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フラット35利用者調査から集計した住み替えの動向
2 フラット35利用者調査から集計した 住み替えの動向 住宅金融支援機構 調査部 研究員 横手 昌幸(よこて まさゆき) 2003年慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、同年入庫。近畿支店、業務企画部、リスク統括部を経て、2014年から現職。政策研 究大学院大学まちづくりプログラム修了。修士(公共経済学) 。 [要旨] 本稿は、住宅金融支援機構が公表している「フラット35利用者調査」のデータを集計し、住み替えの動向等 を分析したものである。ポイントは次の3つである。 1. 一次取得者の平均年齢は約37歳であるのに対し、二次取得者の平均年齢は約50歳。 2.二次取得者の新しく住宅を取得する理由は、住宅が狭いあるいは古いといった住宅に関する不満が半数以 上を占める。 3. 従前が借家の場合、住み替えにより、60%以上広い住宅を取得。 1.はじめに はじめに イクルに応じて分譲マンション等へ住み替え、最終的に 住宅金融支援機構では、年2回(年度上半期及び年 は戸建てのマイホームを「上がり」とするものである。 度全体)フラット35利用者の属性、資金計画及び住宅 ただし、近年は戸建てが上がりになるとは限らないと 等について集計・分析を行い、 「フラット35利用者調査」 言われるようになっている。その理由としては、郊外の として公表している。 戸建住宅から都心のマンションあるいはサービス付き高 本調査はフラット35の融資制度が創設された2003年 齢者向け住宅等へ移り住むケースが増えているためと考 10月の翌年度である2004年度から開始しており、集計 えられる。また、持家にこだわらず、一生賃貸でもよい 対象のデータ数は延べ60万件を超える。本稿では、フ と考える方も増えつつあるとも言われている。 ラット35利用者のデータを用い、フラット35利用者の ここでは、フラット35の申込データをもとに、初めて 住み替えの動向について述べる。 持家を取得する方(一次取得者)及び既に持家を所有し 2. 一次及び二次取得時の住宅 はじめに の種類 42 に住むことから始まり、その後結婚や出産等のライフサ 新しく住宅を取得される方(二次取得者)の住み替えの 動向について分析することとしたい。 まず、フラット35の借入申込書において、 「お申込時 我が国における住宅の住み替えについては、 「住宅す 点でお住まいの住宅の種類」を選択する項目があり、従 ごろく」という例えを用いて説明されることが多い。この 前住宅の種類(持家か借家か親族の家に居住か等)の 「住宅すごろく」という例えは1970年頃に出来上がったと 把握が可能である。従前が持家の場合は二次取得、従 言われているが、上京や就職に伴い単身者用のアパート 前が持家以外の場合は一次取得とする。なお、建て方 [レポート2]フラット35利用者調査から集計した住み替えの動向 別(戸建かマンションか)では集計できないため、持家 また、一次及び二次取得により、中古住宅を選択す は必ずしも戸建てとは限らず、分譲マンションの場合も る割合に大きな差はなく、首都圏では中古住宅の取引 含まれていることに留意する必要がある。 が2割弱となっており、住み替えの傾向(一次取得か二 この「お申込時点でお住まいの住宅の種類」のデータ 次取得か)と中古住宅の取引には必ずしも相関関係がな をもとに、新しく取得する住宅の種類の比較を行う。な い可能性も考えられる。ただし、住み替えの絶対量が お、借家には、民間借家及び公団・公社賃貸住宅が含 増加すれば、中古住宅の取引量もそれに応じて増加す まれている。また、地域によって新しく取得する住宅の るものと考えられる。 種類(戸建てかマンションか等)の傾向が異なることか ら、都市圏ごとに区分して集計する。 3. 一次及び二次取得者の年齢 はじめに 集計した結果は図表1のとおりである。