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別紙1 原因究明のためのテスト結果詳細[PDF形式]
別紙 1 原因究明のためのテスト結果詳細 1.テスト対象試料等 1)商品の概要 従来、ゼリーは主にゼラチンや寒天などを凝固剤として使い固めたものであったが、常 温で流通しているひと口サイズのゼリーは、ゲル化剤として増粘多糖類(カラギーナン等)が使 用されている。今回問題としているこんにゃく入りゼリーも凝固剤としてこんにゃく粉も 使用されているが、他に同様の増粘多糖類が使用されているといわれている商品である。 また、こんにゃく入りゼリーも参考品ゼリーもその他の原材料は糖類、果汁などで、同 じような原材料の表示がみられた。 2)テスト対象試料 テストの対象とした試料は、調査のため、市場に出回っていた中から緊急に入手可能な ものを購入した。購入したこんにゃく入りゼリーは 10 試料で、前述のような事故の報告 がないこんにゃくを原材料に使用していないゼリー3 試料を参考品とし、計 13 試料をテ スト対象試料とした。 2.試験 前項の 13 試料について、水分、大きさ、弾力性、硬さ、官能テストを行い、その結果の 一覧を蓑に示した。 1)水分 一般のゼリーの水分は 79%(四訂日本食品標準成分表)であるが、水分が少なくなると 固型分が多くなり硬くなる。 また、ゼリーと容器の間などに糖液等の水気があると、容器とゼリーが密着せず容器か らゼリーをスムーズに取り出せる。 水分を調べた結果、こんにゃく入りゼリーは、平均 73.3%と参考品ゼリーの 76.0%と比 較すると約 3 ポイント少なかった。こんにゃく入りゼリーの試料の中で、1 試料は 84%と多か ったが、逆に 70%未満のものが 2 試料見られた。 2)大きさ (1)1 個の体積 各試料の容器に水を満たし、各試料の体積を求めた。 こんにゃく入りゼリーの体積は、もっとも大きいもので 26 ㎤、平均は 19.9 ㎤であった。 参考品ゼリーの平均 16.7 ㎤と比較すると、約 3 ㎤正大きめであった。また、同じこんにゃく 別紙 1-1 入りゼリーでも試料による差は大きく、13~26 ㎤と 2 倍の差がみられた。 (2)最大直径 各試料の上面と底面の直径を測定し、最大直径を求めた。 その結果、こんにゃく入りゼリーの最大直径は 3.0~3.8cm、平均 3.5cm であった。参 考ゼリーの平均 3.3cm と比較するとやや大き目であった。 3 歳未満のこども用玩具については、玩具安全基準((社)日本玩具協会)で 31.8cm 以下の 分離可能な部品は子供が飲み込む危険を避けるため用いるのを禁止している。この数値を 参考にしてみると、こんにゃく入りゼリーは、10 試料中 8 試料がこれより大きいものであ った。 3)弾力性 ゼリーの表面が破断するまでにどの位陥没するかをレオメーター(SUNRHEOMETER CR-20 0D,半径 0.5cm のアタッチメントを使用、20℃)により測定し、弾力性を調べた。 その結果、こんにゃく入りゼリーは最大のもので 15.9mm、平均 13.1mm と、参考品ゼリー の平均 6.9mm と比較すると約 2 倍であった。こんにゃくを使用したゼリーは、3 試料が弾 力性が小さく参考品に近いものが見られたが、多くの試料が参考品ゼリーより明らかに弾 力性の強いものであった。 また、こんにゃく入りゼリーの表示には「凍らせてもおいしく食べれます」とあったた め、冷凍庫で凍らせた場合の弾力性についても調べたところ、どの試料も凍らせると弾力 性が強くなり、冷凍庫から取り出して 10 分後のやや溶けだした時点でも、20℃の場合に比 較すると弾力性は 1.5 倍程度強いという結果であった。 4)硬さ レオメーターによって、弾力性と同時に、ゼリーの表面が破断するまでの力を測定し、 硬さを調べた。 