Comments
Description
Transcript
血液培養 活用していますか?
平成27年度 第4回 感染防止対策連携病院カンファレンス 2016.2.29 血液培養 活用していますか? 1) 血液培養の意義 2) 血液培養採取のタイミングと手技 3) 血液培養陽性の解釈と治療 “血液培養は最も重要な細菌学的検査である“ No microbiologic test is more important for the clinician than the blood culture. 菌血症:本来無菌の血液中 血液培養によって、 に細菌が存在する状態 ・菌血症の有無を診断 ・原因菌をつきとめる ・感受性が分かる 治療対象が分かる →抗菌薬選択が楽に ・菌種から感染巣を絞り込む ・治療期間の設定 早期の診断と、適切な 抗菌薬治療が必要 (菌血症は10-14日など) ・非感染症診断の根拠のひとつ 菌血症患者予後の経年的推移 佐賀大学医学部附属病院 (1997~2014) 期間 1997/11~ (17M) 2004/5~ (12M) 2005/5~ (12M) 2009/1~ (12M) 2012/1~ (12M) 2014/1~ (12M) 症例数 73例 149例 169例 239例 286例 236例 1000patient daysあたりの 菌血症数 0.26 0.75 0.87 1.26 1.44 1.27 血培採取時に 敗血症性 ショック 23 / 73例 (31.5%) 35 / 149例 (23.5%) 37 / 169例 (21.9%) 37 / 239例 (21.9%) 56 / 286例 (19.6%) 40 / 236例 (16.9%) 全死亡数 (率) 25 / 73例 (34.2%) 14 / 149例 (9.4%) 26 / 169例 (15.4%) 21 / 239例 (8.7%) 42 / 286例 (14.7%) 34 / 236例 (14.4%) 血液培養をたくさん採取して、菌血症をたくさん診断すると、 患者の予後が良くなる Aoki Y, et al:Internal Medicine 39: 901-909, 2000 濱田洋平:第83回日本感染症学会西日本支部学術集会 85歳女性 胃潰瘍で入院 微熱 → 尿検査で白血球・亜硝酸塩陽性 → クラビット 意識レベル低下 嘔吐 → 内服中止 発熱・ 血液培養採取 クモ膜下出血 血液培養 Streptococcus parasanguinus 腰痛⇒ 椎体炎 脾膿瘍 連鎖球菌の 亜急性感染性心内膜炎 #1 微熱 #2 尿定性陽性 #3 意識障害 #4 心雑音 #5 腰痛 #6 口腔内衛生不良 #7 胃潰瘍 尿定性陽性が感染症の本態とは限らない 尿定性陽性→抗菌薬の前に、 血液培養を採取する 90歳、男性(救急外来) #1 発熱 #2 便失禁、うわ言 #3 悪性リンパ腫(外来f/u) 誤嚥性肺炎? 胆嚢炎?? SBT/ABPC + CLDM Listeria monocytogenes →リステリア髄膜炎 誤嚥性肺炎や胆嚢炎の 画像所見が,患者病態を 全て説明するとは限らない ので、血液培養を採取する インフルエンザ疑い(検査陰性) 血液培養採取なし、タミフル 77歳男性 キュビシン 350mg×1 血培採取 血液培養4/4本陽性 PM部の発赤・ 疼痛→抜去 ルート部 発赤疼痛 MRSAによるカテーテル関連 血流感染→ペースメーカー感染 インフルエンザを疑う場合も血液培養の採取を検討する (特にインフルエンザ陰性であれば採取すべき) どのような患者で血液培養を採取するか ①一般的な感染症の兆候 発熱 悪寒・戦慄 頻脈・頻呼吸 血圧低下 炎症所見上昇 低体温・白血球低下 代謝性アシドーシス 点滴留置患者の発熱や刺入部感染徴候 ②原因不明の 発熱 意識障害 高齢者の不定愁訴 例:食思不振 ③慢性の基礎疾患が悪化したとき (その原因が感染症であることが多い) 心不全 糖尿病 肝硬変 失禁 せん妄 転倒 