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リポート - 格付投資情報センター

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リポート - 格付投資情報センター
リポート
公表日:2013 年 10 月 11 日
ソブリン
格付本部
チーフアナリスト:原
一樹
シニアアナリスト:関口 健爾
アナリスト:山本 貴洋
曲がり角を迎えた新興国経済
成長力の低下リスクが高まれば信用力に下押し圧力
●新興国からの資本流出が続く中、為替が下落しインフレ圧力も高まっている。
経済の好循環は失われつつあり、先進国に代わって世界経済を牽引してきた数
年前までの勢いはみられない。
●かつてに比べれば、対外債務や政府債務負担が抑制され、為替の安定や金融シ
ステムの安定維持へ注力してきた。このため、いずれの国でも通貨危機のよう
に極めて厳しい状況に陥る懸念は小さい。
●しかし、資本流入を背景にした消費主導の成長モデルは曲がり角を迎えている。
規制緩和やインフラ整備および民間部門の投資の促進を通じて、競争力の向上
と経済基盤の強化を図れるかが、今後の信用力を決める重要な要因となる。
国際収支バランスが赤字化、為替は下落を続ける
米国の金融緩和策の縮小観測や、新興国経済に対する成長期待の陰りを背景に、東南アジアや南米諸
国からの資本流出が続いている。国際収支統計の経常収支と資本収支の合計である国際収支バランスは、
一部の国で 2013 年第 2 四半期(2Q)に赤字となった(図表 1)。資本の純流出が経常収支黒字を上回
る、または資本が純流入となっていても経常収支赤字をカバーできていない状況だ。国際金融市場の変
動の影響は、経済基盤の強さや国外からの資本流入への依存の程度、あるいは社会の安定性といった国
■図表1 国際収支バランスの推移(2009年~)
(億米ドル)
ブラジル
メキシコ
インドネシア
タイ
トルコ
600
2013年2Qに赤字に転落
500
400
300
200
100
0
-100
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Q1
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13
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09
20
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(四半期)
注)2013年2Qまで公表されている国を対象としている
[出所:CEICデータ 及びインドネシア中銀よりR&I作成]
株式会社格付投資情報センター
Copyright(C) 2013 Rating and Investment Information, Inc. All rights reserved.
〒103-0027 東京都中央区日本橋 1-4-1 日本橋一丁目ビルディング(お問い合わせ)インベスターズ・サービス本部
TEL 03-3276-3511
本リポート、本リポートの内容その他本リポートに含まれる情報に関する一切の権利・利益(著作権その他の知的財産権及びノウハウを含みます)は、特段の記載がない限り、株
式会社格付投資情報センター(以下「R&I」といいます)に帰属します。R&I の事前の書面による許諾無く、これらの情報等の全部又は一部を使用(複製、改変、送信、頒布、譲渡、
貸与、翻訳及び翻案等を含みます)し、又は使用する目的で保管することは禁止されています。
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内要因によって異なる。インドネシアやインド、ブラジル、トルコ、南アフリカでは、年初以来、対米
ドル為替レートが大きく下落する一方、メキシコやタイ、フィリピンでは、これまでのところ下落は小
幅にとどまっている(図表 2)。
為替の下落に伴い一部の国ではインフレ圧力が高まっている。各国中央銀行では政策金利の引き上げ
など金融引き締め策に転じ、自国通貨の防衛やインフレ圧力抑制に追われている。また、資本の流出に
は、国内与信の伸びを鈍らせるリスクもある。金融引き締め措置と相まって、内需は抑制されかねない。
米国や中国の需要が盛り上がりに欠ける中では、かつてのような輸出の伸びも期待できず、2013 年後
半にかけて経済には下押し圧力がかかる。国際通貨基金(IMF)が 10 月に発表した経済見通しでは、
新興国の 2013 年の実質国内総生産(GDP)成長率を、7 月予測から 0.5%ポイント下方修正の 4.5%と
している(図表 3)。2013 年の成長が 1.2%とされている先進国と比べれば依然高い成長見通しだが、
先進国に代わって世界経済を牽引してきた数年前までのような勢いはみられない。
■図表2 対米ドル為替レート
インドネシア
トルコ
ブラジル
インド
タイ
メキシコ
南アフリカ
ウルグアイ
マレーシア
コロンビア
フィリピン
(2012.1=100)
110
(2012.1=100)
135
130
新興国通貨の減価
125
105
120
100
115
110
95
105
100
90
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12
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1
20 /1
13
/1
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13
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13
/9
/1
/1
85
/1
90
[出所:BloombergよりR&I作成]
■図表3 新興国の経済成長および世界経済成長への寄与度
<世界の実質GDP成長への寄与度>
<実質GDP成長率>
(%)
10
世界
先進国
新興国
新興国
IMF予測
4
IMF予測
8
先進国
(%)
5
3
6
2
4
1
2
0
0
-1
-2
-2
-4
-3
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
(年)
(年)
[出所:IMFよりR&I作成]
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Copyright(C) 2013 Rating and Investment Information, Inc. All rights reserved.
