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薬草 - 愛媛県
注目される薬用植物 農林水産研究所 生薬(漢方薬)の原料となる薬用植物の8割以上を中国から の輸入に頼る我が国では、近年の輸入情勢の不安定化に伴い、 国内栽培が全国的に注目されています。 農林水産研究所では、現在、国や県の普及、行政機関と連携 し、新たな薬用植物の本県への適応性や農業研究分野で蓄積さ れたノウハウを生かした栽培技術研究に取り組んでいます。 愛媛県で栽培研究や実証展示を行う注目の薬用植物 愛媛県の薬用植物の栽培状況(H25年度) ウラルカンゾウ シャクヤク‘北宰相’ オオブカトウキ ミシマサイコ 薬用植物と農作物の違い •医薬品の原料とする場合には、形状や薬効成分の含量等の品質が「日本薬局方」により規定されています。 •農作物のような市場流通はなく、販路は製薬メーカーや生薬問屋との直接取引(契約栽培)となります。 •医薬品原料では、薬価が公定価格として定められているため、生産コストが高くなると採算性が難しくなります。 •登録農薬が少なく、人力、手作業による栽培管理が多く、多くの品目は収穫後に乾燥工程が必要となります。 •薬用植物は1作の栽培期間が長いものが多く(シャクヤク5年、カンゾウ3年、トウキ2年)、種苗の入手先も限られています。 愛媛における薬草カンゾウの適応性 農林水産研究所 農林水産研究所では、国の薬用植物資源研究センターとの共 同研究により、暖地におけるカンゾウ(甘草)の生育適応性に ついて検討しました。 その結果、愛媛県の栽培では、自生地の気候に近い北海道よ りも地下部の生育が旺盛で高収量となり、生薬の主要成分とな るグリチルリチン酸含量も高くなることが明らかになりました。 ウラルカンゾウ 定植2年目の地上部 (8月)と地下部(10月)の生育状況 花 主 根 ストロン ・根の深度は最大1m以上、スト ロンは横方向に2~3mまで伸長。 カンゾウ(甘草)とは 中国北部やモンゴルなどの高緯度乾燥地帯に自生 するマメ科の多年生植物で、漢方処方の約7割に配合される国内で最も需要 の高い薬用植物です。生薬には、主に地下部の根やストロン(走出茎)が利 用され、収穫には3~5年を要しますが、現在その全ては海外からの輸入に 頼っているのが現状です。 北海道(名寄市)と愛媛県における収穫物(地下部)の比較 薬草ミシマサイコのマルチ栽培 農林水産研究所 ミシマサイコのマルチ栽培は、除草作業の省力化が図られる とともに慣行の裸地栽培よりも生育促進効果が高くなり、薬用 部位となる根部の発達も良好で増収となります。 マルチの種類は、昇温抑制効果の高い白黒マルチが有効です が、安価な黒マルチを利用する場合には、夏の高温期までに茎 葉部を繁茂させ、マルチの表面温度の上昇を防ぐことで、白黒 マルチと同等の収量を得ることができるので、は種時期やその 後の発芽が遅れないよう初期管理に注意する必要があります。 9月上旬の生育状況 黒マルチ 裸地 白黒マルチ ミシマサイコ(柴胡)とは 中国、韓国、日本など東アジア温帯各地の山 野に自生するセリ科の多年生草本。日本では静岡県三島で採集されたものが 特に良質であったためミシマサイコと呼ぶようになりました。生薬和名の柴 胡は乾燥した根の部分で、漢方では、解熱、抗炎症などを目標に処方されま す。愛媛県で最も栽培が盛んな薬用植物です。 ミシマサイコ1年性株の根部収量と成分含量