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由利本荘市赤田地域
秋田支局ニュース Vol.5 第 (1) 5 号 秋田支局では、管内農業者及び関 係者等の方々の地域活性化に向け た最新の取組を紹介します。 平成28年5月発行 Akita Branch Office, Tohoku Regional Agricultural Administration Office 由利本荘市赤田地域 「赤田地域」は、由利本荘市(平成17年3月に1市7町が合併し て誕生)北部(旧本荘市)の中山間地にあります。 昭和55年当時608人だった赤田地域の人口は、現在は350人余り に減少し、身近な商店も閉店になり買い物も困難になっていました。 こうした過疎化が進む地域の買い物支援策として県が進めている 「お互いさまスーパー創設事業」を活用し、「赤田ふれあいスー パー」をオープン。商品の仕入れから販売までを地域住民が協力し て運営することで、これまでの地場産農産物の直売や山菜の加工販 売とあわせ、地域のコミュニティ維持と活性化に取り組んでいます。 これまで取り組ん できた成果や今後 の課題などを赤田 町内会長「遠藤照 夫」さん㊧と赤田 ふれあいスーパー 代表「初瀬東一」 さん㊨にお話を伺 いました。 由利本荘市「赤田地域」のこれまでの取組 平成21年 「農村集落元気づくり事業」に選定 平成22年 集落活性化プラン策定 平成24年 むらづくりの推進体制4つの部会設置 平成24年 「赤田ふれあい直売所」オープン 平成25年 県内8集落の共同で山菜のリレー出荷 平成26年 食品加工所完成 平成28年 「赤田ふれあいスーパー」オープン 【由利本荘市赤田地域】 集落の中心を赤田川が 流れ、上流には高さ23m を誇る「赤田大滝」があ ります。また、江戸時代 に地域に根ざした「是山 (ぜざん)和尚」が造っ ● 赤田地域 た身の丈約7.9m、台座を 由利本荘市 含めると約9.1mにもなる 長谷十一面観音像の「赤 田の大仏」があります。 毎年8月、2日間にわたって行われる 「赤田大仏祭り」は、仏教と神道が融合し た「神仏習合」の全国でも珍しい祭礼とし て知られており、350人余りの集落人口の うち、160人近くが参加するなど、地域の まとまりの象徴になっています。 赤田地域には、こうした自然や歴史的な 観光資源があり、多くの観光客が訪れてい ます。 恵まれた地域資源を有効に活用したい 【Q1】 赤田地域の活性化の取組を行うきっかけは何ですか。 年々高齢化が進み、地域の人口も減少していく中で、どうにかして地域 を元気にしなければと思っていました。 赤田地域には、大仏や三十三観音札所などの「歴史資源」、農産物や山 菜などの「食資源」、赤田大滝や東光山などの「自然資源」があり、年間 2万5千人から3万人が訪れています。 平成21年、由利本荘市から「農村集落元気づくり事業」のモデル集落に 選ばれました。その後、国際教養大学の先生や生徒たちから「地域資源発 掘調査」を行って頂いたのがきっかけです。 しかし、調査結果からは、観光客への飲食の場の提供や子どもの遊び場、 大人の休憩所、お土産品がないといった報告を受けたことから、こうした 課題を改善する地域の取組が始まりました。その後、平成22年度に町内会 と学生たちとの協働で「集落活性化プラン」の策定を行いました。 秋田支局ニュース Vol.5 (2) 加工施設を活用した新商品の開発 【Q2】 どのような活動を行っていますか。 県や市からの支援を得て「あきた元気ムラ」(※1)に登録を しています。新たな商品開発や販路拡大に向けた取組に対し、 きめ細やかな助言を頂いています。 その活動のひとつとして、県が首都圏で地場産品を販売する 集落を支援する「GBビジネス」(※2)があり、今年も千葉県 内の京北スーパー8店舗で山菜の販売を行いました。 この山菜は、出来る限り添加物を使わず、水・塩・変色防止 剤(ビタミンC)だけで3ヶ月の賞味期限を確保しました。消 費者はもちろん、スーパーのバイヤーにも好評を得ました。 また、赤田地域だけでの山菜の販売であれば、販売期間も短 く販売量も限られてくることから、今年も県内の8集落と連携 し、収穫時期の違いを利用して「リレー出荷」を行うことで販 売期間や販売量も充実してきました。 今後は、山菜の水煮だけではなく、例えば山菜の漬物や菊芋 の加工品など、新たな商品開発をしたいと思っています。 お互いさまスーパー「赤田ふれあいスーパー」 には、日用雑貨や食料品が揃っています 加工所は、地域の住民であれば誰でも利用できます 山菜収穫の時期には真空 包装器もフル回転 直売所とスーパーでは、地域の方 々が笑顔で出迎えてくれます 野菜乾燥機を導入し新商 品の開発を検討中 「赤田ふれあい直売所」には、毎日採れたての 農産物が販売されています 地域への還元と憩いの場の提供 用 語 解 説 ・あきた元気ムラ(※1) 【Q3】 現在抱えている課題や今後の目標を教えてください。 ・GBビジネス(※2) 今年の3月、これまでにあった農産物直売所に併設する形で お互いさまスーパー「赤田ふれあいスーパー」がオープンしま した。正直言って、今は赤字です。しかし、こうした活動は 『地域への還元』が目的です。 今後は、惣菜や弁当の販売、食事が出来る場所の提供などを 考えています。地域の方々をバスで送迎をして、朝から夕方ま でみんなで語らい、夕方にスーパーで買い物をして帰ってもら うような憩いの場が出来ればと思っています。 当地に訪れる年間約3万人の観光客の方々に対しても、歴史 ガイドの配置や食べものやお土産など、地域の限られた資源で 「おもてなし」が出来ればと思っています。 地域に住む人同士がつながり、対話と課題解決を重 ねながら地域の将来づくりにチャレンジし、より住民 主体性、課題解決性の強いコミュニティ活動に取り組 む地域を秋田県と市町村では「元気ムラ」と位置づけ、 その地域の将来づくりに向けた支援をしています。 平成28年3月末現在、秋田県内に72地域337集落の 元気ムラが登録されています。 自治会や町内会等の地域住民参加のもと、「じっち ゃん(=G)、ばっちゃん(=B)」の経験や技を伝 統・文化・環境・景観・山菜やキノコ等の「地域資源」 を活用しながら、新たな地域の収入に結びつける取組 (=ビジネス)を表す造語です。 ※「地域の活動ヒント集」秋田県地域コミュニティ政策推進協議会:参照 【取材者コメント】 秋田県の調査では、平成27年7月1日現在、秋田県の高齢化率(総人口に占める満65歳以上の方の割合)は33.6%となって いるが、取材に伺った由利本荘市赤田地域においては、現在、44.0%と県の平均を大きく上回っているそうです。こうした現 状の中で、どのようにしたら地域の活性化を図れるかは難しい課題ですが、赤田地域の方々の地域資源を活用したバイタリテ ィーあふれる取り組みには頭が下がる思いでした。目先の成果や効果だけが求められ、なかなか行動を起こすことができない 地域も多くある中、赤田地域では、こうした取組を『地域への還元』と言って着実な一歩を刻んでいました。今後も赤田地域 の活動に注目していきたいと思います。 問合せ先:東北農政局秋田支局 地方参事官室 第1班 佐藤・草薙 ℡018-862-5611