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108mの超高層住宅排水実験タワー・・安孫子義彦
No.036 Spring 「108 mの超高層住宅排水実験タワー」 株式会社 ジェス 安孫子義彦 以前は、集合住宅の排水方式は2管式で、排水管と通気立て管の2本がパイプシャフトに設置され、各階の排水管がこ れに接続されていた。これは米国から入ってきた方式である。これに対して1本の排水管に特殊排水継手を設けた単管式 排水方式がある。これは特殊排水継手で排水と空気を継手内で分離交換しながら流すため、通気立て管がいらない排水方 式であり、8階建て程度のヨーロッパの集合住宅で多用されていた。 何度かのマンションブームに乗って、スペースが小さくてすむ単管式が、いまではわが国のマンション排水の主流になっ ている。メーカー各社は特殊排水継手の性能試験のために、自社に 30 m程度(10 階程度)の排水実験タワーを建て、特 殊排水継手の排水性能開発を競い合った。マンションも超高層の時代に入ってきた。各社の実験タワーで測定し予想でき るのは、せいぜい 15 〜 20 階程度で、これを超す超高層マンションでは排水がどのように流れるのか、未知の領域として 残されていた。 時もとき東京で都市博覧会の話がもち上がった頃である。超高層住宅用の排水を解明するロケット発射台のような実験 施設ができないだろうかと思い、国の重要技術開発補助金申請をねらって描いたイメージスケッチが、UR都市機構の担 当者の目にとまり「都市博の出し物に面白い」と の一言から実験タワー建設の計画が動き出した。 筆者らも喜々として建設計画に没頭した。排水 実験だけではもったいない。材料の劣化や、落 下物試験、高所の心理分析、超高層換気、風に よる揺れの影響など、多面的な実験ができるよ うな計画が練り上がった。構造の経済性から形 は8角形となったため、排水実験スペースが非 常に狭くなった。工期も非常に短く、実験用配 管は配管ユニットをつくり鉄骨の建て方と同時 に対応した。 この実験タワーは UR 都市機構の八王子都市住 宅技術研究所に現存する。高さは 108 m、航空 進入路の高さ制限がある中で、36 階 100 mを超 すことにこだわった。完成後、ここで行われた 排水のさまざまな実験結果から、現在建設さて いる 60 階近い超高層住宅でも、単管式排水方式 が採用される技術的根拠が生まれた。 排水の理論化で四苦八苦していた技術者の悩 みが、108 m煩悩タワーに救われたという軽口 も聞かれた。いま中国上海では、この実験タワー に関与した中国人の女性留学生が中心となって この種の上海排水実験タワーを建設中と聞く。 地上 36 階、高さ 108 m、一辺約 5 mの八角形.12m ごと(4 階相当)に実験床がある。 隣接して中層用の 30 m排水実験タワーが見える。