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Page 1 京都大学 京都大学学術情報リポジトリ 紅
Title Author(s) Citation Issue Date URL Molecular Dynamics Studies of Superionic Conductors( Abstract_要旨 ) Kaneko, Yutaka Kyoto University (京都大学) 1989-09-25 https://doi.org/10.14989/doctor.r6978 Right Type Textversion Thesis or Dissertation author Kyoto University 【4 5 4】 かね 」 ゆたか 名 金 子 豊 学 位 の 種 類 工 学 位 記 番 号 論 工 博 第 2283号 学位授与 の 日付 平 成 元 年 9 月 25 日 学位授与 の要件 学 位 規 則 第 5条 第 2項 該 当 学位 論文 題 目 Mol e c ul a rDyna mi c sSt udi e sofSupe r i o ni cCo nduc t o r s 氏 学 博 士 ( 超 イオ ン導電体 の分子動力学的研究 ) ( 主 査) 論文 調査 委員 教 授 上 田 論 文 鞍 明 教 授 鶴 井 内 容 の 要 教 授 中西 浩 一郎 旨 本論文 は,超 イオ ン導電体 におけるイオ ンの拡散運動 について超 イオ ン導電相の存在 を可能 にす るイオ ン間相互作用 の特徴,お よびイオ ン拡散 の動 的機構 とい う 2つ の観点か ら,対 象 と して αAgIと Ca F2 取 り上げ,分子動力学 シ ミュレーシ ョンによ り研究 を行 った もので,序論,結論 を含めた 8章か らなって いる。 第 1章 は序論で,超 イオ ン導電体 の物性 と従来の研究状況 を述べ, イオ ン拡散 の動 的機構が理論的に明 らかにされていないことを指摘 し,多体問題の続計力学的研究 に分子動力学 シ ミュレーシ ョンが果 た して きた役割 とその有効性 について述べ,本研究の 目的,お よび内容 について述べている。 第 2章で は, シ ミュレーシ ョンのモデル,お よび計算法 を述べている。 イオ ン間相互作用が クーロン力 とソフ トコア斥力 のポテ ンシ ャルか らなる系 (ソフ トコア ・イオ ン系)のスケー リング則 を紹介 し, ス ケー リング ・パ ラメータの物理的解釈 を与 え,モデルの有効性 を指摘 している。 第 3章で は,αAgIにおける超 イオ ン導電相の存在 とイオ ン間相互作用の関係 について述べ ている。α 相が実現で きるスケー リング ・パ ラメー タの領域 を系統 的 に調べ, その物理 的解釈 を与 え る とともに, c格子が不安定 になる条件,Ag十の拡散が起 こる条件 を考察 し,超 イオ ン導電相が現 れるのに必 「 の bc 要 なイオン間ポテ ンシャルの特徴 をまとめている。 第 4章で は,Ag十の 自己拡散 につ いて,Ag十 とⅠ 格子 の局所 的 な相 関の解析,相 関関数の計算,お 6mm フイルムの作成 とい う 3つ の観点か ら調べ ている。Ag+拡散 の推進力 として クーロ ン力が重 よび1 要であるこ とを述べ, これ まで考 え られて きた ように,Ag十の拡散が跳躍 的で はな く,液体 的 に振舞 う ことが フイルムの観察 によって, よ り明 らかにされたことを指摘す る とともに, イオ ンの時間 ・空間相 関 について も考察 している。 第 5章で は,動 的構造 因子,電流相 関関数の計算 によ り,αAgIにお ける集団運動 の性 質 を解析 して いる。Ag十は縦音響モー ドで Ⅰ の格子振動 と相関 をもっ こと,高振動数の縦光学モー ドとは相 関 を もた ない ことな ど,動 イオ ンと格子 イオ ンの動 的相 関の特徴 を明 らか に し,第 4章で得 た結果 と合 わせ て, -1 1 7 9- Ag+の拡散機構 を動力学 的 な立場 か ら提案 している。 第 6章 で は,αAgIとは異 な る タイプの超 イオ ン導電体 と して,Ca F2につ いて,超 イオ ン導電相 にお ける F の分布 とイオ ン間ポテ ンシ ャルの関係 を調べ てい る。 従 来議 論 されて きた よ うに F-は Ca 2十の f c c格 子 の 4面体 サ イ トに分布 す る こ とを確 認 す る とともに, その拡散 経路 は斥 力 の コアのかた さに依存 す る こ とを兄 いだ してい る。 第 7章 で は, Ca F2 にお け る拡 散 の動 力学 を,αAgIの場 合 と比較 しなが ら解析 して い る。