都市圏によっ 次に、一次及び二次取得者の年齢について集計する。 て新しく取得する住宅の種類にバラツキがあるが、従前 集計結果は図表2のとおりであり、一次取得である親 住宅が持家及び親族の家に居住の場合に選択する住宅 族の家に居住及び借家ともに、平均年齢は37歳前後と の種類は同じような傾向があり、注文住宅の割合が比 なった。一方、二次取得である持家の平均年齢は約50 較的高くなっている。これは、従前が戸建ての場合は 歳であり、一次取得と二次取得の平均年齢の差は13歳 元の場所での建替えが多いことあるいは親が建てた戸 程度となった。 建てを子供が建て替えるケースが多いことが影響してい 年齢の構成比を見ると、一次取得の場合、40歳未満 ると考えられる。 が7割程度を占めるのに対し、二次取得では年齢の分 一方、借家の場合、土地付注文住宅及び建売住宅を 布に大きな偏りがなく、50歳代の構成比が最も高くなっ 選択する割合が高くなっており、土地については自ら探 ている。 す必要がある状況となっている。 一次取得と二次取得の平均年齢の差が13歳とやや短 図表1 利用住宅種別 43 2 く感じるが、これは、二次取得では親が建てた住宅を た、通勤・通学に不便といった立地に関する理由は首 子が30歳代で相続等により取得し建て替えるケースが含 都圏や近畿圏で10%程度となっているが、それほど多く まれていること等が影響していることも考えられる。 はない。 図表2 年齢構成及び平均年齢 次に、従前が親族の家に居住の場合、結婚や世帯分 100% 90% 49.9歳 80% 70% 60% 30% 55 20% 21% 30% 37.2歳 50% 40% (歳) 2% 5% 3% 8% 21% 36.5歳 49% 27% 10% 20% 0% 2% 持家 50 50-59歳 45 40-49歳 40 30-39歳 35 30歳未満 を挙げる方が半数以上を占め、借家においては専ら住 30 平均年齢 (右軸) 宅の広さに関する理由で住み替えが行われていることが 57% 20% 20% 離といったライフイベントに伴う理由が比較的多く選ばれ 60歳以上 ている。 さらに、従前が借家の場合、住宅が狭いという理由 25 16% 伺える。なお、家賃に関する理由は10~20%に止まり、 20 親族の家に居住 借家 それほど多くないとも感じられるが、借家のまま、より 広い住宅に住み替える場合、立地を選ばない限り家賃も 4.住宅を住み替える理由 はじめに それに応じて高くなることが通常であるため、より広い 新たに住宅を取得する理由についても、フラット35 住宅に住み替える場合には家賃と住宅ローン支払額等を の借入申込書において選択する項目があるため、どの 比較衡量した結果、持家を選択しているものと考えられ ような理由で新しく住宅を取得するのか集計が可能であ る。 り、それを集計したものが図表3である。なお、当ては 参考までに、従前が借家で住宅が狭いと回答した方 まるもの1つを選択する方式となっており、 「その他」を の平均年齢は、35.8歳、平均家族数は3.30人となってい 選択した場合、その詳細な理由は記入しないこととして る。家族数3人以上の世帯にとって手頃な家賃で十分 いる。 な広さの借家が住宅市場にそれほど供給されていない まず、従前が持家の場合、住宅が狭いあるいは古い 可能性が考えられる。 といった住宅に関する不満が半数以上を占めている。ま 図表3 新たに住宅を取得する理由 100% 90% 80% 70% 60% 11 28 4 2 10 30 5 2 9 28 5 2 4 28 26 40 43 30% 20% 10% 21 12 12 11 12 7 3 5 2 5 3 30 8 3 18 13 16 15 7 9 7 7 15 3 52 52 12 13 その他 世帯を分ける(結婚を除く) 結婚 通勤・通学に不便 3 家賃が高い 28 29 17 16 59 58 住宅が古い 17 その他 借家 東海圏 近畿圏 親族の家に居住 住宅が狭い 首都圏 その他 東海圏 近畿圏 44 5 首都圏 持家 17 その他 東海圏 近畿圏 首都圏 0% 27 17 25 6 22 29 28 28 9 5 1 4 19 26 9 29 50% 40% 10 [レポート2]フラット35利用者調査から集計した住み替えの動向 は従前が53㎡、住み替え後が90㎡と69%広くなっており、 5.