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第3章 本研究の調査と分析の概要について
第三章 本研究の調査と分析の概要について 本章では,本研究で実施した調査と分析の方法について解説する. 3-1 研究調査方法 研究のフロー図を図 3-1 に再掲する.図中の章番号は,本論文中の対応する章を示して いる. 過去の調査結果の集計・分析 調査票・アンケート票の作成 2007 年度(第 3 回)琵琶湖一周調査隊 一斉調査結果 ②調査直後 アンケート ①調査直前 アンケート 調査結果の集計・分析(第四章) 琵琶湖水環境知覚マップの作成 ③調査事後アンケートの送付 各調査項目間の結果の相関関係 アンケート結果の集計・分析(第五章) 参加者の琵琶湖の認知の変化の傾向 調査票とアンケート調査結果のクロス集計(第六章) 参加者の属性からみた調査票記入結果の傾向 各調査項目の関連する語句の出現率 各調査項目について妥当性の検討(第七章) 図 3-1 研究フロー図 13 図に示すように,本研究では次のような流れで研究を進めていった. 1. 調査票・アンケート票の設計 本研究では先ず,過去 2 回の琵琶湖一周調査隊(調査隊)の調査結果を分析するととも に文献調査の結果や他の水環境一斉調査の調査票を参考に,より効果的な知覚環境調査項 目を含む第 3 回調査隊の一斉調査のための調査票を設計した.また,設計した調査票の調 査項目が調査者の琵琶湖(あるいは河川)の認知に与える影響を明らかにすることを目的 として,調査日当日の一斉調査直前に実施する①直前アンケートと一斉調査直後に実施す る②直後アンケート,一斉調査から約 3 ヵ月後に実施する③事後アンケートの 3 種類のア ンケート票を作成した. 2. 第 3 回調査隊の実施 第 3 回調査隊(2007 年度)は,滋賀県琵琶湖再生課と琵琶湖流域ネットワークによって, 著者が設計した調査票とアンケート票を用いて実施された.調査隊による一斉調査の概要 と調査票に基づく調査結果は第四章で述べる. ・ 調査直前アンケートの実施 第 3 回調査隊では,一斉調査の実施直前に①直前アンケートを参加者に回答させた.同 アンケートでは,調査参加者の属性に関する質問と, 「琵琶湖」と調査地点が河川の場合は 同「河川」に対するイメージを自由記述で回答させ,同時に調査結果(琵琶湖水環境知覚 マップ)と③事後アンケートを郵送するための住所を記入させた.なお,①直前アンケー トの質問項目と回答の集計結果は第五章で述べる. ・ 調査直後アンケートの実施 一斉調査の終了直後には②直後アンケートを調査参加者に回答させた.アンケート②で は,「琵琶湖(あるいは河川)」のイメージを自由記述で,また,調査結果に対する認識や 次回調査への参加意思の有無などを回答させた.なお,アンケート②の質問項目と回答の 集計結果は第五章で述べる. 3. 一斉調査結果の単純集計と琵琶湖水環境知覚マップの作成 第 3 回調査隊の一斉調査での調査票の記入結果を,調査項目ごとにランク別に集計し, 地理情報システム(GIS)を用いて琵琶湖水環境知覚マップとしてまとめた.作成したマ ップは第四章に掲載する. 4. 琵琶湖水環境知覚マップの送付と事後アンケートの実施 一斉調査の実施から約 3 ヵ月後,作成した琵琶湖水環境知覚マップを③事後アンケート とともに調査参加者に郵送した.③事後アンケートでは,琵琶湖水環境知覚マップを見せ 14 た上で,「琵琶湖(あるいは河川)」のイメージを自由記述で,また,調査結果に対する認 識などを回答させた.回答した③事後アンケートは,同封した返送用封筒を用いて回収し た.なお,同アンケートの発送・受け取りは滋賀県琵琶湖再生課を通して行った.③事後 アンケートの質問項目と回答の集計結果については第五章で述べる. 5. 集計・分析 まず,調査票に基づく一斉調査の調査結果の単純集計を行い,集計結果から琵琶湖の水 環境知覚マップを作成した.それに続いて,調査票における調査項目間の結果の相関係数 を求め,同相関係数に対するクラスター分析によって項目のグループ分類を行った.作成 した水環境知覚マップとクラスター分析の結果は第四章で述べる. 