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精神療法入門
by
利根川義昭
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§1精神療法とは何か
1.1精神療法入門
引用文献:「精神療法入門/西園昌久著/中山書店」
1.2精神療法とは何か
精神療法の始まり=精神分析の始まり。
「ヒステリー研究」の重要な2つの症例:アンナ・Oの症例(1895)、ルーシ
ー・Rの症例(1895)
●アンナ・O⇒転移の理解への発展。
呪術まがいのものとは違った近代精神療法が開発される契機になった症例とし
て有名
●ルーシー・R 慢性の化膿性鼻炎で悩む若い婦人。
・完全に嗅覚を失っておりながら、絶えずといってよいほど一、二の主観的な
匂いに悩まされている。
・気分がふさいでしまう、倦怠感があり、頭痛や食欲不振、作業能力の不振の
訴え。
「ルーシーは家庭教師として2人の娘の面倒を見ているのですが、雇い主である工場主の奥さん、つまり2人の子供
・催眠ではなく寝椅子に寝かしての前額法。「いま浮かんだことを話してくだ
さい」。自由連想の前段階。
・「工場主がじっと見入っていたというのは、あなたを愛してあなたのことを
思い出していたのではないのではありませんか」「そのとき彼は亡くなった奥
さんのことを思い出していたのではないでしょうか」ルーシー「そうかもしれ
ません」
⇒しばらくの後、症状消失
・自分が工場主の妻になるかもしれないという幻想と、それは幻想にすぎない
ということを認めることについての葛藤がヒステリー症状を起こしていたので
はないか。
・フロイトの指摘による幻想の喪失、その代わりに本人は自由になる。
◇失ったことの受け入れ&現実の取り入れ=「悲哀の仕事」とのちに呼ばれる
ようになる
・Q&A:症状が分かった原因が分かればなぜヒステリ
ー症状がとれるのでしょうか?
原因が分かるというのはただ「知的」にわかるということだけではありません。フロイトの理解では葛藤にはらむ不
【治療関係の成立とその推移】
・治療動機を明らかにしておくことの大事さ
→患者が自分で来たのか、他人の勧めで来たのか、あるいは強制されてしぶし
ぶ来たのか?
→その後の治療関係が非常に変わってくる
◇ケース事例:
・中学校から不登校で不登校生のための高校に進学。
・ほとんど通学しないまま卒業し、その後ひきこもっている青年。
・両親に連れられて来院。面接中も明らかにありがた迷惑といった態度。
・話を聞いた後に「一応あなたの診断はしましたが、あなたの意志が大事で
す。だから、私にもう一度会いたいという気持ちが起こった時、いつでもよい
からここへ電話してください。そうしたら、そのときに私はあなたと話をしま
す。そのときは、お父さん、お母さんとは別に、一人でおいでなさい」と言っ
てそのまま帰した。
・3ヶ月後の本人から電話⇒「先生と話をしたい」
⇒本人の動機づけをすることが治療関係につながる
※〈精神療法をするときに大事なのは、関係を結べるかどうか、いま言ったように約束が守れるかどうか、そしてそ
-
〈たとえばイヌを連れて散歩するときに、いちばんいい関係は、イヌのリード(ひも)がイヌにも飼い主にも意識さ
○両者の関係をつくって維持していく力は、転移、逆転移が起きても精神療法
を続けていく上で重要。
→患者は症状や困っていることを報告しながらも自分の持っている思いを治療
者にぶつける。それを治療者のほうは受け止めながら、知的にばかりでなく、
治療者の感情で反応する。それが治療の目的に適うようにするには、両者の関
係をつくって維持していくという力が必要になるのです。
【精神療法の治療メカニズム】
1)支持
・自由に話すこと、そういう関係をきちんと保障するということ
・「支持」=支え、杖になるということ。足の悪い人が歩くときに杖があったら歩けるし、歩きやすい。
・「支持」であり、命令をする「指示」ではない。
・患者さんに色々な説明をしてあげて再保証をする、安心させることが大事
この頃の人々は自分を見失いがちで、自分を確かめようとする傾向にある。自分を見つけ出すようにすることに力
⇒本人が感じ、考え、やろうとしていることを、よく聴いてみる。やろうとしている気持ちを聴いてもらうことで、
・自己評価の低さ:自己愛や躁病の場合は病的な自己評価を持っているが、それは自分と他人とのかかわりに基づく
・支持療法は「原因」を明らかにすることではない。
具体的にいえば眼前の患者さんにとって何が緊急な出来事か、いま必要なことは何だろう、そういう気持ちで患者さ
2)カタルシスと「聞く・聴く」こと
・「聴く」=耳と目と心を合わせる。われわれが話をするときは耳で聴くだけではない。
→「全身で聴く」「全身の汗腺を開いて聴く」「第三の目で聴け」(byReik,T)
・表情、まなざし、視線が合うか、表情はにこにこしているようだけども話しながらハンカチを握りしめている、椅
・不安や症状を治してほしい=言葉の裏側では夫とのこと、子どものこと、会社のことなどの現実の困ったこ・と
・今目の前にいる「先生」がどう見えているのか、幻想等を想定しながら頭に描きながら聴いていく。
3)closedstylequestionよりopenstylequestion
closedstylequestion:「はい・いいえ」で答えられる。閉ざされた質問
openstylequestion:開かれた質問
話を聴き、ときにはあいづちを打って、あいまいな話のときはそこを聴き返す⇒「明確化」
「あなた自身はどう思ったの?」。本人がどう思ったか、それを明らかにする⇒「直面化」
「開かれた」方式の面接は、患者にわかってもらった、話を聴いてもらえたという気持ちを起こさせる
→カタルシスにつながる
4)治療の関係を通じての体験
・治療関係の進展⇒「安心」、治療者への「尊敬」
・そういうケースばかりではない⇒退行(幼児がえり)、しがみつき、依存、こきおろし、被害感、攻撃
→治療者が一緒になって反応するのではなく、その意味を考えることが大切。
→関与しながらの観察(Sullivan,H.S)
→逆転移の活用
・治療者にも「この患者さんはおもしろくないな」という感情反応というのは起きてくるもの。
・治療者の心に起きてきたその感情をどう活用するか。この患者はなぜ私にこういう気持ちを起こさせるのか。
・「投影同一化」
不安が非常に強いとき、自分の不安を自分では受け止めかねて、相手が自分を誤解している、相手が自分を理解して
・治療者にも起こる投影同一化
患者「治療者に嫌われている」×治療者「患者さんから恨まれている」→同時に進行
「自分が患者に動かされているんだ……なぜ動かされるのだろう、この人は一体何を求めているのか、私にこの場でそ
・患者さんが過去に親に受け入れられずに辛かったり悲しかった時の気持ちと同じ思いを自分にぶつけていることに
→そのような関係ができてくると余裕ができる、もう一度咀嚼することもできる。
⇒新しい関係性の発展と、不安がとれていく、という考え方
5)「知る」ことと「学習」
・関係がしっかりした上で正しい介入がなされると、自分の心の中に秘かに、あるいは無意識に思っていたことがは
フロイト「真実を知る欲求が最高の欲求」
ビオン「心は真実に触れると成長する」
・本を読んだだけでは病気は良くならない。知的洞察だけで病気は治らない。
→情緒的な洞察、「あぁそうだったのか」という気持ち(ahaexperience)が伴わないと治らない。
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