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阪本成一 - 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

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阪本成一 - 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
小惑星探査機
「はやぶさ」の挑戦
阪本成一
宇宙航空研究開発機構
宇宙科学研究所 教授
(併)総研大 教授
今日の話題
小惑星探査機「はやぶさ」
なぜ小惑星を調べるのか
「はやぶさ」の旅路
「はやぶさ」を支えた最先端技術
「はやぶさ」は一日にして成らず
日本の太陽系探査の今後
2
なぜ小惑星を調べるのか
① 太陽系の理解
小惑星とはどういう天体か
太陽系の誕生のカギをにぎる化石
② 地球防衛
地球にぶつかってくる「敵」を知る
③ 資源
宇宙利用の拠点・資源
3
太陽系の天体のいろいろ
© JAXA
太陽系小天体
太陽 水星 金星 地球 火星 (小惑星帯) 木星 土星
:
:
中心星
地球型惑星
巨大ガス惑星
コア:
大気:
岩石・鉄
薄い
水素・ヘリウム
分厚い
彗星
天王星 海王星 冥王星など
巨大氷惑星
氷・岩石
水素・ヘリウム
4
小惑星はどこにある?
軌道要素が
確定している
ものだけでも
数十万個
地球近傍の
小惑星には
比較的行き
やすい
→イトカワを
目的地に設定
5
地球・月・小惑星の比較
5000km
月
Ceres
© NASA
地球
6
大きな星は丸い
500km
4 Vesta 578×560×458km
Dawnが2011年7月21日に到着予定
© NASA
1 Ceres(準惑星) 959×933㎞
2015年に到着予定
7
小天体はどんなかたち?
50km
もっと小さい
(直径数百m)
天体の素顔は?
8
隕石と宇宙塵
地球に落ちてきた太陽系の一部
太陽系探査以外に地球外の物質を直接
手にとって調べることのできる唯一の例
母天体との対応は不明
大気圏への突入の際に
表面が融けて変質
※隕石
国内最大の「国分寺隕石」(高松市)
宇宙空間から地球上に
落ちてきた固体物質のうち、
大きさが1ミリより大きなもの
※宇宙塵
大きさが1ミリより小さいもの
9
サンプルリターンの利点
豊富な天文観測と豊富な隕石試料とを
つなげる「ロゼッタストーン」
重い分析装置を搭載不要
多様な解析手法を使用可能
サンプルを保管すれば、後世における
最先端の分析手法を利用可能
10
小惑星探査機「はやぶさ」
月以外の天体に着陸して
物質を採取し、地球に持ち
帰るという、常識外れの
大計画
(c) JAXA
11
100点満点で500点を狙う計画
達成度
50点
100点
150点
200点
250点
300点
400点
500点
到達目標
☑電気推進エンジン世界初の3台同時運転
☑電気推進エンジン1000時間運用
(その後、稼働時間世界新記録達成)
☑電気推進エンジンによる世界初の地球
スイングバイ
☑自律航法による世界初の小惑星との
ランデブー
☑小惑星の科学観測
☑小惑星へのタッチダウンとサンプル採取
(月以外の天体からの離陸は世界初)
☑カプセルの地球再突入と回収
☑
□世界初の小惑星のサンプル入手
12
内之浦からの打ち上げ
JAXA内之浦宇宙空間観測所
13
M-Vロケットで打ち上げ
出典:小野瀬直美 「はやぶさ君の冒険日誌」
14
イオンエンジンに点火
出典:小野瀬直美 「はやぶさ君の冒険日誌」
15
地球によるスイングバイ
出典:小野瀬直美 「はやぶさ君の冒険日誌」
16
小惑星イトカワが見えた
出典:小野瀬直美 「はやぶさ君の冒険日誌」
17
小惑星イトカワに到着
出典:小野瀬直美 「はやぶさ君の冒険日誌」
18
19
20
表面地形
21
自分の力で接近、着陸
約20分
約20分
出典:小野瀬直美 「はやぶさ君の冒険日誌」
22
イトカワのかけらを拾う
出典:小野瀬直美 「はやぶさ君の冒険日誌」
23
燃料漏れ発生、音信不通
出典:小野瀬直美 「はやぶさ君の冒険日誌」
24
宇宙で迷子
出典:小野瀬直美 「はやぶさ君の冒険日誌」
25
1か月半ぶりに発見
出典:小野瀬直美 「はやぶさ君の冒険日誌」
26
帰るタイミングを逃した、、、
出典:小野瀬直美 「はやぶさ君の冒険日誌」
27
地球に向かって出発
出典:小野瀬直美 「はやぶさ君の冒険日誌」
28
29
不死鳥「はやぶさ」の最期
30
流れ星になった「はやぶさ」
31
戻ってきたカプセル
2010年6月14日
32
2010年6月17日
33
キュレーション設備での試料解析
34
35
大部分がイトカワ由来と判明
36
「はやぶさ2」実現に向けて
37
「はやぶさ2」
「はやぶさ」がベース
「はやぶさ」で判明した
技術的課題に対処
イトカワより始原的と
思われる 有機物質に
富む「C型小惑星」の
1999JU3を探査
インパクターを搭載
平面型アンテナを導入
開発費として30億円
が認められた
38
(162173)1999JU3の形と軌道
39
「はやぶさ」を支えた
最先端技術
「はやぶさ」の体
(c) JAXA
41
42
「はやぶさ」を支えたイオンエンジン
特徴
原理
超低燃費
低推力
43
自律航行
44
ターゲットマーカー
低重力の小惑星表面
に固着させる工夫
低反発材?