佐賀大学病院における血液培養採取状況 2006.4~ 卒後初期臨床研修に 感染症診療 選択コース 開始 5000 4500 4000 3500 3000 2500 2000 1500 2005.4~ 新卒研修医に 感染症診療 オリエンテーション 開始 2004.5~ 血液培養陽性例への 診療支援開始 ■ 2セット以上 1000 500 ■ 1セット 0 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 血液培養検査の流れ 採血 ふらん器で培養 陽性 血液中に存在する菌を 培養して検出する 培養・ 同定・感受性 血液を グラム染色 血液培養採取のタイミング 悪寒があればなるべく早い タイミングの採取が望ましい 採血 体温 菌量 0 30 60 時間(分) 必ず抗菌薬投与前に採取する 転院搬送前の血液培養が、搬送先の治療に有用 セット数 採血量 血液培養の正しい採取方法 ◎菌血症を確実に拾い上げる 血液培養の感度を上げるには セット数と採血量が重要 採血量 or セット数が少ない →菌血症を見逃す可能性がある 2セット+ 1本あたり10ml 10ml 血液培養の感度 10ml 10ml 10ml ただし、1セットであっても 提出することが望ましい Weinstein et al,Detection of Bloodstream Infection in Adults: How Many Blood Cultures Are Needed ? J Clin Microbiol.2007;45:3546-3548 血液培養の正しい採取方法 採血方法 ◎コンタミネーション(皮膚常在菌の混入)をしない =無菌的に採血する 【採血部位】 ・ 1セットごとに四肢を変更 ・ 不潔な下肢・鼠径部からの採血はなるべく避ける ・ 点滴中の四肢からは点滴部位の末梢から採血 ・ 静脈血採血でよい ・ カテーテル脱血は原則として避ける *カテーテル先端に定着した皮膚常在菌を検出して、菌血症との区別が困難となるため カテーテル関連血流感染を疑う場合は 1セット:カテーテル脱血 もう1セット:末梢から採血 *この場合、2セットにすることが必要 血液培養の正しい採取方法 採血方法 ◎コンタミネーション(皮膚常在菌の混入)をしない =無菌的に採血する ・ 必ず手指衛生 ・ 手袋 + マスク (唾液でコンタミする) アルコール綿 【消毒】 ① アルコール綿で物理的に汚れを落とす ② イソジンまたは1%クロルヘキシジンエタノールで、 広く2回消毒 ③ イソジンは乾燥してから採血する イソジンもしくは1%クロル ヘキシジンエタノール2回 血液培養の正しい採取方法 採血方法 ◎コンタミネーション(皮膚常在菌の混入)をしない =無菌的に採血する 【採血】 ボトルのゴム栓は滅菌されていない ・ 消毒部位には触れずに採血する ・ どうしても触れる場合は滅菌手袋で ・ 1セットあたり20ml ・ ボトルのゴム栓は滅菌されていない →イソジンかクロルヘキシジンエタノールで消毒する ・ ボトル注入時には針は変えない ・ 赤(嫌気)→青(好気)の順で入れる 赤→青の 順で注入 平成26年度の診療報酬改定から、 血液培養検査2セット算定可能 1セット 310点 2セット 620点 血液培養陽性までの日数 真の菌血症であれば 2日以内にほとんど陽性化する Bourbeau PP et al, Routine incubation of BacT/ALEAT FA and FN blood culture bottles for more than 3 days may not be necessary. J Clin Microbiol.2005;43:2506-2509 血液培養検査の流れ 採血 ふらん器で培養 内科的 エマージェンシー 陽性 感染制御部へ直ちに連絡 抗菌薬選択などについて 診療支援 血液中に存在する菌を 培養して検出する 培養・ 同定・感受性 血液を グラム染色 血液培養陽性の解釈と治療 ~グラム染色に基づく分類~ グラム 陽性球菌 グラム 陰性球菌 グラム 陽性桿菌 グラム Infectious disease and Hospital Epidemiology, SAGA University Medical Center 陰性桿菌 血液培養陽性の解釈と治療 ~コンタミネーションの解釈~ 検出菌によるコンタミネーションの評価(頻度が高い細菌) • コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(表皮ブドウ球菌など) • Bacilllus cereus • Propionibacterium acnes • Corynebacterium sp ※ただし、カテーテル関連血流感染症は起こし得るので除外が必要 検出状況によるコンタミネーションの評価 • 2セットのうち1セットのみから検出 • 陽性となるまでに時間がかかっている(カンジダではあり得る) • 血液培養を再検してみる ・抗菌薬を使用せずに経過を見てみる 血液培養陽性の解釈と治療 ~グラム陽性球菌の初期治療~ ブドウ球菌 【原因菌リスト】 • 黄色ブドウ球菌 - MSSA MSSA、MSSであれば - MRSA CEZへ変更する →バンコマイシンで開始 • コアグラーゼ陰性ブドウ球菌 - MSS - MRS →バンコマイシンで開始 ※黄色ブドウ球菌をコンタミネーションと 判定する場合は慎重に レンサ球菌 【原因菌リスト】 • α-連鎖球菌、β-連鎖球菌 →ペニシリンGで開始 • 肺炎球菌(双球菌、莢膜) - PSSP - PRSP…髄膜炎の時 →髄膜炎でなければペニシリンGで開始 →髄膜炎の可能性あれば セフトリアキソン+バンコマイシン併用で開始 • 腸球菌(短い連鎖、やや細長め) - フェカーリス - フェシウム →バンコマイシンで開始 菌種・感受性が判明したら、最適な抗菌薬に変更を検討する 血液培養陽性の解釈と治療 ~グラム陰性桿菌の初期治療~ 腸内細菌 ブドウ糖非発酵菌 を考える を考える 【原因菌リスト】 • 腸内細菌 →セフトリアキソンで開始 ※必要時、バクテロイデス属のカバーを追加 - 大腸菌、クレブシエラ、プロテウス に絞れれば →セファゾリンで開始 ※必要時、バクテロイデス属のカバーを追加 - ESBL産生菌の可能性 (検出歴、ショック状態など待てない場合) 【原因菌リスト】 • ブドウ糖非発酵菌 - 緑膿菌 - アシネトバクター - マルトフィリア →セフタジジムで開始 ※マルトフィリアはセフタジジムの感受性 が悪いので、強く疑うときはST合剤かミ ノサイクリン併用を検討する。 →カルバペネム系で開始 菌種・感受性が判明したら、最適な抗菌薬に変更を検討する 菌血症患者予後の経年的推移 佐賀大学医学部附属病院 (1997~2014) 期間 1997/11~ (17M) 2004/5~ (12M) 2005/5~ (12M) 2009/1~ (12M) 2012/1~ (12M) 2014/1~ (12M) 症例数 73例 149例 169例 239例 286例 236例 1000patient daysあたりの 菌血症数 0.26 0.75 0.87 1.26 1.44 1.27 血培採取時に 敗血症性 ショック 23 / 73例 (31.5%) 35 / 149例 (23.5%) 37 / 169例 (21.9%) 37 / 239例 (21.9%) 56 / 286例 (19.6%) 40 / 236例 (16.9%) 全死亡数 (率) 25 / 73例 (34.2%) 14 / 149例 (9.4%) 26 / 169例 (15.4%) 21 / 239例 (8.7%) 42 / 286例 (14.7%) 34 / 236例 (14.4%) 血液培養をたくさん採取して、菌血症をたくさん診断すると、 患者の予後が良くなる Aoki Y, et al:Internal Medicine 39: 901-909, 2000 濱田洋平:第83回日本感染症学会西日本支部学術集会