F の 4面 2十 との相 関, F-同士 の強 い相 関運動 を詳 し く解析 し,集 団運動 体 サ イ ト間で の跳 躍 的 な拡 散運動 と Ca AgIと異 な るこ とを兄 い の新 しい機構 を議論 して い る。 また,動 イ オ ンと格 子 イオ ンの振動 の性 質が αだ し,振動 モ ー ドの特徴 の違 い は,質量比 とイオ ン半径比 の違 い に よる こ とを示 してい る。 第 8章 で は,超 イオ ン導電相 のポテ ンシ ャル依存度, お よび拡散 の動 力学 とい う 2つ の問題 につ いて, AgIと Ca 2十 を比較 しなが らまとめ,結論 と してい る。 結果 を α論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨 本論文 は,超 イオ ン導電体 にお けるイオ ン拡散 の動 的機構 ,超 イオ ン導電相 の出現 とイオ ン間相互作 用 と の関係 を明 らか にす るこ とを 目的 と して, イオ ン間相互作用が クロー ンカ とソフ トコア斥力 のポテ ンシ ャ AgIと Ca F2 に適用 し,分 子動 力 学 法 に よる詳細 な解析 に ルか らな る系 (ソフ トコア ・イ オ ン系 ) を aよ って, 副格 子 の安 定性 ,動 イ オ ン と副 格 子 の動 的相 関,動 イ オ ンの集 団運 動 の性 質 の考 察, さ らに αAgIと Ca F2 にお ける拡 散機構 の違 いの考察 な どの一連 の研 究 をま とめた もので,得 られた主 な成果 は 次 の とお りであ る。 1. ソフ トコア ・イオ ン系 の もつ スケ ー リング則 を用 いて,αAgIにお け る Ⅰ の bcc格子 の安定性 , Ag十の拡 散 とポテ ンシ ャルの特徴 との対応 を系 統 的 に調べ, ス ケール系 で み た ときの クロー ンカ の強 さ が適度 に弱 く, イオ ン半径 比が ポー リングの加成別 を満足 す る ときに,α相 が現 れ る こ とを明 らか に した。 この結果 は,超 イオ ン導電状 態が実現 され るには,斥 力 とクロー ンカ のバ ラ ンス, 2成分 間の斥力 の効 き AgIと同 じタイプの導電体 の性 質 に も適用 で きる。 方が重要 であ るこ とを示 してお り,α2.静 的構 造 因子 の解析 か ら,Ag+が Ⅰ-格子 の構造 に支配 され る空 間相 関 を もっ こ と, さらに,動 的 構造 因子,電流相 関関数 の解析 を通 じて, Ag+は Ⅰ 格子 の縦音響 モ ー ドと相 関 を もち,高振動数 の縦光 学 モ ー ドとは相 関 を もたない こ とな ど,動 イオ ンと格子 イオ ンの動 的お よび静 的相 関の特徴 を明 らか に し た。 また, Ag+の拡散 が斥 力 よ りクロー ンカ に よって推進 され る こ とを示 した。 これ らの結 果 を総合 し て,剛体 イオ ンモデルの枠 内で,Ag十の拡散機構 を動力学的 に明 らか に した。 3.Ca F2の導電相 にお け る F∼イオ ンの分布 ,拡散 の運動学 的性 質 とポテ ンシ ャルの特徴 との対 応 を, 詳細 に解析 した。F は導電体 で も単 純立 方構 造 を保 ち,Ca 2+ の 4面体 サ イ ト間で跳 躍拡散 をす る こ と を確 認 す る と ともに,F の拡散 の経 路 は,斥 力 の コアがか た くなる と 8面体位 置方 向 に曲が るこ とを兄 いだ し,F▼の 8面体 内の存在 の有無 に関す る従 来の矛盾 した結果 に解釈 を与 えた。 4.F と Ca 2十格 子 との動 的相 関 を α AgIの場合 と同様 の方 法 で解 析 し,αAgIに比 べ て動 イ オ ン 間の斥力相互作用 が拡散 に重要 であ る こ とを示 した。 さらに,F 同士 の強 い相 関運動 を詳細 に調べ た結 -1 1 8 0- 莱,大 きくサ イ トを離 れる F- と比較的短時間でサ イ ト間 を移動す る F の 2つの タイプの動 きがあるこ とを兄いだ し,新 しい拡散 のメカニズムを提案 している。 また,速度相 関関数,動的構造 因子 の解析結果 AgIの場合 と比較 し,C a 2 +と F】の振動運動が α-AgIの場合 とは非常 に異 な り, その原 因が イオ を αン半径比 と質量比の違いによることを明 らかに した。 以上要す るに本論文 は,理論的な扱 いが困難 な超 イオ ン導電体 の拡散運動,及 び拡散 イオ ン間相互作用 との関係 について,計算機実験 を行 い,興味ある所見 を得 るとともに,剛体 イオ ンモデルの枠 内で, イオ ンの拡散機構 を明 らかに した ものであって,学術上,応用上寄与す る ところが少 な くない。 よって本論文 は,工学博士 の学位論文 として価値 ある もの と認 める。 なお,平成元年 8月1 0日論文内容 とそれに関連す る事項 について試問 を行 った結果,合格 と認めた。 -1 1 81-