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講義資料
市場と経済A 1 第11回 国民所得の測定(教科書第8章) 2014年6月23日(月) 担当:天羽正継(経済学部経済学科専任講師) 2 マクロ経済学とGDP ミクロ経済学が家計や企業など、個別の経済主体がどのように行動し、それらが市場でどのように相互作 用するのかを研究するのに対して、マクロ経済学はインフレーション、失業、経済成長など、経済全体に かかわる現象を研究する。 マクロ経済学で最も重要な概念が国内総生産(Gross Domestic Product, GDP)。一国の総所得を測る尺 度。 一国の経済的な「豊かさ」を測る尺度でもある。 GDPは、一国の経済における総所得と、財・サービスへの総支出の両方を測定する。 一国の経済全体において、所得と支出は等しくなるため。 GDPは国内総「生産」であるから、GDPは生産、分配(所得)、支出のいずれの側面で測っても等しくなる(三面 等価の原則)。 3 国内総生産の測定(1) GDPとは、一定期間において、一国内で生産されるすべての最終的な財・サービスの市場価値である。 「市場価値である」の意味:GDPは、財・サービスを市場価格で評価する。 「一定期間において」の意味:GDPは通常、1年もしくは1四半期(3ヵ月)に生産された財・サービスの市場価値 を測定する。 GDPは、その期間における所得と支出のフロー(流れ)。 「一国内で」の意味:GDPは生産者の国籍に関係なく、一国内で生産された財・サービスの市場価値を測定する。 GDPとは異なり、国内か国外かにかかわらず、自国籍の生産者によって生み出された財・サービスの市場価値を測定するのが 国民総生産(Gross National Product, GNP)。 「生産される」の意味:GDPは今期に生産された財・サービスを含むが、過去に生産された財に関係する取引は含 まない。 「すべての」の意味:GDPは、市場で取引されるすべての財・サービスを含む。しかし、市場で取引されない(市 場価格のつかない)財・サービスは、GDPには含まれない(例:主婦の家事労働)。 「最終的な」の意味:GDPは最終財のみを含み、その財・サービスを生産するために投入された中間(投入)財は 含まない。 中間財の市場価格は、最終財の市場価格の中に含まれていると考えられるため。 GDPを「各生産段階で生み出された付加価値の合計」と考えてもよい(スライド4)。 「財・サービス」の意味:財は有形であり、サービスは無形である。 4 小麦 国内総生産の測定(2) 100 付加価値 小麦粉 パン 100 50 40 150 消費者へ ※小麦と小麦粉は中間財で、パンは最終財。各生産段階で新たに 生み出された付加価値の合計は、最終財の価値190に等しい。 5 GDPの構成要素 GDP(Y )は、消費(C )、投資(I )、政府支出(G )、純輸出(NX )から構成され、 Y = C + I + G + NX の恒等式が成り立つ。 消費(C ):家計による財・サービスへの支出。 投資(I ):より多くの財・サービスを生産するために将来使用される財の購入。 資本設備、在庫、建造物の購入の総額。 例:自動車を家計が購入すれば消費になるが、同じ自動車を企業が営業用に購入すれば投資になる。 生産された財が消費されず在庫に回された場合、「在庫投資」として投資に含められる。 後に在庫の中から財が販売されれば、在庫投資はマイナスとなる。 政府支出(G ):政府(中央・地方政府)による財・サービスへの支出。 政府職員の給料や公共事業への支出などで構成される。しかし、社会保障給付金や失業手当などのような移転支払は、その期 に生産される財・サービスと交換に行われたものではないので、政府支出には含まれない。 純輸出(NX ):輸出(X )から輸入(M )を差し引いた金額。輸入を差し引くのは、それがGDPの他の構成要素 に含まれているため。 上記の恒等式のNX をX - M で置き換えると「 Y = C + I + G + X -M ⇔ Y + M = C + I + G + X 」となり、国内で生産さ れた財・サービスと海外から輸入された財・サービスの合計が、国内での支出の対象となるか、輸出されて海外での支出の対 象となることを示している。 6 実質GDPと名目GDP(1) 財・サービスの生産額をその期の価格で評価したのが名目GDP。これに対して、ある基準年の価格で評価 したのが実質GDP。 名目GDPと実質GDPの数値例(スライド7,上段) 基準年においては、名目GDPと実質GDPは等しい。 実質GDPは価格が基準年で固定されているので、価格の変化の影響を受けず、生産量の変化のみを反映する。 GDPデフレーター GDPデフレーター = 名目GDP ÷ 実質GDP × 100 基準年には名目GDPと実質GDPが等しいので、GDPデフレーターは常に100になる。 基準年以降に生産量は増加するが価格は変わらない場合、名目GDPと実質GDPはともに増加するため、GDPデフ レーターは一定(スライド7,中段)。 基準年以降に価格は上昇するが生産量は変わらない場合、名目GDPは増加するが実質GDPは変わらないため、 GDPデフレーターは上昇(スライド7,下段) 。 すなわち、GDPデフレーターは財・サービスの価格の変化のみを反映する。 連続する2年の間のインフレ率は、次のように計算される。 第2年のインフレ率 = {(第2年のGDPデフレーター)-(第1年のGDPデフレーター)}÷ 第1年のGDPデフレーター × 100 7 実質GDPと名目GDP(2) 教科書276ページの数値例 ホットドッグ 年 価格(ドル) 量(個) 2010 1 100 2011 2 150 2012 3 200 ハンバーガー 価格(ドル) 量(個) 2 50 3 100 4 150 生産量は増加するが価格は変わらない場合 ホットドッグ ハンバーガー 年 価格(ドル) 量(個) 価格(ドル) 量(個) 2010 1 100 2 50 2011 1 150 2 100 2012 1 200 2 150 価格は上昇するが生産量は変わらない場合 ハンバーガー ホットドッグ 年 価格(ドル) 量(個) 価格(ドル) 量(個) 2010 1 100 2 50 2011 2 100 3 50 2012 3 100 4 50 名目GDPの計算 1×100+2×50=200(ドル) 2×150+3×100=600(ドル) 3×200+4×150=1,200(ドル) 名目GDPの計算 1×100+2×50=200(ドル) 1×150+2×100=350(ドル) 1×200+2×150=500(ドル) 名目GDPの計算 1×100+2×50=200(ドル) 2×100+3×50=350(ドル) 3×100+4×50=500(ドル) 実質GDPの計算 (基準年=2010年) 1×100+2×50=200(ドル) 1×150+2×100=350(ドル) 1×200+2×150=500(ドル) 実質GDPの計算 (基準年=2010年) 1×100+2×50=200(ドル) 1×150+2×100=350(ドル) 1×200+2×150=500(ドル) 実質GDPの計算 (基準年=2010年) 1×100+2×50=200(ドル) 1×100+2×50=200(ドル) 1×100+2×50=200(ドル) GDPデフレーターの計算 200÷200×100=100 600÷350×100=171 1,200÷500×100=240 GDPデフレーターの計算 200÷200×100=100 350÷350×100=100 500÷500×100=100 GDPデフレーターの計算 200÷200×100=100 350÷200×100=175 500÷200×100=250