その結果、こんにゃく入りゼリーの硬さは、試料によって 4 倍以上の差があり、1 試料 は参考品ゼリーに近いものであったが、最大のもので 473g であった。平均では 268g と、 参考ゼリーの平均 75g と比較すると 3 倍以上の硬さであり、全体的に参考品ゼリーより明 らかに硬い特徴が見られた。 凍らせた場合の硬さについても調べた結果、どの試料も非常に硬くなっており、冷凍庫 から取り出して 10 分後のやや溶けだした時点でも、20℃の場合に比較すると 5~10 倍も硬 いという結果であった。 また弾力性と硬さには相関が見られ弾力性の強い試料は硬さも硬いという結果であった。 5)官能テスト 15 名の大人のモニターによって、容器からの取り出しやすさなど 4 項目について 5 段階 に評価し、統計的処理を行った。 別紙 1-2 (1)容器からの取り出しやすさ 一口サイズであるので、口で吸う、容器を押し出すなどによって、直接食べる場合が多 いと思われ、また、容器から取り出しにくいと、勢いよく吸って、喉に直接到達してしま う危険がある。 テストの結果では、比較的取り出しやすかったものは 3 試料で、そのうち 2 試料は参考 品ゼリーであった。こんにゃく入りゼリーのうち 1 試料は特に取り出しにくいと評価され、 このものは水分の少ない試料であった。 (2)1 口で食べるのに大きさはほどよいか ゼリーの大きさが大き過ぎたり小さ過ぎたりすることはないか、一口で食べるのにほど よい大きさであるかどうか調べたところ、「大き過ぎる」と評価されたものが 2 試料あり、 「小さ過ぎる」と評価された試料はなかった。今回のモニターは大人であったが、子供、 あるいは幼児の場合には口腔が小さいため、今回、特に大きいと評価されなかった試料で も大きいと感じられる可能性もある。 大き過ぎると評価された 2 試料は、いずれも 1 個の体積が 26 ㎤で、体積のもっとも大き い試料であった。 (3)口の中でのくだけやすさ 試料間で相対比較を行い評価したところ、参考品ゼリーは 3 試料とも「非常にくだけや すかった」が、こんにゃく入りゼリーのうち 3 試料が「特にくだけにくい」と評価された。 こんにゃく入りゼリーは、歯で噛めば勿論かみ切れるが、舌や口蓋の力でくだくのは無 理で、参考品のような従来からのゼリーとは、外観的にはよく似ているが、口に入れた時 の弾力や硬さの感じはかなり異なっていた。 (4)弾力性の強さ 試料間で相対比較を行い、弾力性の強さの特徴を調べたところ、こんにゃく入りゼリー は参考品ゼリーと比較して弾力性が強いと感じられ、中でも、こんにゃく入りゼリーのう ち 1 試料が「特に弾力性が強い」と評価された。この試料は、レオメーターによる弾力性 の測定値がもっとも大きかった試料で、また、官能テストでの「口の中でのくだけやす さ」でも「くだけにくい」と評価された試料である。 別紙 1-3 (表)テスト結果 大 き さ 一 最 個 大 の 直 体 径 積 (%) (㎝3) (㎝) ー 試料 No. ー 区分 ー テスト項目 弾力性 硬さ 時オ表 時オ表 のメ面 のメ面 ひ が 負 が ずタ破 荷タ破 み 断 力 断 距です です 離押る 押る さま さま えで えで たレ たレ ー 水分 水 分 (㎜) 出容 し器 やか すら さの 取 り 官 能 テ ス ト よに一 け口 い大口 やの す中 かきで さ食 さで の はべ く ほる どの だ 弾 力 性 の 強 さ 15名(大人)による モニターテストの評価 (g) 73 13 3.0 13.0 281 B 良い B 普通 2 70 26 3.8 15.5 324 C 大き過ぎ B 普通 3 69 19 3.4 9.8 199 B 良い B 普通 4 76 20 3.5 15.6 473 B 良い C 普通 5 77 14 3.0 13.9 260 A 良い B 普通 6 72 21 3.6 9.8 167 B 良い B 普通 7(注1) 73 19 3.5 12.7 249 B 良い C 普通 8 70 26 