 種 が 同 じ で あ れ ば 測 定 結 果 に 良 い 一 致 を 得 ら
れ る こ と 、 が 分 か っ た 。 ま た 、 III)ビ ー ム 電 流 変 動 な ど に 由 来 す る エ ッ チ ン グ
レートの変動を測定の不確かさとして見積もることができることも分かった。
標 準 試 料 中 の ヒ 素 の 濃 度 分 析 値 に つ い て 比 較 を 行 っ た と こ ろ 、 I )測 定 の 再 現 性
は 1 .3 ~ 6 .0 % で あ る こ と 、 I I ) 装 置 毎 に A s Si プ ロ フ ァ イ ル に 特 徴 が あ る こ と 、
が わ か っ た 。極 浅 ヒ 素 注 入 試 料 の ヒ 素 濃 度 分 布 の 分 析 比 較 か ら 得 ら れ た 知 見 は 、
BN デ ル タ ド ー プ 多 層 膜 試 料 で あ ら か じ め 校 正 し て お く こ と に よ り 、 機 関 間 で
の分析値のばらつきを抑制できることである。
最 終 年 度 で は 、ボ ロ ン を 不 純 物 と し て 、新 た な 深 さ 校 正 ス ケ ー ル 付 き ボ ロ ン
濃度組成校正用の標準を製作した。シリコン基板の表面への浅いドープでは、
ボ ロ ン を 不 純 物 と す る ニ ー ズ は 大 き い 。 SIMS の 国 際 学 会 で も 1990 年 代 よ り
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毎 回 ” U l t r a Sh a l l o w P r o fi l e ” と し て セ ッ シ ョ ン が 組 ま れ る ほ ど で あ る 。 そ こ
で SI M S 分 析 に よ る ボ ロ ン 濃 度 分 析 の 校 正 用 標 準 を 作 製 し た 。標 準 試 料 の 基 板
に は 、ボ ロ ン を 高 濃 度 で ド ー プ し た シ リ コ ン 基 板 (抵 抗 値;0 . 0 0 2 ~ 0 .0 0 4 Ω c m )
を 使 用 し た 。 試 作 し た 標 準 試 料 に つ い て 、 ST E M 観 察 及 び T OF - SI M S に よ り
深 さ 校 正 試 料 と し て の 検 証 を 行 い 、 I C P - M S、 基 板 側 の S I M S 分 析 及 び 四 探 針
抵 抗 測 定 に よ っ て 、基 板 中 の ボ ロ ン 濃 度 お よ び ボ ロ ン の 各 同 位 体 の 比 を 測 定 し 、
標 準 試 料 と し て の 評 価 を 行 っ た 。そ の 結 果 、試 作 さ れ た ボ ロ ン 高 濃 度 シ リ コ ン
基 板 は 、ボ ロ ン 極 浅 ド ー プ を SI M S で 評 価 す る 際 の 、深 さ 校 正 と ボ ロ ン 濃 度 校
正のための標準物質として妥当であることが実証できた。
とくにボロンの同位体の比に着目すると、自然同位体比とは大きく異なり、
10
B /
11
B ≦ 0 .0 1 2 で あ っ た 。す な わ ち ほ と ん ど
11
B からなる試料であるため
に 、 SI M S 分 析 で の 測 定 イ オ ン が 測 定 さ れ る べ き 試 料 と 標 準 試 料 と で 同 じ で あ
り、この点において都合が良いことが分かった。
惜しむらくはこの特長ある標準試料によるラウンドロビンテストを十分に
行 う 時 間 的 な 余 裕 が な か っ た こ と で あ る 。こ れ に つ い て は 今 後 継 続 し て 行 う 機
会が得られてその有用性を広める活動を行うことが期待される。
な お 特 筆 す べ き 成 果 と し て 、 SI M S 用 の 認 証 標 準 物 質 が 世 に 出 る こ と が 挙 げ
ら れ る 。本 事 業 で の 標 準 試 料 の 作 製 方 法 の 知 見 を 参 考 に し て 、当 委 員 会 の メ ン