住み替え前後の住宅面積 はじめに 借家から持家に住み替えることにより、住宅面積は大幅 4で集計したとおり、住宅が狭いという理由で新たに に広くなることが分かる。 住宅を取得する方は一定のシェアを占めており、とくに借 さらに、住宅が狭いと回答した方のみに限定して集計 家では半数以上を占めている。 したのが図表5であるが、従前住宅の面積と新しく取得 次に、住み替えにより住宅面積がどう変化するのか、 する住宅の面積を比較すると、首都圏の借家において、 住み替え前後の住宅面積の変化について集計する。 従前住宅の平均面積が50㎡に対し、新しい住宅の平均 まず、新たに住宅を取得する理由を限定せずに集計し 面積は92㎡と、84%広くなる結果となった。また、持家 たのが、図表4である。従前が持家の場合はどの地域 の場合、従前が69㎡と広さ的にはマンションが中心であ においても住み替え後の住宅面積が増加したのに対し、 ることが想定され、広さに関する不満によりマンション 親族の家に居住の場合は微減となった。さらに従前が から戸建てへ住み替えていることが考えられる。 借家の場合は60%以上も広くなっている。 6.おわりに はじめに 首都圏を例にすると、持家の従前面積の平均が91㎡ であるのに対し、住み替え後の面積の平均が100㎡と約 以上、フラット35の申込データをもとに、住み替えで 10%広くなっている。一方、親族の家に居住の場合は、 新たに取得する住宅の種類、住み替え時の年齢、住み 取得理由に結婚や世帯分離を選択する割合が多いから 替え理由、住み替え前後の住宅面積を集計した。 か従前の住宅より狭くなっている。さらに、借家の場合 あくまでも今回はフラット35を利用した方のデータか ら集計したものであり、冒頭に述 図表4 住み替え前後の住宅面積 従前住宅床面積(A) (㎡) 128 120 91 107 100 102 115 129 119 102 96 112 102 126123 129123 69% 53 60 10% 6% 12% 8% -5% 20 -9% -2% 116 116 98 90 80 40 べたような「住宅すごろく」がどの 増加率(右軸) (B/A)-1 120% 140 100 住み替え後住宅面積(B) 91% 90% 100% 80% 61 61 40% 20% -4% 0% -20% 首都圏 近畿圏 東海圏 その他 持家 首都圏 近畿圏 東海圏 その他 親族の家に居住 (㎡) 90 69 52% 115 106 105 100 60 132 121 120 80 141 139 140 住み替え後住宅面積(B) 93 80 77 56% 54% 105 105 50 34% 82% 35% 25% 104% 118 117 102 92 85 52% 40 103% 84% 56 120% 100% 80% 58 58 22% 首都圏 近畿圏 東海圏 その他 親族の家に居住 市場の変化を分析する上では有益 であり、継続して追いたいと考えて いる。 40% ※本 稿の意見にわたる部分については執 20% 筆者個人の見解であって、住宅金融支 -20% 0 持家 ステージに応じた住み替えの円滑 60% 0% 20 首都圏 近畿圏 東海圏 その他 の確保等、ライフスタイルやライフ たようなデータは、我が国の住宅 増加率(右軸) (B/A)-1 129 化やサービス付き高齢者向け住宅 化が図られている中、今回集計し 借家 図表5 現在の住宅が狭いと回答した方の住み替え前後の住宅面積 従前住宅床面積(A) ない。ただ、中古住宅市場の活性 60% 66% 59 0 首都圏 近畿圏 東海圏 その他 ように変化しているのかは分析でき 援機構の見解ではありません。 首都圏 近畿圏 東海圏 その他 借家 45