3.8 14.9 307 B 大き過ぎ B 普通 9 84 21 3.7 9.7 118 B 良い A 普通 10 69 20 3.6 15.9 304 B 良い C 強い 11 76 14 3.0 5.2 58 B 良い A 弱い 12 78 14 3.0 8.6 8 A 良い A 弱い 13 74 22 3.8 6.9 80 A 良い 評価記号 A:平均的水準より優れている B:平均的水準にある C:平均的水準を下回っている 注1:ナタデココ含有 A 弱い こ ん に ゃ 別紙 1-4 1 ー く 入 り ゼ リ ー ゼ参 リ考 品 3.結論 今回、こんにゃく入りゼリーが喉につまったための死亡事故が発生した。 そこで、喉につまった原因の可能性を考察した。 1)1 口サイズということから、容器から直接吸って食べる際に容器からスムーズに取り 出せないため、かなり勢い良く吸ってしまい、その勢いでゼリーが丸ごと直接喉に到達 してしまい、喉がつまった可能性がある。 2)容器から取り出して口の中に入れた場合でも、子供のように小さな口腔ではゼリーが 口いっぱいとなるため、舌や口蓋の力だけではくだくことが出来ず、結果的に大きいま ま飲み込もうとして喉に到達してしまい、喉がつまった可能性がある。 以上の観点から、こんにゃく入りゼリーと参考品ゼリーを比較してみた。 ① こんにゃく入りゼリーは、水分が少なめで容器との密着性が強く、1 試料を除いて容 器から取り出すには参考品より大きな力で勢い良く吸う又は押し出すことが必要であっ た。特に 1 試料は官能テストの結果において、その傾向が顕著であった。 ② こんにゃく入りゼリーの大きさについては、1 個の体積が試料によって 2 倍の差があ り、大人による官能テストでも「大き過ぎる」と評価された試料も 2 試料あった。子供 用の玩具は、飲み込む危険を避けるため玩具安全基準によって 31.8mm 以下の部品の使用 を禁止しているが、この数値を参考にして考えると、こんにゃく入りゼリーがそのまま 喉に到達した場合、子供では飲み込むことのできない可能性のある大きさの試料が多く、 そのまま直接喉に到達したのでは、喉につまることのあるサイズであった。 ③ こんにゃく入りゼリーの弾力性、硬さの測定値は、参考品ゼリーに比べ 2~3 倍も強 いものであった。これらは官能的にも識別されており、こんにゃく入りゼリーのうちの 1 試料は特に弾力性が強かった。また、官能テストの結果の「口の中でのくだけやす さ」では、参考品ゼリーは「くだけやすい」とされたが、こんにゃく入りゼリーは 1 試 料を除いて参考品ゼリーよりくだけにくく、中でも 3 試料は参考品ゼリーに比べ特にく だけにくいと評価されていた。 ④ これらのことから、こんにゃく入りゼリーは、口に入れた時の弾力や硬さが参考品ゼ リーとはかなり異なる商品で、参考品ゼリーのように舌や口蓋の力で押しつぶすことは できず、小片にくだくには歯でかみ切る必要があった。 ⑤ 今回、テストした商品の中で実際に事故が発生した試料があったが、これらが他のこ んにゃく入りゼリーと比較して物性値や官能テストの結果に際立った特徴があったとは 言えない。現在のところ、事故の事例があるなしにかかわらずこんにゃく入りゼリーの 中では、水分が少なく、弾性や硬さが強く口の中でくだけにくいような商品には特に注 意する必要があると思われる。 上記のように、水分、大きさ、弾力性、硬さの結果を総合的に考えると、こんにゃく入 りゼリーは、特に小児の場合、容器から直接吸って出し、その勢いで直接喉に到達した場 合、喉をつまらせることが考えられ、また口腔内に留まった場合でも、かみ切りにくいと 別紙 1-5 推察され、消費者の食べ方によっては、喉に詰まる事故が発生する可能性がある商品とい える。 こんにゃく入りゼリーは、外観的には参考品ゼリーとよく似ており、喉につまる危険性 が予期されにくかったことも事故の発生につながった一因ではないかと思われる。 別紙 1-6