〒103-0027 東京都中央区日本橋 1-4-1 日本橋一丁目ビルディング(お問い合わせ)インベスターズ・サービス本部
TEL 03-3276-3511
本リポート、本リポートの内容その他本リポートに含まれる情報に関する一切の権利・利益(著作権その他の知的財産権及びノウハウを含みます)は、特段の記載がない限り、株
式会社格付投資情報センター(以下「R&I」といいます)に帰属します。R&I の事前の書面による許諾無く、これらの情報等の全部又は一部を使用(複製、改変、送信、頒布、譲渡、
貸与、翻訳及び翻案等を含みます)し、又は使用する目的で保管することは禁止されています。
2/6
競争力向上と経済基盤の強化に向けた取り組みが信用力判断の鍵に
R&I では、2008 年のリーマンショック以降、ユーロ圏加盟国を中心とする先進国 9 カ国に対し格下
げあるいは方向性をネガティブに変更するなどのアクションをとってきた。一方、中東欧諸国を除けば、
新興国についての格下げは 2011 年 2 月のベトナム(BB → BB-)と、2012 年 11 月のインド
(BBB+ → BBB)の 2 カ国にとどまる。過去 5 年間、経済環境は好調に推移していたにもかかわら
ず、マレーシア(A)、南アフリカ(A-)、メキシコ(BBB)およびフィリピン(BBB-)1 については、
格付評価の柱の 1 つである経済基盤の改善が十分ではないとの判断を踏まえ、格付を据え置いてきた。
格 上 げ し た の は 2 0 11 年 8 月 の ブ ラ ジ ル ( B B B - → B B B )、 2 0 1 2 年 7 月 の ウ ル グ ア イ
(BB → BB+)および同年 10 月のインドネシア(BB+ → BBB-)の 3 カ国のみだ 2 。
各国とも、かつてに比べれば対外債務や政府債務負担が抑制されているほか(図表 4)、政府・中央銀
行が為替や金融システムの安定維持へ注力してきた。国際金融市場が変動する中でも、通貨危機のよう
な極めて厳しい状況に陥る懸念は小さい。その一方、通貨下落を輸出競争力の改善というプラスの面で
生かすことができない国では、通貨下落やインフレ高進に伴い経済が低迷する可能性がある。内需過熱
の過程で家計や企業部門で急速に債務が膨らんでいれば、その調整が消費や投資の足かせとなり、経済
の回復を一段と遅らせることも懸念される。
これまでのように資本流入が内需を押し上げる好循環は望めない。規制緩和やインフラ整備および投
資促進に向けた地道な努力を続け、競争力の向上や経済基盤の強化への道筋をつけることが中長期的な
安定成長の鍵となる。そうした取り組みが遅れるようだと、財政状況や対外バランスが悪化するリスク
も高まるとの判断から、信用力には下押し圧力がかかる。
■図表4 債務負担の変化
<政府債務残高>
(GDP比%)
90
2001年
(外貨準備比%)
2011年
250
<短期対外債務残高>
危機発生前年
2011年
80
200
70
60
150
50
40
100
30
20
50
10
フ
ア
レ
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コ ジル
ロ
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ウ ビア
ル
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ア
イ
イ
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ド
ト
ル
コ
0
0
注)危険発生年はC・ラインハート、K・ロゴフ『国家は破綻する』(2011年、日経BP社)に基づく
[出所:政府債務はIMF、短期対外債務はCEICデータよりR&I作成]
フィリピンについては 2013 年 8 月に格付の方向性をポジティブに変更している。
タイは 2010 年 4 月に政情不安を受けて BBB へ格下げしたが、2012 年 10 月に BBB+へ格上げしている。政情不安という特殊要因
があったことや、格上げにより 2008 年末の格付水準に戻していることを踏まえ、本節では「格上げとなった国」として含めていない。
1
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個別新興国の格付評価ポイント
R&Iがソブリンの格付を付与する 43 カ国(香港を除く)のうち、IMFにより新興国と分類される国 3 の
うち東南アジア諸国、中南米諸国およびインド、トルコ、ブラジルについての格付評価は、以下の通り。
なお、経済成長の鈍化や地方政府の債務負担、あるいはシャドーバンキングといった課題を抱える中
国(A+、安定的)については、中央政府の財政の余裕度や先進国への所得キャッチアップ効果を背景と
