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消費者の購買行動から見た有機農産物の評価
消費者の購買行動から見た有機農産物の評価 担 当 経営技術研究室 地域経営技術研究グループ ○久保雄生・藤田浩義 研 究 課 題 名 ハウスホウレンソウの有機栽培技術の開発 研 究 年 度 平 成 20年 ∼ 23年 背 景 ハウスホウレンソウは、本県の中山間地域において施設野菜の主力品目とし て位置づけられ、将来的には有機農業への取り組みを指向する生産者も見込ま れる。この様な状況のもと、本県では「山口県有機農業推進計画」を策定し、 平 成 23年 ま で に 野 菜 で は ホ ウ レ ン ソ ウ の 技 術 体 系 を 確 立 す る こ と と し て い る 。 目 的 エ コ や ま ぐ ち 100農 産 物 ホ ウ レ ン ソ ウ ( 以 下 、 エ コ 100ホ ウ レ ン ソ ウ ) に 対 す る消費者評価及び購入要因を把握し、今後の産地形成と消費拡大に資する。 成 果 1 有機農産物の購買実態と消費者意識 (1) 有機農産物の購入意向は、購入実績のある者ほど高いが、認証表示を意 識した購入者割合は低く、有機農産物の需要・消費確保のためには、店頭 に お け る 農 産 物 情 報 の 量 及 び 質 の 向 上 が 重 要 と な る (図 1 、 表 1 ) 。 (2) 有 機 農 産 物 の 購 入 未 経 験 者 は 、 70.4% が 有 機 農 産 物 に 魅 力 を 感 じ て い な い 。 し か し 、 有 機 農 産 物 の 安 全 性 ( 27.7% ) 、 表 示 の 信 頼 性 ( 17.0% ) の 担保を期待する階層が存在するため、新たな需要開拓を行う上では、消費 者への有機農産物の安全性等周知が重要となる(データ省略)。 2 (1) 消費者の有機農産物購買要因の解明 消費者の今後の購入意向をもとにした有機農産物等の購買要因は、消費 者の「年齢」、有機農産物の「購入経験の有無」、「表示の認知度」等が 機能する(表2)。 ( 2) 有 機 農 産 物 購 入 の 要 因 分 析 結 果 か ら 、 有 機 農 産 物 の 提 案 は 、 50代 以 降 の 女性がいる世帯を主な対象とする。同時に、認証表示の認識度向上及び信 頼性等の周知を、県内での取組の多いエコファーマー農産物から段階的に 行うことが効果的である(表2)。 3 (1) エ コ 100ホ ウ レ ン ソ ウ の 選 好 基 準 と 今 後 の 展 開 方 向 属性間重要度から、消費者は「価格」、「荷姿」、「表示内容」の順に 重 視 す る 。 ま た 、 消 費 者 が 受 入 れ 易 い エ コ 100ホ ウ レ ン ソ ウ は 、 「 130円 未 満」、「束売」、「肥料・農薬使用量」の記載商品と予測できる(表3)。 (2) エ コ 100ホ ウ レ ン ソ ウ の 生 産 者 出 荷 単 価 は 、 ア ン ケ ー ト 結 果 か ら 100円 程 度 と 、 J A S 有 機 ホ ウ レ ン ソ ウ の 同 単 価 と 比 べ 約 17% 低 い と 予 測 さ れ る 。 しかし、冬期条件下であれば一般ホウレンソウの単価よりも高く、導入効 果が期待できる(図2)。 1.5 表1 安全性 高 環境への配慮 購入 実績 1.0 食味・栄養価 虫・食害 個 別 評 価 項 目 表示の認知状況(%) 新鮮さ 優良評価項目 0.5 生産者情報 -0.25 -0.2 -0.15 形・見栄え 店頭販売量 収穫日情報 0.0 -0.05 0 0.05 取扱い店舗数 -0.1 0.1 使用農薬・肥料情報 -0.5 対象 0.15 価格 0.2 ある 0.25 店頭での 情報提供量 優先改善項目 次期改善項目 購入時点における 認証表示の意識状況 意識 した 意識して いない JAS有機 32.0 68.0 エコ100 13.6 86.4 エコ50 16.9 83.1 エコファーマー 16.3 83.7 JAS有機 18.8 81.3 エコ100 4.4 95.6 エコ50 6.5 93.5 エコファーマー 4.3 95.7 -1.0 低 多分 ある -1.5 低 高 重要度 (今後の購入意向と個別評価項目との偏相関係数) 図1 消費者の有機農産物に対する評価 表2 有機農産物購入要因分析結果 項目名 JAS表示 カテゴリ-名 カテゴリ-数量 レンジ 見たことがある 0.029 0.047 見たことはない -0.019 エコファーマー表示 見たことがある 0.526 0.700 見たことはない -0.174 店舗系列 岩国(系統:I) 0.056 山口(系統:I) 0.124 0.301 防府(系統:A) -0.177 下関(系統:M) -0.030 有機農産物 ある・多分ある 0.434 購入経験 ない・多分ない -0.667 1.101 分からない 0.104 年齢 30代以下 -0.594 40代 -0.692 50代 -0.040 1.775 60代 -0.026 70代以上 1.083 農産物 必ず自分で購入 0.192 0.448 購入頻度 必ずしも自分で -0.257 購入しない 注1)カテゴリ数量が正の場合、購入意欲のあるグループへの判別に寄与することを示す (円) 200 175 150 125 JAS有機ホウ レンソウとの生 産者出荷単価差 100 エコ100ホウ レンソウ導入 想定期間 75 50 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 JAS有機生産者出荷単価(県内販売価格からの推測値:117円) エコ100ホウレンソウ生産者出荷単価(アンケート結果からの推測値:100円) 一般単価(束:S地区) 一般単価(袋:M地区) 図2 エ コ 100ホ ウ レ ン ソ ウ 導 入 展 開 予 測 注2)レンジ値が大きいほど、有機農産物の購入意欲の有無に影響を与えていることを示す 表3 各 調 査 地 点 に お け る エ コ 100ホ ウ レ ン ソ ウ の 消 費 者 評 価 結 果 岩国(系統:I) 山口(系統:I) 防府(系統:A) 下関(系統:M) 属性 水準 130円未満 130円∼160円未満 160円∼200円未満 パック 荷姿 袋 束 収穫日 表示内容 生産者氏名・住所 肥料・農薬使用量 価格 水準内 優先度 属性間 重要度 1.996 0.004 91.11 -2.000 -0.697 0.322 8.33 0.375 0.159 -0.155 0.56 -0.004 水準内 優先度 属性間 重要度 1.788 0.061 79.67 -1.848 -0.902 0.087 17.86 0.814 -0.125 -0.239 2.46 0.364 水準内 優先度 属性間 重要度 2.170 0.142 93.92 -2.312 -0.613 0.170 5.60 0.443 0.026 -0.173 0.49 0.147 注1)調査は消費者に9つの商品を提示し、購入希望順に1∼9までの順位をつけることで行った(対象サンプル数382) 2)一般ホウレンソウ単価を100円、エコ100ホウレンソウの販売期間を11∼3月頃として想定した(重量は200g) 3)岩国地区は他地区と異なり、「表示内容」では収穫日を選好している 水準内 優先度 属性間 重要度 2.20 0.01 86.68 -2.21 -0.98 0.36 13.19 0.62 -0.01 -0.08 0.12 0.09 消費者団体員 水準内 優先度 属性間 重要度 1.18 0.22 71.64 -1.40 -0.73 0.04 21.03 0.68 -0.29 -0.19 7.33 0.48