次に,直前・直後・事後のアンケート調査結果の単純集計を行った.また, 「琵琶湖(あ るいは河川)」に対するイメージに関しては,テキスト解析や数量化Ⅲ類によって,参加者 の直前から直後,事後にかけての回答傾向の変化を分析した.これらの結果は第五章で述 べる. さらに,調査票の記入結果とアンケート調査(直前・直後・事後)の回答結果でのクロ ス集計と重回帰分析を行った.それらの結果については第六章で述べる. 以上の結果から設計した調査票の調査項目の妥当性を検討した. 3-2 アンケート調査結果の集計・分析方法 最後に,アンケート調査を中心に,調査結果や回答結果の集計・分析方法について補足 説明する. 3-2-1 集計・分析の流れ アンケート調査の回答結果に対する分析方法を,一斉調査の調査結果に対する分析方法 とともに表 3-1 に示す.また,本研究全体における集計と分析の流れを図 3-2 に示す. 15 表 3-1 分析目的と方法 研究目的 ① 各調査項目間の調査結果の相関関係の把握 ② 分析手法 クラスター分析 テキスト解析 数量化Ⅲ類 クロス集計 等高線グラフ ①と②の結果から考察 各調査項目が参加者の琵琶湖の認知に与えた影響 の把握 ③ 設計した各調査項目の妥当性の検討 第3回調査隊 調査票の単純集計 アンケート票①②③ 水環境知覚マップの作成 単純集計 (2006年度のマップと比較) アンケート票①②③ テキスト解析 「琵琶湖(河川)」のイメージ 直前・直後・事後の違い ・抽出語の比較,数量化Ⅲ類 各調査項目の相関 クラスター分析 調査票とアンケート票のクロス集計 ・認識の変化に影響を及ぼした要因を明らかにするためにクロス集計と 重回帰分析を行う 各調査項目が参加者の琵琶湖の認知に与えた影響 ・各調査項目が調査参加者に与える影響 ・各調査項目の妥当性の検討 図 3-2 集計と分析の流れ なお,アンケート調査では,調査参加者に自由記述と選択回答形式で答えさせた.回答 結果は,選択回答形式の設問に関しては単純集計した.また,自由記述で回答させた「琵 琶湖(調査地点が河川の場合は同河川)」のイメージに対する分析方法については次に述べ る. 3-2-2 「琵琶湖(調査地点が河川の場合は同河川)」のイメージの変化の分析方法 本研究では,直前・直後・事後アンケートにおいて参加者の琵琶湖(あるいは河川)の イメージを尋ねた.質問方法としては,自由言語連想法を採用した.自由言語連想法とは, あらかじめ言語の候補は提示せずに,自由に回答させる方法である.短時間で単純な質問 に回答させることにより,被験者に制限や労力をかけさせることなく調査を行うことがで 16 きるといった利点がある3).ただし,自由に記述させるため,回答が多方面に広がり,結 果として高い想起確率の回答が少なくなる傾向があるといった欠点をもつ.しかし,本研 究のアンケート調査では,不特定多数の一周調査隊参加者に,現地で記入してもらう必要 があり,負担が少なく直感的な記述ができる自由言語連想法を採用した. 3-2-3 テキスト解析による特徴的語句の抽出 上記の「琵琶湖(調査地点が河川の場合は同河川)」のイメージに関する自由記述に対し ては計量テキスト解析を実施した.解析には,専用ソフトである「KH Corder」を用い,そ れぞれのアンケートごとに特徴的な語句を抽出した. 3-2-4 数量化Ⅲ類によるイメージ変化の分析 また,調査参加者の「琵琶湖(調査地点が河川の場合は同河川)」のイメージの調査直前 と直後,直後と事後の変化を分析するために,数量化Ⅲ類による分析を実施した.数量化 Ⅲ類では自由記述のデータを数値化するため,それぞれのアンケートにおいて特徴的であ った語句を包括するカテゴリーを設定し分析を行った.また分析用ソフトとしては「エク セル統計 2004 for Windows」を用いた. 17 <参考文献> 1) 小倉紀雄:水質測定における簡易分析法の役割と広がり,公害と対策,26(7),626-632 (1990) 2)小倉紀雄:パックテストで身近な川の監視ネットを,科学朝日,50(7),14-17(1990) 3)杉本さやか:五感マップ手法におけるイメージ調査の有効性についての研究,滋賀県立 大学修士学位論文,p.23(2007) 18