した成長余地からして、信用力が短期的に悪化する懸念は小さいと判断している。
一方、中・東欧諸国の信用力は、ユーロ圏の経済・金融動向に大きく影響される。ユーロ圏は 2013
年 2Qに経済が前期比ベースでプラスを回復、3Qも回復基調を維持している。しかし、労働市場改革や
財政健全化はまだ道半ばで、経済成長力を取り戻せるか不透明だ 4 。そうした判断を踏まえると、中東
欧諸国の信用力が現状から一段と改善していくにはまだ時間がかかる、と考えざるを得ない。
●東南アジア諸国
マレーシア(A、安定的)は、輸出向け製造業や天然資源に支えられた経済基盤の強さを背景に、対
外資産が対外負債を上回る債権国だ。強固な銀行監督制度により、金融システムの健全性も保たれてい
る。短期的に経済・財政にストレスがかかる懸念は小さい。しかし、産業構造の高付加価値化に手間取
る中、中国需要の鈍化の影響も加わり、かつては GDP 比 2 桁に達していた経常収支の黒字幅は、5%程
度に縮小する見込みだ。非居住者の国債保有比率の上昇など資金調達構造は変化しつつあり、これまで
のように健全化を後回しにした財政政策は曲がり角に来ている。さらなる信用力向上へのハードルは高
くなっている。
タイ(BBB+、安定的)経済は上半期に減速したほか、輸出の鈍化により経常収支は赤字に転じている。
資本流出により金融市場動向は不安定で、経済・金融市場の今後の動向には注意が必要だ。それでも輸
出志向型の産業集積地という強みは、為替下落局面では輸出競争力の向上というプラスの効果を経済に
もたらす。財政状況や金融システムの安定性という面でも、先行きに特段の懸念はない。大型インフラ
開発計画や産業構造の転換など、長期的な成長力引き上げにつながる政策への取り組みに注目していく。
インドネシア(BBB-、安定的)は、経常赤字が拡大する一方、ルピア安に歯止めがかからない。燃料
価格引き上げの影響もあり、中央銀行の見通しではインフレ率は 2013 年末時点で 9~9.8%に達する。
国際的な経済・金融市場動向の変化に伴い、内需の過熱や供給面からのインフレ圧力、金融市場の未発
達といった構造的な課題が一気に噴出している形だ。十分な規模の外貨準備を有していることや対外債
務が低水準にとどまっていることなどから、マクロ経済が短期的に不安定化する恐れは少ない。しかし、
こうした状況が長引けば、経済成長が抑制され、財政や金融システムにストレスがかかる可能性がある。
金融市場と経済動向に加え、政府・中央銀行の取り組みを注目する。
3
4
IMF の World Economic Outlook で“Emerging Market and Development Economies”に分類される国。
2013 年 7 月 2 日発表の R&I リポート「ユーロ圏:経済成長力回復の道筋見えず」を参照。
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ベトナム(BB-、安定的)でも、資本流出により通貨ドンに切下げ圧力がかかっている。切下げとな
ればインフレが再び高進する可能性もある。しかし、経常収支は黒字を保っており、外貨準備も一定程
度積み上がっている。かつてに比べればこうした状況に対しての耐性は高まっている。R&I が注目する
のは、経済成長の足かせとなってきた不良債権の処理や国有企業改革の動向だ。最優先課題として、政
府がそれら構造改革を加速していくことができるかを注視する。
東南アジア各国が資金流出や為替下落への対応に苦慮する一方で、フィリピン(BBB-、ポジティブ)
の安定感は際立っている。安定したアキノ政権の下、経済は在外フィリピン人からの送金に支えられた
民間消費のみならず、固定資本形成も増加傾向にある。インフレも低水準に抑えられている。これまで
の財政健全化努力により、政府は公共投資や教育へ歳出を増やす余地が出てきた。今後もインフラ整備
などにより投資環境を改善し、国外からの直接投資活発化などで投資を持続的に拡大することで、所得
水準を着実に引き上げられるメドが立てば、格上げが視野に入る。
●中南米諸国
メキシコ(BBB、安定的)では、2013 年の経済はかなりの減速が予想されているが、主要輸出先であ
る米国経済の回復がしっかりしたものになれば、それに伴って回復してくるだろう。他の中南米諸国と
比べて金融市場動向も安定している。注目は、新大統領が進める成長基盤強化に向けた改革の実効性だ。
既に多くの改革法案が成立してきているが、特に、労働市場・財政・エネルギーという重要分野で、ど
れだけ実のある改革を実行できるかが、今後の信用力評価でも鍵を握る。
ブラジル(BBB、安定的)はかつての勢いを失っている。積極的な賃上げや与信の拡大で中間所得層
の底上げを図る政策が奏功したのは、資源ブームを背景とした潤沢な資本流入があってこそ。一方で高