ペンキぶちまけ?
お手玉!
45
試料採取法の得失
手法
つかむ
すくう・掘る
くっ付ける
弾き飛ばす
岩盤
礫
砂
×
×
×
○
○
×
×
○
×
○
○
○
微小重力下で
の実施可能性
△
△
○
○
提供:東北大学
吉田研究室
46
小惑星のかけらの拾いかた
提供:東北大学 吉田研究室
47
再突入カプセル
48
アブレーターによる熱防護
スペースシャトルの帰
還時の数十倍厳しい
熱環境に耐える
単なる断熱ではなく、
気化熱による温度
低下と気化ガスに
よって表面を保護
カーボンフェノール
樹脂製
アーク加熱風洞での加熱実験
49
不屈のリーダー:川口淳一郎
川口語録
強制的に下向きの
加速度を与えてでも
着地させたい
=着陸にこだわる
いわば「勲章」だと
思っています
=着陸による化学スラスターの
異常を受けて
目的地はイトカワでは
ないのです
=地球帰還にこだわる
50
「はやぶさ」は
一日にして成らず
日本の太陽系探査の歴史
初期の太陽系探査機
工学実験衛星
ハレー彗星探査機
工学実験衛星
火星探査機
「さきがけ」 (1985年)
「すいせい」 (1985年)
「ひてん」 (1990年)
「のぞみ」 (1998年)
最近の太陽系探査機
小惑星探査機
月周回衛星
金星探査機
「はやぶさ」 (2003年)
「かぐや」 (2007年)
「あかつき」 (2010年)
52
日本の地球重力脱出計画
ハレー彗星に群がる6機のハレー艦隊
発射台上のM-3SIIロケット
臼田宇宙空間観測所の64mアンテナ
53
「ひてん」とスイングバイ技術
工学実験衛星「ひてん」と
二重スイングバイ軌道
54
火星探査機「のぞみ」
55
不具合とその対処
燃料・酸化剤タンクに圧力を加えるガス
の供給路にある逆流防止弁の下流に
念のために取り付けた遮断弁の動作の
不具合のため、所期の加速ができず、
追加速のために燃料を大量消費
そのままでは火星に到着しても燃料不足
で科学観測のための軌道に投入できない
ことが判明
軌道計画の検討により、活路を発見
待ち時間を利用して科学観測を実施 56
変更後の軌道計画
57
不具合とその対処
最大級太陽フレアの発生直後に回路が
ショートし、念のために取り付けてあった
ブレーカーが作動、燃料の昇温や通信の
制御装置までもが機能停止
「1ビット通信」により不具合個所を特定
短絡箇所を焼き切るために、「電源ON」
コマンドを総計1億3000万回送信
最後には火星衝突のリスク回避のための
軌道変更運用を実施。ミッション終了
58
「のぞみ」を通して得た技術
ミッション解析:予算内で最大の効果
軌道の設計・運用
軌道の精密決定
自律化
超遠距離通信
機器の軽量化
人材
59
全ては地球の理解のために
固体惑星・月探査
月周回衛星「かぐや」
始原天体探査
小惑星探査機「はやぶさ」
惑星大気科学
金星探査機「あかつき」
惑星磁気圏科学
水星探査機BepiColombo
そ と
⇒ 地球の進化
2009年6月11日運用終了
⇒ 地球の起源
2010年6月13日地球帰還
⇒ 地球大気
2010年5月21日打ち上げ
⇒ 地球磁気圏
2014年度打ち上げ予定
う ち
宇宙に出て はじめて分かる 地球
60
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