バ ー が 認 証 標 準 物 質 ( C R M 、 c e r ti fi e d r e fe r e n c e ma te r i a l ) を 開 発 し た 。 ま た
そ の C R M は 計 量 標 準 総 合 セ ン タ ー( N M I J )か ら 平 成 2 7 年 4 月 よ り 供 給 が 開
始 さ れ る 。 NMIJ は 国 家 計 量 機 関 で あ り 、 分 析 機 器 の 校 正 、 分 析 方 法 の 評 価 な
ど化学計測における測定値を決定するために必要な正確に値付けされた認証
標 準 物 質 を 生 産 し て い る 。認 証 標 準 物 質 は 、分 析・計 測 に お け る 真 度( 正 確 さ )
の 評 価 、あ る い は 国 際 単 位 系( S I )へ の ト レ - サ ビ リ テ ィ の 立 証 に 不 可 欠 な も
の で あ る 。本 事 業 は 国 の 標 準 化 普 及 活 動 に も 大 き な 貢 献 を 残 し た 有 意 義 な 活 動
となった。
今後の活動への提言
3 年間の本事業活動の継続によりナノスケール領域の元素分析の高精度化と
測 定 手 法 の 標 準 化 を 推 進 す る 活 動 を 行 う こ と が で き た 。 TEM-EELS の 分 解 能
評価法は国際標準化活動が目指す方向性に沿ったものとすることができた。
SI M S 分 析 の 標 準 化 活 動 に よ り 各 種 標 準 試 料 を 作 製 し 、 そ の 一 部 は 認 証 標 準 物
質として日本の標準化推進活動に貢献することができた。
ナノ材料の評価測定の標準化はこれで終焉を迎えたわけではなくまだ入り
口 の 一 部 が よ う や く 見 え た だ け に 過 ぎ な い 。ナ ノ ス ケ ー ル の 材 料 開 発 に 伴 っ て
そ の 分 析 技 術 も 日 々 進 化 を 続 け て お り 、測 定 手 法 の 高 精 度 化 、測 定 値 の 再 現 性
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の 保 証 と 装 置 の 精 度 の 日 常 管 理 な ど 、標 準 化 を 礎 に す べ き 項 目 は 重 要 性 を 増 す
ば か り で あ る 。重 要 な の は ナ ノ ス ケ ー ル で の 測 定 方 法 は そ の 分 析 対 象 と 密 接 な
関わりがあり測定の高精度化には測定対象のナノ材料の特質を把握が必須で
あ る こ と で あ る 。対 象 ナ ノ 材 料 の 何 を 計 測 し て い る か あ る い は 計 測 し た い か を
重 視 す る 流 れ は M a te r i a l M e tr o l o gy と い う 言 葉 で 認 識 さ れ て い る と こ ろ で あ
り 、新 し い ナ ノ 材 料 が 現 れ れ ば そ れ に 併 せ た 計 測 の 最 適 解 を 探 索 す る こ と が 求
められる。
今 後 も 本 事 業 の よ う な 標 準 化 推 進 活 動 が 継 続 さ れ る こ と に よ り 、国 内 分 析 機
関 が 共 同 で 計 測 ・ 分 析 技 術 上 の 課 題 を 明 ら か に し 、分 析 手 法 の 共 通 化 ・ 分 析 技
術の高精度化を果たしていくためのデータやノウハウの蓄積を行うことが望
まれる。
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JRIA26 ナノ分析標準
平成 26 年度
新エネ素子の開発加速に資するナノ領域元素分析
標準化補助事業報告書
発行
平成 27 年 3 月
発行者
一般社団法人 研究産業・産業技術振興協会
〒113-0033
東京都文京区本郷 3 丁目 23 番 1 号
クロセビア本郷 2F
電話:03-3868-0826
ホームページ
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