コスト体質の是正は進まず、生産活動は停滞したままだ。資本流入が細っており、消費促進一辺倒では
以前のような成長は難しく、経常収支赤字も拡大しかねない。投資・生産を喚起する方向に政策のかじ
を切ることで、レアル安を輸出競争力の向上という良い形で受け止められる構造へと、経済の転換を図
れるかが注目点だ。
コロンビア(BBB-、安定的)は、強みである経済の安定感を保ちつつ、資源国としての潜在性を開花
させることができるか、息の長い取り組みが必要だ。脇を固める財政・金融政策は手堅く、金融システ
ムも安定している。経済関係閣僚が相次いで国内産業基盤の強化を重視すると表明しており、どのよう
な政策が採られるか注目している。一方、投資活動の活性化の背景でもある治安の改善を確実なものに
できるか、2012 年末から続く左翼ゲリラ組織 FARC との和平交渉の行方には注意が必要だ。
ウルグアイ(BB+、安定的)は、投資の拡大をテコに比較的順調に経済が拡大してきた。再生エネル
ギーや LNG の利用促進を骨子とするエネルギー政策の推進で、干ばつ発生から受ける財政収支への圧
力の緩和を狙う。今後も投資拡大をテコに経済基盤強化が見込めれば、信用力評価上はプラスだ。一方、
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高インフレ体質が直らないことは懸念点だ。所得水準は既に南米諸国中トップクラスであるだけに、必
要以上の国際競争力の劣化につながることが無いか、注意が必要だろう。
●その他の新興国:南アフリカ、インド、トルコ
南アフリカ(A-、安定的)は、回復が鈍い経済動向に苦しんでいる。主要輸出先である欧州経済の低
迷が痛いが、国内では、投資拡大を通じた経済基盤の底上げ、という政府の思惑が結実していない状況
だ。通貨ランドの減価でインフレ圧力の高まりも予想され、経済活動には不利な環境が続く。こうした
中では、2012 年来悩まされている大規模ストライキなどによって、ただでさえ弱い経済回復が不必要
に阻害されやすい。こうした経済状況が財政赤字の削減見通しにどう影響するかが当面の注目点だ。
インド(BBB、安定的)では、先進諸国の量的緩和長期化の影響で原油価格が上昇すると、インフレ・
経常収支・財政収支が悪化、リーマンショック前までの 5 年間で平均 8.8%を記録した経済成長の勢い
を完全に失っている。インフラ不足や労働規制など、経済活動の活性化の鍵を握る重要分野での改革遅
れというツケが、ここへ来て一気に顕在化している状況と言えよう。中銀が通貨防衛などに追われてい
るが、信用力の重要な下支えとなっているのは経済の潜在力だ。より抜本的な経済構造の改革に向けた
取り組みの強化が遅れれば、信用力への下押し圧力が高まる。
トルコ(BB+、ポジティブ)は、大幅な経常赤字と短期資本流入によるファイナンスという構造を抱
えるため、国際的な金融市場動向の変化を受けやすい。中央銀行は金融引き締めを通じて通貨防衛に取
り組んでいるが、為替は大きく下落してインフレ率は 9%近くまで上昇している。良好な政府財政や潜
在的な成長力の高さ、金融システムの健全性といった強みは維持されており、マクロ経済が不安定化す
る懸念は小さい。ただ、これまでのような消費主導の成長モデルは限界にきている。国外からの短期資
本流入依存の是正とともに、外需も取り込むことができる成長構造への転換に向けた政府・中央銀行の
取り組みが注目される。
本リポートは、信用格付業ではなく、金融商品取引業等に関する内閣府令第 299 条第 1 項第 28 号に規定される関連業務(信用格付業以外の業務であ
って、信用格付行為に関連する業務)です。当該業務に関しては、信用格付行為に不当な影響を及ぼさないための措置と、信用格付と誤認されることを
防止するための措置が法令上要請されています。
信用格付は、発行体が負う金融債務についての総合的な債務履行能力や個々の債務等が約定通りに履行される確実性(信用力)に対する R&I の意見
であり、事実の表明ではありません。また、R&I は、信用リスク以外のリスクにつき意見を表明するものではなく、投資判断や財務に関する助言や、
投資の是非等の推奨をするものではありません。R&I は、信用格付に際し関連情報の正確性等につき独自の検証を行っておらず、これに関し何ら表明
も保証もいたしません。R&I は、信用格付(変更・取り下げ等を含む)に関連して発生する損害等につき、何ら責任を負いません。信用格付は、原則
として発行体から対価を受領して実施したものです。なお、詳細につき http://www.r-i.co.jp/jpn/policy/policy.html をご覧下さい。
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